①経済概況
当連結会計年度における世界経済は、米国、欧州の景況は総じて堅調に推移しましたが、中国では財政健全化に伴う金融政策の引き締めや米中貿易摩擦の影響などにより、成長スピードが鈍化しました。また、国内経済は、個人消費や設備投資が底堅く推移したものの、夏に発生した自然災害や年度後半には輸出が減速するなどの影響により、徐々に不透明感が強まりました。
②受注高の概況
当社グループの受注環境は、半導体業界の先行き懸念、中国における製造業の設備投資計画の見送りや縮小などの影響を受け、厳しい状況となりました。また、これらを主因とした需要減少に加え、前期の受注高が、お客様からの旺盛な先行発注により高水準であった反動を受け、連結受注高は前期比46.4%減少の448億45百万円となりました。
③売上高の概況
一方、連結売上高は、期初の豊富な受注残高に支えられたことに加え、前期から取り組んでまいりました生産能力の増強施策が奏功し、前期比24.8%増収の678億9百万円となりました。
④用途別売上高の概況
用途別の売上高の動向は、産業用ロボット向けは、家電やスマートフォンなどの製造ラインで使用される組立用の小型ロボット向けが増加しました。
また、従来の産業用ロボットとは異なる、安全性を確保したことで人と並んで作業することができる協働型ロボット向けの売上高も増加しました。
半導体製造装置向けは、メモリー、ロジックICに関わる設備投資が増加したことにより、前工程向けを中心に売上高が増加しました。
フラットパネルディスプレイ製造装置向けも、有機ELディスプレイ向け、大型テレビ用の高精細液晶パネル向けの売上高が増加しました。
⑤利益の概況
収益面は、生産能力増強投資を実施したことにより減価償却費が増加したことに加え、製造部門の増員などにより製造費用が増加しました。また、増収に伴う梱包発送費の増加に加え、研究開発費、販売促進費などの積み増しにより、販売費及び一般管理費も増加しました。このように費用は増加したものの、売上高の増加による増益効果がこれを上回り、営業利益は前期比34.2%増加の169億3百万円となりました。
また、主に営業利益の増益に伴い、親会社株主に帰属する当期純利益も前年同期比43.9%増加の116億1百万円となりました。
⑥事業上の取り組みの概況
2018年度は、中期経営計画(2018年度~2020年度)の初年度であり、当該計画に掲げた各施策に取り組んでまいりました。
営業面におきましては、世界的にロボット技術が日進月歩の進化を遂げる中、ますます高度化、多様化するご要求にお応えするため、お客様の各装置ごとにカスタマイズした課題解決策を提案し、受注の獲得に取り組んでまいりました。
品質面におきましては、生産量を大幅に増加させながら、同時に品質を維持・向上させるため、人材育成や工程改善を進めるとともに、サプライチェーン全体にわたる品質管理体制の強化を進めてまいりました。
研究開発面におきましては、新たな原理・理論の確立や技術の追求など基礎研究の拡充と深化を図り、次世代の技術開発に取り組んでまいりました。また、日本とドイツを拠点とする研究開発部門間の連携を強化し、開発テーマの共同推進や研究資源の相互活用などにより、研究開発活動の効率化と研究レベルの向上に取り組んでまいりました。
生産面におきましては、期初時点で過去最高となっていた受注残の消化と中期的な需要増加を見据え、日・米・欧の各拠点において波動歯車装置(ハーモニックドライブ®)の生産能力増強に取り組んでまいりました。日本では、2017年に取得した有明工場(長野県安曇野市穂高有明)の立ち上げに傾注し、中核工場である穂高工場(長野県安曇野市穂高牧)と合わせ、月産生産能力を8万台から13万台へ引き上げる体制を構築してまいりました。また、主要部品であるクロスローラーベアリングの生産量を増加させるため、既存工場(長野県松本市)の生産能力引き上げに加え、近隣に新工場棟(長野県松本市)の建設を進め、2019年1月に竣工しました。
米国においても、既存工場の近隣に新たな工場用地を取得し、2019年7月の完成を目指して新工場棟の建設に着手しました。また、ドイツでも、既存工場の増強に加え、近隣に新たな賃貸工場物件を手当てするなど、将来の需要増加に備えるべく、生産体制の増強を進めてまいりました。