当社グループは、「人間尊重」と「三つの喜び」(買う喜び、売る喜び、創る喜び)を基本理念としています。「人間尊重」とは、自立した個性を尊重しあい、平等な関係に立ち、信頼し、持てる力を尽くすことで、共に喜びをわかちあうという理念であり、「三つの喜び」とは、この「人間尊重」に基づき、お客様の喜びを源として、企業活動に関わりをもつすべての人々と、共に喜びを実現していくという信念であります。
こうした基本理念に基づき、「わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす」という社是を実践し、株主の皆様をはじめとするすべての人々と喜びを分かち合い、企業価値の向上に努めていきます。
当社グループは、総合モビリティカンパニーとして、一人ひとりの創造力から生まれる夢のあるモビリティや多様なサービスによって「環境負荷ゼロ社会」「交通事故ゼロ社会」を実現するとともに、2023年にグローバルブランドスローガンである「The Power of Dreams」を再定義して明確に示した「時間や空間といったさまざまな制約から人々を解放し (Transcend)、また人の能力と可能性を拡張する (Augment)」という本質的な提供価値を世界中にお届けすることで、人や社会を前進させるパワーとなることをめざしていきます。めざす姿の実現に向けて、夢を原動力に、独創的な技術とアイデアで、当社グループはこれからも果敢にチャレンジを続けていきます。
当社グループを取り巻く経営環境は、大きな転換期を迎えています。価値観の多様化や、高齢化の進展、都市化の加速、気候変動の深刻化、さらに電動化、自動運転化、IoTといった技術の進化による産業構造の変化が、グローバルレベルで進んでいます。また、ウクライナおよび中東における国際情勢の悪化や各国の通商政策において不透明な状況が続くなど、地政学的リスクも顕在化しています。そのような中、将来の成長に向けては、提供価値の質の向上に継続的に取り組むとともに、企業活動に関わるすべてのステークホルダーと、長期的な社会課題を解決するための、積極的な関係構築が求められます。
四輪事業においては、長期的な観点ではカーボンニュートラル実現に向けて、EV(電気自動車)が最も有効なソリューションであると考えています。一方で、四輪車の電動化を取り巻く環境は大きな変化に直面しています。電動化の普及は、地域によって進展の差が大きく、また、黎明期である現在においては、その普及のスピードにも変動があります。当社グループは、電動車の市場動向を見極めながら、リソースの効果的な配分を行うなど、柔軟かつ適応力のある戦略を維持していきます。
二輪事業は、若年層人口比率の高い国々を中心に、今後も市場の成長が見込まれます。一方で、世界最大の二輪車市場であるインドでは政策の後押しもあり、電動車の需要も急速に拡大しています。その他の国々でも、電力の安定供給や充電ネットワークの整備といったインフラ面では国ごとに異なる課題があり、政府の販売支援策や産業育成策の実行力にも違いがあるものの、長期的には電動車の拡大トレンドが継続すると考えています。当社グループはこのような状況を踏まえ、ICE(内燃機関)車と電動車の拡大ペースを市場ごとに見極めながら、リソースの効果的な配分を行うとともに、躍進する電動新興メーカーに対して当社グループの強みを活かしながら対応策を展開していきます。
パワープロダクツ事業及びその他の事業においては、建設機械・産業機械業界などにおいても官民一体によるカーボンニュートラルの動きが加速し、環境に配慮された製品のニーズが高まりを見せています。当社グループは、それらの業界の完成機メーカーなど法人顧客向けに電動製品のラインアップを拡充させることで、カーボンニュートラル社会の実現に向けた動きを加速させる役割を担っています。
経営環境および対応の方向性の詳細については、Webサイトを参照ください。
https://global.honda/jp/investors/
持続可能性の観点から網羅的に抽出した社会課題を、当社グループがめざす方向性に照らしあわせ、優先的に対処すべき課題を選定しています。従来より経営の重要テーマとして掲げてきた「環境」と「安全」に加え、当社グループの成長の原動力である「人」と「技術」、またすべての企業活動の総和ともいえる「ブランド」の5つの非財務領域を重要テーマとして選定し、財務戦略と連携させることで社会的価値・経済的価値の創出を実現していきます。
<5つの重要テーマ>
1 環境負荷ゼロ社会の実現
当社グループは、持続可能な企業活動をめざし、それぞれが連鎖している環境負荷を網羅的に低減する取り組みに向けて、全社の重要テーマの一つを「環境負荷ゼロ社会の実現」と設定しています。「環境負荷ゼロ社会の実現」をめざした活動は、「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」、この3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action to ZERO」を中心にして取り組んでいます。
2 交通事故ゼロ社会の実現
当社グループは、2050年に全世界で、当社グループの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざします(注1)。また、そのマイルストーンとして2030年に全世界で当社グループの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者半減をめざします(注2)。これらは、新車だけでなく、登録・届出されたすべての二輪車、四輪車が対象となります。
3 人的資本経営の進化
当社グループの人的資本経営とは、全社の方針である「一人ひとりの夢を原動力に人と社会を前進させる総合モビリティカンパニー」をめざし、事業戦略の到達点からバックキャストした将来必要な人材ポートフォリオを形成していくことです。そしてこれを実現するために中長期・短中期の観点から達成すべき二つの人材マテリアリティ(注)を設定しています。さらに、人材マテリアリティごとに二つ、合計四つの主要テーマを設定しています。
持続可能性の観点から網羅的に抽出した社会課題を、Hondaのめざす方向性に照らし優先順位を付けたうえで選定された「重要テーマ」において、とくに注力していくべき課題
4 独創的な技術の創出
めざす提供価値として定めた「Transcend」・「Augment」の実現に向け、「コア技術の創出こそが将来にわたるサステナブルな事業基盤や競争力を生む源泉になる」という考え方に立脚し、イノベーションマネジメントの強化に、継続的に取り組んでいます。将来の環境負荷ゼロ社会、交通事故ゼロ社会の実現に向け、またモビリティフィールドとその概念の拡大をめざし、注力領域を定めた上で、各領域エキスパートがその実現に向け技術開発をリードしています。また、世界中のさまざまな研究機関と共同研究を行うことで、グローバルでの知の探究と結集をはかっています。技術開発は試行錯誤の繰り返しであり、その弛まぬ努力が実際に世の中に上市される商品へと結実するまでには長い時間と莫大なリソースが必要となります。しかし、どのような時代においても「新技術の探究」こそが次代の当社グループをつくり上げるドライビングフォースであるという信念のもと、思い切ったリソース投入を行うことで、高い競争力を持ち続け、サステナブルな事業展開に貢献していくことをめざします。
5 ブランド価値の向上
Hondaのブランドは、創業時から現在に至るまで、お客様とともに歩み続けたあらゆる企業活動の積み重ねによって形づくられてきました。75年の歴史によって紡がれたHondaブランドをさらに輝かせ、将来にわたってその価値を高めていくことは、当社グループにとって極めて重要な課題の一つであると認識しています。ブランドマネジメントにおいては、「企業としての一貫性」と「商品・サービスの多様性・独自性」との間に相乗効果を生み出すことが重要だと考えています。あらゆる企業活動に価値ある一貫性を反映していくことによって、ブランディングを強化し、ブランドの価値を高めていくことをめざします。この一環として、グローバルでブランドに価値ある一貫性をもたらすため、さまざまな発信やブランディングを実践する際の指針として活用する「ブランドアセット」の整備と拡充に取り組んできました。今後はこれらのブランドアセットをさらに拡充するとともにコンテンツを進化させ、グローバルで活用の拡大をはかっていくことで、当社グループで働くすべての仲間の「夢」を原動力とした創造性の発揮を後押しするとともに、ステークホルダーの皆様から共感いただける魅力的なブランドの確立をめざしていきます。
5つの重要テーマの詳細については、Webサイトを参照ください。
https://global.honda/jp/investors/
<財務戦略>
6 経済的価値の向上
企業価値の向上に向けては、財務・非財務資本を活用し、キャッシュ・フローの持続的な成長と資本効率の向上を実現する必要があると認識しています。この実現に向けて、「事業変革フェーズに応じた戦略的な資源配分」「資本コストを意識した経営の強化と環境変化への対応」「積極的な対話による経営の質・透明性の向上」へ取り組んでいきます。
財務戦略の詳細については、Webサイトを参照ください。
https://global.honda/jp/investors/
以上のような企業活動全体を通した取り組みを行い、株主、投資家、お客様をはじめ、広く社会から「存在を期待される企業」となることをめざしていく所存でございます。
「ネットで招集」には、事業報告の要旨を掲載しております。
事業報告・計算書類等の全文につきましては、「招集通知」からご参照ください。