第33回定時株主総会招集ご通知 証券コード : 3774
当連結会計年度における国内景気は、一部に足踏みもみられますが、緩やかに回復しました。先行きにつきましては、雇用や所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、米国の関税を含む通商政策や、物価上昇継続等の影響による下押しリスクがあり、金融資本市場の変動等にも十分注意する必要があります。
そのような景気動向の中、当社グループが主にかかわる法人ICT(*1)関連市場では、クラウドコンピューティング関連サービスやAI(*2)等の新技術の企業活動への活用の浸透、それらも含む要因によるインターネットトラフィック(*3)の継続増加、サイバーセキュリティ対策の重要性の高まり等が想定されます。企業のネットワーク及びシステムの領域は、旧来の社内ネットワークからインターネット技術も融合した多様なものへと変化しつつあり、今後も信頼性の高いネットワーク及びシステムの安定運用の重要性が増していくと想定をしております。
当連結会計年度の事業概況につきましては、企業及び官公庁におけるネットワーク更改等の需要が引き続き活況で、期間総額が十億円から百億円超の複数年大型サービスインテグレーション(*4)案件の獲得が進展しました。これらの大型案件にて、システム構築との初期的な一時売上が増加するとともに、以降のネットワークサービスやシステム運用保守に係る月額ストック売上も順次積み上がり始めました。総売上高は、システムインテグレーションの大幅増収での牽引とネットワークサービスの継続増収にて、前年同期比14.8%増と大きく伸長しました。ネットワークサービス(除くモバイル関連サービス)では、継続的なインターネットトラフィックの増加に沿い、IPサービス(*5)やセキュリティ関連サービス等のアウトソーシングサービスが堅調に推移し、売上高は前年同期比6.7%増の112,280百万円となりました。モバイル関連サービスでは、法人向けはネットワークカメラやデバイス接続等のIoT(*6)関連需要が活況で、個人向けは成熟しつつある市場のなか契約回線数は漸増し、総契約回線数は前年度末比92.9万回線増の573.9万回線、売上高は前年同期比9.0%増となりました。システムインテグレーションでは、多様な業種でネットワーク更新需要が旺盛で、システム構築売上は前年同期比37.8%増となりました。システム運用保守売上は、構築後のシステム運用案件の積み上げに加えてマルチクラウド(*7)関連サービスの需要の高まり等もあり、前年同期比14.8%増となりました。国際事業については、日本企業のグローバルネットワーク構築の需要や、サーバー構築案件が好調なPTC SYSTEM (S) PTE LTDの業績寄与等により、売上高は前年同期比14.7%増の405億円(*8)となりました。設備面では、継続的なネットワークの範囲や規模の拡張に加えて、中長期的な設備収容スペースの安定確保に向け、松江データセンターパークの新棟建設及び白井データセンターキャンパス3期棟着工に向けた取組みを推進しました。人的資本については、新規学卒者の獲得と育成を中心に強化を進めており、連結従業員数は前年度末比418名増加の5,221名となりました。また、当期における離職率(*9)は3.9%でありました。利益面では、期初からのVMware製品の実質大幅値上げ(*10)による約36億円の費用増加影響がありました。これに対応して、期中にクラウドコンピューティング関連サービスの価格転嫁及び一部ネットワークサービスの価格改定との施策を順次実施し、本件による利益へのマイナス影響は通年で約15億円となりました。当社関連会社の㈱ディーカレットDCPは、国内初の商用デジタル通貨(*11)「DCJPY」を発行のうえ第一号案件を開始し、その親会社である㈱ディーカレットホールディングスは、今後の事業展開に向け法人13社への第三者割当増資で約63.5億円を調達し、パートナー連携を強化しました。
当連結会計年度の業績につきましては、総売上高は、前年同期比14.8%増の316,831百万円(前年同期276,080百万円)となりました。売上原価は前年同期比17.1%増の248,429百万円(前年同期212,214百万円)となり、売上総利益は前年同期比7.1%増の68,402百万円(前年同期63,866百万円)となりました。内訳といたしましては、ネットワークサービスの売上高は前年同期比7.4%増の162,577百万円(前年同期151,347百万円)、売上総利益は前年同期比4.1%増の45,273百万円(前年同期43,493百万円)となりました。システムインテグレーション(含む機器販売)の売上高は前年同期比24.2%増の151,306百万円(前年同期121,819百万円)、売上総利益は前年同期比14.2%増の21,753百万円(前年同期19,042百万円)となりました。そのうち、システム構築売上は前年同期比37.8%増の68,773百万円(前年同期49,902百万円)、システム運用保守売上は前年同期比14.8%増の82,533百万円(前年同期71,917百万円)となりました。ATM運営事業の売上高は前年同期比1.2%増の2,948百万円(前年同期2,914百万円)、売上総利益は前年同期比3.4%増の1,376百万円(前年同期1,331百万円)となりました。販売管理費等(販売費及び一般管理費、その他の収益及びその他の費用の合計)は前年同期比9.9%増の38,298百万円(前年同期34,837百万円)となりました。営業利益は、前年同期比3.7%増の30,104百万円(前年同期29,029百万円)となりました。税引前利益は、主としてファンドに係る金融資産評価益201百万円(前年同期149百万円の評価益)、受取配当金145百万円(前年同期106百万円)、為替差益47百万円(前年同期533百万円の利益)及び銀行借入及びリース取引に係る支払利息1,062百万円(前年同期616百万円)等により前年同期比0.9%増の29,184百万円(前年同期28,934百万円)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期比0.5%増の19,933百万円(前年同期19,831百万円)となり、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は15.0%となりました。
ネットワークサービス売上高は、前年同期比7.4%増の162,577百万円(前年同期151,347百万円)となりました。なお、当第3四半期初に一部のサービス価格の改定を行いました。
このうち、法人向けインターネット接続サービスの売上高は、法人IoT等用途向け法人モバイルサービス及びIPサービス等の売上増加があり、前年同期比9.5%増の48,994百万円(前年同期44,725百万円)となりました。個人向けインターネット接続サービスの売上高は、個人向けモバイルサービス等の売上増加があり、前年同期比6.1%増の26,832百万円(前年同期25,285百万円)となりました。アウトソーシングサービスの売上高は、セキュリティ関連サービス等の売上増加があり、前年同期比11.7%増の59,145百万円(前年同期52,972百万円)となりました。WANサービスの売上高は、前年同期比2.7%減の27,606百万円(前年同期28,365百万円)となりました。
ネットワークサービスの売上原価は、ライセンス費用の増加等があり、前年同期比8.8%増の117,304百万円(前年同期107,854百万円)となりました。当第3四半期に、2023年度利用分のモバイルデータ接続料(*12)の単価確定による費用戻しが、前年と同規模でありました。ネットワークサービスの売上総利益は、当第3四半期初に一部のネットワークサービスの価格改定を実施したこともあり、VMware製品の実質大幅値上げによる費用増加影響を吸収し、前年同期比4.1%増の45,273百万円(前年同期43,493百万円)となり、ネットワークサービスの売上総利益率は27.8%(前年同期28.7%)となりました。
システムインテグレーション(含む機器販売)の売上高は、前年同期比24.2%増の151,306百万円(前年同期121,819百万円)となりました。
システム構築及び機器販売による一時的な売上高は、前年同期比37.8%増の68,773百万円(前年同期49,902百万円)となりました。システム運用保守による継続的な売上高は、システム運用保守案件の継続積み上げに加えて、マルチクラウド関連サービスの需要の高まり等もあり、前年同期比14.8%増の82,533百万円(前年同期71,917百万円)となりました。
システムインテグレーション(含む機器販売)の売上原価は、仕入、外注関連費用及びライセンス費用の増加等があり、前年同期比26.1%増の129,553百万円(前年同期102,777百万円)となりました。システムインテグレーションの売上総利益は、主に当上期にクラウドコンピューティング関連サービスのVMware製品に係る価格転嫁を進めたこともあり、VMware製品の実質大幅値上げによる費用増加影響を吸収し、前年同期比14.2%増の21,753百万円(前年同期19,042百万円)となり、売上総利益率は14.4%(前年同期15.6%)となりました。
当連結会計年度のシステムインテグレーション(含む機器販売)の受注は、前年同期比6.7%増の157,856百万円(前年同期147,955百万円)となりました。このうち、システム構築及び機器販売に関する受注は前年同期比1.6%増の60,817百万円(前年同期59,864百万円)、システム運用保守に関する受注は前年同期比10.2%増の97,039百万円(前年同期88,091百万円)でありました。
当連結会計年度末のシステムインテグレーション(含む機器販売)の受注残高は、前年同期末比6.0%増の115,443百万円(前年同期末108,893百万円)となりました。このうち、システム構築及び機器販売に関する受注残高は前年同期末比33.5%減の15,805百万円(前年同期末23,761百万円)、システム運用保守に関する受注残高は前年同期末比17.0%増の99,638百万円(前年同期末85,132百万円)でありました。
ATM運営事業売上高は、前年同期比1.2%増の2,948百万円(前年同期2,914百万円)となりました。
ATM運営事業売上原価は、前年同期比0.7%減の1,572百万円(前年同期1,583百万円)となりました。売上総利益は、前年同期比3.4%増の1,376百万円(前年同期1,331百万円)となり、売上総利益率は46.7%(前年同期45.7%)となりました。
セグメント別では、当連結会計年度のネットワークサービス及びシステムインテグレーション(SI)事業の売上収益は、前年同期比14.9%増の313,920百万円(前年同期273,247百万円)となり、営業利益は前年同期比3.3%増の28,932百万円(前年同期28,014百万円)となりました。当連結会計年度のATM運営事業の売上収益は、前年同期比1.2%増の2,948百万円(前年同期2,914百万円)となり、営業利益は前年同期比15.5%増の1,172百万円(前年同期1,015百万円)となりました。
文中に(*)を付した用語については、下記に記載の用語解説をご参照下さい。
(ご参考) 用語解説
1. ICT
Information and Communication Technologyの略。コンピュータによる情報通信に関するハードウェア、ソフトウェア、システム及びデータ通信等に関する技術の総称。
2. AI
Artificial Intelligenceの略。コンピュータシステムや機械が、推論、判断及び学習等の人間の知能を模倣する技術のこと。
3. インターネットトラフィック
インターネットを通じて転送されるデータ流量のこと。
4. サービスインテグレーション
初期にネットワーク構築等のシステム構築売上が計上され、以後にネットワークサービス及びシステム運用保守との月額売上が計上されるネットワークサービスとシステムインテグレーションが融合した態様での役務提供となる案件の総称。
5. IPサービス
法人向け帯域保証型インターネット専用線接続サービス。契約帯域に応じた単価設定で、企業は基幹インターネット回線として利用。
6. IoT
Internet of Thingsの略。モノのインターネットと言われ、これまでインターネットに接続されていなかった物体に通信機能を持たせることで、物体が情報通信を行うようになること。
7. マルチクラウド
Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureなどの異なる事業者のクラウドサービスを複数併用すること。
8. 国際事業の売上高はネットワークサービス及びシステムインテグレーションの売上高に内包されています。
9. ここでの離職率とは当社正社員において、期初に在籍した正社員のうち当該年度に離職した人数の割合で算出しています。
10. 詳細は、2024年5月10日公表の適時開示「2024年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)(別紙)参考資料:2024年3月期連結業績説明資料」の26頁をご参照下さい。
11. デジタル通貨
ビットコインをはじめとする暗号資産及び技巧が発行を検討している円ペックのデジタルを含む総称。
12. モバイルデータ接続料
モバイル設備の利用に係るデータ通信帯域に係る費用、Mbps当り単価のこと。