事業の経過およびその成果

 当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善傾向がみられたものの、自然災害に伴う訪日外国人の減少や供給の制約などにより、消費マインドにおいてマイナス影響を及ぼしました。また、年度後半は世界経済の不確実性が高まる中で推移いたしました。

 このような中にあって、当社グループは2018年4月に「私たちの考え方」を制定し、企業の方向性を明確に定めました。同年11月には「私たちの考え方」をベースとした「三越伊勢丹グループ中期経営計画」を策定いたしました。同計画においては、「人と時代をつなぐ三越伊勢丹グループ」の確立に向け、当社の強みを活かし、お客さまとモノ・コト・情報を「オフライン(店舗)とオンライン(EC)でマッチング」することで新たな価値を創造していくことをめざす姿として描きました。

 中期経営計画の一環として、2017年度より不採算店舗の閉鎖、不採算事業の整理を進めてきた結果、大規模構造改革は一定の目途がたちました。コスト構造改革は継続してまいりますが、2018年度は、ビジネスモデル転換に向けた事業基盤の整備、店舗の投資や店舗事業改革等の取り組みに加えて、次の成長に向けた新しい事業へのチャレンジにも着手いたしました。あわせて、コーポレート・ガバナンス体制の強化にも取り組んでまいりました。

 その結果、当連結会計年度の連結決算につきましては、売上高は1兆1,968億円余(前連結会計年度比95.3%)、営業利益は292億円余(前連結会計年度比119.7%)、経常利益は319億円余(前連結会計年度比117.1%)、親会社株主に帰属する当期純利益は134億円余(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失9億円余)となりました。

 従来、報告セグメントとして開示しておりました「小売・専門店業」は量的な重要性が低下したため、報告セグメントから除外し「その他」としております。


 百貨店業におきましては、高価格帯の雑貨や衣料品、化粧品の品揃えを強化した結果、国内百貨店を中心に売上を牽引し、既存店ベースで前年実績を上回りました。また、各社でコスト構造改革を進めてきた結果、販売管理費を大きく削減いたしました。

 お客さまの価値観、買い方、生活スタイル、加えて、市場環境も大きく変化しています。そのような中、当社グループではデジタルを活用し、最高レベルでのサービスを提供するための新たな百貨店モデルの確立をめざし、人・店舗・IT相互の力を活用したモデル転換について、先ずは基幹店において具体的取り組みに着手いたしました。

 三越日本橋本店においては、おもてなしを中心とし、パーソナルショッピングを強化した百貨店へと変化する大規模改装(第1期リモデル)を2018年10月に約30年ぶりに実施いたしました。本館1階を中心に、お客さまのご要望やご相談にお応えするカテゴリースペシャリストが常駐するデスクや特別なお客さまのラウンジを設けるなどお客さまをおもてなしする環境を整えました。カテゴリースペシャリストと案内役のガイドがIT技術を活用のうえ、情報連携し、ブランドやカテゴリーの垣根を越えた日本橋本店全体での商品提案を行える体制を整えました。

 伊勢丹新宿本店では、世界NO.1のメンズファッションストアの実現に向け、「商品」「サービス」「空間」の磨き上げを行いメンズ館のリモデルを15年ぶりに実施いたしました。世界最先端・最高峰のファッションの追求やカスタマイズできる商品の拡充、アナログとデジタルを融合したパーソナルな購買体験の提供等、お客さま一人ひとりのご要望に寄り添える環境を整え、あわせて伊勢丹の包装紙を22年ぶりに刷新いたしました。


 お客さまとの接点拡大に向け新たなオンラインビジネスにも取り組んでおります。2018年6月には定期宅配事業「ISETANDOOR」をスタートいたしました。2019年2月には伊勢丹新宿本店の強みを活かした化粧品オンラインストア「meeco(ミーコ)」を、3月にはSNS等を活用し、お客さまと双方向で商品開発・モノづくりを行うオンライン専業の「アームインアーム」を立ち上げました。

 なお、限られた経営資源を新たな成長分野へ再配分するため、収益性に課題のあった伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越、岩田屋久留米店新館の営業終了を決定いたしました。(岩田屋久留米店新館につきましては2019年3月に閉店いたしました。)営業終了に伴うご不便について深くお詫び申し上げるとともに、今までのご支援やご愛顧に御礼申しあげます。


 クレジット・金融・友の会業につきましては、株式会社エムアイカードは、グループ外企業との連携による会員規模の拡大やエムアイポイントの魅力度向上、既存カードの収益力強化等に重点的に取り組みました。

 2018年10月に「福岡ソフトバンクホークス エムアイカード」、同年11月には「レクサス東京 エムアイカードプラス プラチナ」等の新規カードを発行する等、お客さまのニーズに合わせたカードのラインナップを揃えることで、会員数の拡大を図りました。また、グループのポイントプログラムである「エムアイポイント」は、活用範囲をグループ外に拡大しております。当年度は新たに35社とのポイント交換を開始することで、お客さまの百貨店以外でのご利用を促進し、収益力向上に取り組みました。


 不動産業におきましては、商業不動産事業として2018年3月に横浜のジョイナスに食特化型ストアの新たな商業施設「FOOD&TIME ISETAN YOKOHAMA」、同年4月には国分寺駅北口に地域密着型の商業施設「ミーツ国分寺」を開業し、商業施設運営を推進しております。

 海外においては、野村不動産株式会社とフィリピン大手不動産会社のFederal Land Incorporatedとの共同事業で、フィリピンでのレジデンスおよび商業施設の複合不動産開発プロジェクトに継続して取り組み、2018年11月にレジデンス第1期の販売を開始いたしました。また、商業施設部分において、百貨店とは異なる新しい複合商業施設の名称を「MITSUKOSHI」とし、「食」を中心としたショップや業態の誘致・展開をめざしていくことを発表いたしました。

 また、株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザインは、業務運営の効率化、生産性向上を図るため、2019年4月1日付でビルマネジメント事業を株式会社三越伊勢丹アイムファシリティーズ(旧社名「株式会社アイム環境ビル管理」)へ事業承継いたしました。



 その他の事業におきましては、構造改革の一環として、不採算であった通信販売事業やファッションブランド事業を終了いたしました。不採算事業の整理により売上高は減少しましたが、経費構造への取り組みによりセグメント収益が改善しました。

 また、今後の成長が見込める旅行事業においては、株式会社三越伊勢丹旅行と株式会社ニッコウトラベルを2019年4月に企業統合し、効率化を図るとともに統合効果の追求を通じお客さまへの提供価値を高めてまいります。

 美容事業に関しては、株式会社ソシエ・ワールドが当社グループ内店舗への出店をいたしましたが、美容に対するお客さまのニーズの多様化や競争激化により売上高の減少が続いており、今後も早急な業績の回復が見込めないことから、当連結会計年度において特別損失としてのれん等の減損損失を126億円計上いたしました。

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2019/06/17 12:00:00 +0900
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