対処すべき課題

 新型コロナウイルスとの戦いは、ワクチンの開発や接種の開始など明るい兆しはあるものの、2021年度に入ってからも3度目の緊急事態宣言が発出されるなど、依然として予断を許さない状況が続いております。今後の我が国経済につきましては、感染拡大防止策を講じながら社会経済活動の水準を引き上げる動きのなか、各種政策の効果も加わることで、持ち直しを続けていくことが期待されます。しかしながら、当面は感染拡大の状況を睨みながらの活動が続き、本格的な回復には一定程度の時間を要すると考えられます。
 当社グループとしましては、時々刻々変化する情勢のなか、引き続き政府の方針に沿って、必要な措置に適時適切に対応してまいります。加えて、お客さまや従業員の感染防止を最優先に、施設やサービスを安心してご利用いただけるよう取り組み、この危機をお客さまや取引先さまをはじめ、当社を取り巻くステークホルダーの皆さまと共に乗り越えていくために、不断の努力を続けてまいる所存です。
 また、コロナ後を見据えた長期の視点では、今回のコロナ禍において生じたパラダイムシフト、ライフスタイルの変容は、パンデミックの終息後も継続していくと考えられます。不動産業におきましても、かねて当社が将来像として描いてきた「働き方・住まい方・過ごし方」の融合した新たなライフスタイルへの移行が一層進展し、新たなライフスタイルを充足するためのニーズがハードとソフトの両面で、より一層高まっていくものと想定しております。
 加えて、台風・集中豪雨など自然災害の激甚化をはじめ、人類の活動が環境に与えてきた負荷の反動に直面するなかで、私たちが社会と共に持続的な成長を実現していくためには、環境への取り組みが今後の事業に欠かせない責務であると同時に、大きなビジネスチャンスをもたらすものでもあると認識しております。
 このような認識のもと、当社グループは本年5月に、2030年を見据えた長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を策定、公表いたしました。
 「GROUP VISION 2030」では、私たちが大切にしてきた「創業の精神『挑戦するDNA』」や「ありたい姿『価値を創造し続ける企業グループへ』」、またあらゆるステークホルダーの満足度を高めることで企業価値向上を図っていくという「社会との約束」の3つを、理念体系として改めて整理するとともに、当社グループのステークホルダーとして「未来社会」を新たに位置づけ、持続的な成長を社会と共に目指していく私たちの決意を明確にいたしました。
 さらに、「ありたい姿」の実現に向けて、当社グループが重視していく価値創造への取り組みテーマ(マテリアリティ)を抽出したうえで、これを踏まえた全社方針や事業方針、重点戦略を「長期経営方針」として定め、推進することとしております。
 長期経営方針では、2030年度に向けて、強固で独自性のある事業ポートフォリオを構築し、株主価値・企業価値の向上を目指すため、長期視点であらゆる事業を見直すとともに、経営の羅針盤となる考え方を明確にすることで、サステナブルな成長の実現を図ってまいります。
 まず全社方針としては、当社グループの特色を強みに変えていくため、「環境経営」と「DX」の二つに重点的に取り組んでまいります。
 「環境経営」では、再生可能エネルギー関連事業を通じて脱炭素社会の実現に貢献していくのみならず、全ての事業を通じた環境負荷低減に取り組み、今後の循環型社会のなかで企業としての責任を果たしてまいります。なお、東急不動産㈱が2019年に、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアティブ「RE100」に不動産業界で初めて加盟いたしましたが、同社では今般、その目標を2025年まで大幅に前倒し達成することを宣言するなど、取り組みを進めております。引き続き、グループとして一層注力してまいります。加えて、自然と共生・調和したまちづくりの実現を通じて、心身ともに健やかなライフスタイルの提案に取り組み、持続的な成長を目指してまいります。
 次に「DX」では、デジタル活用による事業変革として、幅広い事業ウイングを通じ多くのお客さまとの接点を有する当社グループの特色を活かして、OMOの推進により感動体験の創出を目指してまいります。また、業務の省力化やグループ内で有するノウハウを知的資産として結びつけ活用するなど、社内の事業変革にも鋭意取り組んでまいります。
※OMO…Online Merges with Offline。これまでそれぞれ別の空間であったオンラインとオフラインが融合している状態。両者の垣根をなくした一貫性の高い顧客体験を提供する。

 次に事業方針としては、幅広い事業ウイングのなかで当社グループが培ってきた知的資産を活用し、また自前主義から脱却し外部パートナーとの共創に取り組むことで、これまでの関与アセット拡大モデルを一層進化させ、事業価値の最大化を図ってまいります。

(ご参考)
事業方針:関与アセット拡大モデルの進化
知的資産の活用および外部パートナーとの共創により、関与アセット拡大モデルを進化させる。

 この事業方針の推進にあたっては、「魅力ある都市のプロデュース」、「環境関連ビジネスの強化」、「BtoC事業のデジタル変革(顧客起点での体験価値創出)」、「新領域ビジネスの創造」の4つを重点戦略として掲げており、これらの戦略を着実に進めていくことで、事業の変革と持続的な成長を実現してまいります。

(ご参考)
4つの重点戦略
事業環境認識とマテリアリティを踏まえた4つの重点戦略により、事業の変革とサステナブルな成長を実現する。

 また、コーポレートガバナンスの面では、2022年4月に予定される東京証券取引所の市場再編に向けて、一層の体制強化を図ってまいります。取締役会における独立社外役員比率の向上、女性取締役の増員やスキルマトリクスの策定といった多様性の確保への取り組みはもとより、実効性向上の観点では、2020年度の実効性調査アンケートから、従前行っていた顧問関係のない弁護士による第三者評価に加え、外部のコンサルティング機関の活用を開始いたしました。今後とも、プライム市場への移行に向けて、さらなる取り組みの深化を図ってまいります。
 社会課題と向き合い、その解決に事業を通じて寄与することで成長を遂げてきた当社グループが次に目指すべき価値創造のありかたは、魅力あふれる多彩なライフスタイルの創造、DXがもたらす新しい感動体験、脱炭素社会への貢献などを通じて、誰もが自分らしく、いきいきと輝く未来を実現していくことにあると確信しております。私たちはこの志を、グループのコーポレートカラーであるグリーンと重ねて、「WE ARE GREEN」というメッセージで表現いたしました。私たちが持つ多様なグリーンの力を活かしてグループを取り巻くステークホルダーの皆さまの満足度向上に取り組み、未来社会に対し社会の公器としての責任を果たしていくことで、長期持続的な成長の実現を目指してまいります。
 長期経営方針の初年度となる2021年度は、前半期のテーマとするコロナ後の再成長に向けた稼ぐ力と効率性の向上の具現化に向け、2022年度から開始する新たな中期経営計画の策定を推進してまいります。加えて、パンデミック下で続く急速な事業環境の変化を引き続き注視し、必要な施策を臨機応変に実施しながら、事態の鎮静化後は速やかにコロナ以前の業績へのV字回復を実現するべく、準備を進めてまいります。
 株主の皆さまにおかれましては、引き続き倍旧のご支援とご協力を賜りますようお願い申しあげます。

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2021/06/25 12:00:00 +0900
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