第7回定時株主総会 招集ご通知 証券コード : 3289
東急不動産ホールディングス株式会社
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善が続くなかで、消費税増税の影響も限定的なものにとどまるなど、第3四半期までは総じて緩やかな回復が継続いたしましたが、海外経済の減速や相次いだ自然災害の影響などから輸出や生産は弱い状況が続くなど、景気には変調の兆しも見られるようになりました。
不動産業におきましては、オフィスビル市場は、企業の業容拡大による需給の逼迫から、空室率は低水準で推移し、賃料水準も上昇基調が続きました。不動産投資市場では、投資家の旺盛な投資意欲と良好な資金調達環境を背景に、高値圏での厳しい物件取得競争が続きました。また分譲住宅市場では、建設コストや地価の高騰を背景とする販売価格の高止まりのなかでも、都心部を中心に立地や利便性に優れた物件には根強い需要がみられました。一方、リゾート関連市場では、相次いだ台風による風水害や雪不足など、異常気象の影響を地域によっては強く受けることとなりました。
また、2019年の年末頃から始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、第4四半期に入り世界各地へ飛び火してパンデミックの様相を呈し、移動の制限やサプライチェーンの寸断などを余儀なくされるなかで、国際金融市場も不安定となるなど、世界経済は急減速いたしました。
我が国においても、インバウンド需要の激減に加え、2020年夏の開催を予定していた東京オリンピック・パラリンピックの開催延期が決定されたほか、国内における感染者の増加を踏まえ、さらなる流行の拡大を防ぐため「外出の自粛」や「三密(密閉、密集、密接)の回避」に取り組む社会的な要請などから、幅広い業種で事業環境は急速に悪化いたしました。
当社グループでは、中期経営計画「Value Frontier 2020 価値を創造し続ける企業グループへ STAGE2『中期経営計画2017-2020』」の基本方針である「関与アセット拡大」及び「新たな需要創出」のもと、3つの成長戦略に取り組み、当期の業績は、第3四半期までは概ね計画通りに順調な進捗を続けてまいりました。しかしながら、国内においても新型コロナウイルスの感染が急速に拡大するなかで、第4四半期には当社グループ事業もその影響を強く受け、都市事業やハンズ事業における各商業施設、ウェルネス事業におけるホテル・リゾート関連事業やフィットネスクラブ事業等を中心に、各事業の業績は強い下押し圧力を受けることとなりました。
当連結会計年度は、売上高は9,631億98百万円(前期比6.8%増)、営業利益は793億12百万円(前期比1.1%減)、経常利益は674億99百万円(前期比4.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は386億11百万円(前期比3.1%増)となりました。
次に各事業についてご報告申しあげます。
都市事業におきましては、東急不動産㈱は、関与アセットの拡大に向け、渋谷や竹芝をはじめとする再開発事業を推進するとともに、インフラ・インダストリー関連施設の開発にも注力してまいりました。
広域渋谷圏においては、「渋谷ソラスタ」に続き、「渋谷フクラス」が開業を迎えました。「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」につきましても、2023年度の竣工に向け工事が進んでおります。
また、2020年開業予定の「(仮称)竹芝地区開発計画」では、街区名称を「東京ポートシティ竹芝」と定め、スマートシティの実現や、国際ビジネス拠点化に向けた街づくりを推進いたしました。
商業施設では、昨年7月に「キュープラザ池袋」(東京都豊島区)が、また12月には渋谷フクラスの商業施設部分に「東急プラザ渋谷」がそれぞれ開業し、既存の施設とともに堅調に業績を伸ばしてまいりました。しかしながら、第4四半期には新型コロナウイルス感染症の影響により、各施設において休館や営業時間短縮を余儀なくされ、外出自粛が求められるなかで集客にもブレーキが掛かる状況となりました。
インフラ・インダストリー関連では、東急不動産㈱が展開する物流施設ブランド「LOGI’Q(ロジック)」において、4物件が竣工・開業を迎えました。なかでも「LOGI’Q三芳」(埼玉県入間郡三芳町)では、空間プロデュースや従業員の健康サポートなど、グループシナジーを活かして物流施設における新しい働き方の提案に取り組みました。今後も、当社グループの総合力を活かし、働きやすく地域に開かれた施設づくりに引き続き注力してまいります。また、再生可能エネルギー事業では、昨年4月に運転を開始した「リエネ松前風力発電所」(北海道松前郡松前町)をはじめ、全国各地で太陽光発電所、風力発電所、バイオマス発電所などの開発を順次進めており、順調に事業規模を拡大しております。
東急住宅リース㈱は、賃貸住宅市場の良好な市況のもと、ストック拡大に努め、管理受託戸数が大きく増加したほか、オーナーさまとの関係強化による付帯収益獲得にも取り組んでまいりました。また、システムの機能拡充・運用改善やWEBを利用した入居申込の利用拡大等、ITを活用した生産性向上・サービス拡充にも注力いたしました。
㈱学生情報センターは、グループ各社との協業などを通じて、学生のお客さまのニーズに沿った商品構成の強化や、マーケット拡大等に継続的に取り組むとともに、グループ外企業からの受託拡大にも注力いたしました。加えて、留学生向け求人サイトを開設して学生のキャリア支援などの施策を推進し、サービスの向上にも努めてまいりました。
以上の結果、都市事業の売上高は2,926億37百万円(前期比14.1%増)、営業利益は525億25百万円(前期比5.3%増)となりました。
住宅事業におきましては、東急不動産㈱は、引き続き住宅ブランド「BRANZ(ブランズ)」の浸透に取り組むほか、需要が堅調な都心や複合再開発物件、投資家向け賃貸住宅や学生レジデンス等の開発に注力し、付加価値創出による事業規模拡大を図ってまいりました。
当期は、分譲マンションとして、大阪・梅田エリアで最大規模となる地下鉄駅直結の大型マンション「ブランズタワー梅田North」(大阪市)や、「ブランズタワー羽衣」(大阪府高石市)、「ブランズシティ横濱上大岡」(横浜市)、「ブランズ円山外苑前」(札幌市)等を売上に計上いたしました。
また、東急不動産㈱が開発し、学生情報センター㈱が運営する学生レジデンス「CAMPUS VILLAGE(キャンパス ヴィレッジ)」シリーズについては、当期に首都圏で「王子神谷」(東京都北区)など3物件、また関西圏では「京都一乗寺」(京都市)など2物件がそれぞれ竣工し、本年3月末までにシリーズ合計で9物件1,096戸まで規模を拡大いたしました。今後も、順次開発を進めてまいります。
新型コロナウイルス感染症に対しては、テレワーク環境も活かして、インターネットによる情報提供やご相談受付を強化するなど、感染拡大防止のための施策と並行した事業継続に取り組んでおります。
以上の結果、住宅事業の売上高は、分譲マンションの計上戸数増加等により、1,363億38百万円(前期比12.3%増)、営業利益は85億41百万円(前期比59.3%増)となりました。
管理事業におきましては、㈱東急コミュニティーは、①お客様満足・信頼度、②技術力、③労働環境、④事業領域・生産性の4つの領域における優位性の確立に継続して取り組み、生産性向上、ガバナンスの強化、人材の確保・育成に注力いたしました。
マンション管理では、業務品質・サービス水準の向上を図り、管理委託費の増額に取り組んでまいりました。また、専有部サービスの展開と訴求力のある商品の開発等により、付帯収益の拡大へ繋げてまいりました。
ビル管理では、渋谷駅周辺の再開発事業において、前期末竣工の「渋谷ソラスタ」に続き「渋谷フクラス」、「渋谷スクランブルスクエア」など、大型物件の管理開始が相次ぎました。2019年5月に稼働した新たな研修施設「NOTIA(ノティア)」を活用し、実践的で充実した研修プログラムを展開するなど、技術者を中心に人材の確保と育成に取り組んでまいりました。また、グループ各社や協力会社との連携を含めて、効果的・効率的な管理運営体制の構築に努めてまいりました。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響では、工事資材や清掃用品の調達等に支障が出ているほか、お客さまと従業員の安全のため一部業務縮小も行いつつ、暮らしに不可欠なサービスの継続に努めております。
期初にグループ内の事業再編により戸建リフォーム事業の移管を受けた影響もあり、管理事業の売上高は1,908億11百万円(前期比9.7%増)、営業利益は87億29百万円(前期比1.8%増)となりました。
仲介事業におきましては、東急リバブル㈱は、不動産の価値を高める最適な提案によりお客さまをサポートする「不動産情報マルチバリュークリエーター」の実現に引き続き取り組みながら、積極的な店舗展開による収益基盤の拡大に注力してまいりました。
また、個人間の不動産売買契約における売買代金等の授受を全て振り込みにて行うキャッシュレスサービスや、ホームページ上に掲載中の販売物件とお客さまのご希望の条件をAIが照合し、マッチング率の高い順に物件を表示させる「AI相性診断」など、お客さまのニーズを踏まえた新サービスの開発を推進し、一層の事業規模拡大に取り組んでまいりました。
なお、本年4月には、都心ハイグレードマンションに特化した仲介ブランド「GRANTACT(グランタクト)」の3号店として、東急プラザ渋谷内に「GRANTACT渋谷」を開業しております。
新型コロナウイルス感染症への対応では、店舗の休業や営業時間短縮、テレワークを活用した営業活動など、接触の削減に努めながら事業継続に取り組んでおります。
以上の結果、仲介事業の売上高は1,314億38百万円(前期比10.6%増)、営業利益は152億20百万円(前期比9.4%増)となりました。
ウェルネス事業におきましては、東急不動産㈱は、拡大を続けてきた宿泊関連やシニアマーケットの需要獲得に向け、開発・運営力を生かした事業拡大に取り組んでまいりました。
ホテル・リゾート事業では、熊本地震で甚大な被害を受け休業していた「阿蘇東急ゴルフクラブ」(熊本県阿蘇郡南阿蘇村)が、昨年4月に18ホールでの営業を再開したほか、都市型ホテル「東急ステイ」は本年2月に金沢、那覇、大阪へ相次いで出店いたしました。
ヘルスケア事業では、昨年4月にシニア向け住宅「クレールレジデンス横浜十日市場」(横浜市)を開業したほか、6月には介護付有料老人ホーム「光が丘パークヴィラ」(東京都練馬区)の運営会社株式を取得し、事業を承継いたしました。また、新型コロナウイルス感染症に対しては、入居者の皆さまの安心・安全な暮らしを第一に、できる限りの感染予防策を取りながら、安定的な施設運営に取り組んでおります。
次に、フィットネスクラブ「東急スポーツオアシス」では、昨年7月に「上大岡店」(横浜市)、11月に「松戸店」(千葉県松戸市)を開業いたしました。
福利厚生代行業では、㈱イーウェルは、企業・健康保険組合の福利厚生代行や健康支援サービスが堅調に推移し、収益拡大に寄与いたしました。
しかしながら、自然災害等による一部施設の営業の休止や期間短縮のほか、第4四半期には新型コロナウイルス感染症の影響もあって来客数が落ち込んだことから、ウェルネス事業の売上高は1,144億55百万円(前期比7.6%減)、営業利益は34億74百万円(前期比55.8%減)となりました。
ハンズ事業におきましては、㈱東急ハンズは、「ハンズの強み」を最大限に活かした、競合他店にはない「強い個性を持った店舗」の構築に引き続き努めてまいりました。また、百貨店とのコラボレーションにより、地方における新たなマーケットの創造に取り組む「Plugs Market(プラグス マーケット)」業態を開発し、2店舗を出店しております。
その他の新規出店としては、シンガポール共和国において昨年4月に「ジュエル店」、8月に「パヤレバ店」、本年2月に「グレート・ワールド店」を相次いで開業し、同国内の東急ハンズは直営6店舗体制となりました。また国内では6月に「浦添西海岸店」(沖縄県浦添市)、9月に「浜松店」(浜松市)、11月には「渋谷スクランブルスクエア店」(東京都渋谷区)を出店し、事業を拡大してまいりました。
一方、不採算店舗の整理を進めたほか、第4四半期に新型コロナウイルス感染症によるインバウンド需要の剥落や国内における外出自粛等の影響を大きく受けたことから、ハンズ事業の売上高は、965億74百万円(前期比0.8%減)、営業利益は2億43百万円(前期比67.9%減)となりました。
海外事業におきましては、東急不動産㈱は、北米において収益不動産への投資に取り組んだほか、東南アジア諸国における事業拡大にも取り組んでまいりました。
なかでもインドネシアでは、ジャカルタ特別州中心部において、大規模複合施設開発事業となる「メガクニンガン プロジェクト」の本体工事に着手いたしました。用地取得・開発・設計・施工・管理運営を一貫して日系企業が主導するオール・ジャパンの体制で、日本でのノウハウを活かした新しいライフスタイルのご提案をめざし、事業を推進してまいります。
新型コロナウイルス感染症に対しては、駐在員の一時帰国や在宅勤務の活用などにより、従業員の安全を守りながら、事業継続に努めております。
請負工事業では、㈱石勝エクステリアは、造園工事の積極的な営業が奏功し、売上が増加いたしました。
また、期初に戸建リフォーム事業を管理事業セグメントへ移管した影響もあり、次世代・関連事業の売上高は、352億31百万円(前期比15.3%減)、13億61百万円の営業損失となりました。