事業の経過および成果ならびに対処すべき課題

【当期のグループ業績】

 JFEグループは、企業理念である「常に世界最高の技術をもって社会に貢献する」ことを通じて、企業としての持続的な成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値の向上に努めてまいりました。
 当期の経済環境は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響を受け、特に年度前半において経済活動が著しく停滞しました。年度後半に入ると、国内経済は輸出や個人消費で持ち直しの動きが見られ、海外においても中国ではいち早く景気が回復し、米国や他のアジア諸国でも、持ち直しあるいは下げ止まりの動きが見られました。
 このような状況のもと、JFEグループでは、特に鉄鋼事業において、緊急対策として1,000億円規模のコスト削減や設備投資の絞り込み、およびキャッシュ・フロー改善へ向けた取り組みを進めるとともに、国内製鉄所・製造所の製造実力の強靭化とDX(デジタルトランスフォーメーション)推進による生産性の向上等を着実に実行してまいりました。
 事業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は、下期は鋼材の販売先である自動車産業等の生産水準が回復したこともあり黒字となりましたが、上期の落ち込みの影響が大きく、通期では赤字となりました。

JFEスチール株式会社の業績

 JFEスチール株式会社は、年度前半において鉄鋼需要が大幅に減少したことを受けて、高炉2基の一時休止等の緊急対策を実施しました。これにより、当期の連結粗鋼生産量は2,396万トンと前期に比べ大幅に減少しました。売上収益については、販売数量の大幅な減少を受け、2兆2,552億円と前期に比べ減収となりました。損益については、生産最適化によるコストミニマム操業の徹底と、データサイエンス技術を駆使した迅速な高炉再稼働により需要の持ち直しを捕捉したこと、および、輸出市況好転による販売価格の改善等により、下期は黒字に転じましたが、上期における収益悪化の影響が大きく、当期のセグメント利益は654億円の損失となり、前期に比べ大幅に悪化しました。


JFEエンジニアリング株式会社の業績

 JFEエンジニアリング株式会社は、企業買収による増収効果はありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響による工事遅延等により売上収益は4,857億円となり、前期に比べ減収となりました。損益については、売上収益の減少の影響はありましたが、コスト削減等による利益確保に努めた結果、セグメント利益は240億円となり、前期に比べ増益となりました。


JFE商事株式会社の業績

 JFE商事株式会社は、下期に需要が回復基調に転じたことや年度終盤には米国をはじめ世界的な市況上昇がみられたことから、上期に対し収益は大きく好転しました。しかしながら、上期における鋼材需要の大幅な落ち込みの影響が大きく、年間の売上収益は9,325億円、セグメント利益は200億円となり、前期に比べ減収減益となりました。


〈当社連結決算の状況〉

 持分法適用会社のジャパン マリンユナイテッド株式会社では、新造船市況の回復遅れによる受注船価の低迷や、新型コロナウイルス感染症の拡大による商談の停滞が生じたことから、当期の損益は赤字となりました。これを受けて、JFEグループ連結決算において、持分法投資損失41億円を計上しております。
 以上の結果、当社単体業績等と合わせ、当期における連結での売上収益は3兆2,272億円となり、前期に比べ減収となりました。事業損失は129億円となり、前期に比べ悪化しました。なお、個別開示項目として固定資産売却益等204億円を計上しております。税引前損失は49億円、親会社の所有者に帰属する当期損失は218億円となりました。


〈当社単体の業績〉

 当社は、事業会社3社より計25億円を経営管理料として受け取りました。またJFEエンジニアリング株式会社およびJFE商事株式会社より、受取配当金として計88億円を受領しました。その結果、当期の当社の営業利益は93億円、経常利益は93億円となりました。
 剰余金の配当につきましては、中間配当は見送りとさせていただきましたが、鉄鋼事業を中心とした下期の大幅な収益改善等をふまえ、期末配当につきましては1株当たり10円で株主総会にお諮りすることといたしました。何卒ご了承賜りますようお願い申しあげます。

(注)
  1. 事業利益(事業損失):税引前利益から金融損益および個別開示項目を除いた利益であり、当社連結業績の代表的指標です。
  2. セグメント利益:事業利益に金融損益を含めた、各セグメントの業績の評価指標です。
  3. 個別開示項目:金額に重要性のある一過性の性格を持つ項目です。
  4. 当社の単体業績は日本基準を適用しております。

【対処すべき課題】

 JFEグループは、2018年から開始した第6次中期経営計画の施策を実行してまいりましたが、計画策定時に想定していなかった、米中貿易摩擦の激化や新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大による事業環境の急激な変化のために、特に鉄鋼事業の業績が低迷し、昨年に続き当期利益が赤字となるなど、目標として掲げた主要な財務・収益目標を達成することはできませんでした。
 昨年3月に、厳しい事業環境および中長期的な鉄鋼需要動向をふまえ、鉄鋼事業では抜本的な対策として、東日本製鉄所京浜地区の高炉休止を含む構造改革の実施を決断し、その達成に向けた取り組みを進めております。

〈第7次中期経営計画〉

 

 本年JFEグループは、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在としての地位を確立し、経済的持続性を実現することを目指し、第7次中期経営計画を策定いたしました。強靭な経営基盤を確立し新たなステージへ飛躍するために、大胆に変革に挑戦してまいります。この計画は、鉄鋼事業の構造改革が完遂する2024年度までを対象とし、初年度の2021年度においては、5月7日に公表いたしました業績予想、連結事業利益2,000億円の達成に向けて取り組んでまいります。

 主な取り組みは、以下のとおりです。

(1)鉄鋼事業
・量から質への転換
 国内の鉄鋼市場は人口減少により将来的に縮小に向かうことが想定されます。一方、海外では、汎用品の価格競争激化に加え、鉄鋼製品の地産地消の流れが強まっており、日本からの輸出拡大には限界があります。
 JFEスチール株式会社においては、こうした状況に対し、国内生産については収益の源泉を「量」の拡大に求めず、徹底して「質」の追求に転換してまいります。本中期経営計画においては、年間単独粗鋼生産量2,600万トンを前提に、構造改革による固定費削減に加えて、DX推進による労働生産性の向上や歩留の改善等による大幅なコスト削減を実現いたします。さらに、高付加価値品の比率を引き上げ、プロダクトミックス改善を図るとともに、販売価格体系の抜本的な見直しを推進し、世界トップレベルの「鋼材トンあたり利益」を追求いたします。

・労働生産性    :+20%(1,670→2,000トン/人・年)
・コスト削減    :1,200億円
・高付加価値品比率 :50%以上
・鋼材トンあたり利益:1万円/トン

・成長戦略の推進
 同社はこれまで、インドのJSWスチール・リミテッド(JSW社)やベトナムのフォルモサ・ハティン・スチール・コーポレーション等、現地のパートナーと提携し鉄源からの現地一貫生産に取り組み、インサイダーとして成長市場の需要捕捉に取り組んでまいりました。これらの提携を強化し、現地生産化による事業戦略の深化を図ることにより収益の拡大に繋げてまいります。
 特にインドにおいては、電力需要の大幅な増加に伴い、変圧器に使用される方向性電磁鋼板の需要拡大が見込まれます。当社の高い技術力をもってこの機会をとらえるべく、JSW社とインドでの方向性電磁鋼板製造販売会社の共同設立について、検討を進めてまいります。
 さらに、高付加価値品製造や環境負荷低減等に関する技術・操業・研究ノウハウを活かして構築したプラットフォームを海外メーカー等に提供することにより、継続的に対価を得るソリューションビジネスを展開し、収益の拡大を目指してまいります。

(2)エンジニアリング事業
 JFEエンジニアリング株式会社においては、独自の技術とサービスを活かして事業規模を拡大し、あわせて社会課題の解決に貢献してまいります。中長期的には、リサイクルや廃棄物発電等の「Waste to Resource事業」、再生可能エネルギー、カーボンリサイクル等の「カーボンニュートラル事業」、上下水やガス、電力、リサイクル等の運営事業を相互に連携・複合化させる「複合ユーティリティサービス事業」および橋梁、パイプライン建設等の「基幹インフラ事業」を中核事業と位置付け、M&Aや業務提携等も活用し、2030年度を目途に売上収益1兆円規模を目指してまいります。

(3)商社事業
 JFE商事株式会社においては、高機能電磁鋼板の世界No.1のグローバル流通加工体制を構築いたします。加えて、グループ連携による自動車向け鋼材の流通加工体制強化および海外現地企業との協業等による建材事業の基盤確立に取り組むとともに、日本国内においても流通加工機能のさらなる強化により、マーケットにおけるグループの存在感を高め、収益の拡大に努めてまいります。

(4)DX戦略の推進
 長年の事業運営を通じて蓄積された膨大なデータやノウハウ等の無形資産に対して最先端のデジタル技術を適用し、業務の全体最適を図り、生産性向上、サプライチェーンの効率化やソリューションビジネス等の新規事業創出により競争力の向上と収益の拡大に取り組みます。またデジタル技術の発展に伴い、サイバー攻撃やシステム不正利用等のリスクの拡大も懸念されることから、セキュリティ対策にも同時に取り組んでまいります。

(5)「JFEグループ環境経営ビジョン2050」の推進
 気候変動問題への取り組みを経営の最重要課題と位置付け、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定いたしました。カーボンニュートラルの実現に向けてグループ全体で着実に取り組んでまいります。

【JFEグループ環境経営ビジョン2050】

  • ・気候変動問題を極めて重要な経営課題ととらえ、2050年カーボンニュートラルの実現を目指します。
  • ・新技術の研究開発を加速し、超革新的技術に挑戦します。
  • ・社会全体のCO₂削減に貢献し、それを事業機会ととらえ、企業価値の向上を図ります。
  • ・TCFDの理念を経営戦略に反映し、気候変動問題解決に向けて体系的に取り組みます。

【第7次中期経営計画における取り組み】
▶ 2024年度末のCO₂排出量を2013年度比で18%削減(JFEスチール)
 
*2030年度のCO₂削減目標については、技術開発の進捗に鑑みて本計画期間中に精査・公表

【2050年カーボンニュートラルに向けた取り組み】
①JFEスチールのCO₂排出量削減
カーボンリサイクル高炉+CCU(Carbon Capture and Utilization)を軸とした超革新的技術開発への挑戦
水素製鉄(直接還元)の技術開発
▶ 業界トップクラスの電気炉技術を最大活用した高級鋼製造技術の開発、高効率化等の推進
▶ トランジション技術の複線的な開発推進
(フェロコークス、転炉スクラップ利用拡大、低炭素エネルギー変革等)

②社会全体のCO₂削減への貢献拡大
▶ JFEエンジニアリング:再生可能エネルギー発電、カーボンリサイクル技術の拡大・開発
CO₂削減貢献量目標 2024年度1,200万トン、2030年度2,500万トン
▶ JFEスチール:エコプロダクトやエコソリューションの開発・提供
▶ JFE商事:バイオマス燃料や鉄スクラップ等の取引拡大、エコプロダクト商品のSCM(流通加工体制)強化等

③洋上風力発電ビジネスへの取り組み
洋上風力発電事業についてグループ全体で事業化を推進
JFEエンジニアリング:着床式基礎構造物(モノパイル等)製造事業の検討
JFEスチール:倉敷地区の新連鋳機を活用した大単重厚板の製造  JFE商事:鋼材、加工品のSCM構築
ジャパン マリンユナイテッド:洋上風力発電浮体の製作および作業船の建造
グループ全体:リソースを最大限活用したオペレーション&メンテナンス

(注)
  1. カーボンリサイクル高炉:高炉から排出されるCO₂をメタン化し、還元材として高炉に吹き込む技術です。
  2. CCU:CO₂の回収・再利用を意味します。
  3. トランジション技術:低炭素や脱炭素への移行を進める技術です。
  4. フェロコークス:鉄鉱石の還元効率を改善し、CO₂発生量を削減する革新的な高炉原料です。

(6)選択と集中に基づく効果的な投資の実行と財務健全性の確保
 有利子負債(社債、借入金およびリース負債)の残高については、第6次中期経営計画開始時(2018年3月末)に比べ4,752億円増加(IFRS導入による負債範囲拡大および新リース会計基準の適用によるリース負債期首増加額1,660億円を含む)し、1兆8,061億円となりました。その結果、今期末のDebt/EBITDA倍率は8.1倍、D/Eレシオは93.2%となりました。
 このような状況のもと、本中期経営計画においては財務体質の健全化と成長戦略の推進を両立いたします。これまでの鉄鋼事業における設備強靭化の取り組みの成果および構造改革の効果により機能維持投資は減少いたします。また、収益貢献の低い事業や資産の見直しによる徹底した資産圧縮に加えて、棚卸資産圧縮等によるCCC(Cash Conversion Cycle)の改善により必要資金の確保に取り組んでまいります。
 一方で、各事業における成長戦略に必要な投資や、カーボンニュートラルへの投資(GX投資)・DX投資も推進し、競争力強化と成長戦略を積極的に推進いたします。

<第7次中期経営計画 投資計画・資産圧縮計画(4ヵ年合計)>


(注)

GX投資:グリーントランスフォーメーション投資の略称です。

 なお、鉄鋼事業の構造改革後の京浜地区の用地活用については、川崎市をはじめ行政と協働で、経済性最大化と地域・社会の持続的発展への貢献の観点から土地利用転換を検討してまいります。扇島地区については、2023年度には整備方針を公表し、2030年度までには一部土地の供用を開始できるよう取り組んでまいります。

(7)主要財務・収益目標、株主還元方針
 当社は、本中期経営計画の最終年度に、ROE10%、連結事業利益3,200億円、親会社の所有者に帰属する当期利益2,200億円の財務・収益目標を掲げ、各施策を着実に実行してまいります。
 また、株主の皆様への還元を最重要課題の一つと位置付けており、引き続き配当性向30%程度を方針といたします。

(注)
  1. D/Eレシオ:格付け評価上の資本性を持つ負債について、格付け機関の評価により資本に算入しております。
  2. 鉄鋼事業のトンあたり利益:(連結セグメント利益÷単体出荷数量)

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響については、その先行きは予断を許さない状況が続いております。引き続き動向を注視し、従業員や関係者の感染防止に十分配慮しながら、それぞれの事業特性に応じた迅速かつ的確な対策を実施してまいります。一方、感染防止対策として導入したリモートワークについては、育児・介護との両立を含めた多様な働き方を可能とする仕組みとしてワークライフバランスの推進に繋がりました。従業員の安全・健康管理を強化し、多様な背景を持つ人材の能力・意欲を最大限引き出すことが、グローバル化や複雑化が進む事業環境下での持続的成長には不可欠です。JFEグループは引き続き、ダイバーシティ&インクルージョンや働き方改革の取り組みを高めてまいります。

 JFEグループは、社会との信頼関係の基本である、コンプライアンスの徹底、環境課題への取り組み、安全の確立について、グループをあげて真摯な努力を継続してまいります。
 本中期経営計画においては、コーポレートガバナンスのさらなる充実に向けて、環境や社会に関する非財務指標を経営目標とし、それを投資判断、役員報酬等の様々な指標として適用することについて検討してまいります。
 今後も企業としての持続的成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値最大化に努めてまいる所存でございますので、株主の皆様におかれましては、JFEグループに対し、なお一層のご理解をいただくとともに、ご指導ご支援を賜りますようお願い申しあげます。


2021/06/25 12:00:00 +0900
外部サイトへ移動します 移動 ×

カメラをかざして
QRコードを
読み取ってください

{{ error }}