対処すべき課題

(1)「中期経営計画2020」の取組と新型コロナウイルス(COVID-19)の影響

 「中期経営計画2020」の取組の一つである既存事業のバリューアップについては、2019年度上半期からの米中貿易摩擦と自動車関連産業の低迷により金属事業部門や輸送機・建機事業部門における自動車関連ビジネスを中心に当初想定した成長の実現に課題を残しています。また、原油価格等市況商品価格の下落の影響などにより、北米鋼管事業や資源関連事業が影響を受けているほか、マダガスカルニッケル事業においては、オペレーションの高位安定化に向けた一層の取組みが必要です。これら既存の課題事業のバリューアップ実現のため、全社を挙げて取り組んでいます。
 2019年度後半には新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大という未曽有の事態が発生しました。当社の事業においては、インフラ、メディア・デジタル、生活・不動産の各事業部門の多くの事業では底堅い収益創出を継続しており、当社業績を下支えしていますが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は、その他の事業部門のさまざまな事業に大きな影響を与えることとなり、当社の事業活動全体への影響の大きさや期間を見通すことが困難な状況が続いています。

(2)現状を踏まえた対応方針

 現状においても当社グループは、十分な流動性資金を有し事業活動の継続に支障はなく、リスクアセットに見合うリスクバッファーも確保・維持できる見込みであり、本年度も財務健全性の更なる改善のための有利子負債の削減に取り組みながら、長期安定配当という基本方針に基づく配当の支払を予定しています。
 一方で、先行きの見通しにくい状況下、今後、さらに厳しい事業環境に晒された場合にも、新型コロナウイルス(COVID-19)収束後を見据えて、当社の事業活動をしっかりと継続していくための手元流動性の確保・維持を最優先に経営を行います。そのため、今年は危機対応の一年と位置づけ、当社グループの各事業において、キャッシュ・フローの悪化を最小限にとどめるために、具体的施策を実行していきます。投融資については、これまでの計画をすべて一から見直し、真に必要なものに厳選のうえ、優先順位を付けて実行していきます。また、経費の徹底した管理、運転資金の改善及び資産削減の着実な実行に取り組みます。
 同時に、これまでも行ってきた既存事業のバリューアップ、撤退すべき事業の見極めを加速しつつ、収益力の早期回復を図るとともに、企業価値の向上に向けたポートフォリオ戦略の見直し、サステナビリティ経営の高度化等、各事業と当社グループ全体の大胆な構造改革にも取り組んでいきます。

(3)サステナビリティ経営の推進と高度化

 当社グループでは、住友の事業精神、住友商事グループの経営理念(注1)を踏まえ、事業活動を通じて自らの強みを生かして優先的に取り組むべき課題を「社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)」(注2)として特定し、サステナビリティ経営を実践しています。
 新型コロナウイルス(COVID-19)が短期的にも中長期的にも社会に与える影響は多岐に亘ると思われますが、今後世界が経済発展を目指し続けるうえで、気候変動問題はさまざまな社会課題の中でも最優先に取り組まなければならない課題の一つです。すでに当社グループでは、気候変動を巡る世界的な情勢を踏まえ、「気候変動問題に対する方針」を定めていますが(注3)、今後も国際的な取組や事業環境の変化などを注視し、適宜方針を見直していきます。
 また、社会課題に対する包括的方針として、「環境方針」及び「サプライチェーンCSR行動指針」を定めていますが、これらに加え、2020年5月には、「住友商事グループ人権方針」(注4)を策定し、企業に求められる社会的責任の一つとして人権を尊重する方針を明らかにしました。
 新型コロナウイルス(COVID-19)により、社会が直面するさまざまな課題の緊急度に変化が生じた場合でも、当社グループは、世界をリードする企業グループとして、社会課題の解決と持続可能な社会の実現に向けて、具体的な方針の策定や施策の実行を通じてサステナビリティ経営の高度化を推進していきます。

 当社を取り巻く事業環境は非常に厳しいものがありますが、役職員一丸となってこの難局に取り組み、早期に収益力を回復させることで、引き続き株主の皆様の期待、信頼に応えていく所存です。

 株主の皆様には、一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


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2020/06/19 15:00:00 +0900
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