世界情勢の不確実性が高まる中で、デジタル化の加速、ESGに対する意識の高まり、価値観・ニーズの多様化といった近年のメガトレンドが企業活動に与える影響は、ますます大きくなっています。改めて強固な収益基盤の構築と共に、このような状況を機会と捉え、変革を行っていく必要があります。
この大きな変革期にあたり、当社グループは、2021年4月からの3ヶ年計画である「中期経営計画2023 ~Start of the Next Decade~」を策定し、2030年における当社グループの目指す姿として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げました。必要なモノ・サービスを必要なところに提供することを総合商社の使命と捉え、人材を競争力の源泉として、「マーケットインの徹底」、「社内外での共創と共有の実践」、「スピードの追求」により競争優位・成長を追求し、これを実現するために組織や人材の変革を継続することで、持続的な価値創造を実現していきます。
成長戦略と注力領域について
中期経営計画2023では、サステナビリティを前提とし、競争優位性・成長マーケットを追求できる領域に経営資源を集中的に投下することを成長戦略として掲げています。具体的には「社会課題としてのEssentialインフラ開発とサービス提供」、「3R(リデュース、リユース、リサイクル)事業の深化」、「東南アジア・インド市場のリテール領域取り組み強化」、「国内産業活性化・地方創生の取り組みを通じた価値創造」の4つの成長戦略を掲げると共に、これらをデジタルや新技術、社内外での共創と共有により実現することを目指します。
株主価値を創造していくためには、収益性の高い規模感のある投資に挑戦していくことが必要であり、中期経営計画2023では、成長の実現に向けて、次表に示す注力領域を中心として、戦略に裏付けられた規模感のある新規投資の実行に取り組んでいます。新規投資については、キャッシュ・フローをマネージした規律を堅持しつつ、メガトレンドを踏まえた成長領域や新たな領域における投資を中期経営計画3ヶ年で合計3,300億円(うち300億円は人や組織改革に向けた非財務投資)程度を実行することにより、企業価値の着実な向上を実現していきます。
▪メガトレンドを基にした成⻑分野を踏まえて、注⼒領域を3つに設定し、リソース(⼈材・資⾦)を集中
当社のサステナビリティ経営
中期経営計画2023では、サステナビリティへの取り組みは、企業経営における最優先事項の1つとなっています。当社では、「双日が得る価値」と「社会が得る価値」という2つの価値の考え方を土台として、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に基づく2050年長期ビジョン「サステナビリティチャレンジ」を策定しており、中期経営計画2023では、脱炭素社会実現への挑戦と人権の尊重を大枠とする各種施策を打ち出しています。
また、人材戦略として、多様性と自律性を備える「個」の集団を形成し、自律した個の成長をチーム・組織の成長、会社の成長へつなげていくことを目指し、価値創造できる人材を輩出し続ける人的資本経営を実践していきます。さらに当社のDX戦略として、デジタルを顧客・社会ニーズを価値創造につなげる上での大前提であり、全従業員が持つべき共通言語として位置づけ、事業の変革・競争力強化のための手段とし、事業モデル・人材・業務プロセスの改革を進めることで、価値創造に貢献していきます。
経営指標及び進捗
「株主価値の創出」と「成長と財務規律」の観点から、それぞれ目標数値を設定しました。新規投資の着実な収益化と既存ビジネスの収益構造の抜本的な改革により、規模と収益性の両方を追求し、株主価値を創造していきます。
※1基礎的営業CF=会計上の営業CFから運転資金増減を控除したもの
※2基礎的CF=基礎的営業CF+調整後投資CF-支払配当金-自己株式取得
(調整後投資CF=会計上の投資CFに長期性の営業資産などの増減を調整したもの)
当社の株主資本コストが8%程度である認識のもと、中期経営計画2023では経営指標として3ヶ年のROE平均の目標を10%超に設定しました。この目標を達成するために、社内管理指標として投下資本に対する基礎的営業キャッシュ・フローの比率を示すキャッシュリターンベースでのROIC(CROIC)を導入し、各セグメントにおける達成すべきCROICの目線を価値創造ラインとして定めております。目標に対して2022年度はROE14.2%を達成、また、当期利益に関しては3ヶ年の平均の目標650億円程度に対して2022年度は商品価格・石炭市況の上昇及び非資源事業の安定的な伸長を主な要因として1,112億円を達成しました。
2年連続で過去最高益を更新しており、当社の価値創造の着実な成果と、継続的な投資実行により、収益力が拡大しています。資源分野からの利益獲得に加え、非資源分野からも順調に利益が上がってきており、次期中期経営計画に向けた当社の収益水準の新たなステージへとつなげていきます。
新規投資の進捗
新規投資については、2021年度は1,500億円、2022年度は930億円、合計2,430億円を実行しております。具体的には、米国省エネルギー事業、豪州太陽光発電事業、フィリピン通信タワー事業を始めとするインフラ・ヘルスケア領域や水産食品加工会社マリンフーズの全株式取得、ベトナム最大手ビナミルクとの協業など、東南アジアやインドといった成長市場でのリテール領域、さらにはカナダ家電・電子機器リサイクル事業や福岡県北九州市におけるフッ素化合物製造事業などの、国内外での素材・サーキュラーエコノミー領域での取り組みを強化しています。2023年度も、4月に冷凍マグロ加工販売大手のトライ産業の全株式を取得し、リテール領域における当社グループの水産バリューチェーンに新たな機能を追加するなど、引き続きキャッシュ・フローをマネージする規律を堅持しつつ、新規投資を進め、企業価値の着実な向上を実現していきます。
株主還元
株主還元について当社は株主の皆様に対して、安定的かつ継続的に配当を行うと共に、内部留保の拡充と有効活用によって株主価値を向上させることを基本方針としています。この基本方針のもと中期経営計画2023においては、連結配当性向30%程度を基本としており、2022年度は27.0%となっております。
なお、2023年度の1株当たり配当金は年間130円を下限とする方針です。
注:2021年10月1日を効力発生日とする株式5株につき1株の株式併合を実施。
2019年3月期~2022年3月期配当は株式併合の影響を遡及した金額を記載。
さらに、中期経営計画2020及び中期経営計画2023の1年目・2年目で創出した基礎的キャッシュ・フローの黒字を成長投資へ振り向けるにあたり、その一部を株主に還元すること、及び資本効率の向上を図ることを目的として、2023年4月7日に15,299,900株の自己株式の消却を実施すると共に、取得株式総数1,000万株又は取得価額の総額300億円を上限とする自己株式の取得を2023年3月31日に公表しております。
中期経営計画2023最終年度に向けて
外部環境については、2021年度から続くロシアによるウクライナ侵攻を始めとした地政学リスクや主要国通貨の金利引き上げの影響及びそれらを受けた新興国通貨の変動など、今後も著しい変化が続くと認識しており、多様な変化に伴うリスクを適切にマネージすると共に、自らの変革の機会と捉え、価値創造に向けた取り組みが必要と考えています。引き続き、2030年の当社の目指す姿に向けた施策、「マーケットインの徹底」、「社内外での共創と共有の実践」、「スピードの追求」により競争優位の獲得と事業の成長を追求し、併せてそれに必要な組織改革や人材の高付加価値化を継続することで、成長の実現を通じた持続的な価値創造を実践していきます。
また「事業や人材を創造し続ける総合商社」として、人的資本経営を推進していくと共に、DX戦略として全社員がデジタルを共通言語として理解し、活用し、事業ポートフォリオの変革に取り組むことによって、DXの実装とデジタル人材の育成を軸とした企業価値の向上を実現します。
こうした取り組みに関する対話や情報の発信を社内外に対して拡充することにより、成長期待の醸成、さらにPBR1倍超の実現を目指します。
中期経営計画2023の詳細につきましては、当社ウェブサイト(https://www.sojitz.com/jp/)をご参照ください。