当期の世界経済は、主要先進国の金融政策が転換点を迎えつつある中、物価抑制と景気動向の双方を注視する局面が続きました。加えて、中東情勢の緊迫化など地政学リスクの再燃、エネルギー価格の変動など、先行きの見通せない不安定な状況が続きました。
日本経済は、一部で設備投資の持ち直しが見られるものの物価上昇や為替変動の影響を受け、加えて世界経済同様に地政学リスクの影響を受けるなど、予断を許さない緊張感ある経営環境に終始いたしました。
自動車業界は、次世代技術への投資が活発化するなか、新興カーメーカーの台頭が日系カーメーカーやサプライヤーの経営に影響を及ぼすなど競争環境が大きく変化しております。こうした市場構造の変容に加え、各国・地域のエネルギー政策や多様な消費者ニーズに応じた多種多様なモビリティへの対応が、これまで以上に強く求められる一年となりました。
当社グループは、このような不透明な環境が継続するなか、「2030事業計画」を経営の基軸に据え、諸施策を積極的に推進してまいりました。本事業計画では、「安心・安全」「快適」「脱炭素」への貢献を通じた、社会的価値と経済的価値の両立による持続的な成長を目指しております。当期は本事業計画に沿った成長戦略を加速させるとともに、市場環境が激変する中国事業において構造改革を実行するなど、将来にわたる収益基盤の強化を並行して進めてまいりました。
提供価値の1つ目である「安心・安全」については、交通事故死傷者数のさらなる低減に向けた取り組みとして、当期も当社主催で欧州の自動車安全アセスメント(Euro NCAP)の関係者を招待して安全サミットを実施し、議論を行いました。このような取り組みにより将来アセスメントの動向をつかみ、高度化する要求に対し、当社の強みであるCAE技術を用いて、シートベルトを含めた安全で普及しやすい乗員保護システムの提案を進めてまいりました。さらに持分法適用会社であった芦森工業株式会社の完全子会社化を通じて、シートベルトとエアバッグを組み合わせた開発をスピードアップさせてまいりました。
技術開発面では、側面衝突時に乗員同士の衝突を防ぐ「新構造の前席センターエアバッグ」や、次世代の自動車操舵システムに対応した先進的な意匠の新型ハンドルを市場投入いたしました。
さらには自動車以外の交通事故死傷者数低減に向けた「自動二輪車用エアバッグ」等、将来に向けた開発についても注力してまいりました。

提供価値の2つ目である「快適」については、車内空間の価値が再定義される次世代モビリティに向け、当社の強みである内装部品とセーフティシステムを融合させた差別化製品として、車内空間の自由度を高める薄型インストルメントパネルと、それに対応する新構造のエアバッグの開発に取り組んでまいりました。また、コンソールの蓋をトレイとしても活用できる「リバーシブルアームレスト」を開発し、コンソールの利便性と意匠性の両立を実現いたしました。さらに、サイネージ機能を実現する「光透過技術」や、オフロード車の力強い外観に寄与する塗装技術「メテオコート」、環境負荷を低減する「インモールドコート技術」など、独自の加飾・表面処理技術も確立いたしました。これら高付加価値製品の量産化により、新たなモビリティ社会におけるクルマの快適性能の向上に貢献してまいりました。

提供価値の3つ目である「脱炭素」については、当社の材料技術を核とした循環型ビジネスの構築を推進いたしました。当社独自の自動車用ゴム部品のリサイクル技術が、「第39回中日産業技術賞」(主催:中日新聞社、後援:経済産業省)において、最高位の「経済産業大臣賞」を受賞いたしました。技術改良により新材への配合割合を20%まで引き上げることで資源循環に寄与し、時代の要請に応える技術である点が高く評価されました。また、「廃車から回収したプラスチックを50%配合した自動車部品(グラブボックス)」が、「第22回“超”モノづくり部品大賞」(主催:モノづくり日本会議・日刊工業新聞社)において「日本力(にっぽんぶらんど)賞」を受賞いたしました。
さらに、カーボンニュートラル社会の実現に向け、「高圧水素タンク」が大型トラックに採用されるなど、乗用車にとどまらず商用車の次世代エネルギー分野への展開も具体化しております。


当期の売上収益は、顧客の生産台数増加等により、1兆1,467億円(前期比 8.2%増)と増収となりました。利益については、増販効果や原価改善等により、営業利益は 795億円(前期比 32.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は 620億円(前期比 70.7%増)となりました。