事業の経過および成果ならびに対処すべき課題

【当期のグループ業績】

 JFEグループは、企業理念である「常に世界最高の技術をもって社会に貢献する」ことを通じて、企業としての持続的な成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値の向上に努めてまいりました。
 当期のわが国経済は、全体的には輸出や設備投資の増加に支えられ緩やかに回復しましたが、足元では生産等一部に弱さが見られます。海外経済は、米国を中心として総じて緩やかな回復基調となりましたが、保護主義的な政策による世界的な貿易摩擦の激化や、中国をはじめとする新興国経済の下振れリスク、英国のEU離脱問題の動向等により、先行きの不透明感は強まっております。
 このような状況のもと、JFEグループでは、第6次中期経営計画の主要施策である最先端技術による成長戦略の推進や、国内における収益基盤整備と製造実力の強化、海外事業の推進と収益拡大および持続的な成長を支える企業体質の強化等を着実に進めた結果、当期のグループ業績は、事業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに、前期に比べ増益となりました。
 なお、JFEグループは、当期より従来の日本基準に替えて国際財務報告基準(以下、「IFRS」といいます)を適用しております。

 各事業会社におきましては、それぞれの事業の特性と環境に応じた活動を展開してまいりました。

JFEスチール株式会社の業績

 JFEスチール株式会社は、高炉の操業トラブルや自然災害等の影響により、当期の連結粗鋼生産量は2,788万トンと前期に比べ減少しました。売上収益については、販売数量は減少したものの、鋼材価格の改善もあり、2兆8,306億円と前期に比べ増収となりました。損益については、鋼材価格の改善や継続的な収益改善に取り組んだものの、操業トラブル等の影響や金属等の副原料価格、資材費、物流費等の上昇によるコストの大幅な増加により、セグメント利益は1,613億円となり、前期に比べ減益となりました。

JFEエンジニアリング株式会社の業績

 JFEエンジニアリング株式会社は、国内外の環境・エネルギーおよびインフラ構築プロジェクトを対象に積極的な受注活動を展開し、また、受注済プロジェクトの円滑な遂行に努めた結果、売上収益は過去最高の4,858億円となり、前期に比べ大幅な増収となりました。セグメント利益は201億円となり、前期に比べ増益となりました。

JFE商事株式会社の業績

 JFE商事株式会社は、粗鋼生産量減少の影響はあったものの、自動車分野や首都圏再開発等の堅調な需要の着実な捕捉、および国内外における販売単価の上昇等により、売上収益は1兆1,258億円と前期に比べ増収となりました。損益については、売上収益の増加に加え、米国を中心とした海外グループ会社の収益拡大等により、セグメント利益は357億円となり、前期に比べ増益となりました。

【当社連結決算の状況】

 持分法適用会社のジャパン マリンユナイテッド株式会社において、前期は大幅な損失を計上しておりましたが、当期は損益が改善しております。
 以上の結果、当社単体業績等と合わせ、当期における連結での売上収益は3兆8,736億円、事業利益は2,320億円となり、前期に比べ増収・増益となりました。また、減損損失の計上もあり、税引前利益は2,093億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,635億円となりました。

【当社単体の業績】

 当社は、事業会社3社より計28億円を経営管理料として受け取りました。また事業会社3社より受取配当金として計1,039億円を受領いたしました。
 その結果、当期の当社の営業利益は1,042億円、経常利益は1,042億円となりました。
 剰余金の配当につきましては、株主の皆様への利益還元を最重要課題の一つと考えており、グループ全体として持続性のある企業体質の確立を図りつつ、積極的に配当を実施していく方針としております。当期末の配当につきましては、1株当たり50円で株主総会にお諮りすることといたしました。これにより年間では中間配当金45円と合わせ、1株当たり95円としております。何卒ご了承賜りますようお願い申しあげます。

【対処すべき課題】

 JFEグループを取り巻く事業環境は、国内では輸出や設備投資の増加に支えられ緩やかに回復したものの、今後、消費税率の引き上げ、輸出の減速等により、成長率の鈍化が懸念されています。一方、海外については、米国を中心として緩やかな回復基調でありましたが、中国を中心に成長スピードが弱まっており、動向を注視していく必要があります。
 こうしたなか、JFEグループは第6次中期経営計画(2018~2020年度)において掲げたグループ共通施策に着実に取り組んでおります。最先端技術により社会ニーズに同期化し、成長戦略を推進するための研究や技術開発については、ほぼ計画通りに実行しております。
 国内収益基盤整備の継続と製造実力の強化については、鉄鋼事業を中心に操業安定化や設備更新のための最優先で行うべき投資に加え、拡販や増産等を目的とした戦略的投資案件を着実に実施しております。
 また、海外事業の推進と収益拡大については、第5次中期経営計画までに投資したプロジェクトからの収益拡大に重点を置いた活動を展開しております。加えて、自動車、インフラ建材、エネルギー等の重点分野、東南アジア等の戦略地域への事業投資も計画通りに実施しております。
 さらに、持続的な成長を支える企業体質強化として、ESG課題への取り組みを拡充しております。具体的には、重要業績評価指標(KPI)の目標達成に向けた活動の推進、統合報告書の発行による開示情報の拡充、環境に関連する長期ビジョン・メッセージの発信等を通じ、社会的課題の解決に貢献してまいります。

 なお、IFRSの適用に伴い、中期経営計画の財務・収益指標とその数値の読み替えを実施しております。

■第6次中期経営計画 主要財務・収益目標

〈各事業会社の取り組み〉

■ JFEスチール株式会社においては、「常に新たな価値を創造し、お客様とともに成長するグローバル鉄鋼サプライヤー」を目指してまいります。
 喫緊の課題として、高炉の操業トラブルの再発防止に取り組んでおります。当期において、東日本製鉄所、西日本製鉄所の高炉3基で操業トラブルが発生いたしました。既に補修や対策が完了し全ての高炉が通常操業に復旧しておりますが、こうした事態を受け、高炉トラブル対策チームを発足させ、異常時の対応や設備点検基準の見直し、また異常を早期に検知し対応するための設備導入といった恒久対策を着実に実行し、トラブルの再発防止に努めてまいります。
 その上で将来にわたり持続的に成長するため、特に製鉄所の競争力強化にとって重要な上工程について、連続鋳造設備や焼結機の建設等、能力増強やパフォーマンスの最大化を図ってまいります。なお、これらの投資は基幹製鉄所である西日本製鉄所を中心に実行いたします。
 また、重点分野を中心に商品開発やソリューション提供を行い、最先端技術による成長戦略を推進してまいります。例えば、自動車分野においては軽量化やEV化等の技術革新に対応し、ハイテン材を主軸とした技術開発を加速し進化させてまいります。さらに、AI、IoT等の先端IT(データサイエンスやロボティクス等)を導入し、こうした技術開発に対応すると同時に、製鉄所の操業や安全管理など様々な分野でも積極的に活用してまいります。
 海外では、これまで、地域や市場毎の成長ステージに応じてグローバルに生産体制を拡充してきた分野を中心に、収益拡大の取り組みをグループ一体で推進いたします。また、成長の著しいアジア諸国において、従来型の垂直分業に加えて、海外製鉄会社との提携等により海外鉄源の更なる活用を推進いたします。

■ JFEエンジニアリング株式会社においては、くらしの礎を「創り」さらに「担う」企業として、ソリューション提案から運営まで一貫して関わるビジネスモデルを推進してまいります。
 国内では、従来型のEPC(設計・調達・建設)に加え、O&M(運転・維持管理)やリサイクル・発電事業などの運営型事業を強化、拡大してまいります。
 海外では、近年、積極的に増強したグローバルエンジニアリング体制を最大限活用し、受注済プロジェクトを着実に遂行するとともに、事業規模の拡大と収益力の強化を進めてまいります。
 加えて、運営事業で蓄積した運転データなどの情報資源の活用やAI、IoT技術を駆使することにより、従来以上に各商品の機能強化や他社に先駆けた新たな製品・サービスの提供を目指してまいります。

■ JFE商事株式会社においては、JFEグループの中核商社として提案力・発信力を高め、お客様と共に持続的に成長する存在感のある企業を目指してまいります。鋼材販売数量の拡大等によりトレード収益を維持・拡大しながら、鋼材加工等による事業収益の拡大を図ってまいります。成長する海外市場において需要を着実に捕捉するため、日本に加え、米州、中国、アセアンを主要戦略拠点とする「グローバル4極体制」のマネジメント強化を進め、環境変化に左右されにくい安定的な収益基盤の構築を目指してまいります。
 国内では、引き続き需要を捕捉するための、加工・流通拠点の機能強化や、再編等を通じた体質強化を推進いたします。
 海外では、JFEグループのリソースを最大限活用し、更なる鋼材販売数量の拡大に努めます。また、より最終製品に近い2次・3次加工の機能を強化するとともに、優良なパートナーとの提携による新たなビジネスモデルの構築や活動領域の拡大を図ってまいります。

 当社はグループの経営課題を着実に実行していくために、株主利益に適うグループ経営および健全なコーポレートガバナンスの要としてその機能を充実していくとともに、さらに効率的な運営を図ってまいります。
 JFEグループは、社会との信頼関係の基本である、コンプライアンスの徹底、環境課題への取り組み、安全の確立について、グループをあげて真摯な努力を継続し、企業としての持続的成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値最大化に努めてまいる所存でございます。
 株主の皆様におかれましては、JFEグループに対し、なお一層のご理解をいただくとともに、ご指導ご支援を賜りますようお願い申しあげます。


2019/06/21 12:00:00 +0900
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