事業の経過及びその成果

事業活動の概況

 当事業年度における医薬品業界は、各国の財政悪化に伴う医療費抑制策やジェネリック医薬品の処方拡大、さらに国内において薬価制度の抜本改革といった薬剤費抑制の流れが加速するなど、引き続き厳しい環境下に推移いたしました。ライフサイエンス技術やICTの飛躍的進展によるイノベーション創出機会の高まりや競争激化など、医薬品業界において、さらなる環境変化も予想されております。

 当社グループは、ロシュとの戦略的アライアンスを活用した競争優位性の発揮を通じて、グローバルに飛躍し続ける企業への変革に向け、2016年1月よりスタートした中期経営計画「IBI 18」では、「グローバルトップクラスの競争力獲得・発揮」と「成長加速への選択と集中」の2つを重点テーマとし、トップ製薬企業像の実現とさらなる飛躍を目指して取り組んでまいりました。

 このような状況のもと、「IBI 18」の最終年度を迎えた当事業年度は、当社創製品の血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤「ヘムライブラ」、ロシュからの導入品である抗悪性腫瘍剤/改変型抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク」など今後の成長ドライバーとなる製品の発売に加え、より高度ながん個別化医療の実現を目指した遺伝子変異解析プログラム 「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」※7の承認取得、「ヘムライブラ」に続く自社グローバル成長ドライバー候補である「SA237(サトラリズマブ)」の開発進展及び米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)による「画期的治療薬(Breakthrough Therapy)」の指定、革新的新薬の高速開発・供給体制強化に向け建設を進めていた浮間工場のバイオ原薬初期生産プラント「UK3」の竣工など、多くの成果を挙げることができました。

 当事業年度の売上収益は5,798億円、営業利益は1,303億円、当期利益は973億円(いずれもCoreベース)となりました。

ご参考 Core実績の採用について

当社事業の核(コア)である医薬品事業から発生する経常的な収益性を管理するための指標として、2013年からCore実績を採用しております。Core実績とは、IFRS実績から当社が非経常的と捉える事象等に係る損益等を除いたものです。当社では、経常的な収益性の推移を社内外一貫してCore実績で説明すると共に、株主還元をはじめとする成果配分を行う際の指標としてもこれを使用しております。

売上の状況

国内製商品売上高(「タミフル」除く)

 抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」を除く国内製商品売上高は、4月の薬価改定の影響を受け、一部の抗悪性腫瘍剤の売上が減少したものの、がん領域における新製品や主力品、骨・関節領域における主力品の堅調な推移により、3,892億円(前事業年度比0.2%増)となりました。

 がん領域の売上は、2,257億円(同0.1%減)となりました。これは、4月に発売した「テセントリク」の売上が91億円となったことに加え、主力品である抗悪性腫瘍剤/ALK阻害剤「アレセンサ」が好調に推移したものの、4月の薬価改定の影響等を受けて、抗悪性腫瘍剤/抗HER2ヒト化モノクローナル抗体「ハーセプチン」と、抗悪性腫瘍剤/抗CD20モノクローナル抗体「リツキサン」の売上が減少したことによります。

 骨・関節領域の売上は、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体「アクテムラ」、経口骨粗鬆症治療剤「エディロール」といった主力品の堅調な推移により、1,005億円(同7.7%増)となりました。

 腎領域の売上は、4月の薬価改定の影響等を受け、二次性副甲状腺機能亢進症治療剤「オキサロール」や持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ」等の売上が減少したことにより、363億円(同7.6%減)となりました。

 その他領域の売上は、5月に発売した「ヘムライブラ」の売上が順調な市場浸透により30億円となったものの、太陽ファルマ株式会社へ譲渡した長期収載品※8の減少等により、268億円(同10.4%減)となりました。

「タミフル」について

 「タミフル」については、通常シーズン向けの売上は101億円(同15.1%減)、行政備蓄等の売上は5億円(同90.0%減)でした。

海外製商品売上高

 海外製商品売上高は、「アクテムラ」、「アレセンサ」のロシュ向け輸出の増加により、1,279億円(同36.1%増)となりました。

損益の状況

連結損益の概要(IFRSベース)

 当事業年度の売上収益は5,798億円(同8.5%増)、営業利益は1,243億円(同25.7%増)、当期利益は931億円(同26.7%増)となりました。これらには当社が管理する経常的業績(Coreベース)では除外している無形資産の償却費12億円、無形資産の減損損失48億円が含まれています。

連結損益の概要(Coreベース)


 当事業年度の売上収益は、製商品売上高、ロイヤルティ※9及びその他の営業収入がいずれも伸長し、5,798億円(同8.5%増)となりました。

 売上収益のうち、「タミフル」を除く製商品売上高は、国内のがん領域における新製品や主力品、骨・関節領域における主力品の堅調な推移に加え、「アクテムラ」、「アレセンサ」のロシュ向け輸出の増加により、5,172億円(同7.2%増)となりました。ロイヤルティ及びその他の営業収入は、第1四半期に計上した太陽ファルマ株式会社への長期収載品の譲渡やイーライリリー・アンド・カンパニーへの開発品の導出に伴う一時的な収入等により、519億円(同48.7%増)となりました。

 製品別売上構成比の変化等により、製商品原価率は49.6%と前事業年度比で1.1%ポイント改善し、売上総利益は3,179億円(同13.0%増)となりました。

 経費については、1,876億円(同5.3%増)となりました。販売費は新製品を中心とした販促活動の増加等により737億円(同1.2%増)、研究開発費は開発テーマの進展等により942億円(同6.0%増)、一般管理費等は法務費用及び法人事業税を含む諸経費の増加により197億円(同20.9%増)となりました。この結果、Core営業利益は1,303億円(同26.3%増)、Core当期利益は973億円(同26.9%増)、Core EPSは176.42円(同27.2%増)となりました。

研究開発活動の状況

 当社グループは、医療用医薬品に関して国内外にわたる積極的な研究開発活動を展開しており、国際的に通用する革新的な医薬品の創製に取り組んでおります。国内では、御殿場[静岡県]、鎌倉[神奈川県]に研究拠点を配置し、連携して創薬の研究を行う一方、浮間[東京都]では工業化技術の研究を行っております。また、海外では、中外ファーマ・ユー・エス・エー・インコーポレーテッド[アメリカ]、中外ファーマ・ヨーロッパ・リミテッド[イギリス]、日健中外科技(北京)有限公司[中国]、台湾中外製薬股份有限公司[台湾]が医薬品の開発・申請業務を、中外ファーマボディ・リサーチ・ピーティーイー・リミテッド[シンガポール]、共同支配事業であるC&Cリサーチ・ラボラトリーズ[韓国]が医薬品の研究開発を行っています。

ご参考 新薬ができるまで

薬の候補化合物の発見から医薬品として発売するまでに9年から17年近くの年月がかかります。

臨床開発活動につきましては、下記の進展がありました。

(ⅰ) がん領域
・糖鎖改変型タイプⅡ抗CD20モノクローナル抗体「ガザイバ」は、CD20陽性の濾胞性リンパ腫を適応症として7月に承認を取得し、8月に発売しました。
・HER2二量体化阻害ヒト化モノクローナル抗体「パージェタ」は、HER2陽性の乳がんにおける術前・術後薬物療法を適応症として、10月に承認を取得しました。
・「テセントリク」は、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんを適応症として1月に承認を取得し、4月に発売しました。3月には、化学療法未治療の扁平上皮がんを除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して承認申請を行い、12月に承認を取得しました。小細胞肺がん及び乳がんを予定適応症として12月に承認申請を行いました。肝細胞がんを予定適応症として4月に、頭頸部がん(維持療法)を予定適応症として6月に、早期乳がんを予定適応症として8月に、それぞれ第Ⅲ相国際共同治験を開始しました。
・抗VEGF(血管内皮増殖因子)ヒト化モノクローナル抗体「アバスチン」は、肝細胞がんを予定適応症として4月に第Ⅲ相国際共同治験を開始しました。
・AKT阻害剤「RG7440」は、乳がんを予定適応症として、1月に第Ⅲ相国際共同治験を開始しました。
・抗HER2ヒト化モノクローナル抗体/HER2二量体化阻害ヒト化モノクローナル抗体「RG6264」(配合剤、皮下注)は、乳がんを予定適応症として、7月に第Ⅲ相国際共同治験を開始しました。
・「アレセンサ」は、非小細胞肺がん[アジュバント]を予定適応症として、8月に第Ⅲ相国際共同治験を開始しました。
・ROS1/TRK阻害剤「RG6268」は、7月に導入契約を締結し、非小細胞肺がん及び固形がん[NTRK 融合遺伝子陽性]を予定適応症とする国内開発を開始し、12月に固形がん[NTRK 融合遺伝子陽性]を予定適応症として承認申請を行いました。
・抗CEA/CD3バイスペシフィック抗体「RG7802」は、固形がんを予定適応症として、1月に第Ⅰ相臨床試験を開始しました。
・抗CD20/CD3バイスペシフィック抗体「RG7828」は、血液がんを予定適応症として、3月に第Ⅰ相臨床試験を開始しました。
・PI3K阻害剤「RG7604」は、導入元のロシュが実施した海外臨床試験の結果に鑑み、固形がんを対象とする開発を中止しました。

(ⅱ) 骨・関節領域
・「エディロール」は、骨粗鬆症を予定適応症として、2月に中国で承認申請を行いました。

(ⅲ) 神経疾患領域
・抗α-シヌクレインモノクローナル抗体「RG7935」は、パーキンソン病を予定適応症として、2月に第Ⅰ相臨床試験を開始しました。
・「GYM329/ RG6237」は、神経筋疾患を予定適応症として、10月に第Ⅰ相臨床試験を開始しました。

(ⅳ) その他の疾患領域
・「ヘムライブラ」は、血液凝固第Ⅷ因子に対するインヒビターを保有する成人及び小児の血友病Aに対する週1回の皮下投与による予防投与療法に対して、2月に欧州で、3月に国内で承認を取得し、5月に国内で発売しました。また、血液凝固第Ⅷ因子に対するインヒビター非保有の成人あるいは小児の血友病Aに対する週1回、2週に1回または4週に1回の皮下投与による予防療法の効能・効果、及び血液凝固第Ⅷ因子に対するインヒビター保有の成人あるいは小児の血友病Aに対する2週または4週に1回の用法用量の追加について、4月に国内、米国及び欧州で承認申請を行い、10月に米国で、12月に国内で承認を取得しました。
・抗VEGF/Ang2バイスペシフィック抗体「RG7716」は、糖尿病黄斑浮腫を予定適応症として、9月に第Ⅲ相国際共同治験を開始しました。
・「AMY109」は、子宮内膜症を予定適応症として、2月に第Ⅰ相臨床試験を開始しました。
・抗IL-13ヒト化モノクローナル抗体「RG3637」は、第Ⅱ相国際共同治験「RIFF試験」の結果に鑑み、特発性肺線維症を対象とする開発を中止しました。
・URAT1阻害剤「URC102」は、開発ポートフォリオの優先度を考慮し、痛風を対象とする開発を中止しました。

 用語解説 
※7 「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」 腫瘍組織を用いて固形がんの324のがん関連遺伝子の変異状況を1回で測定可能な検査
※8 長期収載品 特許切れにより同じ効能・効果を有する後発医薬品が発売されている薬
※9 ロイヤルティ 知的財産権等の利用に対する対価

2019/03/28 12:00:00 +0900
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