中長期的な会社の経営戦略及び課題

世界人口の増加と各国における高齢化進展によって医薬品へのニーズが増大するなか、限られた資源のもと、持続可能な医療をいかに実現するかという点が世界共通の課題となっております。ライフサイエンスやICTの飛躍的な進歩によって医療問題解決へのイノベーション創出機会が拡大する一方、イノベーション実現を巡る企業間のスピード競争はこれまで以上に熾烈化しています。また、各国の財政難を背景とした薬剤費抑制圧力が高まりつつあり、特に日本市場においては非常に厳しい価格抑制策が取られております。

当社グループは前中期経営計画「ACCEL 15」を通じて、多くの革新的な新薬を基盤とした国内トップクラスの成長とがん領域でのトップシェア拡大を実現し、研究開発面でも抗体改変技術に代表される世界最先端の自社創薬力とロシュからの豊富な開発候補品による強力な開発パイプラインの構築をはじめとする多くの成果を挙げてまいりました。自社創製品であるエミシズマブ(予定適応症:血友病A)は、当事業年度日米欧3極において申請を行い、米国では承認を取得しました。ロシュからの導入品でも、2018年1月に国内で非小細胞肺がんの適応症で承認を受け、その他複数のがん種で開発が進行中の免疫チェックポイント阻害剤アテゾリズマブ(製品名「テセントリク」)に代表される多くの有力な新薬及び新薬候補があり、これらを成長ドライバーとした大きな飛躍の機会を迎えつつあります。その一方で、新成長ドライバー製品の寄与が本格化するまでの今後数年間は、既存主力製品に対する大幅な薬価引き下げによって、従来よりも売上成長ペースが鈍化することが見込まれます。

このように機会と脅威が交錯する状況のなか、当社グループは、2016年度から2018年度までを実行期間とする中期経営計画「IBI 18」を策定し、ロシュとの戦略的アライアンスを活用した競争優位性の発揮を通じて、グローバルに飛躍し続ける企業への変革を目指して取り組んでおります。中期経営計画の名称である「IBI 18」は、計画最終年度の2018年に向けて“Innovation Beyond Imagination”(創造で、想像を超える。)という徹底した革新追求への姿勢を表したものであります。

「IBI 18」におきましては、「グローバルトップクラスの競争力獲得・発揮」と「成長加速への選択と集中」の2つを重点テーマとして、以下の各分野での課題に注力しております。

(ⅰ)創薬

当社グループは、バイオ医薬、低分子医薬の双方において革新的医薬品の創製を進めてまいりました。バイオ医薬品分野での取組みは、リサイクリング抗体・スイーピング抗体等の抗体改変技術確立等の世界最先端の成果へと結実し、低分子医薬品においても、自社技術の蓄積に加え、ロシュとの化合物ライブラリー共有によって、飛躍的な創薬基盤の強化を成し遂げてきております。

これまで、3つの当社創製医薬品が米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から画期的治療薬(Breakthrough therapy)に指定されるなど、当社グループの創薬力は世界的に高い評価を受けております。

「IBI 18」においては、世界最先端の抗体改変技術への優先投資によって、革新的な研究開発プロジェクトの創出を一層加速しております。また、低分子、抗体改変に続く次世代のコア技術候補として、中分子技術を選択し、集中投資による技術確立と研究開発プロジェクトの早期創出に向けて取り組んでおります。さらに、包括連携契約を締結した大阪大学・免疫学フロンティア研究センターなどアカデミアとの協働や、モレキュラーインフォメーション分野でのロシュとの連携を通じて、がん・免疫を重点とした研究基盤の強化に取り組んでまいります。

今後もこれらの革新的創薬技術及び創薬研究体制を活用し、ファーストインクラス、ベストインクラスの医薬品の連続創出を目指して引き続き取り組んでまいります。

(ⅱ)開発

当社グループは、自社研究所からの創出及びロシュからの導入による豊富な開発パイプラインを保有しています。ロシュとの戦略的アライアンスによるユニークなビジネスモデルを活かし、自社グローバル開発の資源を早期開発段階に集中すると共に、国内開発においてはグローバル臨床開発試験と連動した効率的な活動を進めることによって、高い研究開発生産性を実現しております。

「IBI 18」においては、今後の飛躍的成長を担うことが期待されるエミシズマブ、アテゾリズマブの開発・メディカルプラン推進に最優先で資源を投入し、早期の承認取得とエビデンス構築を目指します。また、多くの自社創製品からなるグローバル開発プロジェクトについて、日米欧3極を軸としたトランスレーショナルクリニカルリサーチ(Translational Clinical Research:TCR)推進体制のもと、グローバルトップクラスの質・スピードによる早期開発を進めてまいります。

当社創製開発プロジェクトのグローバル後期開発と市場浸透を、導出先であるロシュあるいは第三者と協働して迅速に進めるためには、早期開発の完了段階までに当社のプロジェクトが医療上・経済上の両面で高いポテンシャルを持つ魅力的なものであることを証明することが極めて重要ですが、この実現に向けて創薬段階から各機能が統合した戦略のもと、連携してエビデンスの創出・蓄積を行う体制の強化にも取り組んでおります。

(ⅲ)製薬

当社グループは、バイオ医薬品に代表される高度な製造技術を保有し、信頼性の高い医薬品の安定供給を行っておりますが、今後は多くの当社創製研究開発プロジェクトのグローバル複数同時開発・高速上市を促進することと、コスト競争力のさらなる強化が重要な課題となります。

「IBI 18」においては、グローバル複数同時開発の迅速な遂行に向けて、タイムリーな治験薬供給を行う柔軟な設備・要員体制の整備を進めております。同時に中分子医薬品など製剤難度の高い研究開発プロジェクトに対応した製造技術のさらなる強化に取り組んでいます。

また、高付加価値・低コストの製薬を実現するため、後期開発から初期生産までを一貫して行う生産体制を迅速に立ち上げると共に、グローバル主要市場の動向に的確に対応した品質管理、品質保証及びレギュラトリー機能を強化してまいります。

(ⅳ)営業・メディカル・安全性

持続可能な医療が大きな課題となるなか、患者さんを中心とした最適な医療の実現に向けて、医療提供環境は大きく変化しつつあります。

当社グループは、「アバスチン」、「アクテムラ」、「アレセンサ」をはじめとする自社及びロシュからの多くの有力新薬を活かし、がん領域、腎領域、骨・関節領域、リウマチ領域をはじめとして参入市場において確固たる地位を築いてまいりました。

今後は、こうした基盤を活かしながら、患者・医療関係者をはじめとするステークホルダーの皆様の高度化・多様化するニーズに応えるソリューション提供体制をさらに強化していくことが重要な課題となります。

「IBI 18」においては、国内外「アクテムラ」や「アレセンサ」、「テセントリク」、エミシズマブなどの成長ドライバー製品へ活動を集中させ、営業・メディカル・安全性を中心とする各機能の分業・協業による高度な情報提供・医療課題の解決を進めることで、最適な医療実現への貢献と当社グループの成長加速を目指してまいります。

同時に各国・各地域の多様な特性に応じたソリューション提供を進めるため、エリアごとの機能横断チームによる戦略構築・遂行体制の確立を図ってまいります。

(ⅴ)全社

ここまでに掲げた課題の遂行にあたっては、激変する環境に対応し、イノベーションを牽引する人財が非常に重要となります。

「IBI 18」においては、全社基盤強化の最重要テーマとして、人財へフォーカスし、革新加速のための重点強化ポジションの選定と、適所適財での人財獲得・育成・配置を進めております。

また、生命関連企業としての高い倫理・道徳観に基づくコンプライアンスの徹底や、生産性向上の追求にも引き続き取り組んでまいります。

これらの取組みを通じ、株主をはじめとしたすべてのステークホルダーの皆様への価値提供を拡大し、トップ製薬企業像の実現を目指してまいります。

2015年から中期計画最終年度である2018年までの年平均Core EPS成長率は、2015年平均の為替レートでの一定ベースで、“Low single digit”(〜3%台)を見込んでおります。

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