対処すべき課題

　今後の我が国経済は、新型コロナウイルスの感染終息が見通せない中で、政府の各種政策やワクチンの普及等により個人消費や企業収益が徐々に回復に向かうことが期待されますが、国内外において、渡航制限や経済活動制限等の規制が続いており、景気は依然として先行き不透明な状況にあります。
　建設業界におきましては、民間企業の建設投資は経営環境の悪化により弱い動きとなることが予想されますが、公共投資は2021年度予算において前年度とほぼ同水準が確保され、とりわけ気候変動の影響により頻発する大規模自然災害や高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化に対する工事への集中投資が見込まれております。また、ウィズコロナ、アフターコロナを見据えたインフラ整備の動きは、今後の民間設備投資を一定程度下支えすると考えられます。なお、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化した場合、対策コストの増大や資機材供給の停滞などのリスクに留意する必要があります。
　昨今、自然災害が激甚化・頻発化し、また、高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化が進行するなど、人々の暮らしや産業の発展を支える基盤に大きな影響を及ぼしています。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大は人々の価値観や行動様式を変化させるなど、まさに将来の不確実性が高まっています。
　このような経営環境のもと、当社グループは時代の変遷とともに顕在化している社会課題と真摯に向き合い、「持続可能な社会」「快適に暮らせる社会」「経済が成長する社会」の形成を通して、 “限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会” の実現に貢献することが当社グループの担う役割であると認識し、本年5月に『熊谷組グループ中期経営計画（2021～2023年度）～持続的成長への弛まぬ挑戦～』を策定しました。本計画では2017年に定めた中長期経営方針の考え方を踏襲しつつ、新たに定めた長期構想 “2030年以降を見据えた経営方針” のもと、今後3年間の方針・戦略・目標を掲げております。

『熊谷組グループ　中期経営計画（2021～2023年度）～ 持続的成長への弛まぬ挑戦 ～』（要旨）

■長期構想
社会から求められる建設サービス業の担い手として、限りある資源が循環し、ひと・社会・自然が豊かであり続ける社会の実現に貢献する。

■課題認識
・カーボンニュートラル
・国土強靱化・インフラ長寿命化
・都市高度化・デジタル社会

■基本方針
①建設請負事業の深化：
　コア事業である建設請負事業の強化・効率化を図り、収益性を高める。
②建設周辺事業の進化：
　成長領域と位置づける建設周辺事業（自ら出資あるいは資産保有等を行い、事業主体として参画する事業）を加速し、確固たる収益源を創出する。
③新たな事業領域の開拓
　新たな事業領域の開拓にも挑戦し、目指す社会の実現に貢献できる領域を拡大するとともに、事業環境の変化に対応できるよう事業機会の創出を目指す。
④経営基盤の強化：
　経営を支える基盤を一層強化し、事業推進の実効性を高める。

■財務目標
連結売上高　　：　4,700億円（2023年度）
連結経常利益　：　　330億円（2023年度）
ＲＯＥ　　　　：　　12%以上
配当性向　　　：　　30%目途

■非財務目標
CO２排出量削減率（スコープ1,2）　：　2030年の排出量を2019年度比▲25%
（スコープ1：事業者自らによる温室効果ガスの直接排出）
（スコープ2：他社から供給された電気、熱・蒸気の使用にともなう間接排出）
混合廃棄物排出率（建設廃棄物総排出量に占める混合廃棄物総排出量) 　　　：　2.0%以下
安全度数率（100万延べ実労働時間あたりの労働災害による死傷者数）　　　：　0.5以下
社員の時間外労働時間数（1ヶ月間に実施した時間外労働時間数の平均）　　：　30時間以下
重大な法令違反発生件数（行政処分及び行政措置等を含む）  　　　　　　　：　０件

■投資計画
人口減少や財政制約などにより将来的に国内建設市場は縮小均衡に向かい、競争が一段と激化していくと想定されることから、コア事業である建設請負事業を一層強化し、建設周辺事業への取り組みを加速するなど、競争力強化と収益源多様化による安定収益確保のために、400億円規模の投資を行う。

　当社はこれまで、建設事業を通して代々受け継がれてきた創業者の思い「誠実さ」と「挑戦心」をモットーに、その時々の社会課題に対応し、社会の発展に尽力してまいりました。今般策定した中期経営計画のもと、社会から求められる建設サービス業の担い手として、グループ一丸となって持続的成長への弛まぬ挑戦を続けてまいりますので、株主の皆様におかれましては今後とも一層のご支援を賜りますようお願い申しあげます。