対処すべき課題

❶  第6次中期経営計画(2018年度~2020年度)の総括
 当社は第6次中期経営計画において「洋紙事業の生産体制再編成と自社設備の最大活用」および「成長分野の事業拡大と新規事業の早期戦力化」をテーマに掲げ、各施策に取り組みました。
 最終年度である2020年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大による洋紙需要の減少影響が大きく、国内に加え豪州においても旧オーストラリアン・ペーパー社が需要減少の影響を大きく受けたことにより、目標収益には未達に終わりましたが、成長分野の事業拡大は着実に進捗しました。

(イ)生産体制の再編成
 洋紙事業の生産体制再編成では、8台の抄紙機と2台の塗工機を計画通り2019年度までに停機しました。設備停機による固定費圧縮と生産設備の稼働率向上によりコスト削減効果が発現したこと、また、2019年に実施した価格修正の浸透もあり、紙・板紙事業の収益は大きく改善しました。
 しかしながら、2020年初頭からの新型コロナウイルスの感染拡大により広告需要が激減し、新聞・印刷用紙の需要が大きく下落しました。これらグラフィック用紙の需要は今後も減少が見込まれることから、さらなる需給ギャップの解消が必要と判断し、2020年11月、釧路工場の紙パルプ事業からの撤退(2021年8月、紙生産終了)を決定しました。

(ロ)成長分野の事業拡大
 成長分野として位置づけた生活関連事業(パッケージ、家庭紙・ヘルスケア、ケミカル)については、積極的な設備投資を行いました。各事業とも一部に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けましたが、生活必需品として底堅い需要に支えられ堅調に推移しました。
  国内の紙パック事業は液体用紙容器の販売に向けた充填機販売が計画どおり進捗し、新型コロナウイルス感染拡大による休校やリモートワークによって職場での需要減少があった一方で、在宅時間の増加による需要増を着実に取込みました。
 家庭紙・ヘルスケア事業は、当社富士工場の洋紙設備のインフラを有効活用し、2020年5月には2台目の抄紙機を稼働させ、事業規模拡大を図りました。また、当社独自技術を駆使したトイレットロールやキッチンタオルの長持ちロール製品がお客様の支持を受け、需要の取込みを実現しました。
 ケミカル事業においては新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークやオンライン授業等が進んだ結果、IT機器需要の拡大による機能性フィルム販売が増加し、アセテートパルプの拡販の遅れやレーヨン向けパルプの市況低迷による収益悪化をカバーしました。一方、市場が拡大している機能性コーティング樹脂やリチウムイオン電池等に利用される高機能性セルロース(CMC)の設備増強にも着手し、今後の拡販に向けた供給体制を整備しました。
 海外事業では豪州・ニュージーランドにおいて2020年4月にオローラ社の板紙パッケージ部門の譲受けを完了しました。旧オーストラリアン・ペーパー社の紙・板紙製造販売事業と本事業を統合し、オセアニア地域におけるパッケージ事業を主力とする事業体「Opal(オパール)」として、2020年5月より新たな運営を開始しました。豪州でも新型コロナウイルス感染症の影響によるインバウンド需要の減少や経済活動の停滞により厳しい状況でありますが、本譲受けにより「原紙の生産から段ボール製品の販売まで」の一貫体制を構築することで、さらなる事業展開が可能となりました。
 新素材関連事業では、セルロースナノファイバー(CNF)「セレンピア®」が、化粧品や食品用途に加え自動車用コンセプトタイヤに採用されました。また、紙製バリア素材「シールドプラス®」は食品用や化粧品用包材で、機能性素材「ミネルパ®」も消臭効果のある不織布やペット用品でそれぞれ採用されています。これらは既に開発ステージから商品化ステージへ移行しており、これらに続くさらなる新商品の拡販を推進していきます。

2030ビジョン・中期経営計画2025の策定
[2030ビジョンの策定]
 当社を取り巻く事業環境を見渡しますと、新型コロナウイルスによるパンデミックを契機に一気にライフスタイルの変革を迫られ、洋紙需要の減少は更に加速しました。また、日本をはじめ世界の主要各国が2050年以降のカーボンニュートラル社会の構築を見据えた動きを始めており、環境対応への意識が急速に高まりつつある中で、大きな転換期を迎えています。
 そのような背景の中、当社は本年5月、企業理念の実現に向けて2030年に目指す姿として2030ビジョンを発表しました。

(イ)2030年に目指す姿
 当社グループが2030年に目指す姿は、『木とともに未来を拓く総合バイオマス企業』として「安定した利益を生み出す複数の事業で構成され、再生可能な木質資源を多様な技術・ノウハウによって最大活用し、循環型社会の形成に貢献する製品を幅広く提供することで利益の拡大につなげ、豊かな暮らしと文化の発展を実現する企業グループ」です。
2030ビジョンと中期経営計画2025


(ロ)サステナビリティ経営の推進
 
2030ビジョンでは、社会・環境の持続可能性と企業の成長をともに追求するサステナビリティ経営を推進していきます。そのための起点は、当社グループの社会的存在意義を表している企業グループ理念です。
 当社は、この理念の「目指す企業像」に掲げる4要件を満たすため、社会的課題の解決にかかわる活動テーマを抽出し、当社の重要課題として位置付けました。これらに取り組むことは、2030年に向けて持続可能な社会の構築を目指すSDGsの達成に貢献することになります。


(ハ)基本方針と目標
 
2030ビジョンの基本方針および目標を、以下の通り掲げました。
◆基本方針
『成長事業への経営資源のシフト』
『CO ₂ 削減、環境課題等の社会情勢激変への対応』
◆目標
「売上高 1兆3,000億円」
・生活関連事業 50%以上(新規事業650億円含む)
・海外売上高比率 30%以上
「生活関連事業の売上高営業利益率7%以上」
「ROE 8.0%以上」
「GHG排出量(2013年度比)45%削減」
 成長分野の事業規模拡大と木質資源をベースとした新製品の開発を進め、需要減退の継続が予測される洋紙事業のリソースを新しい分野に転換していくとともに、フレキシブルな人材再配置を進めていきます。
 さらに、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、非化石燃料の混焼率拡大に加えて新たな木質バイオマス燃料の開発を進め、脱石炭を軸としたエネルギー構成の見直しを進めていきます。
 また、当社グループは森林価値の最大化と木質資源を利用した製品の拡大によって、事業基盤の強化とともにカーボンニュートラル社会の構築に貢献します。育種・増殖技術の活用によって森林の生産性向上を図ることで2030年までに海外植林地での「CO ₂ 固定効率の30%向上」を目指し、生物多様性の保全や水資源の確保等による公益的機能の発揮、国内社有林の活用を通じた林業の活性化にも取り組んでいきます。


(ニ)総合バイオマス企業としての事業展開
 当社グループは3つの循環、『持続可能な森林資源の循環』、『技術力で多種多様に利用する木質資源の循環』、『積極的な製品リサイクル』を軸に、木質資源の特性を活かしたそれぞれの循環を強化させることによって、循環型社会構築への寄与と事業成長の両立を実現していきます。


(ホ)持続可能な森林資源の循環
 当社は国内外に保有している約17万haの植林地や社有林を通じた森林価値の最大化を追求します。ブラジル・アムセル社の植林地をフィールドとして独自の育種・増殖技術を開発しました。ゲノム情報を利用した選抜育種や挿し木技術を活用した苗木の増殖により、アムセル社の植林地の生産性は大きく向上しています。この技術を他の森林にも展開することで単位面積当たりのCO ₂ 固定量の増大を図り、森林経営の生産性を向上させます。

(ヘ)技術力で多種多様に利用する木質資源の循環
 木質資源を利用した様々な製品を新たに開発し、社会全体でより多くのCO ₂ を固定することも進めます。これまでのパルプ・紙製品を中心とした活用に加え、当社技術力によってCNF「セレンピア®」・機能性素材「ミネルパ®」等のバイオマス素材の拡販および新たなバイオマス燃料の開発にも取り組むことで、事業成長を実現するとともに木質資源を通じた炭素の循環を図ります。同時に日本製紙クレシアの長持ち製品や軽量化が可能となるCNF強化樹脂によって輸送時のCO ₂ 発生量抑制にも繋げます。

(ト)積極的な製品リサイクル
 木質資源をベースとした新製品をはじめ、これまで再資源化が困難であった未利用古紙の活用にも積極的に取り組みます。まず、普及が進んでいる紙カップ・紙パック製品の回収スキームを構築し、さらに、ワンウェイプラスチックに代わるバリア性の紙素材にも展開し、環境負荷の極小化を進めます。

[中期経営計画2025(2021年度~2025年度)]
 2030ビジョンの前半5年間として位置付けた中期経営計画2025のテーマは『事業構造転換の加速』です。事業構造転換に不可欠な新規事業・新素材の早期戦力化および需要動向を見据えた洋紙事業の生産体制見極めには5年という期間が必要と考え、同計画の実行期間をこれまでの3年間から5年間に変更しました。


 中期経営計画2025における今後5年間は、当社グループを成長軌道に乗せるための不退転の5年間であり、成長分野の各事業においてスピード感を最重要視し、需要動向を見極めて適切な投資を進め、さらなる事業構造転換に邁進いたします。


(イ)テーマおよび目標

 中期経営計画2025のテーマおよび目標を、以下の通り掲げました。
◆テーマ
『事業構造転換の加速』
◆目標
「売上高 1兆1,000億円」
「営業利益 早期に400億円以上」
「EBITDA 安定的に1,000億円」
「D/Eレシオ 1.5倍台」
「ROE 5.0%以上」
 事業構造転換の加速には、安定的に成長投資へ資金を振り向けるためEBITDA1,000億円が必要と考えており、そのために営業利益400億円以上を早期に達成します。
 また、洋紙事業の各生産拠点に有するリソースを最大活用することで、投資効率の向上を図るとともに当社グループ従業員の技術・ノウハウも継承していきます。

(ロ)パッケージ
 紙パック事業においては、四国化工機株式会社との資本業務提携を活かした国産新型充填機や新製品開発を加速させます。新型コロナウイルスによる社会変容によって高まった「高衛生」「多機能」ニーズに対して、口栓付き多機能紙容器無菌充填システム「NSATOM®」や学校給食用ストローレス紙パック「School POP®」等の拡販により対応していきます。
 海外事業では、洋紙事業の収益悪化への対応が急務である豪州のOpalにおいて、シナジー効果の発現とパッケージ事業への更なるシフトを進め、中期経営計画2025期間の前半に安定的な収益基盤の確立を目指します。また、北米の日本ダイナウェーブパッケージングにおいては、ドライパルプマシン新設や抄紙機ドライエンド工程改造等の投資によるKP拡販体制の効果を最大限発揮し利益拡大を図ります。欧州の十條サーマルを始めとする他の海外拠点においても、環境配慮型製品の開発・市場投入や当社グループとの連携強化により、事業の拡大・安定化を加速させます。

(ハ)家庭紙・ヘルスケア
 家庭紙・ヘルスケア事業では、2021年4月よりトイレットロールの全製品を「長持ちロール」へシフトしました。省スペース化や持ち運びの便利さだけではなく、包装フィルムや芯のゴミ減少や輸送効率向上によるCO ₂ 削減にも寄与します。お客さまのより快適な生活を実現するための製品を数多く送り出すとともに、さらなるコスト競争力強化に努め、新たなライフスタイルを牽引する高付加価値、高収益品へのシフトを進め企業ブランドの向上を目指します。

(ニ)ケミカル
 ケミカル事業では、自動車部材の軽量化ニーズや包装材料のモノマテリアル化に対応した機能性コーティング樹脂の増産対策工事が2021年9月に完了し、今後の需要増加に対応していきます。また、リチウムイオン電池や食品用途等で利用される高機能性セルロース(CMC)の設備増強も2021年12月に完了予定であり、工事効果の早期発現に向け、さらに幅広い用途で海外市場も視野に入れて、拡販を進めていきます。需要動向を見据えたタイムリーな投資の継続と研究開発リソースの拡充により、お客様のニーズに的確に応える体制も確立します。

(ホ)エネルギー・木材
 2023年1月に国内最大級(75MW)のバイオマス専焼発電である勇払エネルギーセンターが稼働予定です。国の電力政策を注視しながら、カーボンニュートラル社会の構築に向けたバイオマス燃料の利用拡大を進めると共に、当社グループの持つ国産材集荷網や海外のバイオマス燃料調達機能をフル活用した燃料供給ビジネスの拡大も図ります。

(へ)新素材・新規事業
 新素材・新規事業においては、CNF「セレンピア®」の量産化に向けた製造技術を確立し、事業化に目途を付けます。また、セルロースを起点とした機能性素材「ミネルパ®」さらにはバイオコンポジット等の新たな製品も幅広く世の中に提供していきます。
 そのために、これら新素材の事業化戦略を担う「バイオマスマテリアル事業推進本部」を新たに設置し、研究開発本部との連携や既存事業の人材再配置を含めた開発・製造・販売体制の強化を進めます。加えて、事業化に向けた投資計画の立案のみならず、スピードアップに不可欠な共同開発企業との外部連携や行政・大学等の研究機関を交えた枠組み作りも積極的に進めます。

(ト)紙・板紙
 紙・板紙事業は、少子化やデジタル化の進展に伴う構造的な需要減少が続く塗工紙の需要動向を見据え、2022年5月末をもって石巻工場N6マシンの停機を決定致しました。2023年度後半を目途に家庭紙事業への展開を図ることを前提に、同工場の事業構造転換を進めます。
 一方では、紙の持つリサイクル性や生分解性という特長を生かして新たなニーズを発掘し、既存設備やリソースを最大限活用することで環境に優しく豊かな暮らしに貢献する製品を創り出していきます。紙製バリア素材「シールドプラス®」や、紙だけでパッケージができるヒートシール紙「ラミナ®」に加え、生分解性樹脂とのハイブリッド型紙容器や発泡スチロールに代わる段ボールケース等の開発を進め、「紙でできることは紙で。」をテーマに様々な用途への展開を図ります。紙化を進めるそれらの新製品を、既存商流の活用やお客様と直接的にコンタクトするプロモーション活動の展開によって、より多くのお客様へ新たな価値を速やかに届ける体制を整えます。

 その他の重要課題として、国内の人口減少や少子高齢化をはじめとした人材を取り巻く環境変化があります。「事業構造転換に即した人材配置」に加えて、働き甲斐や働きやすさ、女性活躍を含めたダイバーシティを推進し「従業員と企業の双方が成長していける関係の構築」、「定年延長を視野に入れた高年齢者雇用への対応」、「無事故・無災害の安全な職場づくり」など、企業の社会的責任を果たすべく、2021年度中にこれらの課題への対策を取りまとめ、翌年度以降に実行していきます。

 2030ビジョンの目標達成には、中期経営計画2025期間中の成長分野伸長に加え、新素材・新製品開発の促進や的確な顧客ニーズの取り込みが不可欠です。投資活動は財務規律も十分に考慮して進めていきますが、事業構造転換の加速に必要な投資は機を逃さず行っていきます。また、資金のみならず当社グループの人材・資産を含む各リソースを成長分野に振り向けることで、グループ全体の事業価値最大化を目指した施策を実行していきます。

 当社グループは、ステークホルダーへの多様な価値提供を実現し永続的に社会から必要とされる企業を目指し、グループの総合力を結集して各施策の速やかな実行により持続可能な社会の構築に貢献していきます。

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2021/06/29 12:00:00 +0900
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