対処すべき課題

中長期的な会社の経営戦略

 当社グループのミッションは、「お客さまのお役に立つために進化し続ける 人の成長=企業の成長」という経営理念にもとづき、お客さまをはじめ、株主・投資家の皆さま、地域・社会、お取引先さま、社員など、すべての人が「しあわせ」を感じられるインクルーシブで豊かな社会を共に創ることにあります。
 当社グループでは、その結果として生み出される企業価値のさらなる向上をめざし、2021年3月期を最終年度とする5ヵ年の中期経営計画において、最終年度のROE(自己資本当期純利益率)10%以上、ROIC(投下資本利益率)4%以上、EPS(1株当たり当期純利益)130円以上を達成することを目標としております。

中期経営計画達成に向けた取組み

 小売セグメントでは、引き続きSC・定借化により、これまでの百貨店型店舗から不動産型店舗に転換することで、モノからコトへの消費者ニーズの変化に対応していくとともに、今後生じるテナントとの契約更新において、収益力向上をはかってまいります。
 EC事業については、さらなる成長に向けて、取扱点数の増加に対応した物流センターの増床、ロボットによる作業の効率化や商品管理システムの刷新を行ってまいります。また、拡大するスマートフォンのご利用に対応し、ユーザーインターフェイス(UI)をお客さまとの共創により改善してまいります。
 フィンテックセグメントでは、引き続き高い収益性の維持と事業規模の拡大の両立をはかってまいります。エポスカードについては、丸井店舗での入会促進策を強化するとともに、提携先の拡大をすすめてまいります。これまでモノ・リアル中心だった提携先に加え、今後はコト・ネット分野との提携をすすめ、2021年3月期には、年間の新規カード会員数100万人をめざしてまいります。
 また、2009年3月期のスタート以降、順調に拡大してきました家賃保証事業については、大手管理会社との提携を活かし、2021年3月期には売上収益100億円をめざしてまいります。今後は、こうした資産の増大をともなわずに利益を創出できるビジネスを強化することで、資本効率の向上をすすめてまいります。

新たな成長に向けた今後の方向性

 今後につきましては、当社グループの強みである「店舗・カード・Webの三位一体」を活かすことで、社会の課題を解決する事業を展開し、企業価値向上をはかってまいります。新規事業への投資については、社会課題を当社独自のビジネスモデルで事業化できるものにフォーカスするとともに、それを共創できるスタートアップ企業にも積極的に投資してまいります。
 これまでもアニメ事業などに投資を行い、一定の成果を上げつつありますが、当期は「シェアリング」「シェアハウス」「飲食カテゴリーの新業態開発」「パーソナライズ化(サイズ)」「ライフスタイルアプリ・ウォレット」「ファイナンシャル・インクルージョン」の6つの新規事業プロジェクトを同時に立ち上げ、新たな事業を急ピッチで開発してまいります。
 また、今後の成長に向けた最も重要な投資として、人材育成への投資も加速してまいります。前期からスタートいたしました次世代経営陣の育成プログラムやスタートアップ企業への出向、ビジネススクールへの派遣、各種プロジェクト活動や勉強会、研究会など社員が自主的に手をあげて参加し、成長するための支援をより一層充実させてまいります。
 ファイナンシャル・インクルージョンにつきましては、これまでごく一部の富裕層向けに提供されてきた金融サービスを収入や世代にかかわりなく、すべての人にご提供することをミッションとし、その実現に向けて取組んでまいりました。2018年3月期はその第一弾といたしまして、在日外国人留学生向けのクレジットカードの発行をスタートいたしましたが、2019年3月期は証券事業に参入いたします。
 証券事業参入の背景にあるのは、若者の将来不安です。若者の多くは将来へのお金の不安を抱えており、貯蓄や節約に励んでいますが、投資に対しては「難しそう」「知識がない」などの理由で踏み出せない方が多くいらっしゃいます。また日本は先進国中、金融資産に占める現預金の割合がもっとも高く、その額は900兆円にものぼると言われております。そのために、金融資産の伸びが諸外国に比べても低くなっており、金融庁は「貯蓄から投資」への流れをすすめようとしております。こうした社会的課題の解決をめざすのが、当社グループの新しい事業です。
 新事業は「若者を中心としたすべての人に」「積立NISA対象の投資信託を」「エポスカードによるクレジット払いで」ご提供してまいります。クレジットカードで投資信託を購入できるのは、日本初のスキームで、これを実現するために証券会社を設立いたします。
 事業展開にあたっては、「650万人のカード会員」「年間2億人が来店する店舗」「プラットフォームとしてのWeb」という当社グループの三位一体を活用することで、10年後には100万人にサービスをご提供し、資産残高1兆円をめざしてまいります。
 また、市場規模の大きい低額の現金決済市場への対応もすすめてまいります。現在、高額決済の領域はクレジットカード、大規模店舗における少額決済は電子マネーがそれぞれ便利な決済手段としてドメインを確立しておりますが、今後小規模店舗の少額決済においてはQRコード決済が普及すると考えております。当社グループは、当期よりスマートフォンのQRコード決済に対応するアプリを導入することにより、少額決済の市場に参入してまいります。
 また、クレジットカード市場は、EC化の進展やシェアリング・エコノミーの拡大など、長期的な構造変化を受けて、今後も継続的に拡大していくと想定されます。その中で、エポスカードはGMOペイメントゲートウェイさまとの協業でECでのご利用の拡大をはかるとともに、新たに協業するエイブルさまなどの不動産管理会社との提携による家賃のカード払いや、証券会社による積立NISAの毎月の積立金決済などリカーリング取引を強化することで、ライフタイムバリュー(事業の生涯収益)のより一層の向上をめざしてまいります。

資本政策と株主還元

 当社グループでは、事業の革新にあわせた最適な資本構成を構築し、安定的にROIC(投下資本利益率)が資本コストを上回る構造の実現をめざしております。
 拡大するフィンテックセグメントの営業債権に対しては、コストの低い有利子負債の調達をすすめております。有利子負債は営業債権の9割程度を目安とし、自己資本比率は30%前後とする最適資本構成を設定しております。
 一方で、直近の営業債権が計画以上に増加していることから、今後は営業債権の流動化を拡大することで、調達手段の多様化によるリスクの軽減をはかるとともに、総資産と負債の増加を抑制し、資産効率を高めることで、より一層の企業価値の向上をめざしてまいります。
 今後の株主還元の方向性につきましては、自己株式の取得から徐々に配当にシフトしてまいります。連結総還元性向は、自己資本比率30%を維持できる水準の70%を目安とした上で、連結配当性向は、55%程度まで段階的に高め、長期・継続的な増配をめざしてまいります。

ESGへの取組み

 当社グループでは、2016年からビジネスと環境への配慮、社会的課題の解決、ガバナンスへの取組みが一体となった未来志向の共創サステナビリティ経営への第一歩を踏み出しました。それまで取組んできた「すべての人」に向けたビジネスを「インクルージョン(包摂)」というテーマで捉え直し、併せて国連の「持続可能な開発目標」(SDGs:SustainableDevelopmentGoals)と関連付けることで、以下の4つの重点テーマに整理しました。

①お客さまのダイバーシティ&インクルージョン
お客さまの年齢・性別・身体的特徴などを超え、すべてのお客さまに喜んでいただける商品・サービス・店舗のあり方を追求していきます。

②ワーキング・インクルージョン
「お客さまのお役に立つために進化し続ける 人の成長=企業の成長」という考えのもと、社員一人ひとりにとっての活躍の場を提供していきます。

③エコロジカル・インクルージョン
自然資本に配慮した環境負荷の少ない事業の推進と、自然や環境との調和をはかるエコロジカルなライフスタイルを提案していきます。

④共創経営のガバナンス
すべてのステークホルダーの利益、「しあわせ」の調和をはかるために、マルチステークホルダーガバナンスの体制づくりに着手します。

 インクルージョンには、これまで見過ごされてきたものを包含する・取り込むという意味があり、SDGsの理念と同じ方向性を示すものです。
 当社グループは、すべての人が取り残されることなく「しあわせ」を感じられる、インクルーシブで豊かな社会をめざし、すべてのステークホルダーとの共創により、この目標達成に向けて積極的に取組んでまいります。
 当社グループのサステナビリティの取組みにつきましては、「共創サステナビリティレポート2017」をご覧ください。
(http://www.0101maruigroup.co.jp/sustainability/lib/s-report.html)

 以上のように、より一層の企業価値の向上につとめてまいる所存でございますので、株主の皆さまにおかれましては、今後とも変わらぬご支援、ご鞭撻を賜りますよう、お願い申しあげます。

次の項目へ
2018/06/25 12:00:00 +0900
外部サイトへ移動します 移動 ×