全般の状況

経営を取り巻く経済環境

 2020年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、多大なる影響を被りました。
 リコーグループのメイン市場であるオフィスにおいても、各国政府によるロックダウン(都市封鎖)や経済活動に対するさまざまな規制・要請により、オフィスの出社率が大幅に落ち、プリンティングの需要が大きく減少しました。また、米中貿易摩擦の長期化や各地域における地政学的リスクも先行きの不透明感が大きく、米国の港湾物流の滞留や半導体の供給不足懸念などグローバルサプライチェーンに対するリスクの増大も顕著になっています。
 なお、主要通貨の平均為替レートは、対ドルは前年度と比較して円高で推移し、対ユーロは前年度と比べて円安となりました。

 そのような経済情勢の中で、リコーグループの主力製品である複合機をはじめとする事務機器は、前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、先進国および新興国において大きく需要が減少しました。第3四半期には回復傾向が見えましたが、世界的な感染再拡大の動きも影響し、企業における消耗品需要も減少となりました。
 一方で、リモートワークをはじめとする新たな働き方は、オフィス・教育をはじめとするさまざまな現場で受け入れられ、既にニューノーマルとなりつつあります。こうした大きな変化を捉え、リコーはオフィス・教育・医療などの現場で需要が急拡大しているデジタルトランスフォーメーションの実現をお手伝いすることで、変わりゆくお客様の“はたらく”に変わらず寄り添い続けます。

当年度の業績

 リコーグループは、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の中でスタートした当年度を「危機対応」と「変革加速」の1年と位置づけ、①業績変動に備えた手元流動性の確保、②財務安定性の向上、そして③アフターコロナを見据えた変革加速を進めてきました。

 当年度の連結売上高は、前年度に比べ16.3%減少し、16,820億円となりました()。オフィスプリンティング分野では、ロックダウンや行動自粛により販売活動が制約された影響でハードウエアの売上高が減少したことに加え、欧米を中心に顧客のオフィス出社率が低下したことにより、ノンハードの売上も減少しました。これらの影響は4月~5月を底に6月以降は、新型コロナウイルス感染症の状況により多少変動があるものの緩やかに回復しています。さらにリコーリース株式会社(以下、リコーリース)の株式譲渡に伴う連結子会社から持分法適用会社への移行による売上高の減少もあり、前年度に比べ大幅な減収となりました。
 地域別では、日本は企業のリモートワーク推進などに伴う業務のデジタル化需要は増加したものの、前年度のIT機器需要が一巡したことに加え、活動自粛による販売機会の減少などによるハードウエアの売上高減少、およびオフィスでのプリント需要の低下によるノンハードの売上高減少を受け、国内売上高全体で前年度に比べ13.7%の減少となりました。
 米州においてはロックダウンや行動規制に伴う販売・納品活動の停滞、お客様のオフィスクローズによるドキュメントボリュームの低下などにより、オフィスプリンティング分野および商用印刷分野を中心に売上高が減少し、前年度に比べ27.6%の減少となりました。
 欧州・中東・アフリカにおいては前年度からの買収なども含めた販売・サービス体制の強化によりITサービスなどの売上が拡大しオフィスサービス分野が成長したものの、オフィスプリンティング分野では米州と同様に売上高が減少し、前年度に比べ9.9%の減少となりました。
 その他地域は、主にオフィスプリンティング分野の減収により、前年度に比べ10.0%の減少となりました。その中で、産業印刷分野は前年比増収となるなど、中国市場を中心にコロナ禍からの回復が進展しました。以上の結果、海外売上高全体では前年度に比べ18.2%の減少となりました()。

 売上総利益は、前年度に比べ20.7%減少し5,723億円となりました。オフィスプリンティング分野において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた販売台数減少、消耗品などノンハードの売上減少などの影響を受けました。また、その他分野では、リコーリースの株式譲渡に伴う連結子会社から持分法適用会社への移行による影響などもあり、前年度比減益となりました。

  

 販売費および一般管理費は、商用印刷分野などにおいて有形固定資産および無形資産などの減損損失248億円の計上があったものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を踏まえて、経費削減の緊急対策を実施したことや、売上に連動して発生する経費が減少した結果、前年度に比べ5.9%減少し6,197億円となりました。また、のれんの減損は、商用印刷分野などにおけるのれんの減損損失37億円となります。
 なお、「危機対応」と「変革加速」の施策として、ワークスタイル変革に伴う経費施策や開発テーマの見直し、本社業務プロセスのデジタル化、地域特性にあわせたサービス事業の展開や新たな働き方に対応する製品・サービスの投入などを進め、その効果として991億円*を創出することができました。
 以上の結果、営業損益は、「危機対応」と「変革加速」の施策による利益創出が予定以上に進んだものの、新型コロナウイルス感染症による事業影響を大きく受け、前年度に比べて1,244億円減少し、454億円の損失となりました。また、体質強化関連費用、生産再編費用、減損損失や政府支援金などの特殊要因を除く実質的な営業損益は、当年度は108億円の損失となります。この実質的な営業損益は、上期が315億円の営業損失であったことに対して、下期は、新型コロナウイルス感染症による影響からの回復が進んだことに加え、体質強化やオフィスサービス分野の伸長により、207億円の営業利益と黒字へ転換しており、着実に回復しています()。

 金融収益および金融費用は、為替差益の増加などにより、前年度に比べて金融収支が改善しました。また、持分法による投資損益は、リコーリースの非連結化に伴い、前年度に比べ増加しました。
 営業外収益は増加したものの、税引前損益は410億円の損失となり、前年度に比べて1,169億円減少しました。

 法人所得税費用は税引前損益が大幅に減少したことなどにより、前年度に比べて398億円減少しました。

 以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は327億円の損失となり、前年度に比べて722億円減少しました()。

*政府支援金に伴う経費削減効果を含みます

  

■財政状態
 資産合計は、前年度末に比べ9,797億円減少し、18,878億円となりました()。リコーリースの非連結化により資産は約1兆円減少しました。
 2020年3月にリコーリースの普通株式の一部をみずほリース株式会社(以下、みずほリース)へ譲渡する株式譲渡契約を締結したことに伴い、前年度において、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産および非継続事業」に基づき、「リコーリースおよびその子会社が所有する資産および負債」を「売却目的で保有する資産および売却目的で保有する資産に直接関連する負債」に組替えています。2020年4月23日、当社が保有するリコーリース株式の一部についてみずほリースへの譲渡が完了しました。本株式譲渡によって、リコーリースに対する当社の議決権所有割合は33.7%となり、リコーリースは当社の連結子会社から持分法適用関連会社となりました。そのため、売却目的で保有する資産が減少した一方、残存保有投資の計上により、持分法で会計処理されている投資が増加しました。
 負債合計は、前年度末に比べ8,951億円減少し、9,640億円となりました。新型コロナウイルス感染症拡大による事業環境悪化リスクに備えた調達などにより社債および借入金が増加した一方、リコーリース株式の一部譲渡に伴い、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が減少しました。実質的には、リコーリース非連結化に伴い有利子負債*が約8,700億円減少したことになります。
 資本合計は、前年度末に比べ846億円減少し、9,238億円となりました。2021年3月3日開催の取締役会において決議した自己株式の取得を実施したことに加え、リコーリースが当社の連結子会社から持分法適用関連会社となったことに伴い、非支配持分が減少しました。
 親会社の所有者に帰属する持分は、前年度末に比べ1億円減少し 9,202億円となりました()。親会社所有者帰属持分比率は48.7%と、引き続き安全な水準を維持しています()。

 リコーグループは、収益力強化と積極的な投資による新しい事業の成長を実現し、資本コストを上回るリターンの実現を図るとともに、持続的な企業価値の向上を目指しています。
 当年度は、資本収益性を意識した経営を進める中で、リコーリースの非連結化により資産を圧縮し、総資産回転率の向上を図るとともに、有利子負債の削減による株主資本比率を改善しました。また、新型コロナウイルス感染症による不透明な状況の中で、事業継続を最優先し、不測の事態に備えた手元流動性の確保を行いました。その後、「危機対応」と「変革加速」の施策を進め、下期には事業の回復とオフィスサービスを中心とした事業成長の手応えを得ることができました。そして、今後の中期的な成長へ向け、2021年3月に資本政策を含む第20次中期経営計画を定め、それに基づいて、2020年3月に公表していた1,000億円の追加株主還元方針に基づく自己株式の取得を実行に移し、資本収益性を高めるための資本の最適化を進めました。

*社債および借入金を対象としています


■キャッシュ・フロー
 営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度に比べ現金収入が102億円増加し、1,269億円の収入となりました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより当期損失を計上したものの、運転資本の改善により営業債権およびその他の債権が減少したことなどに加え、リコーリース非連結化に伴いリース債権が減少したことなどにより、収入額が増加しました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度に比べ現金支出が1,010億円減少し、635億円の支出となりました。前年度は、デジタルビジネスの拡大に向けたドキュウェア社の買収実施などにより支出が増加した一方、当年度は、リコーリース株式の一部譲渡に伴う一過性の現金収入や、リコーリースが当社の連結子会社から持分法適用関連会社となったことに伴う設備投資の減少などがあり、投資活動全体では支出が大幅に減少しました。

 以上の結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計となるフリー・キャッシュ・フローは、前年度に比べ現金収入が1,112億円増加し、634億円の収入となり、リコーリースの非連結化による影響が大きく寄与しました()。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度に比べ現金収入が798億円減少し、40億円の支出となりました。前年度はファイナンス事業の拡大に伴う関連子会社による調達が増加した一方、当年度は2021年3月3日開催の取締役会において決議した自己株式の取得を実施したことなどに伴い、支出が増加しました。

 以上の結果、当年度末の現金および現金同等物残高は、前年度末に比べ666億円増加し、3,303億円となりました。

 リコーグループでは、基盤事業の収益力強化によってキャッシュを創出し、創出したキャッシュを新しい事業に対して積極的に投資することにより、事業構造の転換と中長期的な成長の実現を目指しています。第20次中期経営計画を発表し、2025年度までの5年間で累積営業キャッシュ・フロー6,000~7,000億円*の創出を目指しています。

* 第20次中期経営計画の対象は2021~2022年度ですが、将来の展望として2025年度の目標を設定しています。


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2021/06/24 11:30:00 +0900
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