対処すべき課題

 2023年5月8日に新型コロナウイルスの感染上の分類が5類に移行し、訪日外国人によるインバウンド需要は回復し拡大に向かうことが予測されますが、世界的なインフレ加速、金利上昇、さらなる円安進行等による国内家計の節約志向の高まり、新たな変異株による感染拡大や行動制限の再導入の懸念など、不透明さをはらんでいます。
 そのような環境下の中、当社は全従業員を巻き込み、グループ企業理念の再整理をいたしました。私たちの強みでもある多様な人財の力を活用し「こころ動かす、ひとの力で。」をミッションとし、「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした小売グループ」を目指し、当社ならではの高付加価値を提供することでその実現に向けて取り組んでまいります。
 コロナ禍にスタートした中期経営計画は、2022年度より第1フェーズである「再生」フェーズの中で、百貨店を中心に科学的なデータに基づきサービスや商品展開を見直すことで適正化し、また、収支構造改革を進めたことで百貨店の「再生」が前倒しで進展しました。今後、早期に三越と伊勢丹統合以降最高益の達成を果たしてまいります。


中期経営計画(2022~2024年度)主要戦略

①高感度上質戦略

 伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店の両本店を憧れと共感の象徴へと進化させるべく、新宿本店はファッション、日本橋本店は伝統・文化・芸術・暮らしに注力し、その強みを外商セールスとバイヤー、店頭アテンダントが連携した新セールスネットワークにより、支店やグループ店舗に拡大展開いたしました。また、グループの力を集結し、従来百貨店ではお取り扱いのない商品やサービスの拡充により、顧客の幅広いご要望にお応えできる基盤が整備されました。今後は、あらゆる商品・サービスを提案できる体制を整備し、顧客ウォレットシェアを高めるとともに、アライアンスや、店頭、既存外商顧客からの紹介による外商顧客基盤の拡大を進めてまいります。

②個客とつながるCRM戦略

 きめ細かなサービスや商品提供を行い、あらゆる要望にお応えできるよう、顔の見えるつながる個客の拡大を進めております。つながる個客の数、および、利用額向上に向けた施策を推進し、識別顧客数、識別顧客売上高ともに大幅に伸長しています。特に三越伊勢丹アプリ会員拡大を強化することで、識別化が大きく進展いたしました。引き続き、エムアイカード会員、三越伊勢丹アプリ会員の新規獲得による顧客基盤の拡大と、利用促進による収益拡大を進めてまいります。

③連邦戦略

 百貨店業を中心に顧客や拠点を通じて、グループの力、リソースを最大化させる「連邦戦略」の取り組みでは、国内百貨店のリモデル施工、広告・訴求業務の内製化や、グループコンテンツを外部企業に向けて販売するBtoB外販を推進したほか、提携カードの発行など、アライアンスの取り組み等に着手しています。今後は、グループ企業のスキルやノウハウを組み合わせることで提供価値の向上を図り、新たな事業機会の創出を、今後の「まち化」につなげてまいります。

④まち化(CRE*)戦略

 当社保有の優良不動産の有効活用を目指す「まち化」に向けて、多くのお客さまに三越伊勢丹グループをご利用いただけるように、百貨店を核に、ホテル、レジデンス、オフィスなどの複合用途での開発により、全国の保有不動産のバリューアップを図ってまいります。百貨店を中核に複合用途を展開し、より多くの顧客を呼び込み、百貨店由来の「提供価値」を様々な「複合用途」の掛け合わせによるユニークな顧客体験を実現させます。
*CRE:コーポレート・リアル・エステート

⑤科学の視点による事業改革

 グループ全社において科学的視点より固定費と変動費のコントロールに徹底して取り組んでおります。特に、国内百貨店事業では損益分岐点売上高が引き下がったことにより、売上回復局面において利益が拡大しやすい収益構造への転換が進んだことで、大幅な業績回復に寄与いたしました。今後も、策定した「百貨店の科学」の手引書に基づき、グループ百貨店全社で経費コントロールを継続進化させ収益性の強化を進め、百貨店以外の各社においても類する抜本的な構造改革を図ってまいります。

 「再生」フェーズにおいて、百貨店を中心に事業モデル改革を進めビジネスモデル転換を図り、その資源を最大限活用し、次の「展開(まち化準備)」フェーズを前倒しすることで、グループの力を集結させ、不動産事業や金融事業の拡大、収益化を図っていく計画です。
 また、「結実」フェーズでは、目指す姿を実現し、お客さまの一人一人の暮らしを豊かにする小売グループであり続けられるよう取り組んでまいります。
 株主の皆さまにおかれましては、一層のご支援とご愛顧を賜りますよう、何卒よろしくお願い申しあげます。


三越伊勢丹グループのサステナビリティ

 当社は、長期に目指す姿の実現に向け、3つの重点取り組み(マテリアリティ)として、「人と時代をつなぐ」「持続可能な社会・時代をつなぐ」「従業員満足度の向上」を定め、サステナビリティ活動に取り組んでいます。2022年度におきましては、以下の取り組みを推進してまいりました。

①脱炭素社会の実現を見据えた省エネ・創エネ・再エネの推進などの環境課題への取り組み
②お取組先との対話を通し、責任ある調達の実現といった社会課題の解決に向けた取り組み
③従業員一人ひとりが力を最大限に発揮できるよう社内の対話活動を継続的に推進し、本人の希望に基づくキャリアチャレンジのための仕組み、自律的な学びを支援する育成体系の構築や環境の充実といった、人財への投資

 2023年3月には、国連が提唱する「国連グローバル・コンパクト(United Nations Global Compact 以下「UNGC」)」の理念に賛同し、署名いたしました。引き続き、UNGCが提唱する人権・労働・環境・腐敗防止の4分野に関する10原則を順守し、環境・サプライチェーンなどの重要課題に対してワーキンググループを組成し、継続的に実践してまいります。
 また、サステナビリティ活動のグループ全体への拡大、責任ある調達を実践するためのお取組先との協働、人財基盤の強化(専門人材の育成や戦略的な出向政策)、事業活動を通じた社会課題の解決への貢献と、豊かな未来と持続可能な社会を実現するための活動を引き続き進めてまいります。

2023年1月より、三越伊勢丹物流センター(所沢)の屋上を利用し、「創エネ」を開始いたしました。これにより、年間約240トンの温室効果ガスの削減を見込んでおります。

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2023/06/20 12:00:00 +0900
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