当社グループの現況に関する事項

(1)事業の経過およびその成果

 2023年3月期は、中国での新型コロナウイルス感染症によるロックダウン影響や半導体供給不足による自動車メーカーでの減産など、当グループの受注台数減少につながる厳しい状況となりました。また、さらなる原材料価格の高騰をはじめ、人件費やエネルギーコストの上昇など、製造コストの上昇局面が続いています。
 そのような中でも、新たな顧客の獲得とその商権拡大や、主要客先のシェア向上に向けた積極的な営業展開、未来を見据えた次世代技術開発やさらなる高品質・高効率な生産体制の構築など、将来の成長につながる諸施策を着実に推進してきました。また、キャビン全体をコーディネートし、お客さまやユーザーに対し、新たな価値を提案できる企業への変革に向けた取り組みを加速しています。
 当連結会計年度における売上収益は、中国での新型コロナウイルス感染症によるロックダウンを受けた減産影響等はありましたが、為替換算効果や機種構成の良化等により、4,092億円と前連結会計年度に比べ592億41百万円(16.9%)の増収となりました。利益面では、徹底した合理化など原価低減に努めましたが、減産影響や諸経費の増加、英国連結子会社の解散に伴う一過性費用の発生等により、営業利益は152億57百万円と前連結会計年度に比べ77億41百万円(33.7%)の減益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は53億43百万円と前連結会計年度に比べ70億73百万円(57.0%)の減益となりました。

USドル/円平均為替レート
前連結会計年度累計平均:112.4円
    ⇒当連結会計年度累計平均:135.5円

中国元/円平均為替レート
前連結会計年度累計平均:17.5円
    ⇒当連結会計年度累計平均:19.8円

■ セグメント別の状況

 ⽇本 

前連結会計年度との主な増減理由
部品売上の減少はありましたが、為替効果や開発売上の増加等により微増となりました。

前連結会計年度との主な増減理由
原価低減に努めましたが、人事制度の見直しに伴う一過性費用の発生等により減益となりました。

 当期は、ホンダ新型CIVIC TYPE Rや新型STEP WGN用シートの生産を開始しました。
 浜松地区において拡販に向けた新工場が稼働を開始しました。また、金型の製造・技術開発を行う施設の新設を決定するなど、事業成長と部品競争力強化を図っています。

 米州 

前連結会計年度との主な増減理由
為替換算効果や機種構成の良化等により増収となりました。

前連結会計年度との主な増減理由
原価低減に努めましたが、労務費をはじめとした諸経費の増加や為替換算影響等により減益となりました。

※円安による為替換算効果は、営業利益では営業損失を計上したことで減益影響として生じています。

 当期は、ホンダ新型ACCORDや新型CR-V用シートなどの生産を開始しました。
 新機種の立ち上がりに合わせ、より進化した高効率生産を実現する自動化設備を導入するなど、厳しい事業環境下においても収益を確保できる体質改革に努めています。

 中国 

前連結会計年度との主な増減理由
新型コロナウイルス感染拡大を受けた客先の減産影響等はありましたが、為替換算効果や機種構成の良化等により微増となりました。

前連結会計年度との主な増減理由
原価低減に努めましたが、減産影響等により減益となりました。

 当期は、ホンダ新型CR-Vや新型BREEZE用シートなどの生産を開始しました。
 競争が激化する中国市場において、新規顧客獲得に向けた営業活動の強化や原価低減に資する部品現地調達の拡大を図り、収益性向上に努めています。

 アジア・欧州 

前連結会計年度との主な増減理由
英国連結子会社生産終了による減収影響等はありましたが、為替換算効果や増産等により増収となりました。

前連結会計年度との主な増減理由
英国連結子会社生産終了影響等はありましたが、増収効果等により増益となりました。

※英国連結子会社であるTS TECH UK LTDは、2021年7月をもって生産活動を終了し、解散に伴い当連結会計年度末より連結範囲から除外しています。

 当期は、アジアでホンダ新型WR-Vや新型CR-V用シートなどの生産を開始しました。
 インドでの二輪車用シート事業の再編や、欧州地域の生産拠点再編などを行うことでコスト競争力のある製品供給体制の構築に取り組みました。

■ 当グループの事業別売上収益

※「二輪事業」は、前期に対して大きく増加しています。
 これは第1四半期連結会計期間において二輪事業を営むTS TECH (MANDAL) PRIVATE LIMITEDを連結範囲に含めたことによるものです。

(2)設備投資等の状況

 当連結会計年度において実施した設備投資の総額は146億6百万円となりました。主な投資内容は、新機種にかかる設備等であります。

(3)資金調達の状況

 特記すべき事項はありません。

(4)対処すべき課題

中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

1)経営基本方針
 当グループは「人材重視」「喜ばれる企業」を経営理念としています。
 「人材重視」とは、「人こそ企業成長の決め手」と考え、働く者全てが「夢」と「情熱」をもって活き活き働くことができる企業でありたいという私たちの想いを表しています。また、経営理念には、安全性のみならず、快適さや感動を与えられる製品をキャビン全体で提供し、社会と共に持続的な成長を続けていくことで、全てのステークホルダーから「喜ばれる企業」であり続けるという強い意思が込められています。
 経営理念はTSフィロソフィーとしてグループ全体に共有され、社員一人ひとりが実践していくことで、企業価値の向上に努めています。

2)中長期経営計画

 当グループはこれまで蓄積してきたシート・内装品に関する多岐にわたる技術を礎に、変化する事業環境の中でさらなる事業成長を遂げるため、安心・安全・快適な車室内空間(キャビン)を提供できる企業へ変革すべく、2030年ビジョンに「Innovative quality company - 新たな価値を創造し続ける -」を掲げています。
 これに向けた最初の中期となる第14次中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)は、新型コロナウイルス感染症影響など厳しい状況が続きましたが、経営方針「ESG経営による企業進化」の下、事業成長に向けた仕込みを着実に行ってきました。未来の車室内空間を見据えた次世代技術開発をはじめ、新事業拡大に向けた生産体制整備、アライアンス活用など、成長に不可欠な領域へは経営資源を惜しまず投入してきました。

<第14次中期経営計画 振り返り>(2021年3月期~2023年3月期)

 新たに始まる第15次中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期、以下「第15次中期」)では、「ESG経営の実現」を経営方針に掲げ邁進します。「成長戦略」「地域戦略」「機能戦略」からなる9つの重点戦略をもって、一層の事業成長と資本効率の向上を図り、企業価値を高めていきます。

<第15次中期経営計画 重点戦略>(2024年3月期~2026年3月期)

3)重点取り組み

1.成長戦略

①キャビンコーディネート機能の獲得
 EV化や自動運転技術の進化など、自動車業界は劇的なスピードでビジネスモデルが変わり、事業環境の変化は加速度的に進んでいます。これをビジネスチャンスとし、さらなる事業成長を遂げるため、キャビン全体をコーディネートし、お客さまやユーザーに対して新たな価値を提案できる企業への変革を加速させます。
 次世代自動車を想定した車室内での過ごし方の研究や、異業種やスタートアップ企業との共同開発などにより、新技術の創出に取り組みます。生み出した技術はいち早く市場へ送り出すべく、お客さまとの先行開発を通じ、量産車への採用を図っていきます。

②新事業のさらなる拡大
 当グループは本田技研工業グループ(以下、ホンダ)を主要客先として、着実な成長を遂げてきました。しかしながら、さらなる事業成長のため、また外部環境変化による収益減少リスク低減のためには、新たなお客さまの獲得とその商権拡大が急務です。
 第15次中期は、ホンダ以外の顧客獲得に向けて設立された新事業統括本部の指揮の下、全世界のお客さまをターゲットとした、戦略的な営業活動を展開していきます。お客さまごとのニーズを見定めた開発・営業活動によりさらなる拡販を図っていきます。

③主要客先シェア向上
 新規顧客・新商権の獲得を図る一方、当グループにとってホンダビジネスは最も重要な事業基盤であることに変わりはなく、第15次中期もホンダビジネスのさらなる拡大を目指し、ホンダ向け四輪車用シートシェア向上を図っていきます。
 シェア向上には、既存商権の確実な受注と新商権による拡販が不可欠です。魅力商品創出による顧客満足度の向上や、開発初期段階からの客先との商品共創、地域・機能本部連携や地域特性を活かした受注活動により、一層のシェア向上を目指します。

2.地域戦略

①北米収益体質のV字回復
 米州地域では、その市場の大きさからグループ一の売上収益を計上する一方、変則生産を受けた労務費や生産ロスの増加、原材料価格の高騰など、さまざまな要因から収益性が低下しています。これらを払しょくし、V字回復を図るため体質改革に取り組みます。
 徹底した自動化による原価低減や、仕様・材料・工程系列の抜本的見直しによる付加価値向上など、生産変動に順応できる企業体質への変革を目指します。

②中国事業戦略の再構築
 中国地域は、自動車販売台数の低迷やお客さまの購買戦略の変化により、事業環境はより厳しいものへと変わっています。そのような中でも、当グループの収益性を支えるべく、さらなる高収益な事業体制の構築を図ります。
 新たな企業とのパートナーシップ構築による新規顧客・新商権の獲得といった、これまでとは異なる視点での取り組みを加速するなど、中国事業の在り方や事業戦略を再構築していくことで、激化する中国市場での勝ち残りを目指します。

③欧州新事業の戦略的拡大
 「新事業のさらなる拡大」に向け、欧州自動車メーカーに向けた一層の拡販を目指します。
 当期から本格稼働が始まるポーランド四輪車用シート生産会社はその立地上、ドイツ、チェコ、スロバキアなどに点在する欧州自動車メーカーへ向け、価格競争力のある製品供給が可能です。これをキーステーションとして、積極的な営業活動により、新規顧客・新商権の獲得を図っていきます。

3.機能戦略

①サプライチェーンの再構築
 感染症影響や部品供給不足による生産保全リスクや地政学的リスクなど、サプライチェーンに多大な影響を与える事象が続いており、部品供給体制の安定性は欠かせないものとなっています。
 商流やハイリスク部品の可視化による安定性向上はもちろんのこと、複雑化した工程系列のスリム化や現地調達化による原価低減、取引先と連携したCO₂排出量削減など、収益性を兼ね備えたサステナブルなサプライチェーンの構築を目指します。

②環境技術開発の推進強化
 これからの事業成長には環境負荷を回避・低減する“環境技術”が重要となります。従来から推進する軽量化技術はもとより、第15次中期はサステナブルマテリアル※への置き換え技術の構築を図ります。リサイクル材やバイオマス材料の活用、新たな鋼材加工技術の確立、部品点数が少ない製品構造の実現など、開発・製造の両領域から取り組み、環境技術をいち早く製品として世に送り出すことで、一層の事業成長と持続可能な社会への貢献に努めます。

※ 継続的に利用可能な資源から得られ、ライフサイクル全体で環境への影響が小さい原材料

③高効率生産体制の構築
 他社を凌駕する高効率な生産体制の構築により労働生産性を高めていくため、徹底した自動化やデジタル技術による自工程保証の強化など、生産ラインの進化を図っていきます。また、サステナビリティへの取り組みとして、省エネ技術活用による電力使用量削減や環境負荷を低減する生産技術の導入を図り、持続可能な“モノづくり”へと進化させていきます。

4.資本効率の向上

 当グループは、盤石な財務基盤を持つ一方、積み上げた資本をいかに効率的に活用していくかが重要な課題であると捉えています。財務安全性は維持しつつ、資本構成を改善し、キャッシュをより有益な資産へアロケーションしていくべく、重点戦略に基づく積極的な成長投資を行っていきます。
 また、第15次中期の開始に当たり、株主還元方針を刷新しました。「業績に左右されない、継続的かつ安定的な還元の実施」を基本方針と定め、具体的な指標をもって一層の株主還元を行います。
 成長投資による持続的成長と株主還元の拡充により、資本効率の向上へとつなげていきます。

<重要な指標>

※ DOE(株主資本配当率)=配当総額÷株主資本(親会社の所有者に帰属する持分)

<キャッシュの創出と使途>

5.サステナビリティ取り組みの強化
 当グループが持続的な成長を遂げるためには、企業としての社会的責任を積極的に果たし、事業活動を通じて社会課題に取り組んでいくことが不可欠です。
 第14次中期では、持続可能な社会の実現に向けて「当グループ」と「ステークホルダー」にとっての重要性の両軸から、優先的に取り組んでいくべきマテリアリティ(重要課題)を特定しました。第15次中期はマテリアリティへの取り組みをさらに加速し、企業価値向上と持続的な成長を実現していきます。

<マテリアリティKPIと2030年目標>

  • ※1 株式会社J.D. パワージャパンによる日本自動車初期品質調査SM(Initial Quality Study、略称IQS)の評点。新車購入者を対象に不具合経験を調査し、車100台当たりの不具合指摘件数として集計される。数値が低いほど品質が高いことを示す
  • ※2 当グループの事業活動に伴うCO₂排出量(Scope1+2)の削減率
  • ※3 当グループの生産活動に伴う廃棄物の削減率(残渣、汚泥などは除く)
  • ※4 当グループの工場設備での取水量(使用量)の削減率と、生産活動に伴う排水による環境影響
  • ※5 当社社員を対象とした、株式会社リンクアンドモチベーション「モチベーションクラウド」によるエンゲージメントレーティング。目標とする「AAA」は全11段階中、最上位のレーティング
  • ※6 当グループの取引先(海外を含む)を対象としたサプライヤーサステナビリティガイドラインの遵守率
  • ※7 女性・キャリア採用・外国籍・高齢者・障がい者の管理職比率

(5)重要な子会社の状況

1)重要な子会社の状況(2023年3月31日現在)

(注)
  1. 非連結子会社であったTS TECH (MANDAL) PRIVATE LIMITEDは、当連結会計年度の期首より連結の範囲に含めています。
  2. 連結子会社であったNA SERVICE, S. DE R.L. DE C.V.は、TST MANUFACTURING DE MEXICO, S. DE R.L. DE C.V.を存続会社とする吸収合併に伴い消滅したため、当連結会計年度より連結の範囲から除外しています。
  3. 連結子会社であったTS TECH UK LTDの解散に伴い、当連結会計年度末より連結の範囲から除外しています。

2)その他の重要な企業結合の状況

 本田技研工業株式会社は、2023年3月31日現在、当社の株式を30,720,000株(24.1%)保有しており、当社は同社の持分法適用の関連会社であります。当社は同社へ当社製品を販売しております。



2023/06/23 11:30:00 +0900
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