当期の世界経済は、労働需給の逼迫を背景とした賃金上昇やエネルギー費高騰によるインフレ圧力の継続、中国における不動産市場の低迷に加え、貿易摩擦による国際関係の緊張や地域紛争など地政学リスクの顕在化等もあり、不確実性が高まりました。
日本経済は、円安による原材料費・燃料費の高騰もありましたが、インバウンド消費などコロナ禍からの回復による需要増にも支えられ、回復基調をたどりました。2024年3月には「17年ぶりの利上げ」という歴史的転換点を迎え、賃金と物価の好循環の実現、さらにデフレ脱却に向けて重要な局面を迎えています。
自動車業界は、半導体供給の安定と旺盛な需要に支えられ好調に推移しました。一方で、クルマの電動化に向けた動きは、一部で普及スピードに懐疑的な見方も広がりましたが、新興国市場での電気自動車(BEV)のシェア拡大や新興BEVメーカーの急成長に見られるように、脱炭素に向けた電動化へのシフトチェンジの大きな流れは継続しており、各社とも対応に向けて大きな変化が求められる1年となりました。
当社はこのような状況の下、将来にわたる持続的な事業成長を実現するための中長期経営計画として、2023年8月に「2030事業計画」を策定しました。この計画では「高分子の可能性を追求し、より良い移動と暮らしを未来につなぐ会社」を目指す姿とし、大きく2つの軸によって成長を目指すこととしています。1つ目の軸としては、BEVをはじめとするCASEやMaaSなどの新モビリティ社会を支える「安心・安全」「快適」をカタチにして社会に貢献することを掲げました。2つ目の軸としては、豊かな地球環境を未来に残していくため、当社の強みであるゴム・樹脂の高分子技術の知見を活かし「脱炭素」に貢献することを掲げました。このように社会的価値と経済的価値を両立させることで、持続可能な事業の発展を目指していきます。
ハンドルやエアバッグなどのセーフティシステム製品は、BEVや自動運転技術の普及に伴い、機能と性能の両面で進化が求められています。重点市場であるインドでは現地開発機能を強化し、カーメーカーへの提案の充実や対応の迅速化を進めました。また芦森工業株式会社との資本業務提携を強化し、相互の事業資産とノウハウを活用することで、より安全で安心なモビリティ社会の実現に貢献していきます。
CASEやMaaSなどのモビリティの変化に対応しながら、より快適な車内空間づくりを目指します。内装や外装製品の開発を進め、新しいモビリティの快適性向上に貢献していきます。
樹脂やゴムの材料技術・加工技術を活用し、水素社会や循環型社会の実現に向けた取り組みを加速します。
普及が期待される燃料電池トラック向けの「大型高圧水素タンク」を市場投入しました。今後も、燃料電池車の基幹部品である水素タンクの開発・生産を通じ、水素社会の実現に貢献していきます。
Ossia社(米国)と共同で進めているワイヤレス電力供給技術を使った「スマホ用ワイヤレス給電レシーバー」がCES2024においてInnovation Awardsを受賞しました。
当社グループは、サステナビリティ活動をより一層推進していくために、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)への取り組みを基盤とした、基本的な考え方とサステナビリティマネジメント体系図を策定しています。サステナビリティ重要課題と中長期経営計画との統合を図った経営に取り組み、時代の変化に即した、社会の持続的な発展と豊田合成グループの持続的な成長を目指していきます。
〔詳細は当社サステナビリティサイトをご覧ください〕
<当期の主な取り組み>
環境(E)
●脱炭素の国際認定「SBT認定」を取得
当社の2030年に向けたCO2削減目標が、世界共通の温暖化対策の枠組みであるパリ協定※1に準じた内容であるとして、国際機関(SBTi)による「SBT※2認定」を取得しました。
※1:2015年にパリで採択され、翌年に発効した国際協定。産業革命前と比較し、世界の平均気温上昇「2℃未満」を必達目標、「1.5℃未満」を努力目標として掲げる。
※2:Science Based Target。科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標。本目標の達成を推進することを目的に、国際的な環境非営利団体CDPなどの4団体により、SBTi(Science Based Targets initiative)が設立された。
社会(S)
●仕入先団体による技術展示会を開催
当社の仕入先様69社が構成する「協和会」により、各社が持つ生産技術などの得意分野をパネルや実物(製品)で当社に紹介いただき、協業の深化につなげる「勝ち技展示会」を開催しました。当社と仕入先様とはオープンなパートナーシップに基づき、製品開発や人材育成、環境負荷低減などで連携し、モビリティ社会の変化に柔軟・迅速に対応していくことを目指しています。
ガバナンス(G)
●グローバルサミットを開催
2023年11月6日からの4日間、14カ国・地域から49のグループ会社のトップら約130名が一堂に会する「第5回 TGグローバルサミット」を開催しました。
2030事業計画の策定(2023年8月)を受け、新たな経営目標の達成に向けた戦略や実施事項についてグループ全体への浸透を図ったほか、海外での地域別事業戦略やグローバルでの生産技術開発などについてパネルディスカッション形式で意見交換を行いました。また、内部統制強化に向けた経営者向けの講演会を実施しました。
当期の売上収益は、日本、米州を中心とした顧客の生産台数増等により、1兆711億円(前年比12.5%増)と増収となりました。
利益については、主に増販効果や合理化努力により、営業利益は677億円(前年比93.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は514億円(前年比221.5%増)となりました。