対処すべき課題

 印刷産業は、先進国では電子媒体普及の影響を受け、出版関係を中心に減少傾向にありますが、商業印刷分野は近年横ばいで推移している状況の中で、中国を中心としたアジア地域では成長が期待されております。一方、パッケージ印刷の需要は総じて高く、その成長エンジンは中国を中心とするアジア地域ですが、日本や欧米の先進国においても、環境問題によりプラスチックから紙器への見直し気運が高まっていることから、世界の印刷市場は中期的には比較的緩やかに成長して行くものと予測しております。
 このような事業環境の中、当社の経営はオフセット印刷機事業の収益基盤をより強固にするとともに、各新規事業の拡大と営業の業態等の「変革」が必要となり、2016年4月からスタートした第5次中期経営計画にて、「収益構造変革」を目標に「事業構造変革」を推進し「営業の業態変革」と「モノづくり革新」等を実行いたしました。
 事業構造変革での成果としては、証券印刷機事業では、英国中央銀行およびCrane社への紙幣印刷機械の一括納入の完了とアジア各国からの大型受注に成功したこと、DPS事業では新型デジタル印刷機「Impremia IS29」の量産販売を国内外で開始し販売成果が出たこと等があげられます。また、PE事業では電子部品業界での当社のプレゼンスを高める一方で、高精細技術を基に半導体およびフレキシブル配線などの製造技術の商用化をめざし各種のアライアンスを組むなど着実な事業拡大を実施し事業の複合化を進めました。次に、営業の業態変革では、PESP事業として、ポストプレス商品・消耗品などの印刷関連の営業品目を拡大させ、迅速なサービス活動を目指して予防保全サービスなどを拡充し顧客の利便性を高めました。また、将来の印刷会社でのIoTを目指した「KP-Connect (KP-コネクト) 」 (KOMORIソリューションクラウド) の国内販売を開始し、お客様の生産性と収益性の向上に資する総合的なソリューション提案を可能とする体制を整えました。
 このように第5次中期経営計画を通して今後の成長の基本路線は明確に設定されましたが、数値目標については開発計画の遅延および一部重要市場の低迷等が重なり計画は未達となりました。

 数値目標未達の主な要因は次のとおりと考えております。
 第一に、事業構造変革を推進する一方で中核事業のオフセット印刷機事業の基盤強化に努めてまいりましたが、中国市場を含む一部市場が想定どおり伸びなかったこと。
 第二に、DPS事業は、「Impremia IS29」と「Impremia NS40」の開発遅延により市場投入が遅れたこと、同機のビジネスモデルに合致した新しい市場開拓に時間を要したこと等により想定した事業拡大ができなかったこと。
 第三に、海外証券印刷機事業は、入札のタイミングが第5次中期経営計画の後半に販売の谷間に入り売上が減少したこと。
 第四に、新規事業、特にDPS事業への開発先行投資により収益力を低下させたこと。
 この他、自律的成長に加えM&Aによる業容拡大を想定しましたが、新規事業での戦略的アライアンスや海外代理店の子会社化などを進めたものの、現時点では収益に大きなインパクトを与えるM&Aが実行されていないことも要因の一つとなっています。
 これらの要因に対する反省を踏まえ、当初2019年4月よりスタートを予定していた第6次中期経営計画は、半年間延期し社内で充分な議論を行った上で、2019年下期にスタートを計画しております。また、当社は、2023年に創業100周年を迎えることから、第6次中期経営計画は5ヶ年計画とする予定です。第6次中期経営計画は現在策定中でありますが、現在の当社を取り巻く事業環境は、以下のとおりです。
 中核事業のオフセット市場は、先進国市場は拡大しないものの、中国を含む新興国市場は大きく拡大する。特に紙器印刷は環境問題を背景に全世界的に拡大するものと予測されている。
 デジタル印刷機市場は、小ロット、バリアブル印刷の需要が拡大するために小型/中型機を中心に急速に拡大するものと予測されている。
 証券印刷機市場は、海外での偽造防止の為にデザインを刷新した新銀行券発行や、アジア圏の銀行券増刷等によって市場は拡大すると予測されている。
 PE、特に電子部品業界への製造装置市場は、IoTの進展に沿って電子部品の増産に伴い装置需要は拡大すると予測されている。
 以上を背景に対処すべき課題は、第5次中期経営計画で確立した事業基盤をより強化発展させることにより、「収益性を向上させるとともに将来への布石を着実に打つこと」であります。

具体的には①~⑥の対応を迅速に進めてまいります。
① オフセット・証券印刷機事業の収益力強化
② DPS(デジタル印刷システム)事業の収益化
③ リカーリング・インカム事業の推進
④ 成長事業への積極的な投資
⑤ コーポレート・ガバナンス体制の強化および環境対策の積極的な推進
⑥ 財務健全性の維持を前提にバランスシートの効率化を意識した財務戦略の推進

なお、第6次中期経営計画については、2019年度下期に発表を計画しております。

2019/06/19 12:00:00 +0900
外部サイトへ移動します 移動 ×