対処すべき課題

 当社グループは、これまで社会が変化するタイミングで、投資・事業開発を積極的に進めてまいりました。2023年3月期での主要事業は、エネルギー事業、レジリエンス事業、自動車事業及び金融関連事業となっておりますが、2023年3月末をもって、これまで金融関連事業の主たる事業であった暗号資産交換業を営んでいたBPJの株式全てをSBIグループに譲渡し、また、事業の選択と集中の観点から、自動車事業からの撤退も決定しております。
 2023年3月期は、米国の連邦準備制度理事会が、消費者物価指数の上昇を抑えるため政策金利であるフェデラル・ファンド金利の誘導目標を引き上げ続けたこともあって、全体的に暗号資産価格が大きく下落しました。また、海外の主要な取引所の破綻を受け、世界的に暗号資産交換業に対する規制が強化される流れにある中、暗号資産交換業の運営は、今後、コストの増加などにより一層厳しさを増していくものと認識しております。このような状況を受け、当社グループは、暗号資産交換業から撤退を決め、株式会社ビットポイントジャパンの全株式をSBIグループに譲渡いたしました。
 一方、当社が電力小売業を展開するエネルギー事業の分野においては、世界的に脱炭素社会に向かっている中で起こった資源価格の高騰や、ロシアによるウクライナ侵攻などによって引き起こされた電力価格の高騰は、エネルギー事業分野の経営環境を一層不安定なものにしました。また、容量市場の創設目的は、将来にわたって日本全体の電力供給力(kW)を確保することにあることから、需要家や発電事業者だけでなく、当社のような小売電気事業者にとってもメリットがある制度であるものの、容量拠出金の拠出額水準によっては経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。さらに、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(以下、「エネルギー供給構造高度化法」といいます。)は、一定規模以上の小売電気事業者に対して販売量に応じた非化石証書の調達義務を課しており、具体的には、2030年には、供給電力の非化石電源比率44%以上という目標が定められ、目標達成の確度を高めるために、国は毎年事業者ごとに中間目標を設定しています。再生可能エネルギーによる自社電源を有していない当社にとっては、今後、非化石証書の調達が過大な負担となることも考えられます。
 また、コロナ禍の終息は、日本社会に安定をもたらし、経済活動を再び活発にする一方で、感染症対策関連の商品を販売してきた当社にとっては、事業戦略や商品戦略を見直していく必要があります。

(1)エネルギー事業における課題
 中長期的には、2050年カーボンニュートラル達成に向けての電源の低炭素化推進、再生可能エネルギー発電の活用や環境価値の高い電力供給プランなどがありますが、短期的には、事業利益が、変動する電力の調達価額に左右されぬよう、需要家に価格変動リスクを転嫁できるような商品の設計や電力の調達、また、固定価格での電力供給を希望する需要家には、相対電源や常時バックアップで調達した電源を利用した商品の提供があげられます。また、エネルギー供給構造高度化法で電気事業者に求められている非化石電源比率(中間目標)への対応や2025年3月期より始まる容量拠出金への対応は必須になります。

(2)レジリエンス事業における課題
 レジリエンス事業は、蓄電池事業、省エネコンサルティング事業及び感染症対策関連事業から構成されております。蓄電池は、もっぱら代理店を通じて販売されることから、蓄電池販売を得意とする代理店に、当社の蓄電池を取り扱ってもらえるかが課題となります。なお、これまで家庭用の蓄電池を主に取り扱ってまいりましたが、今後は産業用蓄電池の販売も本格化させてまいります。
 省エネコンサルティング事業では、これまでの事業者向けのエネルギー使用合理化・省エネ関連のソリューションに加え、BCP(事業継続計画)対策や家庭における防災・減災対策として、再生可能エネルギー、蓄電池及び発電機の組み合わせなどによる提案を積極的に展開してまいります。省エネルギーや防災・減災といった一部の効用にとどまらず、レジリエンス向上を促すための取り組みを推進してまいります。
 感染症対策関連事業の主力商品であるMA-T System関連商品(「すごい水」シリーズ)は、今後は、BtoB事業に注力することで、黒字化を目指してまいります。なお、感染症対策関連事業における取扱い商品やサービスは、人の健康・安全に密接に関連していることから、その広告や販売に関し、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)及び関連法令や広告規制等の適用を受ける場合が考えられます。当社グループでは、商材の企画・開発、広告、販売に際しては、消費者事故等の発生防止に努めるとともに、コンプライアンスを徹底してまいります。

(3)経営環境の変化への機動的な対応、これによる事業機会及び収益の追求
 将来にわたる持続的な成長を実現するため、事業規模及び収益の拡大を戦略的に推進する必要があります。当社グループは、市場のニーズやウォンツを的確にとらえ、社会・時代の変化に機動的に対応し、既存事業の強化、派生ビジネスへの取り組み、新しい発想・視点による新規の事業機会の創出をたえず行ってまいります。さらに、事業ポートフォリオを定期的に見直し、収益力及び効率性の向上を推進し、中長期的な成長基盤の確立を図ってまいります。また、成長を加速するために、その時々の経営環境を鑑み、特に、脱炭素を志向する環境意識の高い企業との協業等を含めた他の企業グループとの連携や戦略的な投資を推進してまいります。

(4)内部管理体制の拡充並びにコンプライアンス及びリスクマネジメントの強化
 当社グループは、社会的責任を果たし、持続的な成長と企業価値向上を図るために、実効的なコーポレート・ガバナンスを実現することを目的として、2017年12月に策定した「コーポレート・ガバナンス基本方針」(2021年12月一部改訂)において、コンプライアンスの徹底及びリスクマネジメントに対し積極的な取り組みを行う姿勢を明確にいたしました。コーポレートガバナンス・コードの改訂その他事業環境の変化に応じて、当社グループにふさわしいコーポレート・ガバナンスの実現に努めてまいります。また、引き続き、グループ全体において、継続的な啓発活動及び教育研修を実施し、一人ひとりが高い倫理観を醸成し、良識と責任のある行動をとることのできる企業風土を形成してまいります。

(5)優秀な人財の確保・育成
 当社グループは、中長期的な経営戦略の遂行及び対処すべき課題への取り組みに際して、事業環境の変化に円滑に対応して社会的な価値を創出することのできる優秀な人財の確保・育成が必須であると考えております。業容拡大のもと、意欲のある経験値の高い人財を確保するとともに、持続的な成長を支える人財の育成、個々のパフォーマンスの最大化のため、就業環境の整備・改善に注力してまいります。

(6)ダイバーシティの推進
 当社グループでは、これまで複数の国籍の人財を登用してまいりましたが、今まで以上に、グローバル化の推進、個性の尊重、人財の経験・スキルの多様性の向上、信頼関係作りの強化に取り組んでまいります。また、取締役だけではなく、執行役員、部長などの経営幹部への女性登用の拡大を推進してまいります。そのために、多様な個々の従業員が意欲をもって活躍できるための就労環境の整備、職場コミュニケーションの改革、人財育成等の人事・労務施策の実施に努めてまいります。

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2023/06/28 12:00:00 +0900
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