企業集団の現況に関する事項

当連結会計年度における世界経済は、欧米先進国では雇用情勢が総じて安定し、景気の着実な回復がみられました。中国をはじめとしたアジア新興国でも世界経済の拡大により輸出が好調に推移しました。我が国経済は、輸出の増加傾向や、企業の好業績を背景にした個人消費が堅調に推移し、緩やかな成長が継続しました。

このような世界経済環境の中、印刷産業は、先進国ではICT(情報通信技術)の進展とメディアの多様化に伴い、出版・商業印刷における印刷需要が2000年以降漸次低迷しましたが、消費財の販売に不可欠なパッケージ印刷では、世界的に堅調な伸びを示してきました。新興国では、人口の増加や中間所得層の拡大に伴い、景気変動の影響を受けながらも印刷需要が回復基調にあります。印刷機械市場の需要動向は、欧州市場においては、英国がEU離脱問題の不透明さから引続き低迷しているものの、その他主要国では堅調に推移しました。米国では多品種小ロット印刷の流れが定着し印刷の多様化が進んでおり、オフセット印刷機の設備投資には慎重な姿勢が継続しています。中国は成熟市場への移行期にありますが、市場の構造変化による中小印刷会社の淘汰が進み、大手印刷会社を中心に自動化、省力化設備、およびパッケージ機を中心にした高付加価値機の伸びが顕著となりました。昨年5月に北京で開催された展示会が需要喚起の引き金になり、印刷機需要は回復傾向にあります。一方、中国に次ぎアジア市場で期待するインド市場は、昨年7月の新税制導入による経済的な混乱が続き、一時需要は低迷しましたが、第4四半期から受注は徐々に戻りつつあります。日本市場ではコスト削減・効率化などを目的としたオフセット印刷機の更新需要が安定的に推移し、また、スクリーン印刷機も電子部品業界の活況を受けて需要が増加しました。

このような市場環境において、当連結会計年度は第5次中期経営計画(2016/4~2019/3)の第2年度として、事業の複合化を目指す「事業構造変革」と、ソリューションビジネスにより営業領域の拡大を目指す「営業の業態変革」という2つの「変革」に引続き取組んでまいりました。

「事業構造変革」では、海外向け証券印刷機事業、DPS (デジタル印刷機) 事業、およびPE (プリンテッドエレクトロニクス) 事業を推進し、事業構造の転換を進めてまいりました。海外証券印刷機事業では各国の中央銀行や民間印刷会社からの受注活動に注力しており、昨年9月より当社製紙幣印刷機を使って印刷された英国中央銀行のポリマー製新10ポンド紙幣が流通を開始しております。また、DPS事業では29インチ枚葉デジタル印刷機「Impremia(インプレミア)IS29」の市場投入を日本・米国・欧州・中国において推進しており、「オフセット印刷機と同等の品質」との高い評価をいただいております。また、PE事業においては、昨年12月に米国の国家機関NextFlex(ネクストフレックス)と新技術の商用化に向けた開発協力に合意し、装置会員として当社の参画が決定しております。

「営業の業態変革」では、昨年5月に北京で開催された展示会「CHINA PRINT 2017 (北京国際印刷技術展示会)」で、最新鋭オフセット印刷機とデジタル印刷機を出展し、オフセットとデジタルを「つなぐ」ことで生まれる新たなビジネスモデルの展望と、最新のICT技術を駆使した稼働状況と工程管理の“見える化”を実現するソリューションを訴求しました。さらに昨年9月には、小森マシナリー(連結子会社・山形県東置賜郡)において経済成長著しいインドおよび東南アジア諸国の顧客を対象に、内覧会「KOMORI Packaging Solutions」を開催しました。新しくラインアップされたパッケージ印刷仕様の「LITHRONE(リスロン)G37」によるパッケージソリューションの実演、ならびに後加工機の断裁機「Apressia(アプリシア)CT」で加工したサンプルを紹介するなど、パッケージ市場の競争力向上のための有力なソリューションを提案し、PESP(プリントエンジニアリングサービスプロバイダー)事業を推進しました。

以上の結果、当連結会計年度における受注高は883億7千1百万円(前期比1.4%減)となり、売上高は941億6千8百万円(前期比8.7%増)となりました。また、販売量の増加による利益増および経費削減などが増益要因となり、営業利益は37億3千2百万円(前期比118.0%増)となりました。営業外損益は、前期に為替差損5億1千6百万円を計上した一方、当期は円安傾向であった結果、為替差益2億8千4百万円の計上があったことなどにより収支が改善し、当期の経常利益は44億2千万円(前期比209.1%増)となりました。特別損益は、固定資産の減損損失として、前期に5億5千3百万円を計上しましたが、当期は1億2千9百万円の計上であった一方、当期は退職給付費用1億7千万円の計上などがあり、税金等調整前当期純損益は、41億5千2百万円の利益(前期比403.8%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損益は、当期は米国の税制改正に伴い、繰延税金資産の取崩しによる法人税等調整額(借方)の計上4億3千3百万円があったものの、30億7千4百万円の利益(前期比367.6%増)となりました。

なお、海外売上高は555億7千4百万円(前期比6.4%増)で、売上高に占める割合は59.0%となりました。

企業集団の部門別売上高の状況


当連結会計年度の特記すべき事項は次のとおりであります。

新規事業のDPS事業では、高品質・安定性を実現した印刷会社向けのB2対応デジタル印刷機「Impremia IS29」が米国印刷工業会(PIA)による「インターテック技術賞2017」を受賞いたしました。1978年に創設された同賞は、グラフィックアーツや関連産業に大きな影響を及ぼすと予測される技術開発に対して贈られる名誉ある賞で、この受賞を弾みに革新的なデジタル印刷機「Impremia IS29」の拡販につなげてまいります。
新規事業のPESP事業では、印刷会社の様々なニーズに応えるため、機材・資材販売をはじめ、保守点検サービス、レトロフィット※、さらにはKGC(小森グラフィックテクノロジーセンター)におけるお客様のトレーニング等、幅広くソリューションを取り揃えています。当連結会計年度では印刷後工程向けのソリューションとして、自動搬送機能を備えた断裁システム「Apressia CTX」シリーズや、従来手作業で行われていた打抜き後シートを製品部と非製品部に仕分ける“むしり(ブランキング)工程”を自動化する「Apressia MB」シリーズを投入し、省力化が図れるラインアップを拡充しました。
(※旧型の機械に修理・改造を施し、新型に類する付加価値を付けること。)

中核事業であるオフセット印刷機事業では、成長が有望視される新興国のパッケージ市場向けに、A全判オフセット枚葉印刷機「LITHRONE G37」のラインアップ拡大を図りました。また、日本市場向けに生産効率の大幅な向上を実現する両面ワンパス印刷機である四六全判両面オフセット枚葉印刷機「LITHRONE GX44RP」の販売を開始しました。また、中国市場には、顧客ニーズに対応した省力化・自動化を実現する高付加価値機および菊全判両面オフセット枚葉印刷機「LITHRONE GX40RP」を投入し、中国における受注回復を果たしました。

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2018/06/20 12:00:00 +0900
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