第133期定時株主総会招集ご通知 証券コード : 9119

事業の経過及びその成果

 当連結会計年度(以下、「当期」という)の世界経済は、高インフレや利上げによる財需要の押下げ、消費者マインドの悪化等により、全体として緩やかに減速しました。
 米国では、インフレや金融引締めを背景に景気後退が懸念されていましたが、雇用、所得環境の改善により個人消費が堅調に推移し、景気は予想を上回る水準で回復しました。欧州では、物価上昇は一服したものの、内需の弱さから景気の停滞が続きました。中国では、政府による景気刺激策が講じられたものの、不動産市況の低迷が続く等、力強さを欠く展開となりました。我が国の経済は、好調な企業収益による設備投資の増加から緩やかに回復し、大幅な賃上げ等を受け、日本銀行が3月の金融政策決定会合において17年ぶりにマイナス金利解除を決定しましたが、物価高による節約志向の高まりから個人消費が減少しており、期末にかけて足踏み状態が続きました。

 当社グループの海運業を取り巻く市況は、世界経済の減速を背景に一部の船種では弱含む場面もありましたが、当社が主力とするケミカルタンカーや、大型LPG船においては高い水準で推移しました。一方、紅海情勢の悪化に伴い、当社グループが運航する一部の船舶が同海域を迂回する等配船に影響が出ました。このような状況の下、当社グループでは、安全管理体制に万全を期した上で、既存契約の有利更改や効率配船への取り組みにより、運航採算の向上を図りました。不動産業においては、当社所有ビルが順調な稼働を継続したことから、安定した収益を確保しました。

 以上の結果、為替が前年度と比較し円安(対US$)で推移したこともあり、売上高は1,379億50百万円(前期比2.4%減)、営業利益は190億63百万円(前期比4.8%減)、経常利益は218億円(前期比4.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は197億45百万円(前期比15.5%減)となりました。

(報告セグメント別売上高及び構成比)

(注)

△は減少を表示しています。

各セグメント別の状況

 外航海運業 
売上高    1,149億44百万円
営業利益  151億39百万円

  大型原油タンカー
<一般概況>
 大型原油タンカー市況は、OPECプラスの協調減産延長の影響で低迷していましたが、秋口からは冬季需要や米国及び南米等からの輸送需要増加の影響により回復しました。年明け以降は中東の地政学リスクが一層高まる中、荷動きに応じて変動の大きい市況ではあったものの、総じて底堅く推移しました。

<当社の取り組み>
 このような事業環境の下、当社グループの大型原油タンカーにおいては、一部の船舶で入渠工事を実施し稼働が減少しましたが、支配船腹を長期契約に継続投入し、業績の下支えに貢献しました。

  ケミカルタンカー
<一般概況>
 ケミカルタンカー市況は、世界的な景気後退懸念や中国経済回復の遅れを背景に夏場まで軟化傾向で推移しましたが、秋以降はパナマ運河での通航制限の強化に加え、年明け以降は紅海周辺の緊張の高まりを受け、同海域を回避した長距離航海が増加したことが影響し、高い水準で推移しました。

<当社の取り組み>
 このような事業環境の下、当社グループのケミカルタンカーにおいては、当社の基幹航路である中東域から欧州及びアジア向けをはじめとする安定的な数量輸送契約に加え、スポット貨物を積極的に取り込んだことで、当初の予想を上回る運航採算を確保しました。

  大型ガス船

<一般概況>
 大型ガス船のうち、LPG船市況は春先の不需要期や年初で一時期弱含んだものの、北米・中東の堅調な輸出、旺盛なアジア向け需要、パナマ運河の通航制限による船腹需給の引き締まりを背景に高水準で推移し、前期に続き記録的な好況となりました。
 LNG船市況は、欧州・アジアにおける天然ガスの十分な在庫や、温暖な気候及び需要低迷により昨年度と比較し変動幅が限定的でした。例年とおり、冬場に向けた船腹調達の活発化により秋口にかけては高水準で推移したものの、その後は下落基調となりました。

<当社の取り組み>
 このような事業環境の下、当社グループの大型ガス船においては、既存の中長期契約を中心に安定収益を確保したことに加え、一部船舶が好市況を享受しました。また2月にはクリーンエネルギーとして注目されるアンモニアを輸送し、さらに燃料として使用する二元燃料主機関へ換装可能な仕様である当社初のアンモニア運搬船が竣工しました。

  ドライバルク船
<一般概況>
 ドライバルク船市況は、中国経済の回復遅れ等により、当初は軟調でしたが、後半には石炭や穀物、鉄鉱石の需要増加やパナマ運河での混雑により大西洋域で上昇しました。船型や水域による差はあるものの、年度末まで悪化することなく回復基調をたどりました。

<当社の取り組み>
 このような事業環境の下、当社グループのドライバルク船においては、専用船が順調に稼働し安定収益確保に貢献しました。ポストパナマックス型及びハンディ型を中心とする不定期船では、ハンディ型を中心に市況の影響を受けたものの、契約貨物への投入を中心に効率的な配船と運航に努め、ドライバルク船全体で当初の予想を若干上回る運航採算を確保しました。

 以上の結果、外航海運業の売上高は1,149億44百万円(前期比2.6%減)、営業利益は151億39百万円(前期比3.1%減)となりました。

 内航・近海海運業 
売上高    101億17百万円
営業利益   4億7百万円

  内航ガス
<一般概況>
 内航ガス輸送の市況においては、プラントの定期修繕実施や、気温上昇に伴う早期の不需要期入り、9月以降は気温の高止まりによる需要期入りの遅れ等により荷動きが低調でしたが、2月頃から気温の下降に伴い民生用LPGの需要が回復し、さらに内航海運業法等の改正に伴う船員労働時間の規制により、船腹需給は引き締められ、堅調に推移しました。

  近海ガス
<一般概況>
 近海ガス輸送の市況においては、中国経済の回復鈍化により、プロピレンや塩化ビニルモノマーの輸送需要は当期を通して低調であったものの、新造船の竣工は限定的であることから、当社の主力とするアジア域市況では引き続き堅調に推移しました。

<当社の取り組み>
 このような事業環境の下、内航ガス輸送においては、市況の影響や運航船の入渠による修繕工事の重なり等の影響を受けましたが、既存の中長期契約に加え、船員労働時間の規制を考慮した効率配船により、安定的な売上を確保しました。近海ガス輸送においては、既存の中長期契約に基づき、安定的な収入を確保しました。また1月には、アジア域内のLPG輸送に従事する新造高圧LPG船の用船を開始しました。

 以上の結果、内航・近海海運業の売上高は101億17百万円(前期比3.7%減)、営業利益は4億7百万円(前期比31.4%減)となりました。

 不動産業 
売上高
  129億73百万円
営業利益  35億16百万円

  不動産賃貸
<一般概況>
 都心のオフィスビル賃貸市況は、大企業を中心とするリモートワークの浸透によるオフィス需要減少に伴う賃料の下落が続き、空室率も依然として5%台後半から6%台と高い水準で推移しましたが、新築大型ビルへの拡張や集約移転を要因とする市況回復の兆しも見え始めました。

<当社の取り組み>
 このような事業環境の下、当社所有ビルにおいては、オフィスフロアが順調な稼働を継続し、安定した収益を維持しました。
 商業フロアにおいては、一部空室を残しているものの、飲食テナントを中心に売上の回復傾向が見られました。

  不動産関連事業
<一般概況>
 貸ホール・貸会議室においては、先行して需要の回復が見られていた文化系催事に続き、ビジネス系催事においても需要の持ち直しの動きが顕著となりました。
 不動産関連事業のスタジオ事業においては、企業の広告宣伝活動を中心に堅調に推移しました。
 英国ロンドンのオフィスビル賃貸市場においては、従業員のオフィス回帰を促進するための高グレードなビルの需要が強く、高稼働となっているものの、市場の大半を占めるそれ以外のビルを含めた全体的な空室率は高い水準で推移しました。

<当社の取り組み>
 このような事業環境の下、当社グループのイイノホール&カンファレンスセンターにおいては、需要の回復に伴い稼働は改善に向かいました。
 スタジオ事業を運営する㈱イイノ・メディアプロにおいては、主力のスタジオ部門で稼働が引き続き堅調に推移しました。
 英国ロンドンのオフィスビル賃貸事業においては、オフィスフロア・商業フロア共に順調に稼働し、収益を維持しました。また、ロンドンではエネルギー効率性を示す指標で高評価を獲得している、当社二棟目のオフィスビルを取得しました。

 以上の結果、不動産業の売上高は129億73百万円(前期比0.3%増)、営業利益は35億16百万円(前期比7.5%減)となりました。

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2024/06/26 12:00:00 +0900
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