① 事業概況
当連結会計年度における世界経済は、国際情勢が一段と不安定化したことによる強いインフレ圧力、資源価格・原材料価格の高騰、加えて中国経済の成長鈍化など、先行きの不透明感が強まりました。当社グループにおける影響といたしましては、受注高の減少、調達部材の高騰、賃上げに伴う人件費の増加などが顕著に現れました。
② 受注高の概況
当社グループの受注環境は、中国における製造業の設備投資の鈍化、最先端半導体の新規設備投資の停滞などの影響を受け、お客様の需要動向に対する懸念が高まったことから、先々の発注を手控える動きが続き、全般的に厳しい状況となりました。
一方、国内では、本格的な回復とは言えない状況下ではありますが、受注の底入れが確認でき、当社製品の在庫が適正化されたお客様からの受注が徐々にではありますが戻りはじめました。結果として、連結受注高は前期比20.9%減少の441億4百万円となりました。
③ 売上高の概況
連結売上高は、特に前期から継続している国内受注の低迷の影響が大きく、前期比22.0%減少の557億96百万円となりました。
④ 用途別売上高の概況
用途別の売上高は、産業用ロボット向けは、主要市場である中国における設備投資の鈍化に加え、EV関係の設備投資も抑制されるなど、大幅に減少しました。また、半導体製造装置向けも、特に最先端分野において、データセンター用途、生成AI関連用途などで新たな投資に向かう姿勢は見られたものの、当期は本格的な動きには至らず、減少しました。
一方、先進医療用途(手術支援ロボット関連)は、米国のお客様を中心に堅調に需要が拡大し、売上高が増加しました。車載用途についても、半導体不足によるお客様での生産調整は前期下期より徐々に改善され、当期の売上高は堅調に推移しました。
⑤ 利益の概況
損益面につきましては、前連結会計年度に実施した生産能力増強投資に伴い、減価償却費が増加したことに加え、今期は国内生産工場の稼働率低下の影響により、営業利益は前期比98.8%減少の1億24百万円となりました。また、連結子会社ハーモニック・ドライブ・エスイーに係る無形固定資産の減損損失を281億59百万円計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純損失は248億6百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益75億95百万円)となりました。
⑥ 事業上の取り組みの概況
2023年度は、中期経営計画(2021年度〜2023年度)の最終年度として、当該計画に掲げた各施策に取り組んでまいりました。
営業面におきましては、お客様ごとの課題解決に対しさらなるスピード感をもって対応することで、受注の獲得に取り組んでまいりました。また、展示会におきましては、前期に引き続きモーションコントロール基幹部品の主要メーカー3社(THK様、SMC様、当社)による「メカトロニクスショー」を8月31日と9月1日に開催し、各社一体となった強みのアピールで多くの集客と中身の濃い商談につながる機会となりました。その他にも新用途拡大を目指し、宇宙産業関連の展示会に出展するなど、当社製品の採用機会拡大を図りました。
研究開発面におきましては、主力製品である波動歯車装置(ハーモニックドライブ®)の進化を図るとともに、外部研究機関との共同研究にも注力し、次世代のモーションコントロールに必要となり得る要素開発と製品化の取り組みを継続しております。特に新規開発案件では、最新の軽量化技術と工法開発を適用した提案を行い、お客様の技術革新に貢献しました。また、メカトロニクス分野におきましても、次世代ドライバー(制御機器)の開発に加え、トルクセンサーの開発にも注力し、製品付加価値を向上させるとともに、新たな技術基盤を強化しました。
生産面におきましては、受注高が低迷した影響を受け、国内各工場の稼働は低い状態が継続しました。しかしながら、当社はこれをチャンスと捉え、今後の需要増加を見据えたさらなる生産性の向上、品質の向上を図るべく、今しかできない改革・改善に取り組みました。情報システムを活用し、製造工程の状態把握や予実管理、打ち手の指示・支援をリアルタイムで管理するため「MES(製造実行システム)」を有明工場に導入しました。また、製造に従事する従業員のさらなる技能の向上と継承を目的に、すべての工程において「ムダ取り」をキーワードとしたオペレーションの改善と多能工化の推進を実施しました。
メカトロニクス製品については、当社から新たな製造拠点であるハーモニックウィンベル(連結子会社)への生産移管を進めるとともに、並行して生産能力も増強し、2024年10月の移管完了を予定しています。
海外生産拠点であるドイツ、アメリカの子会社においても、今後の需要増加を見据えた生産能力増強を実施しました。また、各地域のお客様向けに、現地生産品目を拡大すべく、グループの生産効率の最大化を念頭に、製品の生産移管を実施ししました。
品質面におきましては、各種製造データの「見える化」を大幅に進め、品質管理体制を強化してまいりました。
また、グループ各社間の連携にも力を注ぎ、生産移管推進に伴う「世界共通品質」の維持・改善に取り組んでまいりました。
サステナビリティ活動の取り組みでは、2023年4月にサステナビリティ委員会を発足し、経営層自らが推進していく体制を構築しました。さらに、同年11月にはマテリアリティを一部見直し、当社グループの課題をより明確にして取り組んでまいりました。また、トップダウンのみならず、全社員が積極的に参加できる「SDGs提案制度」も定着するなど、グループを挙げたサステナビリティ活動を推進しました。