事業の経過およびその成果

 当連結会計年度における我が国経済は、米中による関税引き上げの一部発動による対立で、両国経済の減速が世界経済の減速に波及するリスクの中で推移しました。国内は、2019年10月に消費税率の引き上げにより、個人消費の駆け込み需要はあったものの、その後反動減が続き、厳しい環境下で推移しました。また、夏季は長梅雨で長雨と低気温が続き、一方、冬は記録的暖冬となる等、小売業において天候不順や自然災害がマイナス影響を及ぼしました。雇用・所得は、比較的安定して推移しましたが、1月下旬以降は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、訪日外国人の急減に加え、日本国内もウイルスの感染拡大を防止するために消費行動を自粛する動きが高まり、内外需要とも急速に落ち込み、不確実性が高まりました。
 このような中にあって、当社グループは2018年11月に発表した「三越伊勢丹グループ3ヶ年計画」において掲げた目指す姿「オンラインとオフラインのマッチングプラットフォーマー」の実現に向けて、2019年度は、ビジネスモデルの革新に取り組んでまいりました。私たちの原点である「人と時代をつなぐ三越伊勢丹グループ」の確立に向け、お客さまとモノ・コト・情報を「オフライン(店舗)とオンライン(デジタル)でマッチング(つなぐ)」することで新たな価値を創造してまいります。
 また、2019年度は、伊勢丹相模原店、伊勢丹府中店、新潟三越など収益力に課題のあった大型店舗を営業終了し、加えて三越恵比寿店の営業終了を決定するなど、大規模構造改革に一定の目途をつけました。引き続き、ビジネスモデル転換に向けた事業基盤の整備、抜本的コスト構造改革を進めてまいります。

 上記の取り組みを進めた結果、当連結会計年度の連結決算につきましては、売上高は1兆1,191億円余(前連結会計年度比93.5%)、営業利益は156億円余(同53.6%)、経常利益は197億円余(同61.8%)、親会社株主に帰属する当期純損失は111億円余(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益134億円余)となりました。

 百貨店業におきましては、消費税増税前の駆け込み需要や基幹店のリモデル効果があり、宝飾品等の高額品は好調に推移しました。また、コスト構造改革に本格着手し、販売管理費の削減をいたしました。一方、想定を超える消費税増税の反動減、台風や新型コロナウイルス感染症予防の対策として行った店舗の営業自粛や営業時間の短縮が大きく影響し、既存店ベースで前年実績を大幅に下回りました。
 その中でも、お客さまの価値観や市場環境が大きく変化している中で、デジタルを活用した最高レベルのサービスを提供するために業務フロー・販売手法をはじめ店舗ビジネスモデルの抜本的な見直しを行い、当期は基幹店において以下の取り組みに具体的に着手しました。
 伊勢丹新宿本店においては、新しい価値の創出と差別化を行い、心の豊かさを創造できるようリモデルを行いました。化粧品フロアは、リアルな場の体験価値向上のために、2019年9月に本館2階にスキンケアを中心としたフロアが、11月には本館1階にメイクアップ・フレグランスフロアが完成しました。婦人靴フロアでは商品・コトの充実に加え、デジタルを活用した新サービスも導入しました。ジュエリーやウォッチについても体験価値向上に取り組みました。
 三越日本橋本店においては、2018年度からのリモデルを通じて、環境、サービス、商品を磨き上げてまいりました。2018年10月の第1期リモデルオープンに続き、本館では2019年5月に屋上日本橋庭園、8月に紳士フロア、ウォッチギャラリー、11月にジュエリーギャラリー、2020年3月に三越コンテンポラリーギャラリーがオープンしました。特選ブティックも改装を終え、第2期リモデルが完成いたしました。新館では、2月に「ビックカメラ日本橋三越」に加え、理美容室と写真室もオープンいたしました。また、3月には三越が保有する文化財や歴史資料の展示スペース「三越アーカイブス日本橋」がオープンいたしました。
 店舗だけでは提供できない商品の拡大や購買手段の多様化を進めるため、新たなオンラインビジネスに取り組んでいます。2019年10月には、ワイシャツオンラインカスタムオーダーサービス「Hi TAILOR(ハイ・テーラー)」、SNSやメールで贈り物ができるオンラインギフトブティック「MOO:D MARK by ISETAN(ムードマークバイイセタン)」、三越伊勢丹クオリティの商品を集めた「三越伊勢丹ふるさと納税」を立ち上げ、2020年3月にはスタイリストがチャットでカウンセリングし定期的に洋服をお届けする「DROBE(ドローブ)」をスタートさせています。
 なお、限られた経営資源を新たな成長分野へ再配分するため、収益性に課題のあった伊勢丹相模原店・伊勢丹府中店・新潟三越の営業を終了し、また、三越恵比寿店の営業終了を決定いたしました。店舗の営業終了に伴うご不便につきまして、深くお詫び申しあげるとともに今までの支援やご愛顧に心より御礼申しあげます。



 クレジット・金融・友の会業におきましては、株式会社エムアイカードが、百貨店カードおよび外部企業との提携カードの新規会員獲得やカードの利用促進による取扱高の拡大に取り組みました。
 その結果、ショッピング総取扱高は1兆681億円(前年比97.5%)となりました。これは、通販分野やコンビニ・スーパーでの利用促進施策により取扱高が大きく伸長する一方、期中におけるグループ百貨店の営業終了(伊勢丹相模原店・伊勢丹府中店)や消費税増税後の売上減および2月以降の新型コロナウイルスの影響による売上減により、グループ百貨店内での取扱高が減少し、前述の結果となりました。
 また、営業拡大の取り組みの一環として、外部企業との提携カードの発行にも注力しており、当年度においては新たに14社との提携カードを発行し、今後の取扱高および収益の拡大につなげてまいります。


 不動産業におきましては、グループの成長の一翼を担うべく事業のさらなる強化を図ってまいりました。
 前年度は株式会社三越伊勢丹不動産による分譲マンションの販売実績があったため、当年度はその反動減を主な要因として、売上高・営業利益ともに前年実績には及びませんでした。
 レジデンス事業においては、保有する12物件を中心に引き続き高稼働を維持し、安定的な収益を確保いたしました。
 また、建装・デザイン事業においては、受注物件数が増えたことで、業績も堅調に推移いたしました。
 海外においては、野村不動産株式会社とフィリピン大手不動産会社Federal Land Incorporatedとの共同事業による、フィリピンでの複合不動産開発プロジェクトに継続して取り組み、レジデンスの販売に加え、2021年に予定する商業施設棟の開業準備を進めております。


 その他の事業におきましては、株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズの業務内製化による外注費等の削減効果や、株式会社三越伊勢丹ギフト・ソリューションズの事業構造見直しおよび株式会社スタジオアルタの収益改善等により営業利益が大きく改善いたしました。
 その他の個別事業につきましては、旅行事業の株式会社三越伊勢丹ニッコウトラベル(株式会社ニッコウトラベルと株式会社三越伊勢丹旅行が2019年4月に経営統合)において、上期は大型連休特需もあり、海外事業における主力のクルーズ船ツアーが好調に推移いたしましたが、年度末にかけて世界的な新型コロナウイルス感染症の影響で、海外旅行を中心に大幅に減収という結果となりました。
 美容事業の株式会社ソシエ・ワールドにおいては、主力であるエステティック事業の競合環境激化や新規顧客の獲得が低迷したことと、新型コロナウイルス感染症による影響を受け、売上高は前年実績を下回る結果となりました。今後の業績回復に向け、不採算店舗の閉鎖、さらなるコスト削減に取り組んでまいります。
 引き続き「お客さまの生活のさまざまなシーンでお役に立つこと」の実現に向けて、新たな価値提供をめざしてまいります。
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2020/06/15 11:00:00 +0900
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