対処すべき課題

変わることと変わらないこと

 新型コロナウイルス感染症は、世界を、そして人々の暮らしを大きく変えました。人々はオフィスに出社できず、働き方の変革を余儀なくされ、徐々に進展すると考えられていた「いつでもどこでもはたらく」という新しいワークスタイルへの変革が強制的に加速されることとなりました。この変化は、新型コロナウイルス感染症の拡大収束後も元に戻らず、さらに進むと想定されます。その中で、私たちが長年取り組んできたオフィスサービスが、この働き方の変革を通じて、お客様へのさらなるお役立ちにつながっています。

 このように働き方が変わっていく中で、私たちが変わらずに大切にし続けることが二つあります。

 一つは、私たちは徹底的にお客様に寄り添い続けるということです。リコーは1977年にオフィスオートメーションを提唱して以来、半世紀近くにわたりオフィスの効率化や生産性向上のお手伝いをしてきました。今後、仕事の価値が業務の効率化から人にしかできない創造力の発揮へと移っていく中で、私たちは変わらずにお客様の「はたらく」に寄り添い続け、すべてのお客様が「はたらく」を通じて歓びや幸せを感じることに役に立つ会社でありたいと考えています。

 そして、もう一つ変わらずに大切にするもの、それはリコーの原点であり創業の精神である「三愛精神」です。「人を愛し」「国を愛し」「勤めを愛す」からなる三愛精神は、SDGs*の原則である「誰一人取り残さない社会」という考え方にも通じるものがあります。リコーは、この三愛精神に基づいて設定したマテリアリティ(82~83頁参照)に取り組むことで企業価値向上を図っていきます。

*SDGs(持続可能な開発目標):Sustainable Development Goals
貧困や飢餓、健康や安全衛生、経済発展、環境課題など、17の目標と169のターゲットに全世界が取り組むことによって、「誰も取り残されない」社会を2030年までに実現することを目指す。2015年9月の国連サミットで採択。


リコーの中期展望

 当社は、2020年度を「危機対応」と「変革加速」の1年と位置づけ全社一丸となって困難に対処することとしました。これにより、第20次中期経営計画(以下、20次中計)は、2021年度から2年間の中計とするとともに、中長期的な目線を重視し、2025年までの中期展望についても方向性を示しています。

 当社は2025年には、「はたらく場をつなぎ、はたらく人の創造力を支えるデジタルサービスの会社」となることを目指しています。まず、将来財務と位置づけているESG(環境・社会・ガバナンス)の視点から、サステナビリティやESGに関してグローバルでトップレベルの評価を受ける会社であることを基本とした上で、高まる顧客や投資家のESG要求に応えるべくバリューチェーン全体を俯瞰した活動を進めます。財務の視点では現在のオフィスサービス事業が成長を続けて全社業績を牽引し、第20次中期経営計画の最終年度である2022年度にはROE9%以上を、2025年度には10%を超える水準を継続的に創出できる経営体質の実現を目指しています。

2025年 中長期目標

ありたい姿:はたらく場をつなぎ、はたらく人の創造力を支えるデジタルサービスの会社


将来財務(ESG)の視点
 ESGの取り組みは、将来の財務を生み出すために不可欠なものと位置づけ、7つのマテリアリティに紐づく将来財務目標(ESG目標)を設定した上で活動します。DX(デジタルトランスフォーメーション)や脱炭素社会の実現、人権問題への対応などのグローバルな潮流および、経営戦略の実行力向上の観点から全社目標を設定し、各カンパニーにブレークダウンして取り組んでいます。DXへの対応では、デジタルサービスの会社への変革に向けたデジタル人材の量・質の確保を図るとともに、関連特許の質の向上にも取り組みます。脱炭素社会の実現に向けては、先行して進めてきた欧州や中国以外の地域でも再生可能エネルギーの活用を加速し、ロードマップに基づく着実なGHG(温室効果ガス)削減を進めます。人権問題については、新たに定めた人権方針に基づきながら、取引先と一体になって取り組みを進めていきます。

財務の視点
 達成に向けて、①社内カンパニー制の導入、②事業ポートフォリオ管理、③経営基盤の強化、④資本政策の強化を実施していきます。

① 社内カンパニー制の導入
 2021年4月より、リコーグループは社内カンパニー制を導入しました。新しい組織は、事業ポートフォリオ管理の徹底による資本効率経営の実現と権限委譲による意思決定の迅速化を主な狙いとし、事業を運営する5つのカンパニーと、グループ本部で構成されます。
 権限を委譲された5つのカンパニー、「リコーデジタルサービス」、「リコーデジタルプロダクツ」、「リコーグラフィックコミュニケーションズ」、「リコーインダストリアルソリューションズ」、および「リコーフューチャーズ」の各プレジデントは、それぞれの事業全体の責任を負い、デジタルサービスの提供拡大に向けて、迅速な意思決定を行うことで事業の成長と資本効率経営を追求します。グループ本部は、経営戦略の立案・推進や事業ポートフォリオマネジメント(事業の新陳代謝や経営資源配分)を実施する「グローバルヘッドクォーター」、デジタルインフラの整備や先端技術の研究を行う「プラットフォーム」、各カンパニーへの支援機能を持つ「プロフェッショナルサービス」の3つの機能に特化してグループの成長を支えます。

② 事業ポートフォリオ管理
 これまでのオフィスプリンティング事業への依存から脱皮し、グローバルヘッドクォーターによる厳正な事業ポートフォリオ管理のもとで、デジタルサービスの会社への変革を加速します。各事業を、成長性とROIC(投下資本利益率)の2軸で管理し、合理的な判断・意思決定のもとに経営資源配分の最適化を図ります。

 オフィスサービス事業では、地域ごとにメリハリをつけた投資・拡大を狙います。具体的には、日本・欧州では積極的に投資を実施し戦力や製品・サービスを拡充する一方、米国では20次中計期間中は戦略投資を行わず、現在のマネージドサービス顧客の価値向上に集中します。

 オフィスプリンティング事業は、オペレーショナルエクセレンスを徹底的に追求し収益性を確保するとともに、他社への外販も積極的に進める考えです。

 商用印刷事業は、印刷のデジタル化需要の高まりを機会と捉え、新製品の投入やデジタルサービスの拡大により事業成長を狙います。

 産業印刷事業では、リコーの強みであるインクジェットヘッドの強化に投資を集中します。

 サーマル事業では、レーザー技術を駆使した新領域の製品を投入し、成長と資本効率向上を実現します。

 産業プロダクツでは、産業機械装置領域での投資を行い、成長を狙います。

2025年に向けた事業ポートフォリオ管理

成長と資本効率の2軸で事業ポートフォリオを管理し、経営資源配分を最適化する

 

 こうした取り組みの結果として、リコーグループの新しい基盤事業として、オフィスサービス事業が営業利益においては2022年度に、売上では2023年度にオフィスプリンティング事業を上回る計画で、2025年度にはオフィスサービス事業の営業利益が全体の過半となる見通しです。

オフィスサービス事業の成長加速

オフィスサービスが牽引し、デジタルサービスの会社への転換を遂げる


③ 経営基盤の強化

 当社は、デジタルサービスの会社へ転換するために、本社機能を絞り込み、企業風土、人材、インフラ、およびR&D(研究開発)といった経営基盤の強化にも取り組んでいます。

 企業風土については、2017年度より自律型人材が活躍できる風土・制度への変更を進め、その結果社員エンゲージメント(社員満足度評価)も着実に向上しつつあります。2021年度以降も、さらなる評価制度・人事制度の変革を予定しています。また、デジタルサービスの会社として、お客様接点でお役に立てる「デジタル人材」の育成を積極的に進めています。2021年4月には、国内3万人の社員のデジタル資質の可視化を行い、育成支援を開始しました。さらに、デジタルサービスの会社に転換するために、製造・開発・人事・経理系など多くの業務システムを刷新していきます。

 R&Dにおいては、「はたらく人の五感をデータ化しはたらく歓びにつなげる商品開発」と、「インクジェット技術を駆使した製造プロセスのデジタル化」の2つの先鋭的な領域に特化する方向へと舵を切りました。

④ 資本政策の強化
 当社は、ステークホルダーの期待に応えながら、企業価値・株主価値を最大化することを目指しています。株主の皆様からお預かりした資本に対して、資本コストを上回るリターンの創出を目指します。

企業価値の最大化に向けて(~2025年度)

企業価値・株主価値向上に向けた施策の確実な展開


※株主還元以外の各値は2025年度時点の目標水準

 バランスシート・マネジメントの視点では、2020年4月にリコーリースを非連結としたことで、自己資本(純資産)比率が高くなっていましたが、今後はデジタルサービスの会社への転換に向けて、リスク評価に基づいて適切な資本構成を目指し、投資の原資に借り入れを積極的に活用しながら、負債と資本をバランスよく事業に投下していきます。オフィスプリンティング事業などの安定事業には負債を積極的に活用し、リスクの比較的高い成長事業には資本を中心に配分する考えです。

 このように、事業投資によって創出した営業キャッシュ・フローを、さらなる成長に向けた投資と株主還元に対して計画的に活用していきます。デジタルサービスの会社への転換に向けて、成長投資に5,000億円程度を投じる予定としています。投資原資は、営業キャッシュ・フローに加えて有利子負債も活用しながら、メリハリを効かせて戦略的に実施します。

成長投資5,000億円の内訳

* 印刷の現場、製造・物流・産業の現場などリコーグラフィックコミュニケーションズやリコーインダストリアルソリューションズがカバーする領域

 また、株主還元方針としては、総還元性向50%を目安とし、安定的な配当と機動的な自己株式取得を行う方針です。配当については、1株あたりの配当金額を、2021年度の水準から毎年、利益拡大に沿った継続的な増配を目指します。自己株式取得は、経営環境や成長投資の状況を踏まえつつ、総還元性向の範囲で機動的に実施し、EPS*の向上を図ってまいります。

*EPS(Earnings Per Share):1株あたり利益

株主還元方針

総還元性向50%を目安とし、安定的な配当と機動的な自己株式取得を行う

 還元方針  : 総還元性向50%を目安とする
 配当    : DPS*を勘案した、安定的な配当かつ継続的な増配を目指す
 自己株式取得 : 経営環境や成長投資の状況を踏まえつつ、総還元性向の範囲で機動的に実施し、EPS向上を図る


第20次中期経営計画

 20次中計は、2025年度までの中期展望を達成するための大事な道筋となります。当社は、20次中計期間の2年間で「“はたらく”の生産性を革新するデジタルサービスの会社への変革」を実現します。経営目標としては「ROE9%以上」を掲げ、それを実現するための財務目標として営業利益1,000億円、売上高約2兆円などの指標を設定しています。

 現在、新型コロナウイルス感染症の収束が未だ世界的に見通せない中、当社は新しい社内カンパニー制度のもと、オフィスサービス事業は、地域ごとにメリハリを効かせた投資を行い、成長を実現していきます。オフィスプリンティング事業では、オペレーショナルエクセレンスの徹底追求により、オフィスのプリントが減少しても耐え得る体質への強化を進めます。加えて、グループ本部を中心とした経営基盤の強化を着実に実施することなどにより、営業利益1,000億円という高い目標の達成を目指します。

 また、財務指標と同等に重要である将来財務目標(ESG目標)についても7つのマテリアリティごとに17の目標項目・目標値を設定し達成に向けて尽力します。

第20次中期経営計画の経営目標

“はたらく”の生産性を革新する「デジタルサービスの会社」への変革


 

2021年度の見通し

 2021年度の業績見通しは、売上高1兆9,100億円、営業利益500億円、ROE4%以上とし、業績のV字回復を目指します。オフィスプリンティングおよび商用印刷の新型コロナウイルス感染症による事業影響からの回復に加えて、開発・生産、サービス体制の最適化などの体質強化をさらに進めつつ、20次中計の目標達成に向けて一気に成長に舵を切り、オフィスサービスを中心としたデジタルサービスの成長を実現してまいります。

7つのマテリアリティ~7つのマテリアリティに対するリコーグループの取り組みとESG目標


*1 トップスコア率:もっとも高い評価の選択率
*2 国内スクラムパッケージの顧客比率
*3 IPA:独立行政法人情報処理推進機構。ITSS:IPAが定めるITスキル標準。レベル0~レベル6の7段階。
*4 スマート社会インフラ: デジタル技術による社会インフラ関連事業
*5 SBT:Science Based Targets
*6 RBA:Responsible Business Alliance
*7 ISO/IEC:International Organization of Standardization/International Electrotechnical Commission
*8 NIST:National Institute of Standards and Technology
*9 評価スコア: リコーに対する各パートナーからの評価結果
*10 CDP: 気候変動など環境分野に取り組む国際NGOによる評価
*11 ETR: External Technology Relevanceの略。他社に引用された特許の多さを示すスコア
*12 RFG:Ricoh Family Group

ご参考:気候変動への対応:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示

 「気候変動」は、グローバル社会が直面している最も重要な社会課題の1つです。

 リコーグループでは、パリ協定を踏まえて、「2050年にバリューチェーン全体のGHG排出ゼロを目指す」という長期環境目標を設定しました。加えて、「2030年にGHG*1排出63%削減(2015年比)」という野心的な環境目標を定めており、この目標は気候変動の国際的なイニシアチブであるSBTイニシアチブ*2から「SBT1.5℃」水準として認定されています。

 この目標達成に向け2030年までのGHG削減ロードマップを策定、徹底的な省エネ活動を進めるとともに、再生可能エネルギーの積極的な利活用を進めています。そのため、再生可能エネルギーへの100%転換を目指す国際的なイニシアチブである「RE100」にも日本企業として初めて参加しました。

 気候変動対策は重要な経営課題の一つであることから、2020年からは経営戦略に基づいた「ESG目標」の一つに「GHG排出削減目標」を位置づけ、役員など経営幹部の報酬とも連動することで実効性のある取り組みを推進しています。

 また、CEOを議長とするESG委員会の監督のもと、気候変動に伴うリスクおよび機会を明確にした上で気候変動の緩和・適応に向けた活動に取り組んでいます。特に、激甚化傾向にある自然災害に対しては、リスクマネジメント計画・BCPの策定と実行によりリスク低減に努めています。さらに、製品のエネルギー効率向上およびビジネスパートナーや顧客との協働などを通じてバリューチェーン全体での脱炭素社会づくりに貢献していきます。

*1 GHG(Greenhouse Gas):温室効果ガス
*2 SBT(Science Based Targets)イニシアチブ :企業のGHG削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ

〈ガバナンス ―気候関連リスクおよび機会に関わる組織のガバナンス―〉



〈戦略 ―ビジネス・戦略・財務計画に対する気候関連リスクおよび機会の実際の潜在的影響―〉


シナリオ分析:https://jp.ricoh.com/environment/management/tcfd/scenario.html

〈リスク管理 ―気候関連リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス―〉


ご参考:リスクマネジメントシステムとリスクマネジメント委員会(43~46頁参照)

気候変動のリスクと対処



気候変動に対する機会
 長年、環境経営を実践してきた当社にとって気候変動は、事業リスクのみならず、自社製品・サービスの提供価値および企業価値を高める機会につながると認識しています。お客様の脱炭素化を支援する商品やソリューションの提供、新規事業創出などの機会をもたらし、現時点で既に1兆円規模のビジネスに成長しています。今後も社会やお客様の課題解決に貢献するサービス・ソリューションを提供していきます。



〈指標と目標 ―気候関連リスクおよび機会を評価・管理するために使用する指標と目標―〉


環境目標:https://jp.ricoh.com/environment/strategy/target/

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2021/06/24 11:30:00 +0900
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