事業の全般的状況
当社第124期(2024年1月1日から2024年12月31日まで)の世界経済は、不動産不況による中国経済の減速、インフレ抑制のための利上げやロシア・ウクライナに加え中東での地政学的リスクの高まりによる欧州経済の低迷が続いた一方で、米国経済は堅調に推移したことで全体としてはゆるやかに成長しました。
当社については、半導体露光装置が旺盛な半導体需要により販売台数を大きく伸ばしたのをはじめ、ネットワークカメラ、商業印刷などの新規事業も市場の成長を背景に売上を伸ばしました。オフィス複合機やレーザープリンター、カメラについても競争力のある製品ラインアップにより高いマーケットシェアを維持し、前期を上回る売上となりました。その結果、当期の連結売上高は前期比7.9%増の4兆5,098億円となり、過去最高の売上を記録しました。
売上の増加に加え、物流コストや製造原価、販売経費の抑制にも努め、営業利益をはじめとする各利益がおおむね2割増加し収益性の向上が進みましたが、メディカル事業において現在の医療機関の経営状況悪化や地政学的な影響でのビジネス縮小など外部環境の変化を受け1,651億円ののれんの減損処理を行ったため、最終的な連結営業利益は前期比25.5%減の2,798億円、当社株主に帰属する連結当期純利益は前期比39.5%減の1,600億円となりました。
売上高は5カ年経営計画の目標を1年前倒しで達成するとともに、メディカル事業ののれんの減損費用を除くと営業利益率も9.9%まで上昇しており、5カ年経営計画「グローバル優良企業グループ構想 フェーズⅥ」で掲げた事業ポートフォリオの転換は着実に進んでおります。
今後の成長が期待される4つの分野
決算のポイント
● 半導体露光装置やデジタル商業印刷機、ネットワークカメラなどの成長事業を中心に売上を伸ばした結果、連結売上高は前期比7.9%の増収となりました。
● 売上増に加え、コストの抑制にも努め営業利益をはじめとする各利益がおおむね2割増加するはずでしたが、メディカル事業ののれんの減損損失により、当社株主に帰属する連結当期純利益は、前期比39.5%の減益となりました。
売上高・損益の推移
地域別売上高の構成
部門別売上高の構成
事業の部門別状況
商業・産業印刷向けのプリンターは、短納期・多品種少量印刷への対応や操作性に優れたデジタルへのシフトが進んでおり、当社は顧客の声をもとに製品の改良を重ねてきました。昨年5月末にドイツで開催された4年に1度の国際的な印刷機材展示会では、新製品を含め業界をリードする当社の製品ラインアップが好評を博し、受注の拡大につなげました。
オフィス向け複合機は、生産性の高い中核のプリンティング機器としてニーズは底堅く、省エネ性能やメンテナンス性が顧客から評価されている当社は、顧客先でのカラー機の稼働台数を増やしてきており、安定したサービス収入につながっています。
インクジェットプリンターは欧州、中国の市況悪化の影響を受けましたが、新製品を投入した大容量インクモデルは二桁の販売台数の伸びを記録し、レーザープリンターは出荷調整完了後の第2四半期以降は順調に回復し、売上を伸ばしました。
これらの結果、当ビジネスユニットの連結売上高は前期比7.5%増の2兆5,227億円となりました。
画像診断装置は、中国での反腐敗運動の長期化や欧州の景気後退、日本における医療機関の働き方改革の影響を受け市場が縮小しましたが、フラッグシップの新商品「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」をグローバル展開したCTや主要部品をキヤノン製に一新したMRI「Vantage Galan 3T / Supreme Edition」、血管撮影装置「Alphenix」が米国を中心に売上を伸ばしました。成長のための重点市場である米国では、販売体制強化と医療機関とのパートナーシップ締結の効果が出てきており、アジアや中近東などの新興国の売上も成長しました。
これらの結果、当ビジネスユニットの連結売上高は、前期比2.7%増の5,688億円となりました。
レンズ交換式カメラは、ミラーレスカメラの新製品として昨年8月にプロ・ハイアマチュア向け主力モデルの「EOS R5 Mark II」、11月にフラッグシップモデルとなる「EOS R1」を発売し、前期を上回る台数を販売し成長を続けています。高付加価値モデルの販売増加により交換レンズも販売を伸ばし、カメラ全体の売上は増収となりました。
ネットワークカメラの市場は、セキュリティ分野を中心に引き続き成長を続けています。当社は第1四半期に在庫の調整局面で売上が伸び悩んだものの、その後は欧米での強力な販売チャネルを生かし、拡大する需要を確実に取り込んだことで、カメラ本体、ソフトウエアともに売上を伸ばし、当期も二桁の増収となりました。
これらの結果、当ビジネスユニットの連結売上高は前期比8.8%増の9,374億円となりました。
半導体は生成AI向けにロジックやDRAMの需要が大きく伸び、加えて経済安全保障上の観点から自国生産を進める動きもあり、半導体露光装置の旺盛な需要は継続しています。当社は電気自動車(EV)などで使われるパワー半導体向け装置の販売が大きく増え、生成AI向け半導体の先端パッケージに使われる後工程向け装置については業界標準の装置となっており販売台数を前期から2倍以上に伸ばしました。
FPD露光装置は、パネルメーカーの収益改善が進み、ノートパソコンやタブレットなどに搭載されるITパネル向けの新規投資や高機能化にともなうスマートフォン向けの追加投資が徐々に回復してきており、当期は前期から微増となる台数を販売しました。
これらの結果、当ビジネスユニットの連結売上高は前期比13.3%増の3,565億円となりました。