当社の現況に関する事項

(1)当社グループの事業の経過及び成果等

【当社グループの主要な事業内容】

 当社グループは、銀行持株会社である当社、並びに株式会社肥後銀行(以下、「肥後銀行」といいます。)、株式会社鹿児島銀行(以下、「鹿児島銀行」といいます。)、九州FG証券株式会社(以下、「九州FG証券」といいます。)を含む連結子会社18社で構成され、銀行業務を中心にリース業務、クレジットカード業務、信用保証業務、金融商品取引業務等の金融サービスに係る業務を行っております。

【金融経済環境】

 当年度のわが国経済は、雇用情勢が改善する中、企業収益は高水準で推移し、消費増税後の個人消費も比較的堅調に推移しました。また、住宅投資は弱含んだものの、設備投資は緩やかな増加傾向が続き、公共投資は底堅く推移しました。一方、米中貿易摩擦の影響で海外経済に減速の動きがみられ生産や輸出は弱含みました。総じてみると、緩やかな回復が続いていましたが、年度末にかけて新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナウイルス」といいます。)の拡大の影響を受け、急速に落ち込みました。
 こうした経済環境のもと、日経平均株価は、米中貿易協議の再開への期待やFRBなどの金融緩和政策を受け、24,000円台まで回復しましたが、新型コロナウイルスの影響から、年度末にかけて一時16,000円台まで大幅に下落しました。円相場は、期初は1ドル110円台で推移していましたが、新型コロナウイルスの影響で、一時1ドル101円台まで上昇するなど、円高ドル安が進みました。
 地元経済におきましては、生産活動や消費関連の一部で弱含みましたが、雇用情勢が堅調に推移し、全体として緩やかな回復傾向となりました。観光関連はラグビーワールドカップ等の明るい材料もあったものの、日韓関係悪化の影響や、鹿児島県で2018年のNHK大河ドラマ「西郷どん」放映効果の反動減により、弱い動きがみられました。投資関連では、再開発案件を中心に民間投資が高水準で推移していますが、熊本県においては災害復旧関連投資が徐々に減少しています。年度末にかけては新型コロナウイルスの影響が様々な業種に及んでおり、地元経済は急速に弱まっております。

【当社グループの事業の経過及び成果】

 当社は、2015年10月1日、肥後銀行と鹿児島銀行(以下、総称して「両行」といいます。)との経営統合に伴い、共同株式移転により設立いたしました。両行の地元を中心とした九州での存在感を更に発揮できる盤石な経営基盤を確立することで、広域化した新たな地域密着型ビジネスモデルを創造し、地元との信頼関係を更に強化するとともに経営の効率化を促進し、企業価値を高め、地域総合金融グループとして活力あふれる地域社会の実現に積極的に貢献してまいります。
 なお、当社グループは持続可能な成長の実現に向け、
1.「お客様の信頼と期待に応え、最適かつ最良の総合金融サービスを提供します」
2.「地域とともに成長し、活力あふれる地域社会の実現に積極的に貢献します」
3.「豊かな創造性と自由闊達な組織風土を育み、より良い未来へ向かって挑戦し続けます」
の3つをグループ経営理念として定めております。
 このグループ経営理念を実現すべく、第2次グループ中期経営計画(計画期間:2018年4月1日~2021年3月31日)を以下のとおり策定し、当社グループの企業価値向上・持続的成長に向け取り組んでおります。

【第2次グループ中期経営計画の進捗】
1.名  称:第2次グループ中期経営計画 ~融合ステージ~
2.計画期間:3年(2018年4月~2021年3月)
3.目指す姿:お客様にとって九州トップの総合金融グループ
4.基本方針:お客様にとって最適かつ最良のサービス提供に向けたグループシナジーの最大化
5.基本戦略・戦略の柱


6.指標目標


「融合ステージ」と位置付ける本中計期間の2年目となる2019年度において、当社グループが実施した主な施策は次のとおりです。

【「地域活力共創」グループへの進化】
「地域総合金融機能の高度化」
(「銀・証・信」連携の確立)

 当社グループは、高齢化社会の進展を背景に高まる相続・資産承継ニーズに対応するため、九州の地方銀行グループとしては初の取り組みとなる銀行本体での信託業務を2019年4月より開始いたしました。
 また、開業2周年を迎えた九州FG証券では、オンライントレード等のサービス拡大や取扱商品の拡充など、多様化するお客様の資産運用ニーズにお応えしております。
 これにより、「銀・証・信」が連携し、「ためる」・「ふやす」・「のこす」というお客様のライフサイクル・相続などのご要望に応じたサービスを、ワンストップで提供することが可能となりました。今後も両行及び九州FG証券が適切に連携し、より専門性の高い金融商品・サービスのご提供に努めてまいります。
(サービス・チャネル拡充)
 当社グループは、九州の事業者に対する成長資金供給を目的に、2020年1月にクラウドファンディング事業会社「株式会社グローカル・クラウドファンディング」をミュージックセキュリティーズ株式会社、熊本第一信用金庫、九州電力株式会社との共同出資により設立いたしました。地域が有する資源、アイデア等の具現化のため、全国の投資家の「共感する思い」と「資金」を事業者の皆様へ届ける橋渡し役となり、持続可能な地域経済の発展に貢献してまいります。
 さらに、両行ではお客様の「想い」を地域に届ける取り組みとして、発行額の一定割合をお客様がご指定する学校や団体等へ寄付・寄贈を行う私募債や医療機関債などの商品ラインナップを拡充しております。肥後銀行では「学び舎応援私募債」や「くまもと復興応援私募債」に加え、「ひぎんSDGs医療機関債」、鹿児島銀行では「かぎんSDGs推進私募債」や「かぎんSDGs推進医療機関債」を取り扱っております。
 引き続き当社グループ一丸となり、地域やお客様の課題解決に向けた取り組みを強化してまいります。
(広域化戦略)
 当社グループは、グループ一体でお客様の広域展開を支援しております。
 2019年4月に鹿児島銀行が台北駐在員事務所を開設し、既存の両行上海駐在員事務所と連携を強化するとともに、海外展開支援の一環として、海外への進出・販路拡大に関心をお持ちのお客様に対し、海外展開企業の事例等の情報提供を通じた課題解決支援を行うことを目的に、2020年1月に「中堅・中小企業の海外展開支援セミナー」を熊本・鹿児島で開催いたしました。
 また、2019年7月に福岡市に当社の福岡ビルが完成し、鹿児島銀行福岡支店、肥後銀行福岡支店(福岡法人営業室)、九州経済研究所、JR九州FGリース等のグループ企業が入居しております。福岡における当社グループの営業・情報拠点として更なる活用を進めてまいります。

「地域産業振興機能の発揮」
(地域の魅力発信)
 当社グループは、各自治体・関係団体の皆様と協働し、地域の様々な魅力を発信する取り組みを行っております。
 肥後銀行では、熊本県内各地域の魅力発信及び更なる観光客の誘致等を目的として、各自治体、関係団体の皆様と連携した地域振興フェアを開催いたしました。2019年9月には「キタクマ地域振興フェア」、10月には「阿蘇地域振興フェア2019」を開催し、県北地域や阿蘇地域の豊かな「食」「観光」「アクティビティ」を地元の皆様と共にPRいたしました。
 鹿児島銀行では、新本店ビルの完成に伴う「本店ビルよかど鹿児島」の開業により、鹿児島にゆかりがある「人・コト・モノ」が融合・発展することにより、街全体に活気と新しい価値が生まれる鹿児島の新たな賑わい拠点を目指し、五感を通して地元の魅力を発信してまいります。併せて、地域活性化や地方創生への興味・関心を持つ人材の育成を目的に、「本店ビルよかど鹿児島」に大型スクリーンを設置し、「地方創生への取り組みに関する連携協定」締結先である県内の大学など8校に在籍する学生、大学院生及び教職員による視点やアイデアを取り入れた動画を放映してまいります。
(観光分野への取り組み)
 当社グループは、地域が有する観光資源の活用や新たな観光コンテンツの企画・発信などを通じ、観光振興及び地域活性化へのご支援を行っております。
 肥後銀行では「インフラ資源を活用した観光振興に関する協定」を熊本県・九州電力株式会社と締結し、熊本県内のダム施設や発電施設等の施設を活用した観光ルートの企画・設定・プロモーションを行っております。2019年11月には「熊本県・菊池川水系のダム・発電所と紅葉の菊池渓谷を巡るツアー」を実施し、菊池川流域の豊かな自然と、川の恵みを感じられるインフラ施設や名所を観光資源として、新たな観光客を誘客し、熊本県の観光振興及び地域活性化を図りました。
 鹿児島銀行では「霧島錦江湾国立公園」における新たなアウトドアコンテンツ展開を通じた地域資源の魅力向上及び交流人口増加による地域経済活性化に繋げることを目的とし、2019年11月に指宿市(霧島錦江湾国立公園内)において上質なアウトドアサービス「グランピング」などの事業を実施いたしました。
 今後もこのような取り組みを通じた地元各地域の観光資源を発掘し、交流人口拡大による地域活性化を推進してまいります。
(農林水産分野への取り組み)
 当社グループは、農林水産分野における両行それぞれの特徴を活かし、ノウハウを共有することにより、お客様の事業拡大支援を強化しております。
 肥後銀行では、「くまもとあか牛」のブランド化・販路拡大に寄与することを目的とし、2019年11月に「くまもとあか牛」のブランド化・販路拡大に関する連携協定を熊本県畜産農業協同組合連合会及び慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科と締結いたしました。また、就職・転職先として農業を検討中の方を全国から募集し、個別マッチングを通して熊本県の農業の魅力を発信することで、農業の人手不足解決支援を図ることを目的に、2019年7月に農業関係者向け就職フェア「就農FEST熊本」を熊本県内で初めて開催いたしました。
 鹿児島銀行では、未来を担う子どもたちに、「地域の基幹産業である農業に興味を持ってほしい」「自分で育てた安心・安全な野菜を食べる喜びを経験してほしい」という想いから、鹿児島県内の小学生6万人以上を対象として、野菜栽培キット「ベジポッド」を配付いたしました。
 また、全国の地方銀行54行と合同で開催される「地方銀行フードセレクション2019」に両行が参加し、全国に向けた販路拡大を希望される食品関連企業と、地域特性あふれる安心安全な食材を必要とする食品関連担当バイヤーとのビジネスマッチングの場を提供し、地域の食品関連産業の販路開拓をサポートいたしました。
 今後も両行が連携し、農林水産分野の成長産業化・地域経済の活性化に努めてまいります。
(創業・新事業分野への取り組み)
 当社グループは、事業者に対するコンサルティングメニュー充実の一環として、創業・新事業分野への取り組みを強化しております。
 肥後銀行では、産学官連携による「熊本テックプラングランプリ」の開催や、ベンチャー支援を通じた地域産業創出を目的として、2020年3月に「肥銀ベンチャー投資事業有限責任組合」を肥銀キャピタル株式会社と共同で設立するなど、グローバルに活躍する熊本発ベンチャー企業の創出、成長支援に繋げ持続可能な地域づくりに貢献してまいります。
 鹿児島銀行では、スタートアップビジネス創出の機運醸成を目的として、鹿児島市との共催による「Kagoshima Startup Birth Project」や、鹿児島県内の研究者・地元企業が持つシーズ(技術の種)をビジネスに成長させることを目的として、鹿児島県及び株式会社リバネスとの共催による「鹿児島テックプランター」を開催するなど、地域企業の成長や雇用創出などの地域活性化に資する取り組みを行いました。
 今後も創業や第二創業、新規事業の開発などを支援することで、地域企業の成長や雇用創出などの地域活性化に資する取り組みを行ってまいります。
(産学官連携による地方創生支援)
 当社グループは、地域貢献の観点から設立した「九州FG PPP/PFIプラットフォーム」の活動の一環として継続的にセミナーを開催しております。地域の各自治体とそれぞれの地域の課題共有・課題解決に向けた協議を進めており、今後も協働して進めてまいります。

【グループ人材力の強化】
(人事部門の融合促進)
 当社グループは、グループ一体感の醸成と相互理解による組織力強化を目的として、人事異動を伴う交流や合同研修を継続的に実施しております。当年度の人事異動を伴う交流では、若手行員22名を対象に実施し、累計で148名となりました。また、合同研修では、当年度481名を含め累計で2,300名程の交流を実現することができました。
 人材育成では、幹部養成や専門領域の育成施策を積極的に展開しています。1年間を通し事業立案の観点から「企画構築力、戦略の実現・実践力」を習得させる「次世代幹部養成トレーニング」(14名)、1ヶ月の米国への語学研修(14名)や国際感覚を育む海外研修(66名)、新しい領域であるFinTechや事業戦略を学ぶセミナー(22名)などを実施いたしました。
 採用活動においては、当社主催インターンシップを初開催するなど企画部門の集約・一体運営を加速させています。また、制度面では、グループ従業員の更なる福利厚生の充実を実現すべく、グループ一体型「選択型確定拠出年金」を2020年4月より導入しております。
 当社グループは、今後も人事部門の融合を促進し、グループ人材力の強化に取り組んでまいります。
(働き方改革への取り組み)
 当社グループは、従業員が活き活きと働ける職場づくりを実現するため、働き方改革に積極的に取り組んでおります。これまで、生産性向上に効果の高い朝型勤務制度や従業員の健康維持に資するインターバル勤務制度、ライフスタイルも尊重する時差勤務制度を実施してまいりました。
 また、更なる柔軟な働き方の実現はもとより、災害や緊急事態に備えたBCP(事業継続計画)の観点から、在宅勤務を含めたテレワークの積極的な活用を2020年度より実施しております。

【グループガバナンスの高度化】
(組織の改定)
 当社グループの融合を促進し、当社の経営管理機能を強化するとともに、連結収益強化に向けた収益多角化や新たな事業開発を推進するため、2019年10月に当社の組織改正を行っております。
 経営企画部広報・IRグループ及び人事・総務室を経営企画部より分離し、「広報・IR部」「人事・総務部」を新設するとともに、当社グループの広報・IR業務、主計業務を担う人員を、当社を主とする三社兼務態勢とし、グループ内の広報・IR部門、主計部門を統合しております。
 また、グループ戦略部を「事業戦略部」に改称するとともに、部内室として新規事業開発に特化した「事業開発室」を新設しております。
(委員会の改定)
 当社グループの組織横断的な課題への対応を強化するため、2019年10月より当社の委員会体制を見直しております。
 「グループ戦略委員会」を再編し、「組織融合・本社ビル建設委員会」、「新事業開発委員会」、「デジタル・イノベーション委員会」の3委員会を新設するとともに、リスクアペタイト・フレームワークの運営を「ALM委員会」から「総合予算委員会」に移管し、両委員会における「攻め」と「守り」の役割を明確化しております。
 また、「コンプライアンス委員会」及び「リスク管理委員会」を統合し、「CR委員会」に再編しております。
(事務・システムの共通化)
 当社グループは、経営統合による統合効果の最大化に向け、事務・システムの共通化を継続して進めております。
 これまで両行がそれぞれ行っていたキャッシュカード発行業務を統合するとともに、タブレットを活用し、相続手続きやお客様から通帳・現金等をお預かりする際の事務及びシステムを統一・共通化しております。タブレットの活用については、保険窓販業務や店頭での帳票電子化などお客様の記入負担軽減、利便性向上に向け更に拡大してまいります。
 また、デジタルトランスフォーメーション進展に向けたデジタル技術への対応についても、金融アプリの開発やオープンAPIへの対応、キャッシュレス決済サービスの機能追加など、引き続きお客様への金融サービスの向上に取り組んでまいります。

「持続的な社会の実現に向けて」
 当社グループは、グループ経営理念に基づき、持続的な地域の経済発展及び社会づくりに資する取り組みを行っております。
 この取り組みを更に強化するため、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」及び「環境・社会・ガバナンス(ESG)」などの視点を取り入れ、グループ全体の持続可能な事業活動を組織的に統括することを目的に、「サステナビリティ統括室」を設置するとともに、「サステナビリティ宣言」を策定し、グループ一体で持続可能な社会づくりに取り組んでおります。
 本宣言を踏まえ、2019年7月に本業である投融資を通じた持続的な地域社会発展への貢献を目的に「投融資に関する指針」を策定し、お客様や地域の環境・社会問題解決につながる自律的で責任ある投融資を推進するとともに、気候変動の抑制や生物多様性に資する事業、地域の基幹産業の振興に資する事業等に対する積極的な支援を行っております。
 こうしたESG金融に関する当社グループの取り組みが評価され、「第1回環境省ESGファイナンス・アワード・ジャパン(融資部門)」で銀賞を受賞いたしました。
 また、両行は2020年1月、大分銀行、宮崎銀行、環境省九州地方環境事務所と「中・南九州の地域循環共生圏に関する連携協定」を締結いたしました。本連携協定の下、国立公園等の地域資源活用を通じた地域活性化や、地域へのSDGs普及・啓発への取り組みを共同で展開するなど、地域及び持続的な地方創生への対応力を強化してまいります。
 このほか、災害に強い街づくりに貢献するため、肥後銀行では防災井戸を熊本県内に計10ヶ所設置し、災害時の地域開放について必要な事項を定めた協定を関係5市と締結いたしました。また鹿児島銀行ではグループ会社等と協力して、地域のお客様のBCP策定を支援しております。
(環境保全活動・地域貢献活動への取り組み)
 当社グループは、豊かな地域社会づくりのため、環境、社会等に関する課題にも積極的に取り組んでおります。ふるさとの豊かな自然の恵みを次世代に継承するため、水源涵養林の育成や水田湛水事業、森林整備の取り組みなど、継続した環境保全活動を行っております。
 2019年7月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、2020年3月に「グリーン購入に関する指針」を策定しております。本指針に基づく購買活動を推進するとともに、脱マイクロプラスチックに向けた顧客配布用プラスチックバッグの廃止など、グループ全体で環境に配慮した取り組みを行ってまいります。
 このほか、地域行事への参加やスポーツ・文化イベントの協賛、社会福祉など、中長期にわたる地域社会活性化への貢献活動を継続して行っております。

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