当社グループが対処すべき課題

経済展望

 来期の経済環境を展望しますと、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進むにしたがい制限は緩和され、各国で程度の差はあるものの、経済活動は正常化にむかうとみられます。特に、いち早く景気回復局面に入った中国や、追加経済対策を実施する米国で力強い回復が見込まれます。一方で、財政制約や医療資源不足等によりワクチンの調達・普及が遅れる国では回復に時間を要する見込みであり、さらに変異株の発生によりパンデミックが長期化する懸念があります。
 各国政府・中銀は引き続き危機対応のための財政金融政策を維持するとみられ、米中をはじめとする世界経済の回復も相まって、一次産品価格は、緩やかながら上昇傾向が続く見込みです。
 金融環境については、経済活動が正常化にむかうなか、経済見通しやインフレ期待の上方修正により、米国を中心に長期金利が緩やかに上昇していくとみられます。ただし、長期金利の上昇が加速した場合、各国の経済活動を阻害することに加え、経済構造の脆弱な新興国から資金が流出し、世界経済の回復ペースが鈍化する懸念があります。

(1)中期経営戦略「GC2021」及び「修正GC2021」について

 当社グループは、丸紅グループの在り姿「Global crossvalue platform」を定めるとともに、経営戦略の基本方針「2030年に向けた長期的な企業価値向上を追求する」を明示した3ヵ年の中期経営戦略「GC2021」を策定し、2019年度よりスタートしております。2019年度の赤字決算により財務基盤の早急な回復が必要になったことに加え、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により経営環境が大幅に悪化したことから、当社グループの事業活動への影響が長期化することを覚悟し、世界各国のグループ社員、顧客・パートナーの安全確保を第一に、経営基盤の強化・再構築に徹底的に取り組むべく、2020年5月7日に公表した修正GC2021において、以下を基本方針としております。

<修正GC2021基本方針>
「財務基盤の再生・強化」
 ▶ 2019年度の大幅赤字決算を受け、財務基盤の再生・強化を最優先課題としてキャッシュ・フロー重視の経営を徹底
 ▶ 3ヵ年累計株主還元後フリー・キャッシュ・フローの黒字により債務返済を優先し、2021年度末のネットDEレシオ1.0倍程度へ

「事業戦略の強化」
 ▶GC2021で掲げる成長戦略の基本方針は変えない
 ▶既存事業基盤の強化と新たなビジネスモデル創出により中長期的な企業価値向上を追求する
  ● コスト削減を含む既存事業の強化・底上げを徹底し、持続的かつ強靭な事業基盤を構築する
  ● 新型コロナウイルス感染症収束後の世界経済、社会課題、成長領域、ビジネスモデルの変化を見据え、資産の入れ替え・優良化に取り組む
  ● 過去の事業投資パフォーマンスを総括し、リスクマネジメントの更なる充実・強化を図る

(2)修正GC2021の進捗について

 修正GC2021の進捗は以下の通りです。

「財務基盤の再生・強化」

 ▶ 財務基盤の再生・強化を最優先課題としてキャッシュ・フロー重視の経営を継続
 ▶ 資本配分の源泉となる基礎営業キャッシュ・フローは、2020年度も2019年度と同水準を維持
 ▶ 2020年度末のネットDEレシオは0.88倍まで低下し、2021年度末目標である1.0倍程度を前倒しで達成

(*1)

基礎営業キャッシュ・フロー: 営業キャッシュ・フローから営業資金の増減等を控除。

「事業戦略の強化」
事業環境の変化を見据えた資産の入れ替え・優良化
 ▶ 事業環境の変化を見据えた戦略的な投資・回収を推進
 ▶ コスト削減を含む既存事業の強化・底上げ(ホライゾン1・2)に加え、成長が期待できる新分野への種まき(ホライゾン3)が順調に進捗

リスクマネジメントの更なる充実・強化
 ▶ 過去の事業・投資パフォーマンスを総括・社内共有、投資規律の徹底に向けた投資制度の整備
 ▶ リスクエクスポージャー管理の強化、ROIC/RORA(*3)を用いた事業の収益性強化の推進

(*2)

ホライゾン1:既存事業の充実、ホライゾン2:既存事業領域の戦略追求、ホライゾン3:現状では取り込めていない成長領域、新たなビジネスモデル

(*3)

ROIC:投下資本利益率(Return On Invested Capital)、RORA:リスクアセット利益率(Return On Risk Assets)

「ROEの維持・向上と株主資本コストの低減により中長期的な企業価値向上を追求」
ROEの維持・向上
 ▶ 実態純利益、基礎営業キャッシュ・フローの継続的な拡大と戦略的な資本配分
 ▶ 資本効率を意識した事業戦略の強化により、強固な収益基盤を構築

株主資本コストの低減
 ▶ 財務レバレッジ(ネットDEレシオ)の適正化
 ▶ 業績ボラティリティの低減
 ▶ ガバナンス、人財の強化、気候変動対策等のサステナビリティ取り組み強化による非財務価値の向上

(3)当社グループの事業推進における個別のリスクについて

 当社グループが事業を推進するにあたり、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があると考える個別のリスクは次の通りです。

<長期性資産に係るリスクについて>
 当社グループの保有する長期性資産の中には、不動産・機械装置等の事業用資産に加えて、資源権益への投資や、企業買収時に認識するのれんを含む無形資産、当社がマジョリティを持たずに持分法で会計処理される投資(以下、持分法投資)等が含まれております。
 当社グループは、これらの長期性資産について、IFRSに準拠し、資産が減損している可能性を示す兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額の見積りを行い、回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合は、当該資産の帳簿価額をその回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しております。なお、耐用年数を確定できない無形資産及びのれんについては、減損の兆候があるか否かを問わず、最低限年1回定期的に資産の帳簿価額が回収可能価額を超過しているか否かを確認しております。
 しかしながら、経済及び業界環境の変化や、事業計画の見直し、保有方針の転換等の理由により、現時点の想定に比べて資産価値が著しく下落した場合には、減損損失や、投下資金の回収不能、撤退時の追加損失等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

石油・ガス開発事業
 当社グループが参画する石油・ガス開発事業において生産・販売する原油及び天然ガス等の商品価格は、世界及び各地域での需給の不均衡、景気変動、在庫調整、為替変動、主要産油国の政策・地政学的情勢や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等、当社グループが管理できない要因により変動する可能性があります。
 当社グループの参画する石油・ガス開発事業における長期性資産の金額は約1,400億円であり、主な内容は有形固定資産(米国メキシコ湾、英領北海等)であります。
 なお、これらの石油・ガス開発事業における埋蔵量、生産量、操業費用、生産坑井掘削及び生産設備の建設等の開発費用、探鉱費用、廃坑費用等、また、これらを前提とする事業計画は、商品価格の変動や、技術的・経済的要因の他、主導する共同事業者の方針、天候・環境、資材調達、資金調達、当局による規制等の影響により、修正となる可能性があります。

銅事業・鉄鉱石事業
 当社グループが参画する銅事業・鉄鉱石事業において、銅価格や鉄鉱石価格等の商品価格は、世界及び各地域での需給の不均衡、景気変動、為替変動、地政学的情勢や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等、当社グループが管理できない要因により変動する可能性があります。
 当社グループの参画する銅事業の長期性資産の金額は約2,300億円であり、主な内容は持分法投資(チリのミネラロスペランブレス銅鉱山、ミネラセンチネラ銅鉱山、ミネラアントコヤ銅鉱山)であります。また、鉄鉱石事業の長期性資産の金額は約1,700億円であり、主な内容は持分法投資(豪州のロイヒル鉄鉱山)であります。
 なお、これらの持分法投資は、第三者から提供されたデータや、市況状況、ファンダメンタル等を考慮の上で、当社グループとして策定した価格見通しを使用した事業計画に基づいて評価しておりますが、商品価格や生産量の変動、生産・輸送設備の維持に伴う資本的支出及び営業的支出の高騰、事業環境の変化及び電力・水等のインフラに起因するオペレーション上の問題等が生じた場合には、事業計画が修正される可能性があります。

エアキャッスル社への投資
 当社グループの持分法適用会社であるエアキャッスル社は、全世界のエアラインに対し航空機のリースを行っております。このため、航空旅客需要の悪化、燃油価格の高騰、為替変動等によりエアラインの支払能力が著しく悪化又は倒産した場合、またリース料率の低下や保有する航空機の資産価値が著しく下落した場合に、同社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 航空旅客需要を悪化させる要因としては、戦争やテロ行為、伝染病や自然災害、航空機事故等が想定されます。
また、リース先エアラインは世界各国に分散していることから、各国及び国際間の法規制の変更や、経済制裁等の地政学上のリスクの影響を受ける可能性があります。同社への投資にあたっては、これら事象による一時的な業績の悪化を考慮しながらも、中長期的な航空旅客需要の伸びに牽引されて成長を続ける前提での事業計画に基づいて評価をしておりますが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による航空旅客需要の低迷が長期化し、それに伴う競争激化や、機体価値の下落等による収益率の悪化により、当社想定よりも成長が鈍化する場合には、事業計画を修正する可能性があります。
 なお、同社向けの投資金額は約1,403億円であります。

<重要な訴訟(Sugar訴訟)について>
 当社グループの国内及び海外における営業活動が訴訟、紛争又はその他の法的手続きの対象になることがあります。対象となった場合、訴訟等には不確実性が伴い、その結果を現時点で予測することは不可能です。訴訟等が将来の当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
 当社はインドネシアの企業グループであるSugar Groupに属する企業(以下、Sugar Group)を相手にした訴訟(以下、旧訴訟)について、2011年にインドネシア最高裁判所(以下、最高裁)において当社の勝訴が確定したにもかかわらず、Sugar Groupから、旧訴訟と請求内容が同一である別途訴訟(以下、グヌンスギ訴訟及び南ジャカルタ訴訟)を提起され、グヌンスギ訴訟及び南ジャカルタ訴訟につき2017年に最高裁で当社の敗訴が一旦確定しておりますが、当社はインドネシア最高裁に対して司法審査(再審理)を申し立てました。このうち、南ジャカルタ訴訟については、当社は最高裁再審理決定の決定書を、2020年12月30日に受領しております。当該決定書には、2020年8月24日付で当社の司法審査(再審理)請求を認容し、当社が2017年5月17日に受領した当社敗訴の南ジャカルタ訴訟最高裁判決を取り消した上で、原告であるSugar Groupの請求を全て棄却する旨が記載されております。他方、グヌンスギ訴訟については、当社は、2018年10月8日付で当社の司法審査(再審理)申立を不受理とする旨の最高裁再審理決定の決定書を、2020年2月3日に受領しております。当社は、2020年5月18日、最高裁に対して2回目の司法審査(再審理)を申し立てましたが、申立書類の提出先であるグヌンスギ地方裁判所は2020年5月20日付で、最高裁再審理決定と旧訴訟最高裁判決間の矛盾の不存在を理由に当社の申立を受理せず申立書類を最高裁に回付しないことを決定しました。
 また、当社はSugar Groupの不法行為による当社の信用棄損等を原因としてSugar Groupに対し損害賠償請求訴訟を提起しておりますが、これに対し、Sugar Groupは当該訴訟(以下、本訴)の手続きの中で、当社に対して当該訴訟の提起が不法行為であるとして損害賠償請求訴訟(以下、反訴)を提起しておりましたところ、インドネシア・中央ジャカルタ地方裁判所は、2020年12月3日、当社の本訴請求及びSugar Groupの反訴請求をいずれも棄却する旨の第一審判決を言い渡しました。当社は、2020年12月15日付で本訴につきジャカルタ高等裁判所に控訴し、現在も係争中です。
 当社に不利な裁定を最高裁が下したグヌンスギ訴訟等Sugar Groupとの一連の訴訟の今後の趨勢や裁判手続次第では、敗訴判決に基づく損害賠償額・金利・訴訟費用の合計金額の全部又は一部について当社が負担を強いられ損失を蒙る等、当社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります(注)。各訴訟の詳細及び経緯については「その他の当社グループの現況に関する重要な事項」における説明をご参照願います。

(注)

南ジャカルタ訴訟においては被告に丸紅欧州会社も含まれております。


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2021/06/24 12:00:00 +0900
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