対処すべき課題

1.「新三ヵ年中期経営計画」(前中計)を振り返って

 当社グループでは、2021年度(2022年3月期)を最終年度とした、「新三ヵ年中期経営計画」(以下「前中計」という。)を終了しました。
 最重要課題として「東邦化学(上海)有限公司の黒字化と第二期増設工事稼働後の事業を軌道に乗せること」、「生産性の改善」、「人材育成と全社の意識改革」の3つを掲げた他、その他重要課題として、「電子情報産業向け需要増への増産体制の構築」「最適生産体制の構築」「海外市場開発」「高機能・高付加価値製品の開発テーマの実績化」「次期基幹システム(ERP)の導入と業務改革」を掲げ、取り組みました。
 また、最終年度の数値目標を次の通り設定いたしました。

<数値目標>
「新三ヵ年中期経営計画」(前中計)最終年度(2022年3月期)の計画及び実績(連結ベース)


 数値目標につきましては、売上高と純資産額を除き、大幅な未達となりました。特に営業利益及び売上高営業利益率については目標数値の5割に達しませんでした。2年にわたる新型コロナウイルスの影響、関連子会社である東邦化学(上海)有限公司での中国国務院査察による生産停止指示の影響、更には2021年、特に同年央以降の原料・資材・用役費の急騰による影響等、想定外のマイナス要因が重なった一方、固定費は2018年以降に実施した設備投資及び人材投資に伴い増加した結果であります。

 最重要課題の「東邦化学(上海)有限公司の黒字化と第二期増設工事稼働後の事業を軌道に乗せる」については、2019年度に操業開始以来初の営業損益黒字化を、2020年度には初の経常損益黒字化を果たしたものの、2021年度は、コロナ禍に加えて生産停止指示(約3ヵ月間)の影響もあり、市場開拓活動や国内工場からの製造移管が大幅に遅れ、更に原料高騰も追い打ちとなり、営業損益は大幅な赤字となり、第二期増設工事稼働後の同社事業を軌道に乗せるには至りませんでした。
 「生産性改善」については、製造設備の大型化に伴うスケールアップやDCS(分散制御システム)化による省力化・省人化の他、製造工程の短縮、生産場所や生産設備の最適化、生産合理化のための投資等を進め、前中計を設定した際に掲げた課題は概ね完了し、確実に進捗いたしました。
 「人材育成と全社の意識改革」については、経営階層の世代交代や組織再編、最適人員配置、風通しの良い組織づくりなどでは大きな前進があった一方、採算意識とスピードに対する意識の改善はいまだ不十分であり、重要課題として次期中計に持ち越す形となりました。

 その他の重要課題のうち「電子情報産業向け需要増への増産体制の構築」については、2021年12月に千葉工場に新プラントが完工した他、同事業の生産合理化による生産性改善にも着手するなど、確実に前進しました。
 「最適生産体制の構築」については、千葉工場から電子情報材料以外の製品を他工場へ製造移管し、生産場所や設備の最適化を実施するなど進捗はあったものの、コロナ禍で東邦化学(上海)有限公司の第二期増設工事完工後の製造移管に遅れが生じ、計画の達成には至りませんでした。
 「海外市場開発」については、渡航制限により日本からの営業活動ができない中、子会社である東邦化貿易(上海)有限公司を活用し、日本からはリモート商談で市場開拓活動を実施してまいりましたが、2年にわたるコロナ禍の影響を受け、計画に対し大きく遅れる結果となりました。
 「高機能・高付加価値製品の開発テーマの実績化」については、電子情報材料では長年注力してきた先端製品の販売が始まりつつある他、香粧原料や土木建築用薬剤のポリマー製品の開発では一部製品の販売を開始、またプラスチック添加剤のポリマー製品開発では技術確立において成果がありました。
 「次期基幹システム(ERP)の導入と業務改革」については、ERPは2020年5月の稼働後、安定的な運用を続けております。また、在宅勤務を支援するITインフラの整備やシステム構築を相次いで実施した他、申請書類のワークフローシステム化等、IT活用による業務の合理化を進めました。

 前中計期間中においては、生産性の改善や電子情報産業向け増産体制の構築、高機能・高付加価値製品の開発テーマの実績化をはじめとする多くの面で、今後の飛躍に向けた土台固めが着実に進捗いたしましたが、一方で業績面では、営業利益が、数値目標の大幅な未達にとどまらず、第7次中期経営計画最終年度(2018年度)対比でも大幅に下回る、誠に遺憾な結果に終わりました。当社グループの収益力不足が露呈したものとこの結果を重く受け止め、次期中計では、当社グループの収益力改善・強化に全力で取り組む所存です。

2.新三ヵ年中期経営計画「TOHO Step Up Plan 2024」
 当社グループが急速な事業環境の変化に対応し、これからも生き残り、持続的に発展できる企業になるためには、これまで以上のスピード感を持って必要な施策に取り組んで行く必要があります。また、多岐にわたる製品群と幅広い技術を有する当社グループの特色や強みは生かしながらも、今後は「選択と集中」を一層徹底し、経営資源を成長事業へ集中的に投入することが重要であると考えております。このような考えに基づき、新たな中期経営計画「TOHO Step Up Plan 2024」(以下「本中計」という。)を策定いたしました。
 本中計(2022年度~2024年度)の数値目標及び重要課題は以下のとおりです。

(1)数値目標
「TOHO Step Up Plan 2024」最終年度(2025年3月期)の数値目標(連結ベース)


(2)最重要課題
① 収益性重視の経営の推進
・「選択と集中」を一層強化するための経営資源配分
・各事業・各製品の「連結営業利益」、「連結売上高営業利益率」を指標とし、将来性等も考慮した総合的な収益性評価を基にした経営判断
・高機能・高付加価値製品の事業拡大、コモディティ化した製品の比重低減、不採算取引の取引条件是正
② 電子情報材料分野の拡大で中核事業化へ
・同分野への優先的な経営資源投入による当社中核事業への育成
・2021年12月完工の新プラント稼働及び更なる増設対応による需要増の確実な取り込み
・スピード感のある研究開発の推進、先端製品の開発への注力、製品群の拡大
③ 東邦化学(上海)有限公司を成長軌道に乗せる
・第二期増設設備の稼働率の早期向上による売上・利益拡大
・当社グループの最適生産体制強化に向けた同社の日本向け製品の割合引き上げ
・国内工場からの速やかな生産移管、アジア市場開拓の加速による計画の遅れの挽回
・2024年度の同社営業利益5億円の達成

(3)その他の重要課題
① 脱炭素化へ向けたサステナビリティ活動の取り組み強化
・「カーボンニュートラルの実現」を長期目標とし、その実現に向けたサステナビリティ活動への取り組み
・脱炭素化に向けた各種対応策の実施、本中計期間中に数値目標及び長期計画を策定
・CO2排出量の抑制につながる省エネ・省資源対策への取り組み
・環境負荷低減製品の開発への注力
② 最適生産体制の一層の強化
・「設備投資計画・製造移管スケジュール」策定とそれに沿った設備投資、製造移管の実施
・本中計期間中の設備投資は、千葉工場の電子情報材料生産設備増設、鹿島工場の貯槽増設、国内各工場の生産合理化投資の3点を中心に、優先度の高いものに限定して実施
・千葉工場は電子情報材料のウエイトを高め、それ以外の製品の一部は他工場へ製造移管
・国内外の生産拠点間でBCP体制を強化
③ 研究開発投資の選択と集中の徹底で高機能・高付加価値製品の開発を加速
・事業分野・製品群・テーマの将来性や収益性等を精査し、研究開発エネルギーを配分
・差別化できる事業分野及び高機能・高付加価値製品への研究開発エネルギーのシフト
・長期戦略テーマへの注力と早期製品化の実現
・脱炭素化・環境対応のテーマ、製品開発への注力
・プロジェクトチーム、ワーキンググループの柔軟な組成による技術の横展開と開発のスピードアップ
④ スリムな人員体制で人材育成に注力し、社員の待遇改善を図る
・最適な人員配置、省力化・省人化によるスリムな体制の維持
・リーダー及びリーダー候補の育成への注力、チャレンジ意欲の喚起
・採算意識とスピードに対する意識を一層浸透させる意識改革への取り組み
・スリムな人員体制による収益力向上、その収益を原資とした社員の待遇改善


 経営幹部以下、当社グループの全社員が、本中計が掲げる目標と課題を共有し、その達成・実現に向けて、全社一丸で取り組んでまいります。

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2022/06/23 12:00:00 +0900
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