事業の経過及びその成果

(1)企業環境

 当期の世界経済は、緩慢な成長に留まりました。長期に渡る米中通商問題の緊張により先行き不透明感が強まったことで、貿易や投資が伸び悩んでいましたが、2020年に入り新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に感染拡大し、経済活動には未だかつて経験したことのないような制約要因となり、世界の経済活動は急減速しました。米国では、低失業率を背景に個人消費は景気の下支えとなってきましたが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で足下では失業が急激に増加し、経済活動に深刻な悪影響を及ぼしています。中国では、米国との通商問題の深刻化が経済活動の重しとなり、消費者マインドが悪化したことで、自動車など耐久財の消費に陰りが見られていたところに新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が重なり経済活動に甚大な影響が出ています。欧州でも予てから景気回復の動きが弱まっていたところに、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が景気に対して極めて強い下押し圧力となっています。国際商品市況では、需要鈍化の影響により、多くの商品価格は下落傾向となりました。特に原油は、生産調整の不調に加えて、パンデミック対応による移動制限が重なったことで需給バランスが短期間で大きく崩れ、価格は暴落しました。
 国内経済は、外需の低迷や消費増税により個人消費の伸びが減速基調となるなど景気回復の動きが弱まっていたところに、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により経済活動は停滞し、極めて厳しい状況を迎えることになりました。

(2)全体業績及び財政状態

① 全体業績

 当期の親会社の所有者に帰属する当期利益(注1)は1,714億円となり、前期に比べ1,492億円の減益となりました。一過性損益については、米国を中心とした鋼管事業において、原油価格の下落などによる減損損失及び在庫評価損を計上したことや、ボリビア銀・亜鉛・鉛事業での一過性損失を計上したことなどから約770億円の損失となり、前期に比べ約690億円の減益となりました。
 一過性を除く業績は約2,480億円となり、前期に比べ約810億円の減益となりました。非資源ビジネス(注4)は、電力EPC案件に係る建設工事が進捗したことや不動産事業が堅調に推移した一方で、北米鋼管事業が需要減少などにより減益となったことや、米中貿易摩擦などの影響で自動車関連事業が低調に推移したことなどにより減益となりました。また、資源ビジネス(注5)は、主に資源価格の下落によりボリビア銀・亜鉛・鉛事業や豪州石炭事業などで減益となりました。

② 財政状態

(a)資産、負債及び資本の状況

 当期末の資産合計は、円高に伴う減少があった一方で、IFRS第16号「リース」適用による増加があったことなどから、前期末に比べ2,121億円増加し、8兆1,286億円となりました。
 資本のうち親会社の所有者に帰属する持分(注1)は、親会社の所有者に帰属する当期利益の積み上げがあった一方、円高の影響や配当金の支払があったことなどから、前期末に比べ2,274億円減少し、2兆5,441億円となりました。
 現預金ネット後の有利子負債(注2)は、前期末に比べ417億円増加し2兆4,688億円となりました。
 この結果、ネットのデット・エクイティ・レシオ(注3)は、1.0倍となりました。

(b)キャッシュ・フローの状況

 営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金が増加した一方で、コアビジネスが資金を創出し、基礎収益キャッシュ・フローが2,390億円のキャッシュ・インとなったことなどから、合計で3,266億円のキャッシュ・インとなりました。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、英国洋上風力発電事業の売却や航空機エンジンリース事業の共同事業化など資産入替えによる回収が約1,200億円あった一方で、北欧駐車場事業の買収や米国オフィスビルの取得など、約3,500億円の投融資を行ったことなどから、2,034億円のキャッシュ・アウトとなりました。
 これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローを加えたフリーキャッシュ・フローは、1,232億円のキャッシュ・インとなりました。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより、577億円のキャッシュ・アウトとなりました。
 以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前期末に比べ500億円増加し7,104億円となりました。

③ 2019年度年間配当金

 当社は、2019年度第2四半期連結決算発表時に、2019年度の親会社の所有者に帰属する当期利益の通期見通しを、期初予想の3,400億円から3,000億円に修正しましたが、その主な要因がキャッシュベースの収益力の低下によるものであったことから、2019年度の予想年間配当金を、配当性向30%程度を目安とする「中期経営計画2020における配当方針」に基づき、期初予想の1株当たり90円(普通配当80円、創立100周年記念配当10円。)から1株あたり80円(普通配当70円、記念配当10円。)に修正しました。
 2019年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、新型コロナウイルス(COVID-19)による感染拡大及びこれに伴う事業環境の急速な悪化等により、1,714億円となり、修正後の業績予想からさらに大幅に悪化したものの、その主な要因がキャッシュ・フローの流出を伴わない一時的な損失であることから、長期にわたる安定配当という基本方針を踏まえ、2019年度の年間配当金は修正後の1株当たり80円(普通配当70円、記念配当10円。)を維持しています。中間配当金は45円(普通配当35円、記念配当10円。)でしたので、当期の期末配当金として、1株当たり35円を本年6月に開催予定の定時株主総会にてお諮りすることとします。

④ 2020年度の業績見通しと年間配当金予想額

 2020年度の業績見通しについては、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による影響の度合いを合理的に見通すことが困難であり、現時点では連結純利益の見通しを開示できる状況に至っておりませんが、各国のロックダウンが解除される等、経済活動再開に係る情報を確認、精査した上で、可及的速やかに業績予想を公表いたします。
 また、2020年度の年間配当金予想額については、2020年度の業績見通しが上記の状況ではありますが、普通配当を1株当たり70円(中間35円、期末35円。)としています。これは足元の事業環境下、業績の落ち込みは避けられませんが、長期にわたる安定配当という基本方針を踏まえ、1株当たり70円(2019年度の年間配当予定額である1株当たり80円から記念配当10円を除いた配当額)を予定しているものです。

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2020/06/19 15:00:00 +0900
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