企業集団の現況に関する事項

 当連結会計年度における世界経済は、欧米先進国では雇用情勢が総じて安定したものの、成長スピードは徐々に陰りが見られました。米中貿易摩擦により中国経済は減速傾向にありますが、アジア新興国はまだら模様となりました。我が国の経済は、輸出が低迷しましたが、底堅い内需に支えられ緩やかな成長が継続しました。
 このような世界経済環境の中、印刷産業は、先進国ではICT(情報通信技術)の進展とメディアの多様化に伴い、出版・商業印刷は印刷需要の低迷が続く一方で、消費財の流通に不可欠なパッケージ印刷は堅調に伸びています。新興国では、人口の増加や中間所得層の拡大に伴い、景気変動の影響を受けながらも印刷需要が回復基調にあります。
 印刷機械の需要動向は、欧州市場においては、英国がEU離脱問題の不透明さから引続き低迷し、フランスでも設備投資促進の税制優遇措置終了による反動減が見られました。米国ではオフセット印刷機への設備投資が押さえられる一方で、多品種小ロットに対応したデジタル印刷機への投資が進展しています。中国では、より高い生産性を目指す大手印刷会社を中心とした自動化・省力化の進んだ印刷機や、パッケージ機を中心とした高付加価値機への投資、ならびにWEBプリンター向け印刷機の需要増が継続しました。アジア市場では、一部に中国経済の減速の影響が見られましたが、総じて需要は安定的に推移しました。日本市場ではコスト削減・効率化などを目的としたオフセット印刷機の更新需要が続いています。
 このような市場環境において、当連結会計年度は第5次中期経営計画(2016/4~2019/3)の最終年度として、2つの「変革」に引続き取組んでまいりました。
 第一の変革として、事業の複合化を目指す「事業構造変革」では、海外向け証券印刷機事業、DPS(デジタル印刷機)事業、およびPE(プリンテッドエレクトロニクス)事業を推進し、事業構造の転換を進めてまいりました。海外向け証券印刷機事業では昨年5月に米国で開催された銀行券業界最大のカンファレンスである「Banknote(バンクノート)2018」において、当社の銀行券印刷用コンビネーションマルチプロセス番号コーター印刷機「CURRENCY(カレンシー)NV32」が国際通貨協会(IACA)の最優秀技術賞を受賞いたしました。各国の中央銀行や民間証券印刷会社からの受注活動に注力し、総額110億円の大型受注に成功しました。DPS事業においては29インチ枚葉デジタル印刷機「Impremia(インプレミア)IS29」の拡販を図り、さらに大型の40インチ枚葉ナノグラフィックプリンティングシステム「Impremia(インプレミア)NS40」のフィールドテストに向けた開発を進めています。PE事業では昨年12月に中国の深圳で開催された展示会、「2018 International Printed Circuit & APEX South China Fair(HKPCA 2018)」に参加し、アジア・中国市場へも販路を広げる活動を進めています。
 第二の変革として、「営業の業態変革」では、PESP(プリントエンジニアリングサービスプロバイダー)として様々なソリューションを提供し、営業領域の拡大を推進しています。その一環として、当社は、印刷工程全体をIoTクラウドであるKP-Connect(KP-コネクト)でつなぐことにより、労働生産性の高い生産環境の構築を提唱しています。KP-Connectは既に300台以上の機械が接続され、生産現場の効率化に貢献しています。また、昨年7月に開催された国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展「IGAS2018」では、「Innovate to Create」のテーマのもと自動化・省人化・スキルレス化を推進することで、「どうやってつくるか」から「なにをつくるか」に発想の切り替えを促す展示・実演を行い、課題解決への提案を行いました。
 以上の結果、当連結会計年度における受注高は934億5千1百万円(前期比5.7%増)となり、売上高は、902億4千2百万円(前期比4.2%減)となりました。費用面では、品目別売上構成の違い等により、売上原価率が前期に比べ若干低下したものの、販売費および一般管理費率は、人件費や広告宣伝費の増加および売上高の減少により、前期に比べ上昇しました。その結果、営業損益は27億6百万円の利益(前期比27.5%減)となりました。経常損益は、前期が2億8千4百万円の為替差益であったのに対し、当期は2億1千4百万円の為替差損であった影響もあり、25億2百万円の利益(前期比43.4%減)となりました。税金等調整前当期純損益は、当期は24億5千8百万円の利益(前期比40.8%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は、14億2千7百万円の利益(前期比53.6%減)となりました。
 また、海外売上高は537億6千4百万円(前期比3.3%減)で、売上高に占める割合は59.6%となりました。

企業集団の部門別売上高の状況


 当連結会計年度の特記すべき事項は次のとおりであります。

 昨年7月26日から6日間、東京ビッグサイトにて国際総合印刷テクノロジー&ソリューション展「IGAS2018」が3年ぶりに開催され、国内外から約5万6千人の来場者でにぎわいました。昨今の人手不足や働き方改革に連動した長時間労働の見直しなどにより、生産性を一層高めることが印刷業界の喫緊の課題となっております。自動化・省人化・スキルレス化に貢献する最新鋭印刷機による実演を通したソリューション提案のほか、会場では、オフセット印刷機、デジタル印刷機、断裁機など10台の機械をIoTクラウドであるKP-Connectでつなぎ、ブース全体を印刷工場に見立ててスマートファクトリーを再現しました。工場全体の動きが一元管理される様子に、多くの来場者の関心を集めました。

 A全判オフセット枚葉印刷機に、新たに反転機構を備え、両面ワンパス印刷を可能にした「LITHRONE(リスロン)G37P」の8色機モデルを商品化しました。コンパクトなボディサイズの「LITHRONE G37P」は、従来設置スペースに課題のあったユーザー様も導入でき、新しい反転機構の採用により耐久性やメンテナンス性が格段に向上しています。また、印刷品質検査装置PQA-S、自動版見当機能を備えた分光式色調管理装置PDC-SXなど、豊富なオプションにより高度な省力化と高生産性が実現可能となりました。

 当社独自のノウハウで開発した、UVランプと高感度UVインキを用いた革新的乾燥システムである「H-UV」シリーズが、発売以来10年間で1,000台の受注を突破しました。この「H-UV」シリーズは、印刷効率の向上やメンテナンス負荷の軽減などの要求に応え、小ロット・多品種・短納期化が進む印刷業界で高い評価を得ています。

 昨年4月にインドの当社代理店「Insight Communication and Print Solution India社」を株式譲渡により子会社化し、「コモリ インディア」として営業を開始しました。13億人の人口を抱えるインドは、24歳以下の若者が人口の半分を占め、今後も旺盛な個人消費を背景に印刷需要の拡大が見込める重要市場です。インドでは既に多くの当社製印刷機が稼動していますが、近年、高度な技術を要するオフセット印刷機の需要拡大が見込まれています。子会社化により販売・サービス体制の拡充を図り、インド市場での事業拡大を目指しています。

 当年3月に中国の当社代理店深圳兆迪技術有限公司(以下インフォテック社)の全株を香港の当社子会社の小森香港有限公司を通して取得することを同社株主と合意しました。インフォテック社は約20年間当社の販売代理店として活動しており、その間、当社の印刷機を1600台以上販売するなど、強力な顧客基盤とセールス体制を持っています。世界最大の印刷機市場である中国の高度化する顧客要求に対し、より的確に対応し、最先端のソリューションを積極的且つ迅速に提供し、事業の拡大を図ります。

 新規事業の一環として、証券印刷機事業の海外展開に取組んでおり、当連結会計年度に、フランス、インドネシア、中国、インドから、総額110億円の銀行券印刷設備を受注しました。2012年に世界最大の民間証券印刷会社である英国のデ・ラ・ルー社と包括技術契約を結んだことにより当社の技術力が広く認められ、英国銀行や米国の民間証券印刷会社への納入を含め、着実に銀行券印刷設備の納入実績を増やしています。

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2019/06/19 12:00:00 +0900
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