第22回定時株主総会招集ご通知 証券コード : 2158
当社グループは「Bright Valueの実現〜記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さないソリューションを提供し、情報社会のフェアネスを実現する〜」という企業理念のもと、自社開発の特化型AI「KIBIT(キビット)」の提供を通じて、日夜、社会課題と向き合う各分野の専門家の判断を支援し、イノベーションの起点を創造することで、社会のさまざまな場面で必要かつ適切な情報に出会えるフェア(fair)な世界の実現を目指しております。
■各事業の当期の活動状況は以下のとおりであります。
(AIソリューション事業)
ライフサイエンスAI分野 AI創薬領域
日本政府は2024年12月3日に創薬力強化・後発医薬品などの安定供給確保に向けた政策パッケージを公表するなど、2025年以降には、日本国内での創薬力強化の具体策が動き出す見通しです。その中で、新薬開発における標的分子の枯渇や適応症探索の難しさが課題として捉えられております。この課題を解決する一つの方法として、当社は自社開発の特化型AI「KIBIT」による自然言語処理技術を用いた文献情報などの解析を通して、文献に記載のない疾患と創薬標的分子の関連性を体系的に発見する独自技術(特許申請済み)を有しており、この独自技術を用いて、疾患関連性の高い未報告の標的分子を抽出し、その根拠となる疾患メカニズムなどの仮説とともに提示するソリューション(AI創薬支援サービス“Drug Discovery AI Factory”(以下、DDAIF))を提供しております。
当社は昨年よりDDAIFを活用した新規標的探索や適応症探索の案件を複数受託し、実績を積み重ねてまいりました。当期においては、顧客と当社の創薬研究者が垣根を越えて密に連携(共創)しながら最終成果物の創出を目指す共創プロジェクト*1を「新規標的探索」や「適応症探索」といった領域でUBE株式会社、丸石製薬株式会社、エーザイ株式会社、その他複数社とスタートさせました。さらに、第一三共株式会社とは、毒性試験データベースや毒性試験報告書テキスト情報の解析業務に関する契約を締結し、「安全性解析」という新たな領域における解析の提供を開始いたしました。現在も複数社と共創プロジェクトの契約について協議中です。
共創プロジェクトの受注が好調な要因として、実績の積み重ねに加えて、DDAIFで使用する新たな解析技術の開発が挙げられます。疾患に関わる遺伝子ネットワークを構成するパスウェイの機能を推定する新技術(特許出願中)により、遺伝子ネットワークを構成するパスウェイ単位/複数のパスウェイ群の作用や関連性をより精緻に予測し、効率的かつより適切な創薬標的の発見や仮説生成の提供が可能となります。さらには、株式会社テクノプロと創薬における研究開発ソリューションに関する戦略的業務提携契約を締結し、標的分子の特定や仮説生成、ウェット実験、創薬候補化合物のVirtual Screeningの分野での連携を通じて、製薬企業をはじめとする顧客の医薬品開発における成功確率とスピードの向上に努めるなど、新たな取組みも開始しております。
AI創薬分野における当社独自技術のプロモーションを国内外で強化するため、日本では「AIが変える創薬の未来(慶應義塾大学ヘルスコモンズセンター主催)」、『製薬R&Dを巡るトレンドと生産性向上への取組みvol.3 「AI」(LINK-J 主催)』、米国では創薬研究者の集まるボストンでの展示会「AI Driven Drug Discovery Summit」に出展し、いずれも当社取締役CTO豊柴博義が登壇・講演いたしました。これに加えて、シュプリンガーネイチャーが出版するジャーナル約600誌の論文のフルテキストデータを活用するサービスに関するホワイトペーパー「既知の文献情報から未知の関連性を発見」を公開しております。
AI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory」の米国特許商標庁(USPTO)における商標登録の完了(米国登録番号7665758)と米国市場におけるAI創薬の戦略構築及び実践に関するコンサルティング契約を米国のコンサルティング企業と締結するなど、AI創薬分野の米国市場進出を加速させてまいります。
これらの当社の革新的なアプローチにより、世界で疾患との関連性が未報告の標的分子を見出し適応症と合わせて捉えることが可能となり、顧客とともにFirst in Classの創薬を目指してまいります。
*1 共創プロジェクト型とは、製薬企業と当社の研究チームが協調し新規標的探索や適応症の探索、バイオマーカー探索等、個別の研究開発を実施する形態。
ライフサイエンスAI分野 AI医療機器領域
AI医療機器領域では、2024年2月に塩野義製薬株式会社(以下、塩野義製薬)と「認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約」を締結以降、「会話型 認知機能検査用AIプログラム医療機器(SDS-881)」の日本での製造販売承認取得及び社会実装に向けた開発は順調に進捗しております。2025年2月に厚生労働省のプログラム医療機器調査会において優先審査対象品目への指定を受け、さらに2025年2月には独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に治験届提出が完了いたしました。世界に先駆けた自然言語処理AIを用いた医療機器として2026年度の承認取得を目指してまいります。認知症・うつ病に加えて、統合失調症やADHDなどの精神神経疾患領域を対象とするAI医療機器の開発についても、協業・アライアンスに向けたプロジェクトの協議を開始しております。
また、医療機器の開発と並行して、非医療機器の産業横断アライアンスに関しても、大手企業との本格的な事業化に向けたプロジェクトの協議を開始しており、早期リリースに向けて開発を進めております。
ビジネスインテリジェンス分野
ビジネスインテリジェンス分野においては、昨年度より続く不正・コンプライアンスリスクの未然防止に対する社会的な要請の高まりや、企業のDX推進強化に伴う需要の増加を背景に、当期は、特に株式会社三菱UFJ銀行や三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、三菱UFJ信託銀行)をはじめとする大手金融機関及び三菱電機株式会社(以下、三菱電機)などの大手製造業への導入も進展し、堅調に推移いたしました。
金融業界では、ファイアウォール規制を含む各種金融業規制への対応が求められており、製造業等のその他企業においても、情報流出・品質不正・カルテル・ハラスメントなどの不適切な事業活動による企業価値の棄損リスクや、企業の信頼性に関わるレピュテーションリスクへの対応として、コンプライアンス体制の構築が喫緊の課題となっております。一方で、コンプライアンス監査対象のデータ量及び領域の増加に伴いオペレーションは複雑化しており、人的リソースによる体制維持・拡充には限りがあることから、拡張性を確保するためのAI監査ソリューションの導入ニーズが急速に高まっております。
こうした背景のもと、当社は「KIBIT Eye(キビット アイ)」、「KIBIT Knowledge Probe(キビット ナレッジ プローブ)」を中心とした監査ソリューションを通じて、大手企業の法令・コンプライアンス全般及び各種規制対応を支援しております。加えて、企業内に散在する非構造化データを整理し、必要な情報に迅速にアクセスできる仕組みを搭載した技能伝承支援ソリューション「匠KIBIT零(タクミ キビット ゼロ)」の提供により、製造業、建設業、研究・開発企業におけるナレッジの蓄積・共有を促進し、生産性向上にも貢献してまいります。
経済安全保障分野
経済安全保障分野においては、世界情勢と社会構造の急激な変容を背景に、企業を取り巻くリスクは多様化・複雑化し、経済安全保障リスクをはじめ、人権侵害などのサステナビリティリスク、国家紛争や情報流出などに伴うBCPリスクなど、企業の直面する課題は多岐にわたり、企業の調達リスクや各国の規制強化による制裁リスクが一層高まっております。
当期においては、多様な経済安全保障上のリスクマネジメントを目的として、三菱自動車工業株式会社(以下、三菱自動車工業)が、「KIBIT Seizu Analysis(キビット セイズ アナリシス)」を導入するなど、経済安全保障の取組強化を背景に、民間企業のみならず、官公庁においても強化領域として導入実績が増加しており、事業も顕著に成長しております。
国際的に事業を営む民間企業にとって経済安全保障リスクへの対応が急務であることに加え、リスクへの事後対応だけでなく、事前対策の遅れがビジネスの機会損失に繋がる懸念が高まっており、特に民間企業のサプライチェーンリスクの可視化や、制裁リスト対象国・組織による実質支配を把握するニーズは一層増しております。当社はこれらの懸念及び課題に対して、米国の税関・国境取締局による輸入差し止めを回避するための対策や、海外からの調達を安定化させる支援を「KIBIT Seizu Analysis」のサプライチェーン解析、株主支配ネットワーク解析を用いて提供しております。
また、経済安全保障上の重要技術に関する情報漏洩や技術流出防止策において、重要な技術を適切に管理することが喫緊の課題として政府により提言されており、研究者をはじめ、所属先となる大学や研究機関、民間企業も同様に情報漏洩・技術流出リスク管理への対応の重要性、必要性が高まっております。当社は「KIBIT Seizu Analysis」を活用した株主支配ネットワーク解析や研究者ネットワーク解析を通じて、表面的な株主間関係や研究者のネットワークを見るだけでは把握できない隠れた情報漏洩・技術流出リスクを検知することができ、これらの解析結果を基にした対策提言や、取引先のデューディリジェンス等を通じて、最適な経済安全保障対策の支援を行っております。引き続き、変容する社会情勢を注視しながら「KIBIT Seizu Analysis」の機能拡充や外部との連携を進め、最適なソリューションを提供することで事業の拡大に努めてまいります。
(リーガルテックAI事業)
リーガルテックAI事業は、国内を中心とした不正調査(デジタル・フォレンジック調査)と電子データの保全・調査分析(eディスカバリ支援)で構成されております。
当期においては、当社が独自に運営するポータルサイト「FRONTEO Legal Link Portal」を通じた勉強会、ウェビナーなどの積極的なマーケティング活動の効果により、顧客である国内弁護士事務所や国内企業から不正調査(デジタル・フォレンジック調査)の問い合わせや受注が堅調に推移しました。
eディスカバリ支援市場全体は、今後も堅調な推移が見込まれる成長市場である一方で、特に米国市場においては、米国弁護士事務所によるeディスカバリ業務の内製化が進み、当社のような外部のeディスカバリベンダーへの依頼が減少し始めております。このような状況下、今後の米国子会社におけるeディスカバリ支援事業の成長拡大は見込めないと判断し、2025年3月末をもって米国子会社でのeディスカバリ支援事業を撤退することを決定いたしました。
今後は、日本におけるリーガルテックのリーディングカンパニーとして、特化型AI「KIBIT」を活用した国内デジタル・フォレンジック調査の圧倒的な実績件数と、有事の際の第三者特別委員会でも採用される等の信頼性を当社の強みとし、国内デジタル・フォレンジック調査や日本市場及び韓国市場を対象としたeディスカバリ支援事業を中心に堅実な事業運営を継続してまいります。
また、2025年3月には、当社はクレジットカード情報漏えい事故における専門調査機関である「Payment Card Industry Forensic Investigator」の認定を取得し体制を整えました。これにより、当社はクレジットカード情報漏えい事故発生時において、国際基準に準拠した体制でフォレンジック調査を提供するサービスを開始いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高6,099,403千円(前年同期比17.3%減)、営業利益527,550千円(前年同期は185,329千円の営業損失)、経常利益543,866千円(前年同期は168,112千円の経常損失)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、米国子会社におけるeディスカバリ支援事業からの撤退に伴い、海外子会社事業整理損289,743千円を特別損失として計上した一方で、法人税等調整額(益)として372,002千円を計上した結果、555,086千円(前年同期は2,843,119千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
連結業績ハイライト(単位:百万円)
■各事業の当連結会計年度のセグメント別及び連結業績の概況は以下のとおりであります。
AIソリューション事業
ライフサイエンスAI分野につきましては、塩野義製薬との「認知症・うつ病の診断支援AIプログラム事業に関する戦略的業務提携契約」に基づく収益認識に加え、「KIBIT Amanogawa(キビット アマノガワ)」の導入及び共創プロジェクト案件の積み上がりにより、売上高は354,596千円となりました。前年同期比では42.9%の減収となりましたが、これは前期に契約一時金の一部を一括で収益認識したことによる一時的な要因によるものであります。
ビジネスインテリジェンス分野につきましては、不正リスクを予見する監査AIソリューション「KIBIT Eye」が新たに三菱UFJ信託銀行及び三菱電機で導入されたことに加え、既存顧客からの受注も堅調に推移し、売上高は1,827,628千円となりました。前年同期比では1.8%の減収となりましたが、これは前期に大型案件の導入及びライセンス買取による収益を一括で計上した特殊要因の影響によるものであります。
経済安全保障分野につきましては、経済安全保障AIソリューション「KIBIT Seizu Analysis」が三菱自動車工業に導入されたことに加え、国際情勢や地政学リスクの高まり、各国の規制強化による制裁リスクの高まりを背景に、官公庁及び企業からの受注が堅調に推移いたしました。その結果、売上高は425,667千円(前年同期比34.7%増)となりました。
これらの結果、AIソリューション事業全体の売上高は2,607,892千円(前年同期比6.8%減)となりました。一方で、前期に実施したコスト構造の改善効果やビジネスインテリジェンス分野及び経済安全保障分野におけるリカーリング収益の増加による収益性の改善により、営業利益は277,703千円(前年同期比71.2%増)と大幅な増益を達成いたしました。
分野別売上高
リーガルテックAI事業
リーガルテックAI事業につきましては、米国におけるeディスカバリ支援市場の構造的変化により売上高は3,491,510千円(前年同期比23.7%減)となりました。一方、営業損益につきましては、前期に実施した全社的なコスト構造の改善効果に加え、のれん等の減損による償却負担の減少により249,846千円の営業利益(前年同期は347,583千円の営業損失)を計上しました。
サービスタイプ別売上高