グローバルでのデジタルトランスフォーメーション(DX)等の加速やニーズの多様化・高度化に対応するため、グローバル市場でビジネス拡大を図るとともに、コンサルティングからアプリケーション開発、インフラサービスまでを含めた多様なITサービスの拡大と安定的な提供に取り組みました。
主に日本国内における市場特性を考慮した高付加価値なITサービスを提供する事業を行っています。
日本セグメントにおける各分野の事業活動の取り組み状況等については、以下のとおりです。
公共・社会基盤分野においては、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」等を契機に、官民連携や社会課題解決を目的とした日本政府のIT投資が増加基調にあります。また、マイナンバーカード関連事業、国・地方公共団体のシステム共通化、各府省の事業や準公共各分野(健康・医療・介護、教育、防災等)におけるDX化のさらなる推進が期待されています。
当分野は、少子高齢化や環境問題等の社会課題が顕在化する中、利用者視点に立ったForesight起点のコンサルティングにより社会をデザインし、その実現に向けて官民・インダストリーの壁を越えた連携や、非IT領域も含めた対策、及び関連するプレイヤーの共創によるエコシステム構築によって、事業を拡大するとともに社会課題解決を目指しました。
<高分解能・高頻度な衛星システムの開発に着手>
高頻度かつ高精度な撮影が可能な衛星観測システムを整備し、衛星画像提供から利用者の判断支援までワンストップで提供できる仕組みを構築することを目指して、観測衛星サービスを提供する㈱Marble Visionsを設立しました。また、同社はJAXA(注1)により、宇宙戦略基金の技術開発テーマ「高分解能・高頻度な光学衛星観測システム」(以下、本事業)の事業者として採択されました。
さらに、本事業の実現に向け、㈱パスコ及びキヤノン電子㈱と資本業務提携を行うことで合意しました。これまで当分野は、衛星画像付加価値コンテンツであるデジタル3D地図事業「AW3D」(注2)を通じて宇宙ビジネスに貢献してきました。㈱パスコ、キヤノン電子㈱とともに、衛星データ活用のユースケース及びお客様からの具体的なニーズを衛星システムに取り込むことで、衛星開発から衛星データの活用までの垂直統合を加速させていきます。㈱Marble Visionsは2027年までに衛星の初号機を打ち上げ、2028年までには計8機の衛星について順次打ち上げを予定しています。
㈱Marble Visionsを通じて、国内外の多様な公共・産業分野で活用可能な衛星観測システムを整備し、宇宙の目から得られるインサイトを迅速に提供し、社会課題解決に寄与することを目指します。
大手金融機関においては、顧客接点及び顧客体験の強化や業界の枠を超えた金融サービス実現のためのITサービス投資が増加しています。一方、地域金融機関においては、IT投資は横ばいですが、地銀再編による新たなIT投資や勘定系システムオープン化に向けた動きの拡大が期待されています。
社会のデジタル化の進展により、生活に密着した金融サービスが次々と登場している中、金融システムにおける信頼性と先進性の両立の必要性を再確認しました。当分野は、勘定系システムのオープン化フレームワーク「PITON」適用により、2024年1月に共同利用型勘定系スキーム「MEJAR」をオープン化した実績を基に統合バンキングクラウドの開発に着手し、金融システムにおける信頼性と先進性の両立を実現するための組織体制を整備しました。こうした取り組みにより安心・安全な金融インフラを永続的に支えるとともに、業界をつなぐ新たな金融サービスの創出・拡大を目指しました。
<共同利用型次世代営業店システム「営業店スマート化」ソリューションを本格導入>
㈱西日本シティ銀行を含む地銀共同センター(注3)参加行とともに共同利用型次世代営業店システム「営業店スマート化」ソリューションを開発し、同行において本格導入しました。
タブレットを利用した共同利用型の営業店システムは、銀行業界初のソリューションです。
参加行ではインターネットバンキング等の非対面チャネルの利用頻度の高まりやデジタル技術の革新等により、顧客接点である営業店及びそのシステムの在り方が共通の課題となっていました。
本ソリューションでは、営業店における接客で使用する営業店システムを、各行専用端末による銀行個別システムから、タブレット等の汎用デバイスによる共同利用型のシステムに置き換えます。タブレット端末において顧客自身により手続きを完結可能とすることで来店時の待ち時間を短縮するとともに、バンキングアプリ等の非対面チャネルと連携し、顧客の利便性を向上します。行員は、タブレット搭載の手続きシナリオに沿った接客により確実な事務手続きが実施でき、事務効率化により生まれた時間を活用した顧客に対するソリューションの提案等の高付加価値業務へのシフトが可能となります。
本ソリューションの地銀共同センター参加行をはじめとする他の金融機関への展開やサービス拡充を進め、金融機関の店舗をはじめとしたユーザー接点のデジタル化を実現することを通じて、地方の労働人口減少という社会課題の解決に貢献していきます。
法人分野においては、製造業・小売業をはじめとする全てのインダストリーで、DXや生成AI、サステナビリティ関連の事業機会が堅調に拡大しています。企業の経営課題は多様化しており、その解決のための方策も多様化する中、コンサルティング力・エンジニアリング力をベースに、ワンストップで顧客の経営課題の解決を能動的にサポートすることが求められています。
当分野は、コンサルティング、ペイメント、テクノロジーそれぞれの専門性を発揮し提供価値向上を担うとともに、各インダストリーの知見を束ね、Foresight起点で業界・お客様のあるべきビジネスの姿をお客様とともに描きました。また、それを実現するための企画策定から、先進技術活用力とシステム開発技術力を活用した変革の実現まで、一貫して高い価値を提供することで、お客様のビジネス変革、サービス創出をともに実現しました。
<“博報堂×NTTデータ” で企業の「デマンドチェーン変革」を推進>
企業の経営テーマの設定、戦略策定、生活者体験設計からデータ・テクノロジー活用、システム実装までを一気通貫で支援することを目的として、㈱博報堂とともに合弁会社㈱HAKUHODO ITTENIを設立しました。2025年4月より営業を開始し、企業のバリューチェーンを生活者目線で捉えることで、お客様企業の「デマンドチェーン変革」を推進します。
㈱NTTデータは、ITを起点として企業のデジタル変革を支援してきた強みを持ち、一方で㈱博報堂は、深い生活者理解に基づいた顧客接点領域でのクリエイティビティを強みとしています。両社の知見やケイパビリティ、ソリューション等を組み合わせることで、1社だけではできなかった幅広い領域での提案を推進します。
今後も、「デマンドチェーン変革」の推進により、お客様企業の売上・利益の向上に貢献するとともに、業種・業界の垣根を越えて、より豊かな社会・生活につながる新たな価値の実装を目指します。
主に海外ビジネスにおける市場特性を考慮した高付加価値なITサービスを提供する事業やデータセンター事業等を行っています。
海外セグメントにおける事業活動の取り組み状況等については、以下のとおりです。
North Americaの事業環境は、AI、クラウドコンピューティング、セキュリティ等の領域が牽引して成長が続いていますが、同時に、政策動向の不確実性による企業の投資手控え、事業成長に向けた人財の不足等の成長阻害要因も内在しています。
当ユニットは、グローバルIT市場の約40%を占め、世界最大の市場規模である北米において、オーガニックな成長及び買収を通じて、コンサルティング、クラウド・トランスフォーメーション、デジタルオファリング、生成AIアセット等の最新のサービスポートフォリオを活用し、既存顧客からの取引拡大と新規顧客獲得の双方を目指しました。また、収益に見合ったコスト構造の適正化を図りました。
<重点顧客から大型の新規案件を獲得>
米国の大手ヘルスケアソリューションプロバイダーより、お客様が提供するサービスのIT環境高度化に関する7年間にわたる大型案件を受注しました。本案件では、お客様の使用するデータセンターを当社グループのデータセンターに集約するとともに、お客様のIT環境をマルチクラウドプラットフォームへ移行することにより、お客様の機動的な業務運営や管理コスト削減を実現します。本案件は、自社データセンターの提供を含めフルスタックでソリューションを提供できる唯一のパートナーであったことや、グローバルクラウド事業者との強力なパートナーシップを評価されたことにより、受注に至りました。
EMEALの事業環境は、平均GDP成長率予測は低いもののIT投資は堅調です。国別では、スペインは製造業が堅調でIT投資も旺盛である一方、ドイツは製造業、特に自動車業界でのIT投資が抑制傾向にあり、南米においては平均GDP成長率予測が低いもののIT需要は旺盛と見られています。
当ユニットは、英国、ドイツ、スペイン等の主要市場でのビジネス拡大に重点を置き、高い競争力を有するデジタルBPS、CX、クラウド・トランスフォーメーション、データアナリティクス、生成AIアセット等に投資するとともに、サービスのスピード、品質、コストに関わるデリバリー能力の強化に取り組みました。
<世界的な再生可能エネルギー事業者を一気通貫で支援>
再生可能エネルギーにおける世界的な事業者との間で、基幹ビジネスに関わるアプリケーションのモダナイゼーション及びクラウドマイグレーションに関する契約を締結しました。本案件では、お客様のコアビジネスである再生可能エネルギー生産量の制御等のシステムを最適化することにより、お客様ビジネスを加速し、効率性を向上します。また、開発工程においては、アジャイル開発及び生成AI適用により生産性の向上を実現します。本案件は、お客様がグローバルに使用するコアシステムの開発や実装を通じて10年以上にわたりリレーションを構築し、お客様の戦略パートナーとして認められたことに加えて、当社グループの海外各国でのローカルプレゼンスの高さや戦略立案から実装まで一気通貫でグローバルにサポートを実現できる点を評価されたことにより、受注に至りました。
APACの事業環境は、IT市場は持続的に成長しており、特にクラウドサービスは需要が旺盛です。一方で、オーストラリア等のGDP成長率は低水準で、APAC全体でも、インフレや為替変動等の不確実性が、企業のIT投資にマイナス影響を与える可能性があると見られています。
当ユニットは、持続的な成長が見込まれる市場環境の中、インド、オーストラリア、シンガポール等の主要市場において、テクノロジーソリューション(注4)領域の強化に取り組むとともに、デジタルビジネスやERP関連のオファリングを活用し、既存顧客からの取引拡大と新規顧客獲得の双方を目指しました。また、特定の戦略分野においては、当ユニットだけでなくパートナー企業との共創により成長を加速しました。
<クラウドビジネスのさらなる強化>
業界特有のニーズに合わせたクラウドベースのデータ分析やAIを活用したソリューションの開発及び導入の拡大を目的に、Google Cloudとの戦略的パートナーシップを拡大しました。当社グループの技術力や業界専門知識に、Google Cloudのデータ分析やAI、クラウドに関する技術を結び付けることで、お客様のイノベーションを牽引しビジネスアジリティを向上するソリューション開発を行うなど、クラウドビジネスの強化を推進します。
その一環として、Google Cloud Platform(以下、GCP)サービスに特化したクラウドエンジニアリング企業である、Niveus Solutions Pvt. Ltd.(以下、Niveus社)の買収について同社と合意しました。Google Cloudのトップパートナーの1社であるNiveus社の、GCPによるモダナイゼーションやデータエンジニアリング、AIの専門知識を持つ約1,000名の人財を加えることで、当社グループのGoogle Cloud関連ビジネスを強化します。本取り組みを通じて、当社グループのGoogle Cloudに関するグローバルシステムインテグレーターとしての地位を確立するとともに、クラウドに係るケイパビリティ強化をさらに推進することにより、業界横断での革新的なクラウドソリューションに対する世界的需要に対応します。
GTSSでは、主にデータセンター事業、SAP事業の他、ネットワーク事業を営んでいます。
データセンター事業の需要は引き続き旺盛であり、生成AI等による追加成長が見込まれています。
SAP事業の需要は、企業のクラウドERPへの移行需要が引き続き旺盛であることと、生成AIを活用したソリューション等への期待もあり高い成長率が期待されています。
当ユニットは、世界において高いプレゼンスを有するデータセンター事業者並びにIPネットワークプロバイダーとしての強みを活かし、信頼性の高いインフラサービスをグローバルに提供しました。また、ネットワークサービス、クラウドサービス、エッジコネクティビティ(プライベート5G)及びコンピューティングにおける強みを引き続き強化し、NTT DATA, Inc.のデジタルソリューションの一部として、一連のサービスをワンストップで提供しました。
SAP事業についても引き続き注力し、コンサルティング、アプリケーション、データサービスを通じて成長を加速しました。また、ショアリング、オートメーション、知的財産の活用を通じて、デリバリー能力の強化を進めました。
<データセンター事業におけるサービス提供可能容量拡充>
データセンター事業は、旺盛な需要を背景に成長が見込めることから、当社グループは積極的に投資を進めており、2024年度は4,130億円の投資実績となりました。当年度にサービス提供可能容量を新たに約380MW拡充し、全世界で約1,500MWの規模でサービスを提供しています。
また、日本国内において、栃木市の新たなデータセンター用地取得内定業者として選定されました。本用地は、首都圏エリアにおける新たなデータセンターとして開発を進めており、2棟で約100MW規模のサービス提供を予定しています。
●参考:各セグメントの業績内訳
(注1) JAXA:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構のことです。
(注2) AW3D:㈱NTTデータと一般財団法人リモート・センシング技術センターが提供する、世界で初めて5m解像度の細かさで地球上の全ての陸地の起伏を表現した「デジタル3D地図」のことです。
衛星画像を元に作成された3D地図データは、世界130カ国・地域以上、4,000プロジェクト以上で活用されています。
(注3) 地銀共同センター:当社グループが構築・運営する、地方銀行・第二地方銀行向け基幹系共同センターのことです。
参加行は以下のとおりです。
(利用開始及び銀行コード順)
㈱京都銀行、㈱千葉興業銀行、㈱岩手銀行、㈱池田泉州銀行、㈱あいち銀行、㈱福井銀行、㈱青森みちのく銀行、㈱秋田銀行、㈱四国銀行、㈱鳥取銀行、㈱西日本シティ銀行、㈱大分銀行、㈱山陰合同銀行
(注4) テクノロジーソリューション:ルーター等の通信端末機器を用いたソリューションのことです。