対処すべき課題

「中期経営計画2020」の推進

 当社は、2018年5月に、2020年度までの3か年を対象とする「中期経営計画2020」を策定しました。第四次産業革命などの産業構造の変化や全産業のボーダーレス化・複合化が加速する環境下において、経営基盤の強化を図りながら、成長戦略の推進を中心に据え、新たな価値創造への飽くなき挑戦に取り組んでいます。

中期経営計画2020

2018年度の進捗状況は、以下のとおりです。

①成長戦略の推進

(a)既存事業のバリューアップ

 「既存事業のバリューアップ」を目指し、各事業部門の既存事業において、成長ポテンシャルの追求・実現を図っています。2018年度は、例えば金属事業では、インドにおける自動車関連需要の取込みを目的として、同国において特殊鋼事業に参画しました。また、電力事業では、ベルギーやフランスにおいて洋上風力発電事業に参画し、事業ポートフォリオの更なる強化に取り組みました。これらのほか、農業関連事業では、ウクライナにおいて新たに農業資材直販事業に参画したり、ブラジルの農業資材問屋を完全子会社化したりするなど、当社グループが強みを持つ事業基盤の更なる強化を図りました。
 引き続き、ビジネス環境の変化に対応しながら、既存事業の収益の柱の強化に積極的に取り組んでいきます。

(b)次世代新規ビジネス創出

 加速度的にビジネス環境が変化する中で、大きな成長が見込まれる分野に経営資源を集中的に投下することとしています。具体的には、デジタルトランスフォーメーション(注)の加速によるビジネスの高度化やビジネスモデルの変革が期待できる「テクノロジー × イノベーション」分野、高齢化等の影響により市場の急速な拡大が見込まれる「ヘルスケア」分野、人口増大、都市化の進展によるスマートシティ・都市開発及びインフラ整備事業等の成長が見込まれる「社会インフラ」の3分野に、3年合計で3,000億円程度の資金投下を計画しています。2018年度は、マレーシアにおけるヘルスケア事業等を中心に、これらの成長3分野に対し合計で約100億円の投資を実行しました。
 また、当社のデジタルトランスフォーメーションを推進するため、2018年4月にDXセンターを設立し、当社グループ内にとどまらず、多様な外部パートナーとも連携して知見・経験を共有し、活かす体制を強化したほか、先進技術を当社グループの事業に迅速に取り込むべく、シリコンバレー、欧州、東アジアなど、国内外において新規事業開発体制の整備・拡充を進めました。
 なお、2019年4月1日付で、全社デジタル戦略の企画・立案・推進を担当する責任者として、CDO(Chief Digital Officer)を設置しました。
 引き続き、成長3分野に対する積極的な取組を推進し、次世代新規ビジネスの創出を図っていきます。

(c)プラットフォーム事業の活用

 当社グループが有するさまざまな事業基盤や機能は、あらゆる「産業」「社会」「地域」に繋がる多くの「接点」を有しており、これが新たな価値を生み出す原動力になります。「顧客基盤」「通信・放送・ネットワーク」「リース・レンタル・シェアリング」「デジタルプラットフォーム」などの事業基盤や機能を活用しながら、事業と事業の掛合せや組織間の連携によって、新たな価値の創造に取り組んでいます。
 2018年度は、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)との共同リース事業(一般リース、オートリース及び航空機リース事業)の再編が完了しました。具体的には、SMFGと当社が折半出資する三井住友ファイナンス&リース(SMFL)を共同リース事業のプラットフォームとし、SMFLから住友三井オートサービスやSMBC Aviation Capital Limitedに対し出資を行う形態に変更しました。本再編により、SMFLは不動産やインフラなど、より成長性の高い分野に事業を展開していくことで、プラットフォームとしての事業基盤や機能を強化すると同時に、新たな価値の創造に取り組んでいきます。

 これらの成長戦略を推進するための仕組みとして、「新規事業開発支援」「フルポテンシャルプラン」「アセットサイクルマネジメント」「デジタルトランスフォーメーション」の4つの「事業支援機能」の拡充に取り組んでいます。
 「新規事業開発支援」では、全社視点で次世代ビジネスを育成していく仕組みづくりに取り組んでいます。ヘルスケア、スマートシティ等の成長ポテンシャルの高い分野において、組織間連携を通じ、全社プロジェクトとして取り組む体制を強化しています。また、2018年度より、職掌や年次等の制限なく、社員個人が所属組織の枠組みを超えて、グローバルベースで新規ビジネスを提案できる社内起業制度「0→1チャレンジ2018(ゼロワンチャレンジ2018)」を開始しました。このような取組を通じ、世の中の大きな変化に対応しながら、全社的なビジネスモデルの変革を促進していきます。
 「フルポテンシャルプラン」では、未だ所期の成果を上げるに至っていない改善余地のある事業会社や、更なる成長が見込まれる事業会社を対象に、事業価値最大化のための具体策を策定し、実行状況を重点的にモニタリングすることを通じ、全社ポートフォリオの更なる質の改善を図っています。
 「アセットサイクルマネジメント」では、他人資本の活用により、各事業の資産効率を上げるための支援を行っています。2018年度は、国内金融機関2社と共同で設立したファンド運営会社を通じ、海外の洋上風力発電事業に投融資するファンドを設立しました。
 「デジタルトランスフォーメーション」では、前述のとおり、2018年4月に設立したDXセンターを中心に、各分野の知見やプラットフォーム事業基盤にテクノロジーを掛け合わせることで、当社ビジネスモデルの変革に取り組んでいます。
 引き続き、これら4つの「事業支援機能」の着実な拡充を図ることで、成長戦略を強力に推進していきます。

②経営基盤の強化

(a)ガバナンスの高度化

 各事業部門からの部門戦略とその進捗状況に関する報告や、市況変動リスク、カントリーリスク等の集中リスクに関わるポートフォリオ報告を充実させるなど、取締役会によるモニタリングの範囲を拡大し、経営の執行に対する取締役会のモニタリング機能を強化しています。また、グローバル連結ベースでのグループガバナンスの実効性の維持・向上のため、グループ標準ツールを活用しながら、連結子会社と対話することで内部統制の状況を可視化し、業務品質の向上に取り組んでいます。さらには、ガバナンス強化と中長期的な企業価値の向上を目的として、2018年度に役員報酬制度を改定し、総報酬に占める業績連動賞与と株式報酬の比率を拡大しました。経営層に対して、中長期的な企業価値向上と持続的な成長に向けた健全なインセンティブを与えるとともに、株主の皆様との一層の価値共有を進めていきます。
 引き続き、ガバナンスの高度化に取り組み、持続的な成長の実現と、企業価値の向上を図ります。

(b)人材戦略の高度化

 「Diversity & Inclusion ~多様な力を競争力の源泉に~」を基本コンセプトに、各種人事施策を導入し、成長戦略を推進しています。グローバル連結ベースで、次世代新規ビジネスへの戦略的な人材投入、部門・組織を越えたローテーションを実施し、最適な人材を適時・適所に配置できる体制を整備しています。また、新たな価値創造にチャレンジする組織づくりを後押しすべく「中計推進チャレンジ評価制度」を導入したほか、一人ひとりが最大限に力を発揮できるよう、健康経営を推進するとともに、「テレワーク制度」や「スーパーフレックス制度」を導入するなどして、さまざまな働き方を支援しています。
 引き続き、人材戦略の高度化を通じ、成長戦略の推進の実行を後押しする体制を整備していきます。

(c)財務健全性の向上

 経営基盤の更なる強化を目的として、財務健全性の向上に取り組んでいます。キャッシュ創出力の着実な高まりと資産入替えを引き続き積極的に進めていくことにより、1兆8,000億円のキャッシュ・インを計画しています。また、このキャッシュを原資として、投融資計画は1兆3,000億円としています。さらには、3年合計配当後フリーキャッシュ・フローを2,000億円以上確保し、有利子負債の返済に充当することで、財務健全性の向上をもう一段進めていきます。コア・リスクバッファーとリスクアセットのバランス(注1)については、引き続きその維持に努めていきます。

  • (注1)「コア・リスクバッファー」とは、「資本金」、「剰余金」及び「在外営業活動体の換算差額」の和から「自己株式」を差し引いて得られる数値で、当社は、最大損失可能性額である「リスクアセット」を「コア・リスクバッファー」の範囲内に収めることを経営の基本としています。
  • (注2)「基礎収益キャッシュ・フロー」=基礎収益-持分法による投資損益+持分法投資先からの配当
    「基礎収益」=(売上総利益+販売費及び一般管理費(除く貸倒引当金繰入額)+利息収支+受取配当金)×(1-税率)+持分法による投資損益

③定量計画

(a)2018年度業績

 2018年度の業績については、マダガスカルニッケル事業において減損損失を計上した一方、資源価格の上昇により豪州石炭事業が増益となったことに加え、北米鋼管事業が市況回復に伴い増益となったことや、電力EPC案件に係る建設工事が進捗したこと、不動産事業が堅調に推移したことなどにより、連結純利益(注)は3,200億円の計画に対し、3,205億円となりました。また、ROA及びROEについては、それぞれ4.1%及び12.0%となりました。

  • (注)「連結純利益」は、国際会計基準(IFRS)の「当期利益(親会社の所有者に帰属)」と同じ内容を示しています。

(b)2019年度業績見通し

 2019年度の業績見通しについては、資源ビジネスは、主に一般炭などの資源価格下落の影響に加え、ボリビア銀・亜鉛・鉛事業の生産数量の減少などにより減益が予想されます。一方、非資源ビジネスは、リース事業や米国タイヤ事業などの再編効果による利益の押し上げに加え、不動産事業などの既存ビジネスが引き続き堅調に推移すると見込まれることから、2019年度の連結純利益の見通しを3,400億円としています。「中期経営計画2020」においては、3年間を通じてROA及びROEを、それぞれ4%以上及び10%以上と見込んでいます。

④配当方針

 当社は、株主の皆様に対して長期にわたり安定した配当を行うことを基本方針としつつ、中長期的な利益成長による配当額の増加を目指して取り組んでいます。
 2018年度からの3か年を対象とする「中期経営計画2020」においては、連結配当性向30%程度を目安に、基礎収益やキャッシュ・フローの状況等を勘案のうえ、配当額を決定することとしています。
 2019年度の年間配当金予想額は、連結業績の見通し3,400億円を踏まえ、普通配当を1株当たり80円(中間40円、期末40円)とすることに加え、創立100周年の記念配当として1株当たり10円を中間配当に併せて実施することとし、合計90円(中間50円、期末40円)としています。

 2019年は、当社の創立100周年に当たります。これを大きな節目と捉え、次の100年に向け、今後も社会とともに持続的に成長していくために、グループ一丸となり、「新たな価値創造への飽くなき挑戦」に取り組んでまいります。
 株主の皆様には、一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

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2019/06/21 15:00:00 +0900
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