事業報告

事業の経過及び成果

 当連結会計年度における世界経済は、米国では、新大統領の政策などによる経済成長への期待に加え、良好な雇用情勢や個人消費が底堅く、景気は緩やかに拡大しました。また、欧州経済においては、英国のEU離脱が決定され、先行きに対する不透明感が高まったものの、個人消費の改善や企業の投資が増加したことなどから、堅調な回復が続きました。アジア地域では、中国をはじめとする新興諸国の景気に持ち直しの動きが見られました。

 国内経済では、個人消費の回復に力強さが欠けるものの、雇用環境の改善や輸出の増加、在庫調整が進むなど景気に緩やかな回復が見られました。

 当社グループの事業環境は、主に製造業における生産性向上などを目的とした自動化、省力化ニーズに支えられ、年度を通じて良好に推移しました。

 用途別の受注動向につきましては、産業用ロボット向けは、家電やスマートフォンなどの製造ラインで使用される小型の組立ロボット向けや自動車の製造ラインの溶接ロボット向けの受注が増加しました。また、従来の産業用ロボットとは異なり、安全性を確保したことにより人と並んで作業することができる協働型ロボット向けも需要が増加しました。

 半導体製造装置向けは、デジタル製品や家電などに組み込まれる半導体の需要増加を背景とした設備投資が堅調であったことに加え、半導体デバイスメーカーによる微細化、積層化等の先端投資が継続したことにより増加しました。

 フラットパネルディスプレイ製造装置向けは、液晶に代わりスマートフォンなどに有機ELディスプレイの採用が拡大するなど旺盛な設備投資があったことから、良好な受注実績となりました。

 このような環境のもと当社グループは、中期経営計画(2015年度~2017年度)の2年目として各施策に取り組んでまいりました。

 営業面におきましては、新規顧客や新しい用途開拓を進めるべく、地域に密着した営業活動を展開し、多様化するロボットや工作機械、その他製造装置の要求に応えてまいりました。また、市場の拡大に連動した技術サポート体制の充実と代理店網の販売体制構築にも取り組んでまいりました。なお、今年度は、エレクトロニクス産業やFA機器産業の発展が期待される台湾において、市場調査、技術サポート等を目的とした駐在員事務所を設立し、活動を開始しました。

 品質面におきましては、世界各国のお客様に共通品質の製品を提供するため、当社グループの生産拠点である日本、ドイツ、米国における品質管理の統一と品質向上に取り組んでまいりました。

 研究開発面におきましては、原理・理論の確立や技術の追求など基礎研究の拡充と深化を図り、次世代に向けた新技術の開発に取り組んでまいりました。8月には、米国屈指の研究機関であるSRI Internationalと新しい回転型機械式トランスミッションを共同開発することについて合意し、取り組みを開始いたしました。また、市場ニーズを製品に反映させる応用開発では、三菱電機株式会社、株式会社安川電機の制御システムに加えて、パナソニック株式会社の制御システムに接続して駆動することができるACサーボアクチュエーターを市場投入するなど、他社との協業にも取り組みながら、製品ラインアップの拡充を進めてまいりました。

 生産面におきましては、増加する需要に対応できる生産体制の構築、納期短縮、コスト競争力の向上を図るため、サプライチェーン全体の能力引き上げと効率化に取り組んでまいりました。また、急速に需要が拡大している波動歯車装置ハーモニックドライブ®の生産能力を引き上げるため、2016年4月に竣工した長野県安曇野市の新工場棟に製造設備を導入し、生産を開始しました。さらに、今後の需要増加と業容の拡大を見据え、長野県松本市に新しく工場用地を取得し、当社グループ全体の生産能力を引き上げる環境を整備してまいりました。

 国際戦略面におきましては、当社グループが世界市場における確たる地歩を築くため、欧州に販売・製造・開発の拠点と多数の優良顧客を有するドイツの関係会社ハーモニック・ドライブ・アーゲーの株式を追加取得することにより子会社化しました。

 このような施策の結果と前述の事業環境により、当連結会計年度の経営成績は、売上高は300億69百万円(前期比6.3%増)、営業利益は78億13百万円(前期比2.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、ドイツの持分法適用会社であるハーモニック・ドライブ・アーゲーを子会社化したことに伴い、従前から保有する持分を当該追加取得の時価で再評価することによる評価差益を計上したことにより197億32百万円(前期比294.5%増)となりました。