対処すべき課題

 印刷産業は、電子媒体普及の影響を受け、出版関係を中心に伸び悩んでいるものの、日本・欧米を中心に高付加価値印刷やパッケージ印刷の需要は堅調です。また、新興国では中華圏の低迷が長引いているものの、インド・アセアン諸国などでは人口増や中間所得層拡大に伴い、印刷需要は伸びております。
 このような環境の中、オフセット印刷機事業の収益基盤をより強固にする一方で、数年来着手してきた各新規事業の拡大により、事業の複合化を推進し、収益の安定化と収益力の向上を図ることが喫緊の課題です。このため昨年4月からスタートした第5次中期経営計画にて、「事業構造変革」(事業構造の複合化)を推進し「営業の業態変革」(印刷機械の販売から印刷プロセス全体のソリューション提案型営業への転換)と「モノづくり革新」(3工場体制での生産リードタイム短縮と製造コスト低減)等を通して「収益構造変革」を実行しております。
 当中期経営計画の初年度(当連結会計年度)は、事業構造変革においては、証券印刷機事業で新規顧客開拓により受注を大幅に増やし、DPS事業で新型デジタル印刷機インプレミア IS29の市場投入に成功するなど、事業の複合化を進めました。営業の業態変革では、PESP事業で周辺装置・消耗品などの商品を拡充するとともに、KP-コネクト(KOMORIソリューションクラウド)の国内販売を開始し、お客様の生産性と収益性の向上に資する総合的なソリューション提案を可能とする体制を整えました。一方、収益構造変革では、オフセット印刷機事業における中華圏の低迷などにより売上が伸び悩んでいることに加え、工場操業度の低下や想定を超える円高などで収益性が悪化し、収益力の改善が課題となりました。
 2年目となる次期連結会計年度は、当連結会計年度の課題を踏まえた上でそれぞれの変革を推し進めてまいります。オフセット印刷機事業ではパッケージユーザー向け新製品拡販などを含む戦略的対応とアジア重要市場における販売・サービス体制強化に取り組み、DPS事業とPESP事業では海外を含む一層の業容拡大を目指してまいります。収益性の向上では、ICTを利用した業務効率の改善や販売管理費の削減を進める一方、モノづくり革新活動で多品種変量生産に対応した効率の良い生産体制を構築し、生産リードタイム短縮と製造コスト低減を図ってまいります。これらの確実な実現に向けて構造変革と業態変革を支える人材の育成・強化も計画的に進めてまいります。
 また、財務戦略として、当連結会計年度に自己株式の買入れと消却を実行しましたが、引き続き資産・資本効率向上を意識した財務リソースの戦略的活用により成長戦略および株主還元等を推進してまいります。
 さらに、当社は環境対策として「グリーンプロジェクト」を立ち上げ、2030年までの長期エコビジョンを定めております。これを具体化すべく、環境にやさしい「製品開発を推進するエコプロダクツ」・「企業活動を推進するエココミュニケーション」・「生産設備のエコファクトリ ー」の「3つのエコ」についてそれぞれの中長期目標を設定し、活動しております。その中期目標として2020年までにCO₂排出量のマイナス30%(2010年比)の達成を目指しており、これらの活動を一歩一歩着実に進めることにより、ブランド力を高めるとともに業績の向上につなげてまいります。
 これらの課題に経営資源を重点的に投入し、全社一丸となって取り組むことで、持続的安定成長を実現する経営基盤を構築し、企業価値向上を図ってまいります。
 株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。