事業の経過及びその成果

事業活動の概況

当事業年度における我が国は、国際情勢の不透明性が高まるものの安定的な成長が続く世界経済に支えられ、企業業績の好調を背景に緩やかな拡大が続いております。

一方医薬品業界は、各国の財政悪化に伴う医療費抑制策やジェネリック医薬品の処方拡大、さらに国内において特例拡大再算定(2016年度より、従来からある市場拡大再算定の特例として新規に導入され、「年間販売額1,000億円超1,500億円以下、かつ予想販売額1.5倍以上」では最大25%、「年間販売額1,500億円超、かつ予想販売額1.3倍以上」では最大50%、それぞれ薬価を引き下げる仕組み。)や薬価制度の抜本改革といった薬剤費抑制の流れが加速するなど、引き続き厳しい環境下に推移いたしました。ライフサイエンス技術やICTの飛躍的進展によるイノベーション創出機会の高まりや競争激化など、医薬品業界において、さらなる環境変化も予想されております。

当社グループは、ロシュとの戦略的アライアンス締結から15周年を迎え、このアライアンスを活用した競争優位性の発揮を通じて、グローバルに飛躍し続ける企業への変革に取り組んでおります。2016年1月よりスタートした新中期経営計画「IBI 18」におきましては、「グローバルトップクラスの競争力獲得・発揮」と「成長加速への選択と集中」の2つを重点テーマとし、トップ製薬企業像の実現とさらなる飛躍を目指しております。

このような状況のもと、当事業年度は、グローバルでの成長ドライバーとなる当社創製品及びロシュからの導入品の開発が着実に進展すると共に、これら成長ドライバーの上市・拡大に向けた生産体制の確立・強化、さらには高度なソリューション提供を目指した営業・医薬安全性・メディカルアフェアーズによる3本部連携が国内外で本格化するなど、多くの成果を挙げることができました。

当事業年度の売上収益は5,342億円、営業利益は1,032億円、当期利益は767億円(いずれもCoreベース)となりました。

ご参考

Core実績の採用について

当社事業の核(コア)である医薬品事業から発生する経常的な収益性を管理するための指標として、2013年からCore実績を採用しております。Core実績とは、IFRS実績から当社が非経常的と捉える事象等に係る損益等を除いたものです。当社では、経常的な収益性の推移を社内外一貫してCore実績で説明すると共に、株主還元をはじめとする成果配分を行う際の指標としてもこれを使用しております。

売上の状況

国内製商品売上高(「タミフル」除く)

抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」を除く国内製商品売上高は、第1四半期に2016年の薬価改定の影響があったものの、抗悪性腫瘍剤/ALK阻害剤「アレセンサ」や、骨・関節領域を中心とする主力品の堅調な推移等により、3,884億円(前事業年度比2.3%増)となりました。

がん領域の売上は、2,259億円(同2.5%増)となりました。2016年に特例拡大再算定の対象品目となった抗悪性腫瘍剤/抗VEGFヒト化モノクローナル抗体「アバスチン」の成長が鈍化したものの、「アレセンサ」及び抗悪性腫瘍剤/抗HER2ヒト化モノクローナル抗体「パージェタ」が好調に推移したことによります。

骨・関節領域の売上は、経口骨粗鬆症治療剤のトップブランドである活性型ビタミンD3製剤「エディロール」、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体「アクテムラ」、ビスホスホネート系骨粗鬆症治療剤「ボンビバ」といった主力品の堅調な推移により、933億円(同8.4%増)となりました。

腎領域の売上は、2016年の薬価改定の影響等により二次性副甲状腺機能亢進症治療剤「オキサロール」や持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ」の売上が減少し、393億円(同4.4%減)となりました。

「タミフル」について

「タミフル」につきましては、通常シーズン向けの売上は119億円(同0.8%減)、行政備蓄向け等の売上は50億円(同233.3%増)でした。

海外製商品売上高

海外製商品売上高は、「アレセンサ」をはじめとするロシュ向け輸出の増加等により940億円(同18.2%増)となりました。

損益の状況

連結損益の概要(IFRSベース)

当事業年度の売上収益は5,342億円(同8.6%増)、営業利益は989億円(同28.6%増)、当期利益は735億円(同35.1%増)となりました。これらには当社が管理する経常的業績(Coreベース)では除外している無形資産の償却費13億円、無形資産の減損損失40億円、訴訟関連損益として「オキサロール」の訴訟に関する受取金等10億円が含まれています。

連結損益の概要(Coreベース)

当事業年度の売上収益は、製商品売上高、ロイヤルティ(知的財産のライセンス契約に基づき売上金額などに応じて生じる対価。)及びその他の営業収入がいずれも伸長し、5,342億円(同8.6%増)となりました。

売上収益のうち、「タミフル」を除く製商品売上高は、第1四半期に2016年の薬価改定の影響があったものの、主に国内の「アレセンサ」、骨・関節領域の伸長に加え、「アレセンサ」をはじめとするロシュ向け輸出の増加により、4,824億円(同5.1%増)となりました。また、ロイヤルティ及びその他の営業収入は、マイルストン収入(知的財産のライセンス先企業等から支払われ、契約内容に応じて生じる一時的な収入。)等の一時的な収入の増加により、349億円(同82.7%増)となりました。

製品別売上構成比の変化等により、製商品原価率は50.7%と前事業年度比で1.5%ポイント改善しました。結果、売上総利益は2,813億円(同14.8%増)となりました。

経費は1,781億円(同8.3%増)となりました。販売費は販促活動の増加等により728億円(同4.3%増)、研究開発費は開発テーマの進展や組織改正に伴う費用区分の変更等により889億円(同7.6%増)、一般管理費等は法人事業税(外形標準課税)を含む諸経費の増加により163億円(同34.7%増)となりました。

この結果、Core営業利益は1,032億円(同28.0%増)となりました。

なお、その他の費用としてロシュに対する移転価格税制(海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、海外の関連企業との取引が、通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度。)調整金を計上し、前事業年度の見積り計上額の減額を含め、当事業年度に17億円を計上しております。

これらの結果、Core当期利益は767億円(同35.0%増)、CoreEPSは138.68円(同35.3%増)となりました。

研究開発活動の状況

当社グループは、医療用医薬品に関して国内外にわたる積極的な研究開発活動を展開しており、国際的に通用する革新的な医薬品の創製に取り組んでおります。国内では、御殿場[静岡県]、鎌倉[神奈川県]に研究拠点を配置し、連携して創薬の研究を行う一方、浮間[東京都]では工業化技術の研究を行っております。また、海外では、中外ファーマ・ユー・エス・エー・インコーポレーテッド[アメリカ]、中外ファーマ・ヨーロッパ・リミテッド[イギリス]、日健中外科技(北京)有限公司[中国]、台湾中外製薬股份有限公司[台湾]が医薬品の開発・申請業務を、中外ファーマボディ・リサーチ・ピーティーイー・リミテッド[シンガポール]、共同支配事業であるC&Cリサーチ・ラボラトリーズ[韓国]が医薬品の研究開発を行っています。

臨床開発活動につきましては、下記の進展がありました。

(ⅰ)がん領域

  • 「アレセンサ」は、クリゾチニブに不応または不耐容のALK陽性の進行非小細胞肺がんを適応症として、欧州において2月に承認を取得しました。また、ALK陽性の進行非小細胞肺がん(一次治療)を適応症として、海外で3月に承認申請を行い、11月に米国で、12月に欧州で、それぞれ承認を取得しました。
  • 改変型抗PD-L1モノクローナル抗体「RG7446(アテゾリズマブ)」は、2月に切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんを予定適応症として製造販売承認申請を行いました。また、1月に腎細胞がん(アジュバント)、3月に卵巣がん及び前立腺がんを予定適応症として、それぞれ第III相国際共同治験を開始しました。
  • 糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体「GA101/RG7159」は、CD20陽性のB細胞性濾胞性リンパ腫を予定適 応症として、8月に製造販売承認申請を行いました。
  • 「パージェタ」は、HER2陽性の乳がんにおける補助化学療法を予定適応症として、10月に製造販売承認申請を行いました。また、第III相国際共同治験「JACOB試験」の結果に鑑み、胃がんを対象とする開発を中止しました。
  • AKT阻害剤「RG7440」は、6月に前立腺がんを予定適応症として、第III相国際共同治験を開始しました。
  • 抗CD79b抗体薬物複合体「RG7596」は、11月にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を予定適応症として、第III相国際共同治験を開始しました。
  • MEK阻害剤「RG7421」は、固形がんを予定適応症として、7月に第I相臨床試験を開始しました。
  • 「アバスチン」は、導入元のロシュが海外医師主導治験(MAPS試験)の薬事申請基準への適合性を評価した結果に鑑み、悪性胸膜中皮腫を対象とする開発を中止しました。
  • IDO阻害剤「RG6078」は、導入元のロシュが実施した海外臨床試験の結果に鑑み、固形がんを対象とする開発を中止しました。

(ⅱ)骨・関節領域

  • ヒアルロン酸ナトリウム製剤「スベニール」は、変形性膝関節症/肩関節周囲炎を予定適応症として、7月に中国にて第III相臨床試験を開始しました。

(ⅲ)腎領域

  • 「EOS789」は、高リン血症を予定適応症として、2月に海外にて第I相臨床試験を開始しました。

(ⅳ)自己免疫疾患領域

  • 「アクテムラ」は、巨細胞性動脈炎を適応症として、米国において5月に、欧州において9月に承認を取得しました。また、既存治療で効果不十分な高安動脈炎と巨細胞性動脈炎を適応症として、8月に国内で承認を取得しました。
  • BTK阻害剤「RG7845」は、関節リウマチを予定適応症として6月に第I相臨床試験を開始しました。

(ⅴ)神経疾患領域

  • 抗アミロイドベータヒト化モノクローナル抗体「RG7412」は、アルツハイマー病を予定適応症として、3月に第III相国際共同治験を開始しました。
  • 抗ミオスタチンadnectin「RG6206」は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを予定適応症として、11月に第II/III相国際共同治験を開始しました。
  • SMN2スプライシング修飾剤「RG7916」は、脊髄性筋萎縮症を予定適応症として、3月に第I相臨床試験を、11月に第II相国際共同治験を、それぞれ開始しました。

(ⅵ)その他の疾患領域

  • 抗factorIXa/Xバイスペシフィック抗体「ACE910/RG6013(エミシズマブ)」は、血友病A(インヒビター保有)を予定適応症として、米国及び欧州で6月に、日本で7月に承認申請を行い、血液凝固第VIII因子に対するインヒビターを保有する成人及び小児の血友病Aに対する週1回の皮下投与による予防投与療法に対して米国で11月に承認を取得しました。
  • 抗VEGF/Ang2バイスペシフィック抗体「RG7716」は、滲出型加齢黄斑変性/糖尿病黄斑浮腫を予定適応症として、9月に第I相臨床試験を開始しました。
ご参考
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用語解説

※1 特例拡大再算定

2016年度より、従来からある市場拡大再算定の特例として新規に導入され、「年間販売額1,000億円超1,500億円以下、かつ予想販売額1.5倍以上」では最大25%、「年間販売額1,500億円超、かつ予想販売額1.3倍以上」では最大50%、それぞれ薬価を引き下げる仕組み。

※2 ロイヤルティ

知的財産のライセンス契約に基づき売上金額などに応じて生じる対価。

※3 マイルストン収入

知的財産のライセンス先企業等から支払われ、契約内容に応じて生じる一時的な収入。

※4 移転価格税制

海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、海外の関連企業との取引が、通常の取引価格(独立企業間価格)で行われたものとみなして所得を計算し、課税する制度。

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