事業の経過およびその成果

 当連結会計年度におけるわが国経済は緩やかな景気回復が続き、消費環境においては訪日観光客増加や株高による資産効果もあり一部高額品の取り扱いなどは堅調に推移しました。一方、本年に入り円高傾向の強まりや株価下落などによる成長の減速や訪日観光客数の下押しリスクが懸念されます。

 このような状況のもとで、当社は2017年11月に次期3ケ年計画(2018~2020年度)を発表いたしました。次の成長に向けて「収益体質の強化」と「事業構造の転換」の2軸を掲げ、百貨店がここ数十年変えてこなかった「ビジネスモデル改革」を目指しております。2017年度は同計画の助走段階として、「構造改革」「収益体質の強化」に重点的に取り組み、不採算事業の改革、コスト構造の改革、要員政策、在庫リスクの先行処理などに着手してまいりました。

 その結果、経費コントロールにより営業利益、経常利益は前期と同水準となりましたが、構造改革に伴う特別損失の計上等により、親会社株主に帰属する当期純利益は赤字となりました。

 当連結会計年度の連結決算につきましては、売上高は1兆2,688億円余(前連結会計年度比101.2%)、営業利益は244億円余(前連結会計年度比102.0%)、経常利益は273億円余(前連結会計年度比99.7%)、親会社株主に帰属する当期純損失は9億円余(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益149億円余)となりました。

 百貨店業においては、売上高は前期と同水準になりました。地域店における免税売上の伸長率が基幹3店である伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の伸長率を上回るなど、訪日観光客の増加による免税売上は好調に推移し、また高額品の売れ行きも堅調でした。一方で、中間層の消費については依然慎重姿勢が続いています。

 そのような消費環境を踏まえ、当期は収益体質の強化を目指し百貨店事業においても地域や店舗特性に応じた構造改革を徹底して進めてまいりました。この結果、限られた経営資源を新たな成長分野に再分配するため、2018年3月21日をもって伊勢丹松戸店の営業を終了いたしました。店舗の営業終了に伴うご不便につきまして、深くお詫び申しあげますとともに、今までのご支援やご愛顧に心より御礼申し上げます。今後も、地域や店舗特性に応じ、業態転換を含めたあらゆる手段を使って地域のお客さまのニーズに応えられるよう改革に取り組んでまいります。

 コスト構造改革としては、業務の効率化、宣伝費削減等、徹底したコストコントロールを行い販売費および一般管理費の削減に努めてまいりました。同時に、要員政策においては、従来からのネクストキャリア制度の見直しと拡充をいたしました。さらに、在庫リスクの先行処理として、当期中に売価で100億円以上の在庫処理を行いました。2018年度は、顧客接点の要員は維持しながらも、本社要員の削減などを行うことにより引き続き要員構成の最適化を図ってまいります。

 営業面においては、基幹店について中長期リモデルを含めた今後の収益の最大化に向けた計画の策定を行いました。三越日本橋本店では、お客さま一人ひとりに寄り添い、上質な暮らしのモノ・コトを日本随一のおもてなしでご提案するために、本年秋に第一期の完成を目指したリモデルを実施しております。3月にはこれに先駆けて新館1階をリフレッシュオープンいたしました。伊勢丹新宿本店におきましては、新たな「ファッションの伊勢丹」を確立すべく、お客さまのニーズにお応えするためのカテゴリーの再編とともにデジタル情報発信の象徴として、本館・メンズ館のリモデルを順次実施してまいります。支店では、2017年11月に三越恵比寿店の1階をリフレッシュオープンいたしました。「上質な日常を彩るもの」をテーマに、近隣のお客さまの日常に新たな魅力をご提案し続けるべく、心地よい住まい、美容や装いを謳歌するための品揃えを強化し、ご好評をいただいております。


 中小型店舗につきましては、構造改革の一環としてエムアイプラザ等の7店舗の営業を終了いたしました。一方、ラグジュアリーコスメの編集ショップである「イセタンミラー」は、新丸の内ビルディング、広島駅構内「ekie」、東京ミッドタウン日比谷の3店を新規出店し、合計で15店舗となりました。広島駅構内「ekie」内のショップは首都圏外で初となり、東京ミッドタウン日比谷店は約670㎡と最大規模で出店いたしました。既存の店舗につきましても好調に推移しています。

 EC事業では、基幹3店と連動した企画や展開商品の拡大によりお客さまの利便性向上に取り組んでまいりました。2018年1月より順次全国の三越伊勢丹各支店・地域店におきまして、各店の情報をお客さまに発信する新たな販促手法として「ストアアプリ」の導入を開始しました。お客さまが日頃ご利用される店舗を選択いただくことで、その店舗の情報をタイムリーにお届けできるとともに、アプリからオンラインストアへの直接アクセスも可能になりました。今後も、デジタルを活用した顧客接点の拡大の取り組みを進めてまいります。


 クレジット・金融・友の会業におきましては、株式会社エムアイカードが、グループ外部でのカード取扱高拡大、ゴールドカードの会員拡大に取り組んだことにより売上高が伸長しました。カード会員の拡大に向けて、百貨店カードにプラチナグレードを加え、国分寺ミーツ、名古屋ラシックではオリジナルカードを発行いたしました。年会費に幅を持たせ、お客さまのご利用ニーズに合わせたカードのラインナップを揃えることで、エムアイカード会員をグループ内外に拡大すべく、将来への投資を行ってまいりました。また、百貨店カードの獲得においては、エムアイポイントの活用やWEBチャネルでの獲得など、新たな検証を積極的に実施したことなどから販売管理費が増加し、営業利益は一時的に減少いたしました。

 グループのポイントプログラムである「エムアイポイント」は、その活用範囲をグループ外にも広げてまいります。また「エムアイカード」は、のれんを越えて百貨店カードの名称・デザインを統一することで百貨店全体の会員規模拡大を目指すと同時に、積極的にグループ外企業との提携カードの発行を推進し、引き続き、業績の拡大に取り組んでまいります。

 小売・専門店業につきましては、収益力の改善を図るべく株式会社三越伊勢丹フードサービスにおいて2018年1月にクイーンズ伊勢丹大宮店、2月に同ひばりが丘店を閉店した一方で、3月に横浜相鉄ジョイナス内「FOOD & TIME ISETAN YOKOHAMA」に出店いたしました。クイーンズ伊勢丹の既存店につきましては、高収益商品の強化や宣伝費をはじめとした効率的な販売管理費の運用等の構造改革を行ってまいりました。今後は、2017年度に進めた自主再建策に加え、スーパーマーケット事業分野において改革の実績をもつ株式会社丸の内キャピタルとの資本業務提携を通じ、新たに設立した株式会社エムアイフードスタイルとして早期の利益拡大を目指してまいります。

 株式会社マミーナは、債務超過を解消すべく新ブランドの導入なども行ってまいりましたが、2018年3月に事業を終了いたしました。

 不動産業につきましては、安定的な収益を確保すべく当社グループの保有する不動産活用を推進し、株式会社三越伊勢丹不動産が資本業務提携先である野村不動産株式会社との共同分譲事業の取り組みを行い増収増益となりました。

 また、株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザインは、2018年3月に横浜相鉄ジョイナス内に「FOOD & TIME ISETAN YOKOHAMA」、4月に国分寺駅北口に地域密着型新規商業施設「ミーツ国分寺」を開業し、商業施設運営を手掛けております。

 <Store for our gathering>(「ちょっと上質なライフスタイル」と「集いの場」を提案する快適なデイリープレイス)をストアコンセプトとするミーツ国分寺は、ヒトが集まり、モノが集まり、情報が集まる、地域の新たなランドマークを目指します。

 さらに海外においては、2017年7月にフィリピンにおける不動産複合開発事業への参画について発表しました。「日本」をコンセプトとした住宅分譲事業および日本での小売事業ノウハウを活かした商業施設開発に取り組むことで、フィリピンにおいて上質で新しいライフスタイルの提案をしてまいります。

 今後も、グループの保有する国内外の優良不動産を活用した、収益性のある事業機会の創出に向けた検討を進めてまいります。

 美容事業の株式会社ソシエ・ワールドおよび旅行事業の株式会社ニッコウトラベルを子会社化したこと等により売上高は前期比118.6%となり、百貨店と親和性の高い事業におきましては今後も最大限のシナジー効果を目指してまいります。一方、デジタル戦略の推進に伴い、情報処理サービス業の株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズにおけるシステム投資に伴う減価償却費が増加いたしました。

 お客さまの関心に合わせた新しい事業の創出を目指すとともに、不採算事業の見直しなどの構造改革を引き続き進めてまいります。

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2018/06/18 12:00:00 +0900
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