対処すべき課題

 当社は、経営理念である「先端技術を先端で支える」を体現する会社であり続けるため、当社がどうありたいか、何をなすべきかを定めた中長期経営方針「グランドデザイン(10年)(2018年度~2027年度)」を2018年度に策定し、以後、この方針のもとで企業価値向上に取り組んでいます。

 そして2021年度に、「第1期中期経営計画(2018~2020年度)」(略称:MTP1)が成功裡に終了したこと、またグランドデザイン策定から3年が経過したことから、業績進捗と最新の外部環境認識に沿った内容へグランドデザインを更新しました。同時に、グランドデザイン実現に向けた道筋をより確実なものとするべく「第2期中期経営計画(2021~2023年度)」(略称:MTP2)を策定し、一段の飛躍に向けた取り組みを開始しました。

 MTP2の初年度となったこの2021年度は、当社が強みを持つスマートフォンやHPC関連で半導体テスト需要が良好に推移したこと、車載・産機・民生向けで顧客・製品戦略が奏功し売上が伸長したこと、グランドデザインの一環として強化中のシステムレベルテスト部門が順調に成長したことなどで、幸先の良いスタートを切ることができました。
 一方で、2022年度の経営環境には、多くの対処すべき課題があると認識しています。中長期的に当社の事業機会の拡大が見込まれる中において、先駆的な製品開発など、グランドデザインに沿った成長施策や事業基盤の強化策を積極果敢に展開していきます。現時点ではウクライナ情勢による直接的な影響は小さいものと認識していますが、地政学的リスクのさらなる高まり、中国のゼロコロナ政策下でのロックダウン、物流混乱、インフレ進行など、マクロ経済や事業環境の先行き不確実性が高い中、優先課題である部材調達の早急な安定化をはじめとしたリスク対応力の強化にも努めます。

1.グランドデザイン(10年)(2018年度~2027年度)
<ビジョン・ステートメント>
 「進化する半導体バリューチェーンで顧客価値を追求」

<中長期経営目標>
 「売上高4,000億円の達成」

<戦略>
 当社は、半導体の量産テスト用システムの開発・販売に加え、半導体量産工程の前後工程にある半導体設計・評価工程や製品・システムレベル試験工程といった近縁市場へ事業領域を広げることで、業容の拡大と企業価値向上を目指します。
 上記の達成に向け、「コア・ビジネスの強化、重点投資」、「オペレーショナル・エクセレンスの追求」、「さらなる飛躍への価値探求」、「新事業領域の開拓」、「ESGのさらなる推進」の5つの戦略課題に取り組みます。

 なお、グランドデザインでは当初、「売上高3,000~4,000億円」を目標としていましたが、デジタル革命の進展や市場シェア伸長などにより業績進捗が良好であったため、2021年度に長期経営目標を「売上高4,000億円の早期達成」へ修正しました。しかし半導体テスタ市場の旺盛な拡大が継続したことなどで、当初企図していた2027年度を待たず、2021年度をもってこれを早期達成しました。今後は、このたびの売上高目標達成を弾みとしつつ、半導体需要の拡大などグランドデザインの前提とした環境変化が継続する中で各戦略を推し進め、さらなる企業価値向上を目指します。

2.第2期中期経営計画(MTP2、2021~2023年度)の概要
<経営指標>
 MTP2では、さらなる成長に向けた事業強化の取り組みを推進するとともに、成長投資と株主還元の双方を拡充し、企業価値向上を図ります。この考えに基づき、MTP2において重視する経営指標を売上高、営業利益率、当期利益、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)、基本的1株当たり当期利益(EPS)とし、これらの成長に努めます。なお計画の進捗を中長期視点で評価するため、経営指標には単年の業績変動の影響を軽減できる3カ年平均の指標を用います。
 MTP2における各数値目標と初年度の進捗は、以下のとおりです。MTP2については、2021年度実績、2022年度見通しがそれぞれ目標値に対し上振れ傾向にあることから、今後財務モデルの見直しを行う予定です。
 ※下記指標の予想に用いた為替レートは、1米ドル=105円。2021年度の為替実績は1米ドル=112円。


<主な施策>
- 半導体・部品テストシステム事業部門
 ・新製品「V93000 EXA Scale」の強みを活かし、拡大するスマートフォン関連のSoC半導体やHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)デバイスの試験装置需要を取り込む
 ・2022年以降に本格拡大するミリ波関連テストにおけるリーダーポジションの確立
 ・DRAM半導体向け、不揮発性メモリ半導体向けでの強固なビジネス基盤を堅持
- メカトロニクス関連事業部門
 ・テスト品質向上につながるテストセル環境を提供し、販売機会を拡大
- サービス他部門
 ・システムレベルテスト(SLT)需要が高まる中、モバイル、HPC、メモリ/ストレージ向け等で顧客拡大。またSLT消耗品のリカーリングビジネスも拡大
 ・新規事業領域となるデータ・アナリティクス分野における最適なビジネスモデル探索を推進
※ 中長期経営方針の詳細につきましては、当社ウェブサイトの「中長期経営方針」の欄に掲載しております。
URL: https://www.advantest.com/ja/investors/management-policy/management-policy.html

3.今後の見通し 
 今後の当社を取り巻く市場環境を展望しますと、MTP2で想定したように、半導体が扱うデータ処理量や通信量の増加に伴う半導体需要のさらなる拡大、半導体の高機能化、半導体に対する社会的な信頼性要求の高まりなどの要因のもと、半導体テスト需要の拡大が継続しています。またメタバースなどのデジタル革命を体現するアプリケーションへの期待やカーボンニュートラル対応を背景に、エネルギー効率改善を実現する技術の重要度も増しています。これらを総合すれば、短期的にも中長期的にも、半導体およびその関連市場の良好な環境が期待され、半導体試験装置市場においても2022年のさらなる成長を予想しています。
 2022年度の通期連結業績予想については、これら市場見通しや各事業の今後の見通し、為替の状況などを踏まえ、売上高5,100億円、営業利益1,500億円、税引前利益1,500億円、当期利益1,125億円を予想しています。予想の前提とした為替レートは、米ドルが120円、ユーロが135円です。
 新型コロナウイルス感染症の影響については、人的移動制限や物流逼迫などによる事業上の制約が継続していますが、当連結会計年度の業績に対する影響は軽微なものに留まったと認識しています。しかしながら、変異株拡大、半導体などの部材不足の長期化、ウクライナ情勢などの地政学的リスク、インフレの進行、気候変動リスクなど、世界経済や当社の事業環境の不確実性は依然高い状態にあります。目下の優先課題である部材調達の早急な安定化をはじめ、外部環境の変化に機動的に対応してまいります。

前の項目へ
2022/06/24 12:00:00 +0900
外部サイトへ移動します 移動 ×

カメラをかざして
QRコードを
読み取ってください

{{ error }}