第102回定時株主総会招集ご通知 証券コード : 7282

事業の経過及びその成果

当期の事業環境

 当期の世界経済は、不動産不況を背景とする中国経済の減速はあったものの、アメリカでの労働需要を背景とした賃金上昇による消費の下支えもあり、全体としては緩やかに成長しました。
 日本経済は、2024年3月の17年ぶりの利上げや、高水準の賃金引上げ等、経済好循環に向けた動きが定着しつつあります。一方、アメリカの政権交代に伴う政策変更により不確実性が高まっており、その動向及び各方面へ波及する影響についての注視が必要です。
 自動車業界では、BEV(電気自動車)普及速度にやや減速感が見られるものの、電動化を含めた多様なモビリティの実現に向けた対応が求められています。

当期の取り組み

 当社は、2023年8月に策定した「2030事業計画」に掲げる2つの軸によって成長を目指します。一つ目の軸としては、BEVをはじめとしたあらゆるモビリティ社会を支える「安心・安全」「快適」をカタチにして社会に貢献することを掲げています。二つ目の軸としては、豊かな地球環境を未来に残していくため、当社の強みであるゴム・樹脂の高分子技術の知見を活かし「脱炭素」に貢献することを掲げています。このように社会的価値と経済的価値を両立させることで、持続可能な事業の発展を目指していきます。

〈安心・安全への貢献〉

 自動車全体の安全性能は年々向上していますが、交通事故死傷者ゼロに向けては解決すべき多くの課題があります。新興国では自動車の急速な普及に伴い交通事故も増加しており、より安全性が求められています。当社の重点地域であるインドでは、法規やアセスメントの導入により自動車へのエアバッグの装着が加速しており、当社もそれに対応すべく、インド北部で新工場の稼働を開始し、さらに、インド南部においても工場を新設します。
 2024年11月に「自動車の安全システムに関する国際シンポジウム」(Airbag2024)においてエアバッグに関する研究成果を発表しました。グローバルで安全分野をリードする欧州の安全アセスメント「Euro(欧州)NCAP」のボードメンバーと交流を行い、将来の自動車安全の検討に当社も関与する機会を得ました。
 これらの取り組みを通じ、さらなる安全を目指したアセスメントに対応する製品を開発し、交通事故死傷者低減に貢献していきます。


〈快適への貢献〉

 BEVらしい車内空間の実現と内装デザインの多様化に寄与する「LED陰影イルミネーション」や、ミリ波レーダ透過機能と発光機能を併せ持つ新しいエンブレムを開発するなど、モビリティの変化に対応しながら、より快適な車内空間づくりを目指しています。
 昨今、車内の開放感や前方視認性の向上のため、省スペース化のニーズが高まっています。それに対応すべく、「超薄型レジスタ」を開発し、2025年3月に中国で発売されたトヨタ自動車の新型BEVである「bZ3X」に搭載されました。
 さらに、日本のBEV能力増強対応として拡張した瀬戸工場では、製品の組付け・搬送の自動化や生産工程を一元管理するIoTシステムなどを通じて「工場のスマート化」を実現し、モノづくり力の強化を進めました。加えて、重点地域である北米においてもBEV向けの生産能力強化の一環として、アメリカのミズーリ州およびケンタッキー州において、工場の拡張投資を開始しました。


〈脱炭素への貢献・新事業への取り組み〉

 ゴムや樹脂の材料技術・加工技術を活用し、水素社会や循環型社会の実現に向けた取り組みを加速させます。
 水素に関する事業としては、燃料電池トラック向けに開発し市場に投入した「大型高圧水素タンク」が、船舶にも採用されました。さらに、将来の水素社会の実現に向けて「ポータブル水素カートリッジ」用の水素タンクを開発し、顧客に採用されました。
 当社製品の主要材料となるゴムおよび樹脂、それぞれでリサイクルも促進しています。ゴムの分野では、自動車に使用されるゴムの資源循環を加速させるため、森町工場のリサイクル工程の生産能力を2倍に強化しました。樹脂の分野では、使用済車両(ELV)リサイクル材料を活用したグラブボックスやロアグリルが完成車に搭載されました。


サステナビリティの取り組み

 当社グループは、サステナビリティ活動をより一層推進していくために、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)への取り組みを基盤とした、基本的な考え方とサステナビリティマネジメント体系図を策定しています。サステナビリティ重要課題と中長期経営計画との統合を図った経営に取り組み、時代の変化に即した、社会の持続的な発展と豊田合成グループの持続的な成長を目指していきます。
〔詳細は当社サステナビリティサイトをご覧ください〕


<当期の主な取り組み>

環境(E)
●ペロブスカイト太陽電池の実用化に向け、応用製品「スマートウェア」を試作【実証実験を大阪・関西万博で実施】
 ぺロブスカイト太陽電池の実用化に向け、太陽電池を衣服に搭載し、自己発電を可能にしたスマートウェアを試作しました。これらの実証実験を大阪・関西万博で行います。
 中長期経営計画で掲げる「より良い移動と暮らしを未来につなぐ会社」という目指す姿の実現に向け、社会課題解決型のソリューション開発を進めています。最先端技術・サービス実現に向けた実証実験の場として大阪・関西万博を活用し、当社技術の可能性を広く知っていただくとともに、早期の社会実装に向けてお客様の声を製品開発に活かしていきます。

社会(S)
●職場風土改革・マネジメント変革の推進
 2015年より、「職場風土」と「マネジメント」の両面から取り組んでいます。近年は、社長・副社長をはじめ経営幹部と組合員の懇談会や、法規関連業務の現場ヒアリングを継続的に行い、職場風土や意識の変化、新たな課題や困り事などをタイムリーに把握し、迅速に施策へ反映しています。
 今後も、安心できる居場所づくりを推進し、一人ひとりが輝ける舞台を創出することで、心理的安全性とエンゲージメントを高め、ウェルビーイングの実現と持続的成長を目指していきます。

ガバナンス(G)
●国内初となるインパクト公募債の発行
 機動的な資金調達を行うために策定した「サステナブル&ポジティブインパクト・ファイナンス フレームワーク」に基づき、インパクト公募債(以下、「本社債」)の発行を行いました。環境・社会・経済への影響(インパクト)を包括的に評価する「インパクト・ファイナンス」の枠組みを用いた公募債の発行は国内初となります。
 本社債の発行により調達した資金を通じて、脱炭素社会の構築に向けて普及が期待されるBEV向け製品の開発・生産や、乗員や歩行者の保護を目的としたエアバッグなどのセーフティシステム製品の開発・生産を推進していきます。


当期の業績

 当期の売上収益は、顧客の減産等により、1兆597億円(前期比 1.1%減)と減収となりました。
 利益については、原価改善や為替影響はあるものの、減販影響等により、営業利益は 598億円(前期比 11.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は 363億円(前期比 29.4%減)となりました。

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2025/06/19 11:00:00 +0900
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