企業集団の現況に関する事項

(1)事業の経過及びその成果

 当連結会計年度における日本経済は、欧米を中心とした海外経済の回復を背景に企業収益や雇用・所得環境が改善する等、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。
 情報サービス産業におきましては、政府が策定した「Society5.0」(*1)の実現に向けた改革「未来投資戦略2017」の中で、自動運転やFintech(フィンテック)を始めとするAI(人工知能)、IoT、ビッグデータ収集・分析、クラウド技術等を活用した超スマート社会の実現に大きな期待が寄せられております。一方では、巧妙化・複雑化するサイバー攻撃に対応するためのセキュリティサービス等、企業の成長を支援する新たなサービスの創出と、技術者採用・育成の重要性がさらに増しております。
 こうした状況の下、当社グループは、人材採用の拡大、短期間での技術者育成、ビジネスパートナーとの連携強化等の体制整備に注力し、当社の基本理念である「ゆとりとやりがい」の実現に向けた生産性向上等による残業時間削減や重点技術「AIS-CRM」(*2)への取り組みを通じ、中期方針である「ICTの発展をお客様価値向上へ結びつけるイノベーション企業グループ」を目指してまいりました。
 システム構築分野では、自動車関連につきまして、自動運転・電動化に関する開発需要が急速に高まる中、車載制御ソフトウェア開発が引き続き好調に推移いたしました。また、APTJ株式会社(*3)との共同開発によるAUTOSAR(*4)仕様準拠の車載ソフトウェアプラットフォーム「Julinar SPF」(*5)の先行販売を開始いたしました。機械制御系におけるFA(工作機械)につきましても、開発需要は引き続き高く、制御ソフトウェア開発が好調に推移いたしました。また、産業機器メーカーと協力した製品開発における技術支援サービスの提供等を推進してまいりました。業務系システム開発では、金融分野におきまして、システム刷新等のニーズに対応すると共に、Fintech等の新たな技術分野へ取り組む等、引き続き好調に推移いたしました。拡大を続けるEC分野向けソフトウェア開発やICTの最新テクノロジーを活用する流通・サービス分野や教育分野におきましても、競争力の高い製品を提案してまいりました。また、パブリッククラウドを利用したセキュリティリファレンスを政府機関向けに提供する等、日々発生するグローバルな攻撃に耐えうる安全で信頼性の高いシステム基盤の実現を目指した取り組みや、産官学連携も含めてAIやIoT等の先進技術研究を行う等、積極的に新たな技術分野へ挑戦すると共に、新たなビジネス創出の為の人材育成(情報処理安全確保支援士、日本ディープラーニング協会ジェネラリスト検定)を進めてまいりました。
 プロダクトサービス分野では、VMware,Inc.、Amazon.com,Inc.、Microsoft Corporationといったグローバルベンダーと連携したライセンスビジネス、MCAE分野向けのCAEソリューションサービス(*6)等におきまして、引き続き販売が好調に推移いたしました。また、モバイル機器市場でのニーズの広がりを背景に、モバイルルーターを遠隔から一括管理するサービス「+F MDM」(*7)の提供を開始した他、業務効率化しながらフレキシブルな働き方が実現できるペーパーレスシステム「moreNOTE」、「SYNCNEL」(*8)や2017年度グッドデザイン賞を受賞した無人受付システム「moreReception」(*9)を積極的に提案してまいりました。さらに、当社のAIとロボティクス技術を結集したコミュニケーションロボット「PALRO(パルロ)」のテクノロジーを、株式会社講談社がプロデュースする「ATOM(アトム)プロジェクト」(*10)に供給し、会話・二足歩行しクラウドで成長する「日本初の進化する本格的なキャラクター・ロボット」を開発する同プロジェクトに参画した他、金融機関向け業務におけるお客様対応支援としてPALROを提供する等、事業領域を広げてまいりました。
 再生医療分野では、2005年より研究を開始した「インプラント型自己細胞再生軟骨」におきまして、有効性・安全性を評価する企業治験の臨床適応が2017年に終了し、2018年に再生軟骨の提供を予定する等、着実に事業化を進めております。
 グローバル分野では、新たに韓国拠点の開設や中国・アセアン地域でのオフショアの活用、日本企業の米国現地での検証サポート、日系米国企業のシステム化支援、米国企業と連携した組込系技術開発に取り組む等、ビジネス基盤の拡大を図ってまいりました。
 CSR(企業の社会的責任)活動としましては、テレワーク(*11)を活用した多様な働き方の実現や、地域の産業創出・地元雇用等による地方創生へ取り組んでまいりました結果、総務省が発表した「テレワーク先駆者百選企業」に認定されました。また、特例子会社の富士ソフト企画株式会社は、「就職予備校」等による障がい者の就労拡大に向けた就労移行支援活動やIT技術を生かした新しい農業にも取り組んでおります。さらに、1990年より主催しております国内最大級のロボット競技大会「全日本ロボット相撲大会」や世界大会「INTERNATIONAL ROBOT SUMO TOURNAMENT 2017」を開催する等、ロボット相撲を通して「ものづくり」の楽しさを広め、ロボットテクノロジーの向上を図る活動を推進してまいりました。
 このような活動により、当連結会計年度の業績につきましては、SI事業が好調に推移し、売上高は1,807億73百万円(前年同期比10.1%増)となりました。また、販売費及び一般管理費が323億59百万円(前年同期比10.1%増)、営業利益は97億7百万円(前年同期比10.3%増)となりました。証券系関連会社の持分法投資利益の増加等により、経常利益は102億60百万円(前年同期比11.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は57億97百万円(前年同期比15.0%増)となりました。

*1:Society5.0(ソサエティ5.0)
「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く、AI・IoT等を活用した第5の新たな社会「超スマート社会」

*2:AIS-CRM(A:AI I:IoT S:Security C:Cloud R:Robot M:Mobile&AutoMotive)
当社が重点技術と位置づける技術領域

*3:APTJ株式会社(Automotive Platform Technology Japan)
名古屋大学発学内ベンチャー企業として2015年設立、自動運転システム向けのSPFの開発や、セキュリティ対策の強化によるIoT等にも対応し、将来的に車載制御システム向けSPFで国際的なトップクラスのソフトウェアを目指している

*4:AUTOSAR (AUTomotive Open System ARchitecture)
車載ソフトウェアの標準化のため2003年欧州にて設立された組織、及び同組織が策定する標準仕様の総称

*5:Julinar SPF(Joint development program by Users, Licensors,and Integrators for AUTOSAR-based software platforms)
APTJ社が開発している、AUTOSAR仕様準拠のSPF、及びサービスの総称で2018年秋の正式版リリースに先立ち、導入検討用に先行販売を開始

*6:CAE(Computer Aided Engineering)
「ものづくり」における研究・開発工程において、従来行われていた試作品によるテストや実験をコンピュータ上の試作品でシミュレーションし分析する技術

*7:+F MDM(プラスエフ エムディーエム)
Webブラウザによるユーザコンソールを利用して、データ通信の休止や再開、通信速度や通信量の制御、遠隔によるデバイス設定の変更や操作、接続機器の死活監視を行うことができ、通信状況の監視や不正利用の防止等のセキュリティの機能も提供するサービス

*8:moreNOTE(モアノート)、SYNCNEL(シンクネル)
モバイルコンテンツマネジメント市場で業界シェア№1を誇るスマートドキュメントサービス
タブレットやスマートフォン、PCを使用してドキュメントや動画・画像等の各種資料を手軽に共有・閲覧・編集できるサービス

*9:moreReception(モアレセプション)
ICTで実現できるおもてなしと受付業務の効率化をコンセプトに、従来の課題である記帳の煩わしさ、取り次ぎ業務の手間や待ち時間などを解消できる受付システム

*10:ATOM(アトム)プロジェクト
株式会社講談社をはじめ、株式会社手塚プロダクション、株式会社NTTドコモ、VAIO株式会社、当社の5社各社の強みを生かし、長く愛され夢を与え続けてきた日本を代表するロボットキャラクター「鉄腕アトム」の作成を目指すプロジェクト

*11:テレワーク
ICTを活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の総称


セグメント別売上高及び営業利益の概況

セグメント別の概況

 SI事業における、組込系/制御系ソフトウェアにおきましては、機械制御系や自動車関連が好調だったことや社会インフラ系が堅調に推移したことにより増収となりましたが、生産・営業体制の整備や生産拠点の拡大等の先行投資により減益となりました。業務系ソフトウェアにおきましては、金融分野及び流通・サービス分野等を中心に幅広く前年を上回り増収・増益となりました。プロダクト・サービスにおきましては、ライセンス販売やロボット開発事業等により増収・増益となりました。アウトソーシングにおきましては、流通向け取引の減少やデータセンターの改修工事により減収・減益となりました。
 以上の結果、売上高は1,673億76百万円(前年同期比9.5%増)、営業利益は80億49百万円(前年同期比7.1%増)となりました。

 ファシリティ事業におきましては、当社及び一部の連結子会社が所有しているオフィスビルの賃貸収入等により、売上高は26億96百万円(前年同期比0.5%減)、営業利益は11億12百万円(前年同期比8.3%増)となりました。

 その他におきましては、データエントリー事業やコンタクトセンター事業が好調に推移したことにより、売上高は106億99百万円(前年同期比23.2%増)、営業利益は5億46百万円(前年同期比114.4%増)となりました。

(2)設備投資の状況

 当連結会計年度中に実施いたしました設備投資の総額は、58億84百万円であります。その主なものは、当社グループにおけるシステム開発に伴う設備強化及びソフトウェア開発等によるものであります。

(3)資金調達の状況

 記載すべき事項はありません。

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