対処すべき課題

 今後のわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続くなかで、緩やかな回復の継続が期待されますが、海外の経済情勢や金融資本市場の変動、さらに今後の税制見直しの影響などに注視が必要と思われます。
 不動産業におきましては、オフィスビル市場は、東京都心部におけるオフィス大量供給の影響が懸念される一方で、働き方改革の進展により、多様な働き方を実現し高い生産性を生み出すオフィスへのニーズは底堅く推移すると思われます。また住宅市場においては、新築分譲価格が高値圏に留まるなかで、ストック型社会への環境変化が徐々に進み、中古住宅市場やリフォーム・リノベーション市場など、既存ストック活用に向けた分野へのニーズが高まっていくものと考えられます。

 このような事業環境のなか、当社グループは、引き続き中期経営計画に基づく2つの基本方針(「関与アセット拡大」「新たな需要創出」)と3つの成長戦略(「ライフスタイル提案型の街づくり」「循環型再投資事業の領域拡大」「ストックの活用強化」)を推進し、「価値を創造し続ける企業グループ」の実現に向けて、より長期を見据えた経営による事業拡大に取り組んでまいります。
 循環型再投資事業の領域拡大では、インフラ・インダストリーをはじめ新たな事業領域における開発が順調に進捗しており、順次収益への貢献を始めております。また、ストックの活用強化では、管理事業及び仲介事業が着実に拡大を続けており、2018年度は両事業合計で連結売上高の3割を超える水準まで成長してまいりました。引き続き、ストック活用型ビジネスの育成に注力してまいります。
 また、ライフスタイル提案型の街づくりでは、特に当社グループの主要物件が集積するだけでなく、「職」、「住」、「遊」の都市機能を融合したポテンシャルの高いエリアである広域渋谷圏で、グループの独自性を打ち出す街づくりを推進しております。
 昨年10月に当社は、広域渋谷圏への継続的投資とさらなる価値向上を図るために、公募増資及び自己株式処分を実施いたしました。あわせて、推進中の再開発事業への投資予定額約2,500億円に、今後の新規プロジェクトへの投資予定額約1,000億円を加えた、約3,500億円の投資計画(2018年度~2023年度)を新たに設定しております。資金調達による財務基盤の強化を通じて、広域渋谷圏をはじめとした都心主要エリアへの積極的投資により一層の賃貸事業基盤強化を図ってまいります。
 また、本年5月にお知らせいたしましたとおり、当社は、2年目を終え折り返し地点を迎えた現中期経営計画が、策定当初の想定を上回り順調に進捗している状況を踏まえ、計画最終年度である2020年度の目標として掲げる財務面の指標を、以下のとおり見直しいたしました。

中期経営計画 Value Frontier 2020 2020年度目標

 新たな目標値の達成に向けて、グループの総合力を活かした成長戦略を一層強力に推進するとともに、2021年度以降の新たなステージを見据えた利益成長と財務基盤の強化、また新たな収益の柱の確立と安定的なキャッシュフローの創出に、引き続き取り組んでまいります。

 また当社では、ESGへの対応を、重要な経営課題と位置付け推進しております。取締役会の構成については、昨年より独立社外取締役として女性取締役1名を含む4名に就任いただいており、経営、法律、会計など多様な視点から執行を監督できる体制とすることで実効性の強化を図っております。加えて、当社および当社グループ各社が、社会やグローバルな経営環境を踏まえた、最適なコーポレートガバナンス体制を実現するための指針として「東急不動産ホールディングスグループ コーポレートガバナンスガイドライン」を、また事業活動を通じた社会課題の解決への取り組みについて「サステナビリティビジョン」「サステナビリティ方針」を、それぞれ制定し、取り組みを推進しております。

 これらの取り組みを通じて、引き続き長期持続的な企業価値の向上を図ってまいります。なお当社は、本年8月に渋谷ソラスタへ本社を移転する予定です。広域渋谷圏の中心部である渋谷駅周辺に自らの身を置き、街とともにさらなる成長を目指してまいりたいと存じます。
 株主の皆様におかれましては、引き続き倍旧のご支援とご協力を賜りますようお願い申しあげます。

2019/06/26 12:00:00 +0900
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