第23期定時株主総会招集ご通知 証券コード : 8411
以下の条項を、当会社の定款に追加的に規定する。
第 章 気候変動関連リスク管理
第 条 移行計画(顧客の気候変動移行計画の評価に関する情報開示)
当会社が重大な気候関連財務リスクに直面していることを踏まえ、当会社は以下の情報を開示する。
1.高排出セクターにおける顧客の気候変動移行計画とパリ協定1.5度目標との整合性についての評価基準その他の評価方法
2.当該顧客がパリ協定に沿った信頼性のある移行計画を作成しなかった場合の対応措置(新規資金提供の制限を含む)
3.当会社の顧客がパリ協定に沿った信頼性ある移行計画を持たないことに伴う当会社の財務リスクに係る評価
当社は気候変動を「トップリスク」と認定し、2050年ネットゼロを公約し、炭素関連セクター顧客の移行リスク管理方針を定め、顧客の目標の妥当性や「国際的なスタンダードが提唱する適切な移行戦略の要件の充足」の確認を行うとしている。
しかしこれら方針が、当社の高排出顧客向け投融資に与えている実質的影響は示されていない。また当該方針は、顧客がパリ協定1.5度目標と整合する信頼性ある移行計画を提示する期限や、移行を促すための投融資条件を設けておらず、むしろ当該移行計画を有しない顧客に多額の支援を続けている。これにより移行支援策の実効性が損なわれ、海外競合他社に遅れを取り、増大する移行リスクと気候変動による物理的リスクに株主を晒している。
本提案は当社が表明するリスク管理を適切に行い、ネットゼロ公約と整合させるために不可欠である。広く投資家の期待とも合致し、当社の長期的な企業価値の維持向上に資する。(397文字)
〔(会社注)以上は、株主から提出された書面に記載された提案内容及び提案理由を注釈を除き、原文のまま記載したものです。〕
取締役会は、本議案に反対いたします。
当社グループは提案内容を以下の通り実施、開示しています。
移行リスクセクターの取引先の移行への対応状況を「目標と実績の1.5℃軌道の整合」を含む基準で評価し、開示しています。
評価を踏まえてエンゲージメントを行い、一定期間経過後も移行戦略が未策定の場合は取引を慎重に判断します。
財務リスクは、シナリオ分析を通じてポートフォリオ全体で評価するとともに、取引先の信用力評価で気候関連リスクを考慮するなど、適切に管理しています。
一方、金融機関の果たすべき役割は地域や業種によって異なる移行経路を踏まえた取引先の移行支援であり、1.5℃整合のみで取引先への対応を判断することは取引先の着実な移行を妨げ、その結果、当社の企業価値を毀損する可能性があります。
あわせて、本議案が求める個別の業務執行に係る事項を定款へ定めることは、機動的かつ迅速な対応の支障となる虞があり、適当でないと考えます。
当社取締役会の意見の補足説明につきましては、以下をご覧ください。
1.気候変動への対応について
当社グループは、環境方針において、気候変動を経営戦略における重要課題と位置づけ、気候変動への対応姿勢を明確化しています。その実践のため、気温上昇を1.5℃に抑制するための努力を追求し、2050年の脱炭素社会の実現に向けて目指す姿・行動(アクション)を示す「2050年ネットゼロに向けた〈みずほ〉のアプローチ」を策定し、気候変動の取り組みを実体経済の移行促進・ビジネス機会獲得・リスク管理の観点から統合的に進めています。
<2050年ネットゼロに向けた〈みずほ〉のアプローチ(概要)>
2.脱炭素社会実現に向けた〈みずほ〉のアプローチ
当社グループの考える2050年のありたき日本の産業構造を“グランドデザイン”として描いています。グランドデザインを目指し、足元の着実なトランジション支援に加え、技術革新・ビジネスモデルの転換の推進により、中長期的な目線でともに未来を描き、お客さまの企業価値向上・ビジネスの拡大に貢献するための取り組みを進めています。
3.気候関連リスク管理について
「気候関連リスク管理の基本方針」に基づき、信用リスク、市場リスク等の各リスク区分と関連づけながら業務計画の遂行において重要な気候関連リスクを特定し、各リスク区分の特性や事業戦略を踏まえてコントロールしています。当社グループはこうした枠組みを通じて、本提案で言及されている取引先の移行計画の評価や財務リスク管理を実施するとともに、気候・自然関連レポート等で開示しています。
(1)炭素関連セクターリスクコントロールについて
当社グループは、定性評価によって移行リスクが高いと認識したセクター(炭素関連セクター)において、取引先のトランジション支援と当社グループの移行リスクのコントロールを両立させるため、エンゲージメントを通じたリスクコントロールを実施し、開示しています。取引先の属するセクターと移行リスクへの対応状況の2軸で、取引先ごとのリスクの高低を評価し、移行に向けた支援を行っています。
「移行リスクへの対応状況」の評価基準に、2024年度より「目標に対する一定のGHG排出削減実績あり」「目標と実績が1.5℃経路に整合」の2つを追加しています。
<炭素関連セクターリスクコントロールの枠組み>
(2)高リスク領域のエクスポージャーコントロールについて
2軸によるリスク評価を行って特定した「高リスク領域」については、以下のエクスポージャーコントロール方針をもとにリスクコントロールを行っています。
●移行リスクへの有効な対応戦略の策定と実践状況の開示や、より低リスクのセクターへの事業構造転換が速やかに図られるようサポートするなど、より一層のエンゲージメントに取り組む
●取引先の事業構造転換等を後押しするため、トランジション支援の枠組みにおいて国際的なスタンダードが提唱する要件の充足等が確認できた場合には、移行に必要な支援を行う
●初回のエンゲージメントから1年を経過しても、移行リスクへの対応意思がなく、移行戦略も策定されない場合には、取引継続について慎重に判断する
●上記を通じて、中長期的にエクスポージャーを削減する
(3)シナリオ分析を通じた財務影響の把握及び信用リスク評価について
当社グループでは、気候変動が将来にわたってポートフォリオに与える影響を把握するために、移行リスクと物理的リスクのそれぞれについてシナリオ分析を実施しています。気候変動に関する様々な将来の状態に対する計画の柔軟性や戦略のレジリエンスを高めるべく、1.5℃のシナリオを含むNGFSの複数のシナリオを用いて分析し、その結果を気候・自然関連レポートにて開示しています。
また、取引先単位での信用リスク評価においても、気候関連リスクが個別の信用リスクに影響を及ぼす場合、他のリスク要因とあわせて定性面での評価に反映する枠組みを構築しています。
上記の通り、当社グループでは取引先の移行計画の評価やシナリオ分析等を通じて、気候関連リスクを適切に管理しています。
なお、本提案は、顧客の移行計画の評価方法や評価後の対応に関する開示などを1.5℃整合という評価軸をもとに行うこと、およびこれら個別具体的な業務執行に係る事項を定款に定めることを求めています。
当社は、「2050年ネットゼロに向けた〈みずほ〉のアプローチ」でも掲げている通り、地域や業種によって異なるネットゼロへの移行経路を踏まえ、お客さまの移行を支援することが金融機関の役割であると認識しています。1.5℃整合という判断軸のみでお客さまを評価し、取引判断を行うことは、お客さまの移行への取り組みを阻害する可能性があり、ひいては実体経済の移行を遅らせ、結果として、当社の企業価値を毀損する可能性があります。
また、当社は、気候変動をはじめとする様々な環境・社会課題に対し、目まぐるしく変わる情勢や執行・監督の間での議論を踏まえながら、対応の高度化を継続してまいりますが、定款はその変更に株主総会における特別決議が必要となることから、仮に本議案が可決された場合、当社の機動的かつ迅速な対応の支障となる虞があります。
以上