当連結会計年度における国内株式市場は、ロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギー価格の高騰や世界的なインフレの加速、世界の主要中央銀行の利上げなど、地政学リスクや世界経済の先行き不透明感が高まる中で、ボラティリティの高い展開となりました。日経平均株価は、前連結会計年度末の28,791円71銭から9.4%下落し、当連結会計年度末は26,094円50銭で取引を終えました。このような相場展開を受けて、個人投資家の株式等委託売買代金は前連結会計年度と比較して3.5%増加しました。
外国為替市場においては、インフレ抑制に向けた米国連邦準備制度理事会(FRB)による利上げや日銀の大規模金融緩和の継続による日米金利差の拡大を背景に、円安進行が加速しました。年初に1ドル=115円台で始まったドル円相場は、2022年10月には約32年ぶりとなる150円台をつけました。このようなボラティリティの高まりを受けて、国内店頭FXの取引金額は前連結会計年度比で倍増しました。
暗号資産市場においては、代表的な暗号資産であるビットコインの価格は4月にかけて上昇傾向で推移していましたが、アルゴリズム型ステーブルコインのテラUSDの急落を受けて大きく下落しました。その後も米国大手暗号資産取引所の破綻などの不安要素の影響から低調に推移し、年間の国内暗号資産取引高は前連結会計年度比で72.2%減少し、年間を通して厳しい市場環境が継続しました。
このような外部環境の中、当社及び当社の連結子会社(以下、「GMO-FH」という。)は、「強いものをより強くする」の方針のもと、強みにリソースを集中投下して既存事業の収益基盤をさらに強化するとともに、成長性が期待される新規事業領域への積極的投資を推進しました。
(証券・FX事業)
強みである店頭FXは、ドル円相場の急速な円安進行を受け、カバー取引コストが増加するなど厳しい事業環境となりましたが、収益性の改善施策とともに、スプレッド縮小やGMOクリック証券の店頭FX取引サービスにおける最小取引単位の引き下げの実施など利便性向上に取り組み、顧客基盤の拡大を図りました。さらなる成長に向けクロスセル施策などを展開し注力するCFDは、原油などコモディティ市場におけるボラティリティの高まりの後押しもあり、売買代金・収益がともに高水準で推移しました。
証券・FX事業の営業収益は、好調なCFDや2021年9月に連結子会社化した外貨ex byGMO株式会社が貢献し、前連結会計年度比で増収となりました。一方、タイ王国で証券事業を展開している当社連結子会社のGMO-Z com Securities (Thailand) Public Company Limited において、信用取引の提供に際し顧客から担保として差し入れを受けた代用有価証券(1銘柄)に関してタイ証券市場で不公正と疑われる取引が発生したことにより、当該有価証券の価値が大幅に下落しました。同社で当該有価証券を担保としている信用取引貸付金の回収可能性を検討し、貸倒引当金繰入額を販売費及び一般管理費に計上したことから、当セグメントの営業利益は前連結会計年度比で減少しました。
(暗号資産事業)
暗号資産事業においては、複数のアルトコイン銘柄の追加をはじめ、新たな資金調達ツールとして注目を集めるIEO※の提供を開始したほか、API機能やPC専用取引ツールの拡充、貸暗号資産サービスの強化に取り組むことで顧客基盤が順調に拡大しました。一方、暗号資産市場の低調を受けて売買代金が低水準で推移し、暗号資産市場の活況を背景に非常に好調であった前連結会計年度比で営業収益が大幅に減少し、営業損失を計上しました。
(その他)
2021年8月にβ版、同年12月に正式版の提供を開始したNFT事業では、NFTマーケットプレイス「Adam byGMO」の利用者拡大に向けて、コンテンツ拡充に加え、出品者が無料でユーザーにアイテムを配布できるエアドロップ機能や、スマートフォンアプリにAR(拡張現実)機能をリリースするなど機能拡充に取り組みました。2021年12月に開始したバーチャルオフィス事業は、サービス提供エリアの拡大を強力に推進し、順調に顧客数が伸長しました。
また、当社が保有するGMOあおぞらネット銀行株式会社(以下、GMOあおぞらネット銀行)の普通株式について、事業KPIは拡大しているものの、成長速度が当初想定を下回る状態が継続し、事業計画との間に乖離が生じたことから、減損処理を行いました。また、当社が将来取得することとなる種類株式について契約損失引当金繰入額を計上し、あわせて4,133百万円の特別損失を計上しました。
以上の結果、当連結会計年度の営業収益は46,533百万円(前連結会計年度比1.3%増)、純営業収益は43,884百万円(同0.1%増)、営業利益は9,150百万円(同40.6%減)、経常利益は7,875百万円(同50.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,212百万円(同87.7%減)となりました。
※IEO(Initial Exchange Offering)とは、暗号資産交換業者を介して行われる資金調達の方法のことで、暗号資産交換業者が発行者の事業内容や調達した資金の用途などに対して審査を実施し、新規発行されたトークンの販売を行います。