当社グループの現況に関する事項

事業の経過及び成果並びに対処すべき課題

【全般の概況】
 当期の世界経済は、中国において景気の減速傾向が見られたものの、米国では景気が底堅く推移したことに加え、新興国経済も総じて安定基調を維持したことから、全体としては緩やかな成長が継続しました。日本経済は、雇用環境が引き続き好調に推移したほか、設備投資も増加し、緩やかな回復が継続しました。
 国内鉄鋼需要については、自動車向け等で堅調に推移し、海外鉄鋼需要については、全体として増加基調となりました。国内市況については、底堅い需要を背景に、概ね高い水準を維持した一方、海外市況については、第3四半期において一時的に下落したものの、全体としては堅調に推移しました。
 このような環境のなか、当社グループは、2018年3月に策定した2020年中期経営計画において、社会・産業の変化に対応した素材とソリューションの提供、グローバル事業展開の強化・拡大、国内マザーミルの「つくる力」の継続強化、鉄鋼製造プロセスへの高度ITの実装、持続可能な社会の実現への貢献(SDGs)の5つを取り組むべき中長期の課題と捉え、諸施策の推進に努めてまいりました。


【事業分野別の概況】
 当社グループと致しましては、各事業分野において各社がそれぞれの環境変化に対応しながら、最大限の経営努力を重ねてまいりました。
 なお、2018年10月、新日鉄住金化学㈱と新日鉄住金マテリアルズ㈱が統合し日鉄ケミカル&マテリアル㈱が発足したことにより、化学事業と新素材事業を統合し、ケミカル&マテリアル事業と致しました。

製鉄事業

 製鉄事業については、安全最優先のもとで、「つくる力」と「売る力」を再構築し、収益基盤の立直しを図ってまいりました。

 国内においては、和歌山製鐵所で高炉の新鋭化や、八幡製鐵所で連続鋳造設備の新設等を行うなど最適生産体制の構築に継続的に取り組むとともに、室蘭製鐵所の上工程を担う北海製鉄㈱の高炉改修や名古屋製鐵所のコークス炉改修を決定するなど、新鋭設備の導入や既存設備のリフレッシュを行い、設備の健全性の維持・強化に継続的に取り組んでまいりました。また、就労人口が減少するなかで確実な人材確保と世代交代を進めるべく、多様な人材の採用の強化と長期的な視点に立った技能伝承、人材育成施策、人口減少による人手不足に対応すべく省力化(IT活用、自動化)の推進、生産の安定化、生産性向上等に取り組んでまいりました。

 海外においては、需要が確実に伸びる市場、あるいは当社の技術力・商品力が活きる分野に経営資源を重点投入し、相手国の自国産化に貢献しつつ、当社海外事業の収益力拡大を図ってまいりました。当期においては、成長するアジア市場において一貫製造拠点を確保するため、インドの高炉一貫鉄鋼メーカーであるエッサールスチール社をアルセロールミッタル社と共同で買収し経営するための手続きを進めております。買収完了後は、当社とアルセロールミッタル社は、インドに鉄源一貫製鉄所を持つ鉄鋼メーカーとして、拡大するインドの鉄鋼需要を中長期的に取り込むことが可能となります。

 また、グループ事業体制の強化についても継続して取り組んでまいりました。本年1月に日新製鋼㈱を完全子会社化し、当社グループのステンレス事業について、同年4月にステンレス鋼板事業や溶接ステンレス鋼管事業の再編・統合を行い、各事業のさらなる競争力強化を図ることと致しました。特殊鋼事業については、本年3月に山陽特殊製鋼㈱を子会社化すると同時に当社が昨年6月に完全子会社化したスウェーデンの特殊鋼メーカーであるオバコ社を山陽特殊製鋼㈱の完全子会社とすることで、軸受鋼をコアとする特殊鋼製品の技術力・コスト競争力を一層高めてまいります。

 さらに、多様化・高度化する社会・産業の変化に対応した素材開発及び利用加工技術等のソリューションの提供を拡大してまいりました。先進的な素材開発はもとより部品構造や加工技術の組合せにより車体軽量化・衝突安全性向上等を実現する次世代自動車構造コンセプト「NSafe®-AutoConcept」や、出雲大社の二の鳥居(勢溜大鳥居)にも採用された普通鋼の4倍から8倍もの耐候性を持つ素材「COR-TEN®」、大手コンビニエンスストアのロードサイド店舗への採用が拡大している大幅な鋼材重量の削減を実現する溶接軽量H形鋼「SMartBEAM®」等、様々な分野で鉄の新たな可能性を提案してまいりました。

 世界をリードする技術開発の推進(技術先進性の発揮)の面では、生産工学等における顕著な業績を表彰する大河内賞(第65回)において、「環境負荷低減型超ハイテン橋梁ケーブル用ワイヤ向け線材の開発」で「大河内記念生産賞」を受賞しました。また、科学技術の進歩、産業の発展に貢献した技術開発者を表彰する伝統と権威ある市村賞(第51回)において、「高延性厚鋼板の開発による船舶衝突安全性の向上」で「市村産業賞貢献賞」、「水素社会の実現を加速する高圧水素用高強度ステンレス鋼の開発」で「市村地球環境産業賞貢献賞」のダブル受賞を達成しました。

 環境面における取組みにおいては、省エネ・CO2削減、循環型社会の形成に貢献してまいりました。当社が2000年から取り組んでいるコークス炉化学原料化法によるプラスチックリサイクルが当期において累計リサイクル量300万トンを達成しました。これによる環境負荷削減効果は、CO2削減量としては約960万トン、埋め立て処分地の回避としては約1,200万㎥相当となります。

 これらに加えて、コスト改善の観点から原燃料費の低減や製造歩留の向上等にも引き続き取り組むとともに、鋼材価格については、原材料価格の高騰等を踏まえて、需要家の皆様に御理解いただけるよう丁寧な対応に努めてまいりました。製鉄事業として、売上収益は5兆4,545億円、事業利益は2,746億円となりました。


エンジニアリング事業


 新日鉄住金エンジニアリング㈱(2019年4月1日付で日鉄エンジニアリング㈱に商号変更)については、製鉄・環境・エネルギー関連のプラント分野における建設・施設運営から、大型鋼構造建造物・超高層建築物・パイプライン建設等の多様な領域で、総合エンジニアリング技術をグローバルに提供しております。当期は、国内エネルギー関連の受注が堅調であり、また、建築や環境分野等の国内向けも引き続き堅調であったことから、昨年度に続き高水準の受注を達成することができました。売上収益・損益については、着実な実行管理によりプロジェクトが順調に進捗したことから、エンジニアリング事業として、売上収益は3,567億円、事業利益は94億円となりました。



ケミカル&マテリアル事業


 2018年10月に統合発足した日鉄ケミカル&マテリアル㈱については、コールケミカル事業の主力商品であるニードルコークスについて、引き続き黒鉛電極向け需要が好調に推移し、国内外の市況も高水準を維持しました。化学品事業では、原油価格の下落や需給の弱含みから、スチレンモノマーの価格が一時下落しましたが、現在は回復基調にあります。機能材料分野では、スマートフォン向け材料や半導体関連材料の販売において一部陰りが見えたものの、液晶ディスプレイ用レジスト材料、有機EL材料、金属箔は安定して売上を確保しました。複合材料分野では、補修・補強用途を中心に、土木・建築分野向け炭素繊維複合材料の販売が伸長し、過去最高の売上収益となりました。ケミカル&マテリアル事業として、売上収益は2,470億円、事業利益は250億円となりました。



システムソリューション事業


 新日鉄住金ソリューションズ㈱(2019年4月1日付で日鉄ソリューションズ㈱に商号変更)については、幅広い業種の顧客に対し、先進的なソリューション・サービスを含めたシステムの企画、構築、運用・保守を一貫して提供しております。当期は、顧客の業務高度化ニーズ等による旺盛なシステム投資等を背景に、好調な事業環境が継続しました。そのなかで、IoTを活用した工場等の作業現場における「安全見守り」ソリューションの展開や、AIを活用したデータ分析プラットフォームの展開等を積極的に推進するとともに、当社及びグループ会社の商号変更や事業再編に伴うシステム対応を進めてまいりました。システムソリューション事業として、売上収益は2,675億円、事業利益は265億円となりました。



【売上・損益】
 当社グループは、グローバル展開の一層の推進による企業価値の向上と資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上を目的に、当期末(2019年3月期)から国際会計基準(IFRS)に従って連結計算書類(連結業績)を作成しております。
 当期の連結業績については、豪雨・台風等の自然災害、主原料価格の上昇や市況原料・資材費・物流費の高騰等のコストアップ、当社及びグループ会社の在庫評価差影響等が大きかったものの、全社を挙げた設備・操業安定化対策の推進やコスト改善の着実な実行に加え、2018年度上期における海外市況の上昇等を中心とした鋼材価格の改善や製鉄以外の事業部門の収益改善等により、売上収益は6兆1,779億円、事業利益は3,369億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,511億円となりました。
 当期の各事業部門の売上収益及び事業利益は、以下のとおりです。


 また、当期の単独業績については、売上高は3兆5,622億円、営業利益は251億円、経常利益は1,123億円、当期純利益は1,453億円となりました。


【資産、負債及び資本】
 当期末の連結総資産は、山陽特殊製鋼㈱・オバコ社の子会社化等による営業債権及びその他の債権の増加(1,362億円)、棚卸資産の増加(1,672億円)、有形固定資産の増加(1,228億円)に対し、投資有価証券の公正価値の減少や売却を主因とした非流動資産のその他の金融資産の減少(1,949億円)等により、前期末(7兆7,561億円)から2,933億円増加し8兆495億円となりました。
 負債については、有利子負債が2兆3,692億円と前期末(2兆1,577億円)から2,114億円増加したこと等があり、前期末(4兆2,312億円)から2,109億円増加し4兆4,421億円となりました。
 資本については、親会社の所有者に帰属する当期利益2,511億円による増加、配当金の支払いによる減少(707億円)、株式交換等による自己株式の処分等による増加(733億円)に加え、その他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産の公正価値の減少(866億円)、在外営業活動体の換算差額の減少(605億円)等により、前期末(3兆5,248億円)から824億円増加し3兆6,073億円となりました。なお、当期末の親会社の所有者に帰属する持分は3兆2,307億円となり、親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(D/Eレシオ)は0.73倍となりました。


【剰余金の配当】
 当社は、業績に応じた利益の配分を基本として、企業価値向上に向けた投資等に必要な資金所要、先行きの業績見通し、連結及び単独の財務体質等を勘案しつつ、第2四半期末及び期末の剰余金の配当を実施する方針と致しております。
 「業績に応じた利益の配分」の指標としては、連結配当性向年間30%程度を目安と致します。
 なお、第2四半期末の剰余金の配当は、中間期業績及び年度業績見通しを踏まえて判断することとしております。
 剰余金の配当については、上記方針に従い、第2四半期末の配当として、1株につき40円の配当を実施致しました。期末の配当についても、同方針に従い、第3四半期決算発表時(2019年2月6日)に公表致しましたとおり、1株につき40円(年間配当金としては、1株につき80円、連結配当性向28.4%)とさせていただきたく存じます。


【今後の経営課題】
(次期の見通し)

 世界経済は、中国政府が各種政策による景気の下支えに注力していることに加え、米国では引き続き景気が底堅く推移すると想定されること等により、総じて緩やかな成長を維持するものと期待されます。日本経済は、雇用環境の改善が継続し、回復基調が続くと見込まれます。
 国内の鉄鋼需要及び市況については、引き続き堅調に推移すると見込まれます。海外の鉄鋼需要及び市況については、足下では市況が堅調に推移しているものの、中国政府の景気対策の成否や米中通商問題の動向等による景気の下振れリスクがあることから、今後の動きを引き続き注視していく必要があります。
 2019年度の業績見通しについては、再生産可能な適正価格の実現に向けた継続的な取組みに加え、主原料価格の上昇や市況原料・資材費・物流費等のコストアップ影響も踏まえた鋼材価格の改善について、需要家の皆様と交渉中であること等から、現時点では当社として合理的な算定・予想を行うことができません。
 従いまして、業績予想については未定とし、合理的な算定が可能となった時点で速やかに開示致します。

 当社グループは、2020年中期経営計画の実行を通じ、国内マザーミルの「つくる力を鍛え」続けるとともに、ITの急速な進歩、自動車の車体軽量化・高強度化ニーズの高まりやEV等の新エネルギー車の普及等、社会や産業の大きな変化の「メガトレンドを捉え」、当社の強みである技術力、コスト競争力、グローバル対応力をさらに磨いて「鉄を極める」ことで、総合力世界No.1の鉄鋼メーカーに向けて進化を続けてまいります。
 2018年度の連結業績は一定の水準を確保できたものの、当社単独の業績はこの数年間低水準が継続しており、収益基盤の立直しとその強化が必須と認識しております。高度経済成長期に開業した製鉄所の多くが操業開始から半世紀を迎え、従業員の世代交代も進展しているなか、当社は「第2の創業期」とも言うべき大きな構造改革を乗り越え、事業として再生産可能な収益基盤の再構築を図っていく所存です。
 具体的には、「つくる力」の再構築と「売る力」の強化を柱に、中期経営計画で掲げた諸施策を着実に実行することに加え、資産圧縮対策の積増しや設備投資の一層の効率化を通じて同計画を補強し、収益基盤のさらなる強化に向けた抜本的対策を推進してまいります。

 なお、昨年の定時株主総会において株主の皆様に御承認をいただきましたとおり、本年4月、当社は商号を「日本製鉄株式会社(英文:NIPPON STEEL CORPORATION)」に変更致しました。日本を発祥とするグローバルな鉄鋼メーカーとして、多様なDNAを受け入れつつ未来に向かい、世界で成長を続けてまいります。

 株主の皆様におかれましては、なにとぞ、以上の諸事情を御賢察のうえ、今後ともよろしく御支援を賜りますようお願い申しあげます。


(御参考)2020年中期経営計画の進捗

 当社グループは、「2020年中期経営計画」において、「社会・産業の変化に対応した素材とソリューションの提供」、「グローバル事業展開の強化・拡大」、「国内マザーミルの『つくる力』の継続強化」、「鉄鋼製造プロセスへの高度ITの実装」及び「持続可能な社会の実現への貢献(SDGs)」を当社が取り組むべき課題と捉え、諸施策を推進してまいりました。


1.社会・産業の変化に対応した素材とソリューションの提供


2.グローバル事業展開・国内の事業再編


3.国内マザーミルの「つくる力」の継続強化


4.鉄鋼製造プロセスへの高度ITの実装


5.持続可能な社会の実現への貢献(SDGs)


6.収益・財務体質目標、株主還元の進捗状況

※ 2018年度~2020年度の3カ年累計

事業報告の詳細は全文PDFを御覧ください。

2019/06/25 12:00:00 +0900
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