第11回定時株主総会 招集ご通知 証券コード : 3289

当社グループ(企業集団)の現況に関する事項

(1)事業の経過及びその成果

 当連結会計年度における我が国経済は、世界的な金融引き締め、物価上昇などから不透明な状況で推移したものの、新型コロナウイルス感染症の収束により、社会経済活動への影響が和らぎ、インバウンド需要の寄与などもあって、緩やかな回復基調で推移いたしました。
 このような状況のもと、当社グループは、長期経営方針における再構築フェーズと位置付ける「中期経営計画2025」に基づき、強固で独自性のある事業ポートフォリオの構築に引き続き取り組んでまいりました。堅調な不動産市場やホテル・リゾート事業における内外需要の回復など、事業環境にも恵まれたことから、各セグメントの業績は順調に推移し、本計画の最終年度である2026年3月期のすべての財務目標を2年前倒しで達成いたしました。

 当社グループの重点エリアである「広域渋谷圏」では、「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」が2023年10月に開業いたしました。また、渋谷駅中心地区の都市基盤整備を完成させるための重要なプロジェクトである「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」が2023年11月に竣工、順次開業を迎えております。今後も、ソフトとハードの両面から、「働く」「遊ぶ」「暮らす」が融合した都市環境整備を推進し、持続的に成長するまちづくりをめざしてまいります。


「環境経営」への取り組み
 当社グループは、独自性のある環境ブランドの構築により、環境先進企業として“選ばれる”存在をめざしております。脱炭素の取り組みにおいて、東急不動産㈱では、事業所及び保有施設※1の使用電力※2について100%再生可能エネルギーへの切替え完了により、金融機関を除く日本の事業会社として初めて、2024年4月にRE100※3に認定されました。
 また、生物多様性の取り組みにおいて、当社グループでは、都心における緑化や地方での生態系の保全を推進しており、2023年8月には国内不動産業で初めて、TNFD※4レポートを開示いたしました。活動の一例として、広域渋谷圏において推進している建物緑化が、地域の生物多様性に貢献していることが確認されております。引き続き、環境取り組みを起点とした事業機会の拡大を図ってまいります。

TNFDレポートはこちら

※1 RE100の対象範囲とならない、売却又は取壊し予定案件及び同社がエネルギー管理権限を有しない一部の共同事業案件を除きます。
※2 RE100が認めるグリーンガスが国内市場に存在しないため、コジェネレーション自家発電による電力を除きます。なお、東京瓦斯㈱が供給するカーボンニュートラルガスを採用することで、脱炭素を実施しております。
※3 世界で影響力のある企業や団体が、遅くとも2050年までに、事業で使用する電力の再エネ100%化にコミットする国際イニシアチブです。
※4 TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)

「DX」への取り組み
 4つの重点課題「街の求心力向上」「地域課題の解決」「最適なライフスタイルの実現」「働きがいと人手不足解消の両立」に取り組むことで、新たなサービスや体験価値を創出し、将来的な収益貢献へと繋げてまいります。DX推進人財を軸に、戦略と実行を進めることで、新たな体験価値の創出と収益モデルの確立をめざしてまいります。

 事業方針として掲げる「知的資産活用」と「パートナー共創」では、マサチューセッツ工科大学(米国)の産学連携プログラムへの参加、再生可能エネルギーを活かした地方公共団体との連携、また、包括業務提携先である東日本旅客鉄道㈱と共同で再生可能エネルギーファンドを設立するなど、外部との連携を推進してまいりました。今後とも、当社グループのバリューチェーンを活用した価値創造により、関与アセット拡大モデルの進化と事業価値の最大化を図ってまいります。

 当連結会計年度は、売上高は1兆1,030億47百万円(前期比9.7%増)、営業利益は1,202億38百万円(前期比8.9%増)、経常利益は1,103億91百万円(前期比10.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は685億45百万円(前期比42.1%増)となりました。


 オフィス・商業施設事業 

 東急不動産㈱では、重点戦略エリアとして定める渋谷、竹芝を中心に、継続的な「まちづくり」への挑戦により、新たな価値創造の実現に取り組んでまいりました。また、事業方針である「パートナー共創」の観点から、他人資本活用による関与アセットの拡大と効率性向上にも注力いたしました。

 主な取り組み 
大型開発案件「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」(東京都渋谷区)、「COCONO SUSUKINO(ココノ ススキノ)」(札幌市)を開業、また「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」(東京都渋谷区)が竣工し、順次開業
難易度が高く事例の少ない既存マルチテナントビルのZEB化により環境性能向上を推進
「東京ポートシティ竹芝」(東京都港区)が、優れた脱炭素型の都市開発事業として、国土交通省及び環境省主催の令和5年度「脱炭素都市づくり大賞」特別賞を受賞 等

「COCONO SUSUKINO(ココノ ススキノ)」(2023年11月開業)
 心躍る体験から心安らぐ体験まで多様な楽しみ方ができる新たな「あそびば」として、すすきのの夜のにぎわいに加えて昼のにぎわい創出に寄与してまいります。

(ご参考)

(東京都渋谷区)

東急プラザ原宿「ハラカド」(2024年4月開業)
 チャレンジマインドあふれる個性的な75店舗の出店、また、斬新な体験型メディアを新設することで、「多様な人々の感性を刺激する、新たな原宿カルチャーの創造・体験の場」として神宮前交差点に開業いたしました。

 住宅事業 

 東急不動産㈱は、製造・販売・管理まで含めた連続的な顧客体験価値の創出によるお客さま満足度向上、及び、“環境先進マンション”BRANZ(ブランズ)の訴求によるブランド力の向上に取り組んでまいりました。引き続き、高付加価値の再開発物件に重点を置きながら、事業の強化を図ってまいります。

 主な取り組み 
“環境先進マンション”を体感する統合マンションギャラリー「東急不動産 BRANZギャラリー 表参道」(東京都港区)を開設
「ブランズタワー大阪本町」(大阪市)、「ブランズ新札幌」(札幌市)、「ブランズ牛込柳町」(東京都新宿区)などを売上計上 等

「東急不動産 BRANZギャラリー 表参道」(2023年9月開設)
 デジタルコンテンツの活用による販売拠点の集約により、リアル体験とデジタル体験が融合した新しいマンション販売の形を提案いたします。また、ギャラリー内では、環境配慮素材の積極的な活用など、環境取り組みを推進しております。

(ご参考)

(外観イメージ)(東京都世田谷区)

「ブランズ自由が丘」(2024年2月竣工)
 世田谷区では初となる、ZEH Orientedと低炭素建築物認定を同時取得するほか、緑を育成することで建物価値やグリーンサービスの向上をめざした管理方法を採用しております。環境先進マンション「BRANZ」を体現するフラッグシップ物件となります。

 以上の結果、都市開発事業の売上高は、賃貸住宅の資産売却の増加等により、3,654億24百万円(前期比5.6%増)となりました。また、営業利益は、好調な事業環境を踏まえ、売却対象資産の見直しを実施したことから、531億80百万円(前期比9.3%減)となりました。


 再生可能エネルギー事業 

 東急不動産㈱は、再生可能エネルギー事業において、地域社会と協調した継続的な投資推進による安定利益の拡大に努めてまいりました。引き続き、風力発電事業や海外における事業展開など、新たな領域への取り組みを推進してまいります。

 主な取り組み 
当社の包括業務提携先である東日本旅客鉄道㈱と東急不動産㈱が共同で、再生可能エネルギーファンドを設立
再生可能エネルギー先進地域である欧州に進出。資本業務提携先であるリニューアブル・ジャパン㈱と共同で、スペイン王国において、太陽光発電所2箇所を取得
子供たちへの環境問題に関する学びの提供を目的とした環境教育プログラム「ReENE ÉCOLE(リエネ エコール)」の開催 等

「再生可能エネルギー事業」(2024年3月末時点)
 総定格容量は有力な再生可能エネルギー事業者として海外からも認識される1GWを上回ります。

国内発電事業

*世帯当たりの電⼒使⽤量4,716kWh/年を⽬安に算出
(太陽光発電協会「表⽰ガイドライン2023年度」より)
**環境省・経済産業省公表の『電気事業者別排出係数(2022年度実績)における⼀般送配電事業者のCO₂排出係数「438g-CO₂/kWh」(沖縄電⼒㈱以外の全国平均係数)』を使⽤
※共同事業を含みます。
※定格容量・CO₂削減量は持分換算前の値です。
※総事業数・定格容量・CO₂削減量にはルーフトップ等1事業(稼働済/開発中案件含む)を含みます。
※ルーフトップ等の棟数には低圧バルクは含みません。
※MWはパネル等容量で記載しています。

その他事業


※その他事業は稼働済/開発中案件を含みます。
※蓄電池事業は持分換算前の値です。
 MWh:蓄電池容量、MW:蓄電池出⼒で記載しています。
※海外事業は持分換算前の値です。

バルデカレタス太陽光発電所
(スペイン王国サモラ県)

 物流施設事業 

 東急不動産㈱は、回転型投資を着実に推進するなか、環境・DXの取り組みにより、物流施設の新たな価値創造に努めてまいりました。

 主な取り組み 
フラッグシップ案件となる「LOGI’Q南茨木」(大阪府茨木市)のほか、「LOGI’Q海老名南」(神奈川県高座郡寒川町)、「LOGI’Q柏」(千葉県柏市)の開業 等

「LOGI’Q 南茨木」(2024年1月竣工)
 「LOGI’Q」シリーズで過去最大規模を誇る、マルチテナント型物流施設になります。多様な物流ニーズに対応するほか、先進的な環境取り組みを導入しております。また、施設内には、本事業のショールーム「TO CUBE」を常設、隣接区画では、パートナー企業と物流DXサービスの検証に取り組んでおります。

 海外事業 

 東急不動産㈱では、回転型投資の拡大と着実な収益化を図るとともに、新規投資による将来利益確保に取り組んでまいりました。

 主な取り組み 
米国では、投資領域及び規模の拡大に継続的に取り組み、バリューアド事業を中心に累計9,000戸を超える賃貸住宅に関与
タイ王国における現地法人(TLTH Co. Ltd.)を設立。従来の物流施設事業に加え、オフィス、複合開発事業などに参画 等
※既存建物において、ハード面や運営面の改善により収益性を高め不動産価値を向上させる事業

 東急不動産㈱は子会社であるTokyu Land US Corporationを通じて、新たに賃貸住宅に対する優先出資事業に参画いたしました。引き続き米国において賃貸住宅事業の拡大を図ってまいります。

「ミルピタス」(米国カリフォルニア州)

 以上の結果、物流施設の資産売却や再生可能エネルギー事業の拡大に伴い、戦略投資事業の売上高は1,079億67百万円(前期比37.1%増)、営業利益は151億24百万円(前期比0.8%減)となりました。


 管理運営事業 

 ㈱東急コミュニティーは、複数の大型案件の受託・管理を開始したことに加え、同社が持つ建物総合管理会社としての強みを活かし、社会課題への取り組みを推進してまいりました。

 主な取り組み 
等々力緑地再編整備・運営等事業(川崎市)、横浜アリーナ(横浜市)などの大型案件の受託・管理開始
北海道北広島市と地震発生時における住家の被害認定調査に関して、生活再建の迅速化に向けた連携を行うことを目的とした協定を締結
全国の自治体職員向けのオンラインセミナー「脱炭素を目指すまちづくり~官民連携(PPP)による取り組み~」を開催 等

(ご参考)

「横浜アリーナ」(2024年4月〜建物総合管理業務開始)
 施設管理の実績・知見を活かし、お客さまに、安心・安全・快適な空間をご提供できるよう、最適な管理運営に従事するとともに、イベントの成功を管理の側面でサポートしてまいります。

 ホテル・リゾート事業及びヘルスケア事業 

 東急不動産㈱では、インバウンド集客の強化やDX推進による安定的な運営体制の構築、また、豊富な顧客や地域との接点を活かした事業利益の拡大に取り組んでまいりました。
 なお、2024年3月末に、保有する㈱東急スポーツオアシスの全株式を㈱ルネサンスに譲渡いたしました。
※2024年4月1日付けで㈱スポーツオアシスに名称変更しております。

 主な取り組み 
「東急ハーヴェストクラブVIALA軽井沢 Retreat creek/garden」(長野県北佐久郡軽井沢町)、「ハイアット ハウス 東京 渋谷」(東京都渋谷区)を開業
駅直結のシニア住宅「グランクレール綱島」(横浜市)を開業 等

「東急ハーヴェストクラブVIALA軽井沢 Retreat creek/garden」(2023年10月開業)
 緑豊かな軽井沢の自然に寄り添う塩沢エリアに位置し、”隠れ家”という意味を持つ「Retreat」スタイルにより、暮らすようなホテルステイを提供します。また、本施設では、既存の樹木を出来る限り存置する施設計画により、自然や野生動物との共生をめざしております。

「グランクレール綱島」(2023年11月開業)
 東急新横浜線の開通、及び「新綱島」駅の開業に伴い生まれ変わる綱島エリアの中心に誕生しました。都市型ホテルに住むような快適性に加え、「駅直結」という利便性を備え、またDXを活用した健康サポートを提供しております。

 環境緑化事業 

 ㈱石勝エクステリアは、造園工事・管理業から、環境緑化サービス業への転換をめざし、事業の再構築を推進するほか、DXによる生産性向上などに取り組んでまいりました。

 主な取り組み 
国内の造園業界初グリーンインフラ事業「Greentect」を開始 等
※自然環境が有する機能がもたらす多様な効果を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方

(東京都渋谷区)

東急プラザ表参道「おもはらの森」
 周辺のけやき並木とも調和し、都心でも森の中にいるような憩いの場として一般公開しております。明治神宮の森をはじめとする周辺の緑地を繋ぐ中間地点として、エコロジカル・ネットワークの役割を考慮しております。

 以上の結果、ホテル・リゾート事業における内外需要の回復等により、管理運営事業の売上高は3,714億50百万円(前期比10.2%増)、営業利益は228億43百万円(前期比85.8%増)となりました。


 仲介事業 

 東急リバブル㈱は、業界トップブランドの実現に向けて、引き続き、業界NO.1戦略(お客様評価、事業競争力、働きがい)及び業界変革戦略(情報の付加価値化、オペレーションの効率化、環境対応力の強化)に基づく収益拡大の基盤づくりを推進いたしました。
 また、堅調な不動産仲介・投資市場における案件獲得に取り組んでまいりました。

 主な取り組み 
価格査定AIの特許取得や適用シーンの拡大など、業務効率化やユーザビリティ向上に資するデジタル関連施策を推進
銀行と協業し、デジタル接点での資産形成サポートサービス(価格査定AIを用いた所有不動産の資産価値可視化、商品紹介による資産形成支援)の開発を決定 等

「建設業の2024年問題に対応するDXソリューション」
 住宅や建物の検査業務において、精度向上及び業務効率化を目的として、特許を取得した、AI活用による外壁クラック検査用アプリケーションの外部提供を2023年9月より開始しております。

 賃貸住宅サービス事業 

 東急住宅リース㈱は、主要顧客であるファンド・REITの旺盛な住宅投資意欲が続いたほか、首都圏の人口の転入増加などの影響を受け、賃貸管理戸数、稼働率ともに順調に推移しました。

 主な取り組み 
DX活用により、お客さまの契約手続きにおける利便性向上や業務効率化を推進
「コンフォリア東新宿」(東京都新宿区)の管理開始 等

「コンフォリア東新宿」

 ㈱学生情報センターでは、お部屋探しの利便性向上と学生生活に関わる情報提供の拡充を進めたほか、学校所有不動産の活用コンサルティングなどのサービス拡充にも取り組みました。

 主な取り組み 
物件掲載サイト「749.JP」の刷新による、お客さまのユーザビリティ向上・生活サポートに関する情報提供の強化
「キャンパスヴィレッジ生田」(川崎市)の管理・運営の開始 等

「キャンパスヴィレッジ生田」

 以上の結果、不動産流通事業の売上高は2,855億70百万円(前期比8.6%増)、営業利益は385億41百万円(前期比14.4%増)となりました。

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2024/06/26 12:00:00 +0900
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