事業の経過およびその成果

 当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、大きな影響を受けました。世界的な人の移動の停滞や物の移動制限、対面サービス提供の停止等によりサプライチェーンの寸断が進み、国内においても2020年4月~6月の実質GDP成長率は前期比△7.9%、年率△28.1%と大きく停滞しました。2020年4月には緊急事態宣言が発出され、当社グループも、臨時休業(一部店舗は部分休業や時間短縮)を実施し、百貨店事業およびその他事業の売上高がほぼ消滅する等多大な影響がありました。第1回緊急事態宣言解除後は、内需において特別定額給付金の支給、Go Toキャンペーン等の政策もあり低迷していた消費は持ち直してきたものの、国内景気はインバウンド需要の回復の遅れや、感染症再拡大による緊急事態宣言の再発出もあり、雇用や所得の伸び悩みにより消費マインドは低迷が続き、不確実性が高い中で推移しました。
 このような中にあって、当社グループは2018年11月に発表した「三越伊勢丹グループ3ヶ年計画」において掲げためざす姿「オンラインとオフラインのマッチングプラットフォーマー」の実現に向けて進めておりましたが、社会環境・消費動向の変化とその後の状況を踏まえ、戦略の一部修正とスピードの向上を図るため、2020年11月に一旦取り下げ、新たな中期計画の策定を進めることとしました。

 なお、2020年度は、三越恵比寿店、イセタンハウス、バンコク伊勢丹など収益力に課題のあった店舗の営業終了、㈱三越伊勢丹研究所の事業終了、㈱三越伊勢丹不動産の株式譲渡など、経営資源の再配分、事業ポートフォリオの組み替えを進めてまいりました。今後も、新しいコミュニケーションの在り方、デジタルシフトの加速、それらを踏まえたビジネスモデル転換に向けた事業基盤の整備、収支構造の可視化による抜本的コスト構造改革を進めてまいります。

 上記の取組みを進めた結果、当連結会計年度の連結決算につきましては、売上高は8,160億円余(前連結会計年度比72.9%)、営業損失は209億円余(前連結会計年度は営業利益156億円余)、経常損失は171億円余(前連結会計年度は経常利益197億円余)、親会社株主に帰属する当期純損失は410億円余(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失111億円余)となりました。

 百貨店業では、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、玄関口でのサーモグラフィによる検温や消毒など、全店舗において安心安全に最大限に配慮しご利用いただける体制を整え、お客さまをお迎えしてきましたが、緊急事態宣言発出に伴う休業や時短営業を実施した影響で大幅な減収となりました。
 海外におきましても、2020年2月以降、中国・東南アジア・米国などを中心に、政府の規制強化の中順次休業を余儀なくされ、前年を大きく下回りました。
 感染の収束が見えない状況が続く中でありますが、伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店を中心にラグジュアリーブランドや時計・宝飾など付加価値の高い商品の売上は好調に推移しました。9月には三越日本橋本店新館7階に「ビックカメラ日本橋三越」が増床オープンし、ご好評をいただいているコンシェルジュ接客に加え、新たにフィットネス機器の提案やリフォームカウンターを新設し、サービスを拡充しています。地域店舗では伊勢丹新宿本店・三越日本橋本店からの商品お取り寄せによる外商顧客向けサービスが大きく伸長するなど、リモート接客による接客体験向上に向けた取組みもスタートしました。
 オンライン推進の取組みでは、6月にECサイトを刷新し、同時にリリースした三越伊勢丹アプリにより、店舗へ来店することなくシームレスに百貨店のサービスをご利用いただける体制が整いました。
 三越伊勢丹ECサイトでは食料品・住関連など巣ごもり需要による稼働が高まったことを受け、年末年始のオケージョン・在宅需要についてのオンライン提案を強化し、クリスマスケーキやおせち、福袋のオンライン予約・販売が伸長しました。また、食品宅配の「ISETAN DOOR」、化粧品EC「meeco」についても大きく伸長し、2020年度オンライン売上高合計で300億円を上回る結果となりました。
 11月にはリアル店舗と同様のショッピング体験をオンライン上で提供するアプリ「三越伊勢丹リモートショッピング」を立ち上げ、トライアルを開始いたしました。家にいながら百貨店ならではの接客を1to1でお楽しみいただけるコンテンツとしてご好評をいただいています。
 さらに、新しい取組みとして、仮想の都市空間でユーザー同士が会話やショッピングを楽しめるスマートフォン向けアプリ「レヴワールズ(REV WORLDS)」をスタートいたしました。リアル店舗では実現できないサービスを掛け合わせることで新しい顧客体験を提供するとともに、他社コンテンツを誘導するなどして、VRプラットフォームの拡大にも挑戦しています。
 一方で、三越恵比寿店を2月に営業終了しました。営業終了に際し、ご不便をお掛けいたしますことをお詫びいたしますとともに、長年のご愛顧に心より御礼申しあげます。


 クレジット・金融・友の会業におきましては、㈱エムアイカードが、百貨店カードおよび外部企業との提携カードの新規会員獲得やカードの利用促進による取扱高の拡大に取組みました。
 新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う臨時休業や営業時間短縮等によって、グループ百貨店内での取扱高が大きく減少し、グループ外においても、通販やスーパー・食品、家電分野は好調であるものの、飲食や旅行分野の取り扱いが低迷する結果となりました。
  グループ百貨店内でのカード獲得が苦戦したため、営業拡大の施策として、WEBチャネルでの獲得強化、Apple Pay導入による会員利便性の向上と外部利用促進、新しい顧客層の開拓のためのグループ外企業との提携カードの発行等に取組みました。
  今後は、前述した当年度の取組みの継続に加え、世の中のデジタル化の進展や、お客さまのニーズに合ったサービスを展開し、取扱高および収益の拡大につなげてまいります。

 不動産業におきましては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言を受け、商業施設の休業や営業時間の短縮を余儀なくされたため大幅な減収となりました。
 レジデンス事業においては、事業の選択と集中の一環として㈱三越伊勢丹不動産の全株式を2021年1月に外部に譲渡いたしました。このため通年では減収減益となりました。
 ㈱三越伊勢丹プロパティ・デザインの建装事業においても、三越伊勢丹の店舗やラグジュアリーホテルの内装デザイン設計・工事・個人住宅のリフォーム・リノベーション工事等の受注は堅調であるものの、コロナ禍で工事の延期等が発生した影響を受け、減収減益となりました。

 その他事業におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、減収減益となりましたが、一部の企業につきましては増益となりました。㈱三越伊勢丹ビジネス・サポートは、既存クライアントの受託領域拡大および新規クライアントの獲得を進め、増益となりました。㈱三越伊勢丹ギフト・ソリューションズは、後方部門の効率化やビジネスフローの見直し等の構造改革に取組み、減収ながら増益を確保しました。
 一方で、海外旅行が主力商品である㈱三越伊勢丹ニッコウトラベルや美容事業の㈱ソシエ・ワールドは大幅な減収となりました。㈱三越伊勢丹ニッコウトラベルは、海外旅行がコロナ禍で主力のクルーズ船ツアーの通期運航がゼロとなり、国内旅行の回復も9月以降と遅れたため、大きく減収となりました。
 なお、当社は事業構造改革、ビジネスモデル改革を進める中で、エステ事業を取り巻く環境の変化、今後の㈱ソシエ・ワールドの事業の方向性を勘案した結果、株式を譲渡することといたしました。
 今後の業績回復に向け、構造改革やコスト削減に取組むとともに、引き続き「お客さまの生活のさまざまなシーンでお役に立つこと」の実現や、百貨店事業との連携強化による価値創造に取組んでまいります。


次の項目へ
2021/06/25 12:00:00 +0900
外部サイトへ移動します 移動 ×

カメラをかざして
QRコードを
読み取ってください

{{ error }}