将来の成長に向けた対処すべき課題

 地球温暖化や高齢化、交通事故等が大きな社会課題となる中、当社は「デンソーグループ2030年長期方針」を策定し、「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」していただける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献する取り組みを進めてきました。この「デンソーグループ2030年長期方針」を実現させ、大きく変化する産業構造や事業環境に対応するため、現在「2025年中期方針」の策定を進めています。

 中期方針は人財に主眼を置き、実現力のプロフェッショナルを生みだす人づくりや、ダイバーシティ&インクルージョンを強力に推進し、変化に強く活力溢れる組織づくりが、社員一人ひとりの力を結集させ、方針実現の推進力になると考えています。そして安全/品質、危機管理、収益力向上等の盤石な経営基盤を確立し、事業ポートフォリオの変革を通じて新たな価値創出を進め、社会課題の解決と事業成長を両立させます。デンソーは不透明な事業環境の下、自ら将来を切り拓き、さらなる企業価値向上を目指します。

デンソーグループ2030年長期方針

地球に、社会に、すべての人に、
笑顔広がる未来を届けたい。

Crafting the Core 環境 安心 共感

 中期方針は、環境変化と中長期での目指す姿を踏まえ、経営基盤強化と事業成長を軸に、「ありたい姿・目標」と「グローバル経営の5本柱」を策定しています。

  ありたい姿・目標 グローバル経営の5本柱
経営基盤強化 持続経営の実現 揺るぎない強固な経営基盤の確立
(安全/ 品質・危機管理・収益)
高い志と正しい仕事 世界一/ 世界初の実現を目指し、デジタルで仕事の在り方を変革
事業ポートフォリオ変革 業界・パートナーと共に成長と総仕上げをやり切り、事業構造を変革
事業成長 カーボンニュートラルの実現 業界全体を牽引し、カーボンニュートラルを実現
(競争力とカーボンニュートラルの両立)
新価値創出 新領域での製品・ソリューションの提供を通じて事業成長を実現

環境

「2035年 カーボンニュートラルの実現」を目指す

当社はこれまで、持続可能なモビリティ社会の在り方を模索し、環境負荷低減、環境保全活動を通じて経済価値を創出する「環境経営」を推進してきました。当社は、これまでの環境への取り組みをさらに進め、2035年までに事業活動におけるカーボンニュートラルの実現を目指します。

実現のために取り組む3つの領域

  • モノづくり
  • モビリティ製品
  • エネルギー利用

電動化モビリティ事業拡大に向けた取り組み

事業ポートフォリオ組替えに向けた事業譲渡
成都華川電装有限責任公司(以下、華川電装)に、Ⅲ型オルタネータを事業譲渡することを決定しました。華川電装は、主に中国及び欧米・アジア太平洋地域のお客様向けに自動車部品の製造・販売を行っており、1996年に技術援助契約を締結し、当社から技術指導や部品供給等の支援を行ってきました。成熟製品領域においてパートナーと連携を進めお客様への供給責任を果たすとともに、注力分野の強化を加速させてまいります。

電動化製品 グローバル供給体制
グローバルでの電動化市場拡大に向け、2015年より TDE(天津)、2019年 DMTN(北米)にてインバーターの生産を開始し、2021年には急拡大が予想される中国市場対応としてTDS(天津)に電動化工場を新設しインバーターの生産を開始しております(2023年よりMGも生産予定)。今後は、中国南部、欧州、アセアンへの進出を計画しており、グローバル5極での生産体制構築を目指します。

安心

社会に「安心」を提供する
リーディングカンパニーを目指す

事業活動を通じ社会に「安心」を提供することは当社としての目標です。交通事故や大気汚染、感染症、自然災害、少子高齢化といった社会課題の解決を実現し、社会に「安心」を提供するリーディングカンパニーとなるべく取り組みを進めます。

実現のために貢献する3つの柱

  • 交通事故死亡者ゼロ
  • 快適空間
  • 働く人の支援

交通事故死亡者ゼロを目指す取り組み

交通事故死亡者ゼロを目指すには、当社での取り組みに加えて関係省庁や車両メーカー、関連業界と連携し、「人」「クルマ」「交通環境」の三位一体での対策が重要です。当社は技術を通じて貢献し、交通事故死亡者ゼロの社会を目指します。

デンソーの技術進化と普及の方向性
■交通事故を回避・低減するための高度運転支援技術を進化、様々な事故シーンに対応
■AIの応用による交通事故リスクを先読み、ドライバーに適切な行動を促すHMI*等で、危険に近づけない技術を開発
■価格面で魅力ある高度運転支援製品や後付け製品を拡充し、普及を促進

*HMI・・ヒューマンマシンインターフェース

2021年度の具体事例

予防安全・運転支援シーンの拡大と、小型・低コストの両立をコンセプトに「GlobalSafety Package 3」を開発しました。今後も高度運転支援に関する技術開発を推進し、安心・安全な移動の実現に取り組んでまいります。

環境ニュートラルを実現する
モノづくり

当社は2035年カーボンニュートラルを目指し、「モノづくり」「モビリティ製品」「エネルギー利用」の3つの領域で取り組んでいます。「モノづくり」において2021年度は安城(電力、ガス)、欧州6拠点、アジア1拠点(以上電力)で証書、クレジットを活用し再生エネルギー100%を実現しました。今後は、実証を進めている安城、広瀬、西尾、福島の国内4モデル工場を皮切りに、全世界130工場にエネルギー循環システム(事例1)、Factory-IoTの活用(事例2)、デジタル化(事例3)や、省エネ技術を順次導入し完全なカーボンニュートラル工場実現を目指します。


 エネルギー循環システム

再エネ電力を活用したモノづくりのカーボンニュートラルを実現するためには、天候や時間帯によって変動する再エネ電力を電気や水素、燃料として「ためる」技術と、製造工程でどうしても発生してしまうCO2を回収・循環・再利用できるように資源やエネルギーとして「もどす」技術が必要です。

 Factory-IoTを使ったCO2の可視化と削減の取り組み

各製造工程での消費エネルギーを計測し、CO2排出量に換算して生産情報とともに設備や工程ごと等に「見える化」することで、設備停止や品質ロスがCO2排出に与える影響を分析できるようになります。こうした分析と改善のサイクルを回し続けることにより稼働率の向上とエネルギーロスの最小化を実現します。

 工場での様々なデジタル化

工場でのデジタル化を推進し、仕事での紙・工程・移動時間や燃料を徹底して削減する省エネにも取り組んでいます。これは作業効率や精度向上、働き方改革にも貢献します。

TOPICS

気候変動への対応

気候変動を背景とする環境変化は、今後、当社事業に大きな影響を及ぼす重要な問題と考えています。その環境変化に柔軟に対応していくため、気候変動が事業に与える影響が大きい項目を洗い出し、財務上の定量的な影響や事業への具体的な機会とリスクについて分析(シナリオ分析)しました。

この分析を踏まえ、今後は「カーボンニュートラル」に向けた事業運営が当社にとって重要となると判断しました。そこで当社は従来よりもさらに一段高い目標として「2035年カーボンニュートラル」を宣言し、事業戦略や行動計画へ反映させ、事業の持続的な成長へつなげる取り組みを進めています。
具体的には、専門組織を新設するとともに、財務計画においては、電動化や新燃料対応製品等に対応する研究開発費の増加や、モノづくりのカーボンニュートラルに向けた、CO2オフセットや再生可能エネルギーの購入費などを反映しています。

なお、気候変動への当社の対応については、「 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)※」(2019年に賛同)の提言に則って、当社「統合報告書」およびウェブサイトを通して内容を開示しています。

“Task Force on Climate-related Financial Disclosures”の略称。各国の中央銀行・金融当局や国際機関が参加する金融安定理事会(FSB)が2015年に設立。気候変動が事業に与える影響(機会やリスク)等、企業が市場に開示すべき項目などを提言。

重要度の高い機会とリスクへの対応

機会 脱炭素に資する技術需要増加
  • センサ・制御・ロボット・バイオ関連技術開発を加速し、CO2吸収技術等の創出
  • 積極的なアライアンスによる新事業創出とその販路開拓
電動車の需要増加
  • 電動化した駆動・電源・制御技術や、ヒートポンプ・サーマルシステムの技術開発の加速
  • 新燃料に対応する制御システム等の技術開発
リスク 燃費/排ガス規制強化加速
異常気象の増加・深刻化
  • 気象災害対策を講じた工場の建設
  • 部材の購入先の複数化
  • 生産変更に対応できるグローバル生産体制の構築

TOPICS

ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組み

デンソーでは性別、年齢、障がいの有無、性自認・性的指向、国籍等の違いを問わず、多様な才能や価値観を持つ社員が、心のこもった対話を通じて相手を理解し、尊重し合うための取り組みを進めています。

女性あらゆる階層で男女が区別なくいきいきと働いていることを目指し、採用比率・育休取得率・管理職数等のKPIを設定しています。2021年度は生産職場をリードする人材を育成すべく、上司向けダイバーシティ研修や女性座談会を実施しました。
高年者高年者の豊かな経験と能力の発揮及び本人の働きがいの支援に向けて、社員のライフプランに合わせた多様な働き方・生き方を支援するとともに、定年後も活躍する制度や高年者のチャレンジ意欲を高める施策を導入しています。
障がい者1978年より雇用を開始し、現在デンソー・特例子会社2社で800名超の障がいのある社員が働いています。2021年の全国障害者技能競技大会では選手3名が金賞・銀賞を受賞し、職場で培った高いスキルを発揮し好成績を残しています。
LGBTQ個性を尊重するため、性自認・性的指向に対する取り組みを進めています。条件を満たす同性カップルを婚姻とみなし福利厚生等の制度利用を可能とするほか、匿名でも利用できる相談窓口を設置し、個人の事情に合った対応をしています。
外国人社員共通の価値観であるデンソースピリットの浸透、発揮能力モデル(コンピテンシー)や幹部育成プログラム等グローバル共通の人事施策を実施しています。今後も登用拡大を目指し、環境整備・風土醸成等の活動を推進していきます。
キャリア採用社外の多様な経験・知識を、新しい価値創出につなげるべく、積極的に採用を行っています。入社後は、導入研修や、定期的な心身健康状態把握等、即戦力としての早期活躍と定着率向上に向けた取り組みを行っています。

※ L:レズビアン G:ゲイ B:バイセクシャル T:トランスジェンダーQ:クエスチョニングなどさまざまな性

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2022/06/21 11:00:00 +0900
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