当期における当社グループの事業の経過および成果の概況

 当期の世界経済は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う社会経済活動の制限が緩和され、需要と供給の両面で景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方、世界的なインフレとその抑制のための金融引締め強化や地政学的な緊張等の影響により、先行きが不透明な経済環境が続きました。
 米国では、物価高止まりによる消費下押し圧力や大幅利上げ継続による住宅投資減少、さらには急激な金融引締めによる一部金融機関の経営への悪影響が生じたものの、雇用環境が個人消費を下支えし、底堅く推移しました。欧州では、新型コロナウイルス感染拡大防止のための規制が緩和されたことによる消費の持ち直しや自動車生産に回復の兆し等が見られたものの、ロシア・ウクライナ情勢の影響で加速したエネルギー価格高騰・供給制約による物価上昇が継続し、景気は減速基調で推移しました。中国では、経済成長重視の政策による下支えがあったものの、ゼロコロナ政策下での長期間に亘る厳格な行動制限や制限緩和後の感染急拡大、不動産市況低迷等が影響し、景気の回復は限定的なものとなりました。
 わが国の経済は、社会経済活動の正常化が進み、緩やかな持ち直しが続いているものの、円安を背景とする物価高や原油・天然ガス、各種原材料の供給不安および価格高騰等の影響が下押し要因となり、景気の本格的な回復には至りませんでした。
 このような環境の下、当社グループでは、2030年におけるありたい姿を描き、そこへ向けての時間軸と領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、「ビジョン2030」という)からバックキャストして2025年に目指す姿の達成を見据えて策定した中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」(以下、「25中計」という)に基づき、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」および「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進してまいりました。また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組んでまいりました。
 「資本効率重視による既存事業の収益最大化」については、成長性と収益性の指標を用いて事業の位置付けを可視化し、その結果に応じて経営資源を成長が見込まれる分野に集中的に配分することにより、資本効率性を意識した経営管理を推進するとともに事業ポートフォリオの見直しを図ってまいりました。この取組みにおいて、当社連結子会社である東京特殊電線株式会社の位置付けの検討を行い、昨年12月に当社所有の同社株式全てを売却いたしました。さらに、情報通信ソリューション事業においては、高付加価値製品の拡販や人員の確保および育成強化による工場生産性の改善に注力してまいりました。また、自動車部品事業においては、コスト競争力があり変化に強い生産・供給体制の確立を推進し、加えてDX(Digital Transformation)の活用を通じた業務プロセス改善の取組みにより原価低減を図ってまいりました。
 「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」については、カーボンニュートラルの実現に貢献する新事業創出として化石資源によらないグリーンLPガス*の合成技術の開発を進めてまいりました。本取組みを実用化に向けて加速するために昨年9月には「地産地承*エネルギープロジェクトチーム」を新設いたしました。また、次世代のエネルギー源として期待される核融合*発電の開発を進める英国の顧客に対して必要とされる高温超電導線材を供給する契約を締結いたしました。
*グリーンLPガス…バイオガス(家畜の排泄物や生ゴミなどを発酵させた際に発生するメタンガスと二酸化炭素の混合ガス)を原料に生成したLPガスのこと。
*地産地承…地域の資源や文化を次世代に承継すること。
*核融合…強力な超電導マグネットで高温プラズマ(数億度)を閉じ込め、核融合反応でエネルギーを発生させる。核融合の燃料の元は海水(重水素(2H))であり、二酸化炭素(CO2)を排出せずに発電可能で環境負荷も低いことから、核融合による発電は次世代のエネルギー源として期待されている。

 「ESG経営の基盤強化」については、脱炭素社会への貢献と水・資源循環型社会への貢献等を掲げた「古河電工グループ 環境目標2030」(以下、「環境目標2030」という)の達成に取り組んでおり、そこに定める温室効果ガス排出量削減目標は、SBTi(Science Based Targets initiative)によりSBT WB2℃*の認定を取得いたしました。なお、カーボンニュートラル実現への取組みを加速するため、昨年12月に環境目標2030において設定した2030年度温室効果ガス排出量削減率をより厳しい目標値に改定いたしました。さらに、本目標値をもってSBT1.5℃認定の申請をいたしました。製造時における省エネルギー化、製品設計の見直し、水力発電や太陽光発電の活用等により目標達成を目指してまいります。また、「人材・組織実行力の強化」に継続的に取り組んでおり、人と組織の現状と改善施策の効果をモニタリングするため昨年7月に当社および国内外のグループ会社の従業員を対象とした従業員エンゲージメントの要素を含む人材・組織実行力調査を実施し、その後の活動計画に活かしております。本年3月には、女性活躍推進に優れた企業として「なでしこ銘柄」に3度目の選定を受けました。また、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む企業として「健康経営銘柄2023」にも選定されました。加えて、特に優良な健康経営を実践している企業として「健康経営優良法人2023(ホワイト500)」に5度目の認定を受けました。さらに、2021年度にガバナンスの4つ目のサブ・マテリアリティとして追加した「人権・労働慣行」については、当社グループの管理職を対象とした人権に関する教育を人権デューディリジェンスの一環として実施するとともに、人権に関する社外の通報窓口を活用し、客観性・透明性をもった救済メカニズムの構築に努めてまいりました。
*WB2℃…well-below 2℃。世界の気温上昇を産業⾰命前より2℃を⼗分に下回る⽔準に抑える温室効果ガス削減目標。

 当期の業績につきましては、情報通信ソリューション事業における北米での光ファイバ等の増収や電装エレクトロニクス事業におけるワイヤハーネス等の自動車部品の増収、また為替や銅地金価格高騰の影響により、グループ全体の売上は増加しました。損益面では、原燃料価格の高騰等がありましたが、価格転嫁による販売価格適正化の進捗や円安の進行等により増益となりました。
 その結果、連結売上高は1兆663億円(前期比14.6%増)、連結営業利益は154億円(前期比35.1%増)、連結経常利益は196億円(前期比0.1%減)となりました。連結子会社株式などの売却による投資有価証券売却益153億円などを特別利益に、関係会社事業損失23億円などを特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は179億円(前期比77.4%増)となりました。なお、海外売上高は5,490億円(前期比17.0%増)で、海外売上高比率は51.5%(前期比1.1ポイント増)となりました。
 単独の業績につきましては、売上高は3,058億円(前期比4.6%増)、営業損失は18億円(前期比23億円悪化)、経常利益は87億円(前期比34.4%増)、当期純利益は252億円(前期比258億円改善)となりました。

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2023/06/23 12:00:00 +0900
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