全般の状況

経営を取り巻く経済環境

 当年度の世界経済は、深刻化する貿易摩擦や地政学的緊張の⾼まりによって先行きの不透明感が増す中で、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う各国政府によるロックダウン(都市封鎖)や活動自粛要請などにより、年度末に向けて海外を中心に急激に経済環境が悪化しました。加えて、主要通貨の平均為替レートは、対米ドルが108.80円(前年度に比べ2.15円の円⾼)、対ユーロが120.90円(同7.56円の円⾼)となりました。

 そのような経済情勢の中で、リコーグループの主力製品である複合機をはじめとする事務機器は、2018年度に引き続き、年度中は先進国での緩やかな需要の減少と新興国での需要拡大が進みましたが、3月に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、先進国および新興国において大きく需要が減少しました。また、第4四半期における企業活動の縮小を受けて、企業における消耗品需要も減少となりました。
 一方で、5Gなどの通信技術の進化、AI(人⼯知能)の用途拡大、IoT技術の様々な現場への浸透などICT技術の進展に伴い、人々の働き方が大きく変わりつつあるのと同時に、これら技術を基盤としてデジタルトランスフォーメーションが地域や業種を問わず推進されており、組織・プロセスやビジネスモデルそのものにも大きな変革がもたらされつつあります。そうした変化を捉えて、オフィスにおける業務やワークフローのデジタル化需要は急拡大しています。さらに、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う在宅勤務など事業継続のための企業のITインフラ投資は増加しており、これらを踏まえると、今後もデジタル化・ITインフラ増強などのITサービス需要は継続的かつ堅調な拡大が期待されます。

当年度の業績

 第19次中期経営計画(以下、19次中計)の最終年度となる当年度は、成長戦略「リコー挑戦」の2年目として、引き続き基盤事業の収益力強化と成長事業の拡大を進めるとともに、2021年度からの「リコー飛躍」に向けて成長戦略の実行、資本収益性の向上、そして、コーポレート・ガバナンス改革を推進しました。

 当年度の連結売上⾼は、前年度に比べ0.2%減少し、2兆85億円となりました()。第3四半期までは堅調に推移していたものの、第4四半期の新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、減収となりました。なお、物流子会社の株式譲渡および株式譲渡に伴う連結子会社から持分法適用会社への移行、加えて前年度に連結範囲から除外したRicoh India Limited(以下、リコーインド)に関連する業績影響ならびに為替影響を除いた売上⾼は、前年度比(以下、実質前年度比)2.5%の増加となります。
 連結売上⾼を分野別にみると、オフィスサービス分野および産業印刷分野で増加したものの、オフィスプリンティング分野、商用印刷分野、サーマル分野などで減収となりました。オフィスプリンティング分野では、A3カラー複合機を中心に拡販を進めシェアを伸ばし、全世界シェア首位を維持できたものの、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響による製品販売および関連消耗品などの売上⾼が減収したことに加えて、戦略的な採算重視販売による商談の絞り込み・契約見直しの継続によるMIF(市場稼働台数)減少などの影響により減収となりました。商用印刷分野は、カラー連帳機の大幅な拡大をはじめ、カラー機を中心とする新製品の拡販が年度を通して堅調に推移した一方で、需要が減少している基幹系印刷用モノクロ機の消耗品の減少により減収となりました。
 一方、オフィスサービス分野は、特に中小企業のお客様が抱える業種・業務特有の課題の解決や、業務プロセスの効率化を支援するIT機器、ソフトウエア、サービスが一体となったパッケージ型ソリューション販売が国内を中心に大きく伸長しました。また、海外でも、特に欧州においては重点国を定め、ITサービスの販売・サービス基盤を構築する事業の強化や、買収なども含めた体制の構築を進めた結果、オフィスサービス分野の売上⾼を大きく拡大することができました()。
 地域別では、国内は企業の働き方改革推進に伴うIT機器需要拡大や業種業務ソリューション・サービスなどの売上が拡大するなど、オフィスサービス分野を中心に引き続き堅調に推移し、国内売上⾼全体で前年度に比べ8.3%の増加となりました。
 米州においては産業印刷分野が成長したものの、オフィスプリンティング分野において、カラー複合機を中心とした製品販売が堅調に推移した一方で消耗品が減少となったことに加えて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、前年度に比べ5.9%の減少となりました。欧州・中東・アフリカにおいては成長領域の一つとして掲げるデジタルビジネスの拡大に向けて、ドキュウェア社(DocuWare GmbH)を始め、ITサービス販売を展開する5社の買収を実施したオフィスサービス分野が成長したものの、オフィスプリンティング分野において、A4複合機販売拡大に伴う製品ミックス変化による減少や消耗品の減少に加えて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、前年度に比べて4.9%の減少となりました。なお、為替影響を除くと1.0%の増加となります。その他地域は、産業印刷分野が成長したものの、オフィスプリンティング分野が減少し、前年度に比べ8.6%の減少となります()。
 以上の結果、海外売上⾼全体では前年度に比べ5.9%の減少となりました。

 売上総利益は、前年度に比べ5.9%減少し7,215億円となりました。事業別にはオフィスサービス分野の拡大による利益増加はあったものの、オフィスプリンティング分野において、採算性を重視した販売による商談の絞り込み継続によるMIFの減少に加え、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の影響による製品販売の減少、およびロックダウンや活動自粛要請などによりお客様の事業活動が制限された結果、収益性の⾼い関連消耗品などの売上減少の影響などを受けました。また、その他分野において、物流子会社の持分法適用会社への移行および連結除外に伴う影響などにより、前年度比減益となりました。

 販売費および一般管理費は、構造改革効果の創出、業務プロセス改革による経費支出の抑制を継続して進めた結果、前年度に比べ6.3%減少し6,584億円となりました。また、当年度は、構造改革費用として106億円を計上しました。構造改革効果としては、施策を前倒して進めたことなどにより、期初見通しを上回る181億円を創出しました。

 以上の結果、営業利益は前年度に比べ9.0%減少し790億円となりました。前年度の子会社株式売却益と為替の影響を除く実質前年度比では、1.9%の増加となります。なお、新型コロナウイルス感染症拡大による営業減益影響156億円、構造改革費用、一過性収益などの特殊要因を除く営業利益は、前年度の1,051億円と比べて、当年度は1,032億円となり、為替影響や米中間の関税影響による減少を吸収しきれず、実質的な収益力(稼ぐ力)は減少しました()。

 ⾦融収益および⾦融費用は、受取利息の増加などにより、前年度に比べ為替差損益を除く⾦融収支が改善したものの、税引前利益は前年度に比べ9.6%減少し758億円となりました。なお、実質前年度比では、2.5%の増加となります。

 また、当年度は、法人所得税費用が、リコーリース株式会社(以下、リコーリース)の株式譲渡契約締結に伴い、投資に係る一時差異の解消時期が確定し、繰延税⾦負債を計上したことなどにより、前年度に比べ10.1%増加し314億円となりました。

 以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年度に比べ20.2%減少し395億円となりました。なお、上述のリコーリース株式譲渡契約締結に伴う法人所得税費用増加影響を除いた実質前年度比では、6.5%の増加となります()。

■財政状態
 資産合計は、前年度末に比べ1,425億円増加し2兆8,676億円となりました()。資産の部ではIFRS(国際会計基準)第16号「リース」適用による使用権資産の計上を開始したことに加え、当年度末には売却目的で保有する資産に含まれているその他の⾦融資産などが増加しました。
 負債合計は、前年度末に比べ1,529億円増加し1兆8,591億円となりました。負債の部では、IFRS第16号「リース」適用によりリース負債が大幅に増加したことに加え、ファイナンス事業の拡大に伴って関連子会社による負債が増加したことから、当年度末には売却目的で保有する資産に直接関連する負債に含まれている社債および借入⾦が増加しました。
 なお、2020年3月にリコーリースの普通株式の一部をみずほリース株式会社へ譲渡する株式譲渡契約を締結しました。この契約締結に基づき、リコーリース関連の資産および直接関連する負債は、株式譲渡完了までの間、売却目的で保有する資産および売却目的で保有する資産に直接関連する負債として記載しています。
 資本合計では、前年度末に比べ104億円減少し1兆85億円となりました。在外活動営業体の換算差額の減少に伴うその他の資本の構成要素が減少したものの、当期利益の増加により利益剰余⾦が増加しました。
 結果として親会社の所有者に帰属する持分は、前年度末に比べ122億円減少し9,203億円となりました()。株主資本比率は32.1%と引き続き安全な水準を維持しています()。

 リコーグループは、基盤事業の収益力強化と積極的な投資による新しい事業の成長を実現し、資本コストを上回るリターンの実現を図るとともに、持続的な企業価値の向上を目指しています。19次中計においては、株主資本の有効活用を常に意識した経営を行い、中長期的な企業価値向上につながる成長戦略への投資を見極めながら、資本効率の向上を目指してきました。
 19次中計の最終年度となる当年度はROE6.5%以上を目標として事業運営に取り組みました。基盤事業の収益力強化と新しい事業の成長、構造改革効果の前倒し創出などに取り組んできましたが、新型コロナウイルス感染症拡大による利益減少影響、およびリコーリースの株式譲渡契約締結に伴い、投資に係る一時差異の解消時期が確定し、法人所得税費用を計上したことなどにより、親会社の所有者に帰属する当期利益が減少し期初の見通しを下回ったことから、当年度のROE実績は4.3%と、目標を下回る着地となりました()。なお、リコーリース株式譲渡契約締結に伴う法人所得税費用増加影響102億円を除くROE実績では5.3%となり、前年度と同レベルを維持しています。
 なお、当社は経営計画の最重要指標として株主資本利益率(ROE)の目標値を定めており、2022年度には、ROE9.0%以上を目標にしています。

■キャッシュ・フロー
 当年度のファイナンス事業を除くフリー・キャッシュ・フローは、事業買収などの戦略的な投資を進めながらも、運転資本の改善などを行い、前年度に実施した株式売却などに伴う一過性の現⾦収入の影響を除く実質ベースで改善することができました。

 当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度に比べ現⾦収入が347億円増加し1,167億円の収入となりました。営業債権およびその他の債権や棚卸資産が前年度に比べ減少した結果、収入額が増加しました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度に比べ現⾦支出が1,186億円増加し1,645億円の支出となりました。デジタルビジネスの拡大に向けて、ドキュウェア社をはじめとして欧州でのITサービス企業の買収を実施しました。また、前年度には、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社の株式売却およびリコーロジスティクス株式会社の株式売却に伴う一過性の現⾦収入があり、投資活動全体では支出額が大幅に増加となりました。

 以上の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計となるフリー・キャッシュ・フローは、構造改革活動による事業収益力(稼ぐ力)の強化、事業見直しなどによる増加はあったものの、前年度に比べ現⾦収入が839億円減少し478億円の支出となりました(⑩)。なお、前年度の一過性の現⾦収入であるコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社の株式売却およびリコーロジスティクス株式会社の株式売却を除くと、前年度に比べ177億円の減少となります。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度に比べ現⾦収入が333億円増加し757億円の収入となりました。前年度の期末配当⾦の増加により支払配当⾦の支出額が増加した一方、ファイナンス事業の拡大に伴う関連子会社による調達が増加しました。
 以上の結果、当年度末の現⾦および現⾦同等物残⾼は、前年度末に比べ227億円増加し2,628億円となりました。

 リコーグループでは、基盤事業の収益力強化によってキャッシュを創出し、創出したキャッシュを新しい事業に対して積極的に投資することにより、事業構造の転換と中長期的な成長の実現を目指しています。当年度を最終年度とする19次中計においては、3年間合計のファイナンス事業を除くフリー・キャッシュ・フロー(FCEF)として1,000億円の創出を目指してきました。これに対し、当年度までの3年間合計の実績は、2,097億円となり、目標を大きく上回るキャッシュを創出することができました。

インド販売子会社における不適切会計の経緯と対応、その後の状況について
 リコーインドにおいて、2015年度第2四半期決算の監査をきっかけとして、不適切会計が発覚しました。その後の調査結果、および2017年4月に公表した「リコー再起動」の方針を踏まえた検討に基づき、2017年10月27日に、当社はリコーインドへの追加の財務支援を行わないことを決定しました。このような経緯のもと、リコーインドは、2018年1月29日に会社更生手続開始の申し⽴てを行い、同年5月14日付でその開始決定を受けました。そして、リコーインドが会社更生手続に入り管財人が任命されたことを受け、2018年5月に、リコーインドはリコーグループの連結の範囲から除外されました。2019年11月28日に、第三者が提出していたリコーインドの更生計画が当局に承認され、会社更生手続が完了しました。次年度には、リコーグループが保有していたリコーインドの全株式が、更生計画を提出した第三者に対して譲渡され、当社とリコーインドの資本関係が解消される予定です。なお、上記株式譲渡に伴うリコーグループ当年度および次年度連結決算への影響は軽微となっています。
 今後当社は、インド市場において代理店を通したビジネスを実施しながら、当社製品・サービスをご利用いただいているお客様に対するサービス品質の維持と、ビジネスの安定した拡大を目指します。

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2020/06/26 11:30:00 +0900
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